この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話 作:change
あのキャラクターの名前の由来なんかが分かる日記回。
『xxxx年xx月xx日』
俺がこの世界に来てから、気付けばそこそこ月日が流れていた。この日記も、次元渡りを経験する前、つまりは俺が元居た、あの戦争で荒廃しちまった世界に居た頃から書き続けている為、もう新しい日記帳を用意しなくてはならないようだ。この日記帳に書く事が出来るのも、この内容が最後になるだろう。
・・・・・・この日記帳の最後に書く内容として、今までの事を少し振り返ってみるのも悪くない。何より、読み返す時がいつか来るかもしれないし、その時にこの日記帳の内容を一度に大まかに把握出来るとなれば楽で良い。
と言う訳で、まず、俺の元居た世界についてを先に纏めておこう。
俺の元居た世界は、元々は青い空に緑溢れる草原や、綺麗な水に鉱石、学校なんかがあって、とても平和な世界だった。まぁ、そんな平和な時でも争いの火種はそこらにあった訳なんだが・・・・・・一々これを上げていたらキリが無い為省略。
俺はそんな平和な世界で、馬鹿みたいにギャーギャー騒ぎながら学校で友人と遊んだり、遊んだり、遊んでいた。今じゃアイツらにママとかオカンだとか適当言われちゃいるが、ガキの頃の俺は、勉強とか家事とか一切興味の無い、遊びしか頭に無い馬鹿だった。
そんな俺にも転機がやってきた。シビュラという集団が学校に来て、俺達を勧誘して来たのだ。
シビュラというのは、此処では宗教団体というイメージさえあればそれで良い。細かい事は、これから嫌でも知っていくことになるのだから。
俺は最初は、宗教だとか堅苦しいものに興味はない、と全くもってアウトオブ眼中だった訳なんだが、その中の一人、ゾロという男に、この時の俺は目を付けられてしまった。
ゾロは面白い男ではあった。プライドは高いし、妙に慢心しているし、何なら無駄に顔だけ良い為、中身を全く知らない女子生徒からは人気もあった。
俺はそんなゾロと、学校を卒業するまで同居していた。
どうしてか、も此処で書いてしまおう。そもそも俺は孤児だった。だから、親なんてものは無いし、知らなかった。その癖家事なんて面倒で嫌だったから、幼なじみのアリスが家に来ては、やれ掃除しろだの、やれ栄養を考えろだのと、オマケに勉強の大切さまで説いてくるという、まぁあの時の俺からすれば本当にイラつくイベントが定期的に開催されていたのだった。
だが、そんな事をどこで知ったか、ゾロは自分の株上げの為に俺の面倒を見ると言い出したのだ。これは、当時の俺からすればどう転ぶか分からない心配の塊のようなものであったが、俺はアリスが毎回家に来て俺のやることに一々指摘してくる、という環境を変えられるかもしれない、と気付いた瞬間、ゾロを歓迎しようと判断したのだ。
そもそも、アリスは女だ。ゾロとの野郎二人での方が馬鹿出来るし楽しそうだとも思っていた。
・・・・・・まぁ、結果としてだが、俺とゾロは揃ってウィッチの世話になった。男二人、それも片方は遊び以外に興味の無いガキ、もう片方はプライドの塊ともなれば、上手く行かないのも仕方がないと言えば仕方がなかったのかもしれない。ゾロは孤児と生活するという行動を取った事で周りから評価もそれなりにされていたし、その時点で恐らく満足してしまっていたのだろう。もしくは、元からそこまで生活を支えるような事までするつもりは無かったのかもしれない。
・・・・・・少しどうでも良い事を書きすぎただろうか。まぁ要するに、俺はアリスとの毎日が面倒でゾロと共に生活しようとしたのだが、結局は俺とゾロとアリスという新しい生活様式になったという話だ。
そして、ゾロからいつしか、シビュラに入らないかという話を受けた。
この時、俺は学校で進路がどうだとかいう話を受けていて、此処で言う中学2年生に該当する年になっていた。
正直な話、ゾロがそう言うならというのが半分、組織というものに所属しているというのが何か格好良さそうだと思ったのが半分で、所属してみても良いかも、なんて答えてしまった。我ながら馬鹿過ぎると思う。
因みにアリスはこの年で、『
