この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話 作:change
それはそれとして息抜きが代表作品になりそうなの、何???
第11話 「そうはならんやろ!」
「なぁにが《聖魔連結王》攻略だよ・・・・・・」
僕は深夜、自室で机の上に突っ伏していた。
前回、ラボが襲撃にあった際に《聖魔連結王》の力を実際にサバイバルは味わい、その上で勝利を収めた。そのことからサバイバルであれば《聖魔連結王》を攻略出来るだろう、という考えが生まれ、こうして作戦が建った訳だ。
まぁ、此処までは良いよ?別に。またラボ襲われるより、仕掛ける側になる方が怖くない。だが、それで僕が青峰くんを抑える係になるのは断固反対したかった。
今回の作戦では、僕達が集めたAFカードから出力出来る謎のエネルギーを大量に使い、ラボを無人にしても大丈夫なよう結界を張ることになる。この結界は早々破られない代わりに長くは保たない為、作戦は短く終わらせなければならない。燃費がアホみたいな代物だとか言ってたが、攻撃などがなければ4時間持つとサバイバルは言っていた。
そしてここで青峰くんだ。ジャックにはサバイバルが勝利しているという事実がある為、警戒度が低めに見積もられている。しかし、間違いなく邪魔をしに来るであろう青峰くんのデッキは、今まで観測してきたデッキ情報から、常に改造などが施されており、デュエマをした人物がクローバー内に居ないことが原因で、厳重警戒対象として取り扱われていた。
さて、では何故僕が青峰くんとの接待に選ばれたのか。此処で皆には青峰くんと僕との運命的な出会いとその後のことを思い出して頂きたい。
そう、僕はあの時、生きていればどうにかなる、と、青峰くんに自身が秘匿されているパラレルの懐刀と大嘘吐いてどうにか見逃して貰ったのだ。そしてどうやって追い払ったのかをクローバーの全員に聞かれ、口先でどうにかしたと言ったのだ。
そう、僕には今、青峰 白という人物を口先だけでどうにかしたという実績があることになる。そりゃあそんな奴居たらぶつけるわ。だって時間稼ぎが目的だもん。
「アホ・・・・・・!今度遭ったら殺されるだろうが・・・・・・!」
間違いなく、青峰くんは僕が嘘を吐いていたことを知ってしまっている筈だ。そして前回、もし嘘であったら殺すというメッセージもある。
いやぁ無理無理、そんな状態の人間に口先でどうにかしろとか無理。何なら遭っただけで殺されるわ。
冷静にそう思考しているが、これは自分が本気で死ぬ運命を歩み始めていることを知覚し始めているからだろう。人間、死を前にすると冷静になっていくものだと聞くし。
──話し合いが駄目ならデュエマ、ってのが自然なんだろうなぁ。
薄々気付いてはいるのだ。このどうしようも無い状況を打破するには、僕が此処に来る前に持っていたディスペクターの入ったデッキを使用すれば、恐らく青峰くんに勝てる上に、デュエマ絶対法則に従って、僕に有利な展開になる可能性があると。
デュエマの勝敗があらゆる結果を左右するデュエマ絶対法則など完全にオカルトの話だが、そもそも異世界転移やら実体化するクリーチャー、AFカードだのと、オカルトなんて今に始まったことではない。信じる信じないとか、もうそういうのではなくこの世界のルールにして事実だ。
だが、仮に僕がディスペクターを使ったとしよう。もしこれを見た青峰くんからクローバーの誰かに漏れたら、流石に空気が悪くなるどころじゃない。最悪裏切り者として処断だ。アウト、これはアウト。使っているところを見せさえしなければ、仮にクローバーに僕がディスペクターの王について良く知っていることが漏れても言い逃れの余地がある。怪しい男から教えて貰ったとか、そんなことを言えばきっとそう・・・・・・きっと仲間思いな皆は信じてくれる!くれるよな!?な!?・・・・・・何か口調も無くなる程ガチギレしてた小蛇とか思い出すと心配になってきた。アイツも何がトリガーかが未だに微妙に分からんけど、ガチでキレたとき滅茶苦茶怖いんだよな。
──まぁ過去を悔やんでもどうにもならんし、現状はそう・・・・・・青峰くんを口先でどうにかすることが出来ないと考えた場合の手だ。
説得や長話は無理だろう。そういったことをするにも状況が状況である為、行動を拘束するにも力が必要だ。青峰くんはきっと、ジャックの元へと行こうとするだろう。
「・・・・・・もう使うしかなさそうだな、あの作戦」
あまり使いたくはないが、そうも言ってられなくなった。問題はバレないかどうかだが、精一杯バレないよう、また虚勢を張り、細心の注意をするしかなさそうか。
僕はクローバー各員の部屋に用意されている金庫を開け、中の物を確認する。
──でもやっぱ、緊張はするなぁ・・・・・・やだなぁ・・・・・・。
胃がいてぇ・・・・・・でもそう言ってたってどうしようもない。
僕は
・・・・・・うん、大丈夫・・・・・・かなぁ?
