この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話 作:change
ちょい短めです。次回は恐らくデュエマがちょろっと。
寒風吹きすさぶ、雨の降りそうな曇り空。クローバーの作戦決行から、1時間が経過した。
紅蓮は当初の予定通り暴れ回り、街中を歩いていたパラレルの下位構成員まで、纏めて蹴散らす豪快さを見せていた。
「・・・・・・つまらん」
たった1時間で、出来ていたのは人の山。サルは高いところが好きと言うが、人の山の上に座っている様は完全に不良高校生のそれである。というかただデュエマしてどうやってこんなことになったのか、全然意味が分からない。
「ん・・・・・・あれは・・・・・・」
河原から見える橋を走っているのは、自分を師匠と呼ぶレクスターズの使い手。あの先には確か、と紅蓮は考え、彼がどこに向かっているのか理解する。
「成る程・・・・・・リベンジか」
師匠と呼ばれる身としては、紅蓮は赤矢のその姿を見て非常に喜んでいた。
しかし、そのリベンジの相手は、自分達クローバーのリーダー、サバイバルが相手をする予定だ。サバイバルがジャックに勝ち、聖魔連結王の回収が完了してしまえば、その時点で相手は逃げてしまうかもしれない。
「だが、だからといってサバイバルの敗北を期待なんて出来ない・・・・・・これに関しては俺がどうこうすることも出来ない。下手なことをすると、サバイバルに怒られる・・・・・・なら、俺はこの胸の内に生まれたモヤモヤを、デュエマで燃焼するしかないな」
紅蓮はそう結論付け、またも現れた下級のパラレル構成員を相手にデュエマを始める。
完全復活し、前と違い正気の紅蓮のデュエルを前に、真面にやり合える下級構成員は誰一人としていなかった。
──そういえば、蒼神はどうしているだろうか。
紅蓮は一人、また一人と構成員を倒しながら、デュエマの終わりと開始の間にそんなことがふと気になった。
パラレル本拠地にて。
僕こと青峰 白はその光景を、人の居ない暗い部屋のモニター越しに見ていた。
「・・・・・・そうか、クローバーが仕掛けてきたか。面倒なときに・・・・・・」
丁度、今日はジャックが裏切り者のNoface捜索で定期的に同じルートを散策している日だ。恐らく、クローバーの誰かがジャックの行動の規則性に気付き、付け入ろうとしてきたのだろう。
「仕方が無い、僕も動くとするか・・・・・・敵の狙いは恐らく《聖魔連結王》。ただでさえ裏切り者のせいで戦力が低下している現状、これを見過ごす訳にはいかない」
別に、ジャックのことが大事な訳ではない。ただここで奴に消えられたり、奴の持つ力が奪われることがあれば、パラレルの有する戦力は大きく削がれることとなってしまう。
「まぁとはいえ・・・・・・あれでジャックはパラレルの幹部の一人」
普段の言動が野蛮で低俗な部分が特に気に食わないが、実力に関しては買っている。それが今の僕のジャックへの評価だ。
ジャックの恐るべき部分は純粋な力の他に、怒りを糧に強くなるという成長の素質。この前のサバイバルへの敗北と、裏切り者の処罰でしたくもないことをやらされていることへの怒りが、ジャックを大きく成長させていた。
「同じ相手に再び負けるようなことはない。もし奴とデュエマをすることになったら、それをその身で思い知ると良い・・・・・・」
僕はそう言って、サバイバルと小蛇さんの妨害の為に動き出す。恐らくこのような行動に移った以上、拠点の防衛も対策済みなのだろう。ならば、欲張らず相手の時間切れ、撤退などを期待して、精々妨害してやることが効果的な筈だ。
それに此処で成果を上げることができれば、自分の評価も上がるだろうと思うと、何も悪いことばかりではない。精々この騒動を利用させて貰おう。
「・・・・・・あの男はどのような行動を取るのか、それも恐らく、あの人は知っているのだろうな」
あの人が言っていた理解者であり協力者という人物が、仮にあの懐刀と宣った男なのだとすれば、恐らくはその動向もあの人の意志に沿ったものなのだろう。
───あの人が僕らにその協力者について詳しくは教えなかったのは、パラレルの裏切り者を処分する存在が誰なのかを教えても良いと思える程、まだ僕らが裏切る可能性があると信用を得られていないのかもしれない。