そうして俺は中学を卒業して、高校に行かずシビュラに所属した。まぁシビュラではそういった子供も多く居るらしく、俺は正直、その中でも特に馬鹿で、教養が足りていなかった。だから、ゾロに連れられて所属したは良いものの、周りは皆頭が良くて、良く分からない神話とか歴史についての話ばかりをしていた中、俺は浮いていた。
こんな事なら入るんじゃなかったな、とも思った。まぁ、悪い奴らじゃなかったというのは間違い無いだろう。俺に対して優しく接してくれたり、神話や歴史を教えようとしてきた奴も居た。ただ、俺はそれでも勉強が嫌いだったというだけで。
そうして、俺は抜けるのにも面倒な手続きが幾らかあると知り、まぁ入っている限りは寮で支援を受けながらの充実した生活を送ることは出来るしな、と、そこだけの為にシビュラに暫く所属し続けた。ゾロは孤児を拾って育て上げ、シビュラに勧誘して所属させるにまで至ったことを認められ、そこそこ良い評価を貰えてとても喜んでいた。プライドが高い癖にそういうところは素直で、俺に対してはシビュラの周りの奴らに見せる顔とは違う、残念な部分を隠しもしない為、何というか憎めない奴だった。
だが、そんな平和な時間も、終焉を迎える。
シビュラがいつしか、神の教えを広めようと活動するようになった。争い、嘆き、離別や死を悲しむ者達、その上に成り立つ今を甘受している人々の世を正そうという行動を取り始めたのだ。
シビュラという組織は俺の世界じゃ一番権力のある組織でもあった。此処じゃあそんな宗教が一番権力があるだなんて信じられないだろうが、事実として、そんな行動を取り始めたシビュラに従う者が殆どだった。
食べる物も服装も、考え方や生活も、何もかもを規定し、定義した。気付けば俺が昔居た小学校や中学校なんかも、シビュラの思想を育成する学校と成り果てていた。まぁ、元からあそこは、シビュラの支援で成り立っていた部分が大半である為、そうならざるを得なかったのだろう。
これを俺は、どこかの誰かが、シビュラの上の人物を誑かしたのではと今は良く思っている。シビュラを統率する人物は、強引な手法はあまり好まないからだ。このような事をしたのは、恐らく彼個人の思想ではなく、このシビュラに支配された世の中という状況を作り出そうとした他者の策略に影響されてしまったものなのではないかと睨んでいる。
だが、幾ら権力があろうと、反発する者は生まれてくる。俺はこの時点でもシビュラに居たが、良く仕事が忙しくなり愚痴を吐きに部屋に来たゾロが、レイジという組織について散々悪口を言っていたのは良く覚えている。
レイジ、というのは、簡単に言うとシビュラの思想に対するレジスタンスだ。最初はただのテロリスト止まりの組織だったが、シビュラの活動が原因で、シビュラを心の中で良く思っていない人々からは、救世主だとか、黄金の意志を継ぐ者達だとか、そんな風に思われていたらしい。黄金の意志を継ぐ者、というのは、シビュラに伝わる神話において、神を討ち滅ぼしてしまった悪魔の軍勢の事を指している。
そうして、各地でレイジvsシビュラという構図が生まれる。この世界でもデュエマは使われていたが、今俺が居るこの世界と違って、元から遊びの為のものではなく、一つの兵器としての運用に近かった。クリーチャーや呪文なんかを使用するのに十分な良質なマナと、それらを現実世界に具現化する為に必要なデュエ粒子というものが溢れていた世界であった為、そこらの銃火器よりは遙かに恐ろしい兵器だった。
デュエルの勝敗で生死も決まる。大体がそうだった。俺はこの時、シビュラでゾロの補佐として抗争に着いていった事があったが、現代に現れた地獄とは、このようなものを指すのだろうという感想を持った。
恨み、辛み、憎しみ、怒り・・・・・・様々な感情が入り乱れた場所に、俺は長く居すぎたのか、それとも、今まで近い距離に居たゾロが、それを平然と受け入れて人を殺す指示をしていた事に心が乱れたのか、未熟な精神のままだった俺は、何を思ったのかそこから逃げ出した。
走った、兎に角走った。俺の逃亡に気付いたゾロは、俺の背後から罵声を浴びせては来たが、追いはしなかった。恐らくそれどころでは無かったのだろう。
そうしてそのまま、俺はシビュラから居場所を失った。シビュラから、テスタという男の名は除名されたのだ。