願わくば、サバイバルが速攻で《聖魔連結王》とジャックを倒してくれることを願おう。これでサバイバルが負けたら僕はもう泣いて土下座して命乞いするしかない。青峰くんって靴でも舐めたら許してくれるかな・・・・・・いやキモいと思われるだけでは?どうしたら良いか零無に聞いておくべきだろうか・・・・・・普通に引かれそうだし何言ってんの?と真面目に取り合ってくれなそうだからやっぱ止めよ。
「はぁ・・・・・・心配で眠れないな」
「───!」
「お、どうしたアカシック?お前今深夜3時だぞ?眠くないんだ?」
「───!!」
「うーん何言いたいのか全然分かんないな」
僕の部屋に来ていた喋ることも出来ない小さなアカシックが、何やらワチャワチャと手足を動かしている。これは・・・・・・何だろう、励ましてるのか応援してるのか。まぁ、そういった類な雰囲気は感じる。優しいなぁ・・・・・・アカシックお前良いヤツだなぁ・・・・・・。
「ん、んーーー・・・・・・ねっむ・・・・・・眠くなってきた、寝るわ」
「───!」
「お休みアカシック・・・・・・」
こうして僕は事前準備を終えて眠りにつくことが出来た。後は緊張で腹壊したりせず、土壇場でミスしたりせず、上手くやれるかどうか。
「緊張しますね、《聖魔連結王》攻略」
「そうは見えないけどな、爺さん。まぁ、俺は緊張してるが」
俺は早朝、冷たい外の風に当たっていたところに現れたビドゥンと、作戦開始前最後の気軽な会話をしていた。
まだ小蛇や紅蓮、蒼神は起きていない。少し気が高ぶってしまって全然眠れず、しかも早く起きてしまったとは、4人の中でも年長の者として少し恥ずかしくあり、落ち着きを得る為に外に出たのだが、後からそんな俺と会話をしにか、爺さんはやってきた。
「いえいえ、私も怖いですよ?大事な皆さんを失うようなことが無いか、任務の度に心配していますが、今回は特に」
「・・・・・・蒼神には結構大変な役、押し付けてしまってないかと思ったんですけど、爺さんは何で蒼神にあの役割を?」
正直、一度口先でどうにかしたからと言って、デッキのパワーがディスペクターと争うには少し低いと言わざるを得ない蒼神を、あの《禁時混成王》を使う青峰 白にぶつけるのは、かなり危険が高いと俺は考えていた。確かにデュエマで俺達クローバーが勝てない可能性まで考えると、実績のあるやつが選ばれるのも分からなくはないのだが・・・・・・。
そんな疑問を爺さんにしてみると、爺さんは少しの間を空けて、ゆっくりと口を開く。
「・・・・・・蒼神くんは、追い詰めれば追い詰める程、その真価を発揮するタイプの人間です」
「それで危険度が高いパラレルの幹部である青峰 白を相手にタイマンで時間稼ぎの役割を?幾ら蒼神がそういうタイプでも、危険過ぎやしないですか?」
「心配ですか?」
爺さんは俺に対して、少しニヤリと笑みを浮かべながら、そのサングラス越しに蒼神を心配する俺を見てそう言った。
「当たり前でしょう・・・・・・俺は、クローバーのメンバーでも、爺さんを除けば最年長。まだ俺からしたら子供のアイツらの面倒も、見なくちゃいけないんです。蒼神がクローバーの一員である以上、アイツの事を心配するのは、リーダーとして、大人である者としても当たり前の事ですよ」
そう、俺はリーダーとして、仲間のことを案じる義務がある。俺が《聖魔連結王》を倒す為の時間稼ぎ・・・・・・それを蒼神が捨て石のような形でするのであれば、俺はその作戦を実行することは出来ない。
クローバーは、俺にとっては家族のようなものだ。家族を見捨てるようなことは、俺には出来ない。戦う組織としては甘い認識だというのは、争いで荒廃した俺の元居た世界での経験で良く分かっている。
だが、だからこそ、戦う組織に属する者には、
「流石ですね、サバイバルくん。ですが、君も私からすれば子供です。安心して下さい、私が行けると言ったのですから、蒼神くんは大丈夫ですよ」