「まぁ、僕は元は緑磨 赤矢と共に《零龍》に挑んだような人間・・・・・・当たり前か」
今正に敵対している人物と仲が良かったように見える人物を、すぐに信用出来る訳がない。これは仕方ないことだが、いずれ信用を得られれば良いなとも思う。
───その為にも、今回は全力で行くとしよう。
僕はそうして拠点を出て、ジャックの下へと急ぐ。狙いがジャックであるのなら、ジャックの下に行けばクローバーも居る筈だろうと考えたのだ。
道中、ジャックに連絡を取ろうとするが、ジャックは常時スマホをマナーモードにしている為、僕からのメッセージにも、着信にも気付かない。恐らくは今自分が襲われそうになっていることも知らないだろう。
「あれ?白、どうしたの?」
「っ!?姉さん・・・・・・?もしかして、この混乱を利用して何かする気?」
道中で声を掛けられ振り向くと、そこには自分の姉であり、今は《零龍》により歪んでしまっている青峰 零無の姿があった。
今日は学校など無かった筈だ。友人と遊ぶなんて可愛らしいことの為に外出していたとは思えない。それならば、今の姉さんの取りそうな行動は限られてくる。
「混乱?良く分からないけど、んー・・・・・・ちょっと違うかな」
「違う?」
だが返って来たのは少し予想とは違った答え。違うというのは、何が違うのだろうか。
「うん、何か嫌な気配って言うのかね・・・・・・ちょっと気に食わない存在の臭いがして」
「・・・・・・気に食わない?」
「そっ・・・・・・まぁそれが何かは分からないけど、こんなにヤバい力、禁断の存在を除けば今まで感じたこと無かったから、少し見に来たの。例えるなら・・・・・・まるで宇宙とも言えるような、そんな力」
もしかしたら、予想もしてないヤバい奴を引き連れてるのが、此処らに居るのかもね。と、姉さんはそう言ってのんびりとした雰囲気のまま、どこかへと去って行く。が、途中で止まり、思い出したかのように僕の方を急に振り返って話掛けてきた。
「そういえば・・・・・・悠くんってどこかに居た?見てない?」
「悠くん?」
「あー、クローバーに居る男の子で、髪が黒くて如何にもツッコミ役みたいな」
「・・・・・・髪が黒い・・・・・・アイツか?」
クローバー所属の黒い髪色の男で浮かんでくるのはあの男だけだ。サバイバルは灰色の髪色をしているし、紅蓮は赤い髪だ。小蛇さんは女性だし、間違い無く違う。
「いや、見てない。というか、どこかで知り合ったの?」
「うん、まぁ話すと長いから省いちゃうけど・・・・・・私が求めて、それを振った男の子かな?」
「え」
え?
「いや・・・・・・姉さん、何言ってるの?」
「いや何って、そのままの意味で──」
「・・・・・・姉さん、良い?」
僕は姉さんの目を見てハッキリと言う。これは絶対に今のうちに言わなければならないと、僕はそう思ったから、だから・・・・・・姉さんにはキツいことかもしれないが、仕方のないことだと我慢して貰うしかない。
「姉さんその・・・・・・うん、まぁ・・・・・・幾らなんでも、嘘を吐いてまで誰かに告白したとかいう話、用意しなくて良いんだよ?普段人前で妖艶な雰囲気で余裕そうにしてるけど、そういう事に関しては変なところでヘタレて結局実行に移さない姉さんのそれは・・・・・・夢だよ・・・・・・」
「ウワァァァァァン!白が私のこと虐めるぅぅ!」
白の馬鹿!もう知らない!と走り去って行く自分の姉の残念な姿を見なかったことにし、自分も急いでジャックが定期的に巡回している場所へと向かう。
早いところ合流したいが、どちらがジャックに会うのが早いかは分からない。いや、寧ろ相手には小蛇さんが居るため、先に向こうがジャックを見つける可能性の方が高い。
過去に僕はクローバーの面々と遭っているが、小蛇さんは例えるのであれば現代を生きるシノビのような人である為、純粋にこういった人探しの速度などに関しては、普通の人より遙かに早い。今回は此方が後手である以上普通に不利だ。
「あの組織、本当に一人一人が厄介だな・・・・・・!」
僕は全速力で走りながら、姉の元居た組織への愚痴を零した。
だが、走っている自分の前を遮るように、突如として人影が街路字から飛び出してくる。
「っ、誰・・・・・・だ・・・・・・」
「げっ・・・・・・や、やぁ?」