そこからは寒さと飢えとの戦いだった。恵みを欲する惨めな子供の姿は、今や世界を支配するシビュラに居た者とは、周りも到底思わなかったのだろう。偶に、水やパン、毛布を分けてくれる人も居た。
だが、中学生の頃一緒に遊んでた奴が、俺がシビュラに行った奴だと周りに言いふらした結果、それまで暖かくしてくれた人達から、俺は沢山の罵声と暴力を受けた。まぁ、当然だと思う。俺がどれだけ抜けたと言っても、人々の生活を苦しめるシビュラに所属していたのは事実で、それが彼らにとって重要だったのだろう。
石を頭に向かって投げられるのにも、ゴミを漁って飢餓を耐えようとするのにも慣れてきた頃、その町にもシビュラがやってきた。何でも、この町はシビュラに害を為す存在を生み出し兼ねないとかいう理由でだ。
真っ先に俺が呼んだのではないか、と疑われたが、もう否定しても仕方が無い。とはいえ、逃げる気力も体力も、生きてるだけで精一杯な俺には無かった。
後は疑心と復讐心に囚われた人達に殺されるだけか、と思っていた。
しかし、シビュラのそんな行動に、レイジがすぐに駆けつけて来た。人々は此処でも争いが始まると判断し、すぐにレイジの指示に従って逃げて行った。俺は結局、殺されずに争いの場に残された。
シビュラが来れば、元シビュラである俺は、背徳者には罰を、と殺されるかもしれない。レイジが来ても、此処に済んでいた人々にアイツが悪い、と言われていたら、殺されるかもしれないな、なんて考えていた。
もう子供らしさなんて消え去って、俺は恐らく此処で死ぬ、殺しに来るのはどちらだろうな、と、自虐気味に笑っていた。
・・・・・・まぁ、この日記を今もこうして書けているのは、俺がそこで死ななかったからなんだが。
カツ、カツ、カツ、と、ヒールを履いた誰かが近付いて来る音がして、女に殺されるのか、さて、シビュラか、レイジか、と考えていたのだが、運命というものなのか、因果とはこういう事なのか、今にも死ぬんじゃないかという程痩せ細り、濁った目をした俺の目の前に現れたのは、あの世話焼きで口うるさいアリスだった。
一瞬、俺は衰弱死する寸前の幻かと思ってしまった。あれだけ嫌っていたアリスの幻影を最期に見るなんて、最悪だな、とか、心の中で苦笑していたのだが、そんな俺にすぐさま駆け寄り、ビンタを一発かまして来た瞬間、何かが可笑しいと気付く。
アリスは、レイジに所属していたのだ。本来なら外出て活動なんて危険過ぎてしないのだが、今回はシビュラとの戦いの為に、この場所を訪れていたと言う。そんな偶然あるか?と思う。だが、アリスは事実として俺と出会った。アリスはこんな状態の俺でも、昔良く話をしていたあの馬鹿なテスタだと気付き、死を受け入れようとしている俺にビンタした後、無言で無理矢理背負ってレイジの医療班の下に送り届けた。正直、いつもクールというか無表情というか、冷たくお堅い印象があったアイツだが、その時はこう、かなり怒っていたような気がする。
怪我した町の人達は俺が治療を受けているのを知ると、医療班に必死に救う必要の無さと、他に早く治療をするべきだという訴えをしていたのだという。正直、もう此処ら辺はあやふやで、意識が殆ど無かった為に、アリスから聞いた内容だ。だが、そんな奴らをアリスは圧で黙らせて、無事俺は復活を遂げたのだと、医療班の人達から後で教えて貰った。
まぁ、死にかけから蘇ったというだけで、すぐ眠くなって寝てしまったのだが。そんな俺が次に目覚めたのはレイジの本拠地。頭の悪い俺でも、わざわざ本拠地に移送されたのは、拷問か何かで情報を引き抜こうとか、そういう考えなのかと疑っていた。
だが、実際にはそんな事をしてくる奴は居なかった。正確には、会議のようなものがあったらしいが、結局のところ監視を付けて牢に入れるで十分という判断になったらしい。
・・・・・・まぁ、此処らの話は未だに良く分からない。後で知る事だが、レイジは自由で破天荒な奴らが多い為、そこまで深く考えていなかったのかもしれない。
そうして暫く、俺はレイジの本拠地で、選りに選ってアリスの監視を受けながら生活する事となった。
トイレに行くにも風呂に行くにもアリスの許可が必要であったりと、悶えるほどの恥辱であると俺はそう思っていたが、アリスはそんな怒りに震える俺を鼻で笑うなどして監視していた。後で覚えてろよと監視しているアリスに指さしてギャーギャー騒いでたことが今では懐かしい。