「でも爺さん・・・・・・」
「それに、蒼神くんのことを案じてあげるのも構いませんが、信じてあげるのも、リーダーとして必要なことでは?・・・・・・大丈夫です。それとも、蒼神くんを拾ってきた張本人である、クローバーで貴方と最も古くから共に居た私の作戦が信じられませんか?」
「・・・・・・それは───」
これは、俺しかまだ居なかった頃の、クローバーという組織の設立時から居たビドゥンからの言葉だ。そこには、長年共に戦っていた私は信用出来ませんか?と、そういった意味が込められている。
「───すまん、爺さん。確かに、信じてやることも重要だった。不安だからと、ただ信じず不必要に心配をするのは、そいつに対してあまりにも礼を欠く、不快極まるだろう行為だった」
「そう落ち込む必要はありません。人間というものは、自分が追い詰められていると他人の心配をすることで、自分への心配を誤魔化そうとする者も居ます。それは仕方のないことです」
「そうか・・・・・・俺は、思った以上に自分が《聖魔連結王》に勝てるかどうか、不安だったのかな」
そう言って、俺はラボの中に戻る。作戦開始の時間にはまだ早い。そんな俺を見て、ビドゥンはいつもと変わらぬ落ち着いた雰囲気で、外を見たまま声を掛ける。
「どうかしましたか?」
「デッキの最終チェックだ。こんなことをしている場合じゃないって、爺さんと話してて気付くことが出来たからな」
少しの時間でも、デッキへの理解を深め、相手の動きを想定しておくこと。それが、時間稼ぎをする蒼神の負担を軽く出来るかもしれないから。
良く見知ったカードの一枚一枚に目を通し、その一枚一枚に、心の中で話し掛ける。
───やるぞ、お前ら。
そうして時間は経過していく。やがて、作戦開始時間が来た。
俺は前日に説明した通り、小蛇と共に人目に付かないよう《聖魔連結王》の使い手が居る場所へと移動する。どこに居るかと行動パターンは小蛇が既にサーチ済みである為、奇襲の際に場所が分からなくなるようなことはそう無いだろう。仮に不明であった場合、一旦中止して特定の場所で落ち合う予定だ。
紅蓮には派手に暴れて貰う。本人がそもそも自制など効きにくい性格である以上、こうした使い方の方が合っている。作戦中の人目を惹く役割だ。下級パラレル構成員も、紅蓮が殆ど相手をする。紅蓮のレベルであれば、下級に負けることはまず無いだろう。
爺さんも今回は結界の維持で、地下に籠もらずラボの中で頑張って貰うことになっている。アカシックは・・・・・・ラボから俺達を応援するという重要な役だ。全身で応援しようとワチャワチャしていることからやる気一杯と見える。頑張って欲しい。
「蒼神、お前にはキツい役かもしれない。だが、爺さんが行けると言ったのなら、きっと大丈夫だ」
「そう・・・・・・かなぁ?」
「あぁ、うちで一番頭の良さそうな、年と知恵を積んだ爺さんの作戦だ。不安かもしれないが信じろ」
蒼神はサングラスでどんな目をしているのか分からない爺さんを見て、それでも不安そうな声を出す。
しかし、此処でどれだけ不安に思っても仕方ないんだよな、とでも思ったのか、少しして「まぁ頑張るよ」と、俺の目を見てそう言った。
「・・・・・・それじゃあ、始めるぞ」
「ナビゲートは任せて欲しいでござる」
「どれだけデュエマが出来るか・・・・・・楽しみだ」
「おい馬鹿紅蓮、お前絶対作戦だってこと忘れんなよ?」
サバイバル、小蛇、紅蓮、蒼神。4人がそれぞれ荷物を持って外へと出る。ビドゥンとアカシックに見送られ、それぞれの戦う場所を思い浮かべ、覚悟を決める。
「───いってらっしゃい」
「「「「・・・・・・行って来ます」」」」
ラボの中のビドゥンの言葉を背に、そうして4人は歩き始めた。
サバイバル「信じることも大事だよな!」
蒼神「ディスペクター見られたら仲間から殺されないかこえ~~~!!!」
この差よ。