心臓がドクリと音を建てて跳ねる。何故なら、目の前に居る者の姿はあまりにも特徴的で、あまりにも自分の知っている人物と重なる点が多かったから。
そして、その人物がこの場面で出てくることが、どれだけ最悪なことかを考えてしまったから。
「No・・・・・・face・・・・・・!?」
「・・・・・・え?」
白い仮面にどこか宗教的な雰囲気を持つ黒いコート、前に見たときとは色合いが逆だが、この服装をしている人物は間違い無くNofaceだろう。
「・・・・・・お前、まさかパラレルを裏切ったついでに、クローバーに属したのか・・・・・・!?」
「え、いや・・・・・・うん?」
「・・・・・・良い。どちらにせよ、お前の処理はパラレルにおいて最優先任務だ。ジャックのことはあるが・・・・・・此処でお前を討つ!」
僕は即座にデュエルの為の空間を作り出し、Nofaceを逃がさないようにする。これで、Nofaceとのデュエルは確約された。
──もし此処でNofaceを倒し、捕縛ないしは処理することが出来れば・・・・・・僕の評価を上げることが出来る。
「構えろ、Noface、お前が如何に強くとも、此処で僕は、お前を倒す・・・・・・!」
「あー・・・・・・はい、そう。なら僕は負けないよう、精一杯足掻かせて貰うよ・・・・・・」
ボイスチェンジャーにより出てくる偽りの声に、僕は自分のデッキを透明なボードにセットする。
勝てるかは分からない、何より、相手のデータはあまりにも不足しているのが不気味であり、恐ろしい。
そして何より──顔も見えず、声も分からず、デッキも何も分からないという未知そのものであることが・・・・・・本能的に不安を煽る。
──それでも、それでも僕は!
「此処で勝って・・・・・・あの人に認めて貰う必要があるんだ・・・・・・っ!僕のターン!」
「むぅ、白の馬鹿・・・・・・そこ指摘しなくて良いじゃん・・・・・・」
青峰に泣かされ、走り去って行った零無。痛いところを突かれたのか、少しふて腐れながら今は歩いていた。
気分を晴らすためにも、何か面白いこととか無いかな、と、一先ずはデュエルが多く行われていそうな場所へと向かおうと思っていたところで、急に声を掛けられた。
「おや?ふて腐れてそうだけど、どうしたのかな?大丈夫?」
「ん・・・・・・すみません、心配してくれて有り難う・・・・・・ござい・・・・・・不審者?」
「残念ながら僕は不審者じゃないです」
「じゃあ何物?」
「あぁ、僕はフシン=シャ=ジャナイデスだ」
「ふーん、じゃあフシンシャさん」
「あははは・・・・・・冗談だよ」
どこかでやったようなやり取りをする。ボイスチェンジャーに黒い仮面、白いコートという不審者としか言い様が無い男は、そんな零無へと自己紹介を始める。
「僕はNoface・・・・・・哀れにも組織から追われ、こうして女子高生に不審者と疑われる悲しき男さ」
「胡散臭さが凄すぎるなぁ・・・・・・というか、Nofaceって、確かパラレルを抜けた裏切り者とか言われてなかった?他にも無口なヤツだって、いつか白がそう言ってたような気がするけど」
どこか軽薄そうな雰囲気で話掛けてくるNofaceという人物に、零無は少し警戒していた。
──この人・・・・・・何か変・・・・・・私がさっきまで感じていた異常な力の持ち主なのは分かるけど、器が何か・・・・・・変・・・・・・?
「・・・・・・おっと、あまり見ないで欲しいな。自分の内にあるものを
「っ・・・・・・へぇ、お兄さん、
「厭らしい視線には敏感でね。ほら、ミステリアスな男って惹かれるでしょ?いつも視線釘付けでさぁ?」
「うーん、お兄さんには流石に私も惹かれないかなぁ」
ガーン、とわざとらしく落ち込むNofaceに、零無は何なんだろうこの人と、不思議な生き物を見るような目を向けてしまう。底知れ無さと警戒させないような言動、聞いていた人物像と掛け離れた多弁さ、そのどれもが不気味に思えた。
「それで、お兄さんが私に声を掛けてきたのは、何か用があったからじゃないの?」
「あー、そうそう!・・・・・・君には、少し御願いがあってね」
その瞬間、男の纏う雰囲気が変わったような気がした。
「君の中の《零龍》を目覚めさせてあげる代わりに、僕に協力して欲しい」
Nofaceが二人!?い、一体どういうことなんだー!?(棒読み)