そうしてアリスの監視下で日々を過ごしていた俺に、またも転機が訪れる。
何と、アリスが俺を正式にレイジに入れるよう、仲間達に掛け合ってくれたらしいのだ。アリスは上からの信用もかなりのもので、何なら頭が空っぽな奴らが多いレイジを統率出来る唯一の脳とさえ言われている程、欠かせない存在だった。
普段はレイジの男連中なんかの馬鹿騒ぎを呆れた顔して見ていたアリスが、情で動いたという事でレイジは大騒ぎ。何と秒でOKが出たらしい。流石に緩すぎると思う。
そうして俺は、晴れてレイジの仲間入り・・・・・・スーツとコードネームというものを渡され、レイジとなるならこれを着ること、その名を名乗る事、という条件を受け入れた。
俺は黒いスーツを着て、以降『
俺はそれから、仲間が出来た。元シビュラだとか関係ねぇ、と『
ミリオネアとトランスとは、アリスも交えて良く飯を食ったり、どうでも良い事でワイワイ盛りあがったりした。いつしか、孤児であった自分にとっての家族のようにも思えてきて、正直、心の底から楽しかった。
・・・・・・でも、そんなアイツらも・・・・・・死んでしまった。
シビュラとの争いは加速し、徐々に大地は汚染され、人々は病で倒れるなど、地獄めいた世界に変わり果てていった。ミリオネアはレイジの中でもレイジにさえ興味を見せない無法者であったが、ある日本拠地を襲って来たシビュラから、アリスを守って戦死した。その襲って来たシビュラを統率していたのは、ゾロだったらしい。
トランスは戦争中に行方不明になった。シビュラに拉致されたか、死んだのか・・・・・・どちらにせよ、トランスはそれから帰って来なかった。兄貴分のアイツが居なくなったのは、かなりキツくて1日凹んでしまった。
・・・・・・ウィッチ──アリスの最期は・・・・・・今でも忘れることなく、鮮明に覚えている。
アイツは天才だったから、俺なんかより凄い奴だったのに・・・・・・俺を守る為に死んだ。
罠に嵌まって動けなくなった俺を殺しに来た、異形と化したゾロと刺し違えて、目の前で俺に、初めて見せるような笑みを浮かべて、涙を流しながら死んでいった。最期の言葉は──いつものアイツらしくない言葉だった。
アリスの死んだその戦いが、最後の戦いだった。レイジもシビュラも、戦いを出来る程人が残っていなかった。世界も疲弊し、気付いた時にはもう、終焉を迎えるしかない世界と化していた。
その後の事は殆ど知らない。俺は家族同様に思っていた奴らの墓参りに行ったその帰り、ある店の扉を開けた瞬間、この世界に来ていたのだから。だが、恐らくあの世界はもう修復出来ないだろう。終わりを望む者も多かった。今更、光など求めてはおらず、来たるべき滅びに歓喜している人も居た。沢山の死の末に、足掻いた先の結末がそのような終わりだなんて、なかなかバッドエンドも良いところだと思う。
・・・・・・以上が、俺が元居た世界での出来事の振り返り。大雑把だがこんなもの。こうして纏めると、改めてこのラボに居るクローバーの奴らは、どうにか守ってやりたい、望むのであれば、元の世界に帰してやりたいと思ってしまう。
家事も出来るようになった、勉強もするようにした。まだまだアイツには遠く及ばないが、それでも、アイツらにしてやれることは、出来るだけしてやりたい。俺がアイツらから受け取った幸せを、今度は争いに巻き込まれているアイツらに、配ってやりたいのだ。
「こんなもんか」
余白は殆ど無い。この日記帳もこれで終わりだろう。
蒼神の新しい任務、紅蓮の馬鹿な行動など、これから悩み事も増えるだろう。恐らく次の日記帳も、そういった事で埋まっていく筈だ。
「・・・・・・いつ死ぬか分からないから付けろ、とレイジに居るときから、アリスに言われて書いてたが・・・・・・確かに、これが俺の、生きた証か」
そう言って日記帳を本棚に入れ、ふと机の隅に置いてあった写真立てを見る。
そこには、俺と男2人に女1人が写った写真が入っていた。
「・・・・・・これからも俺の事、応援、してくれるか?」
写真の中の人物達が答えることは無い。だがそれでも、笑っている彼らの顔を見て、俺は自然と笑みを零した。