この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話   作:change

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何か日間2位に居た瞬間あって腰抜けたんですけど、何あれ・・・・・・?
今回は短めです。そしてこれで1.5章が終わり、遂に動き出す2章の影・・・・・・。


第21話 「働きたくないでござる!」

クリスマスを終え、後は大晦日と新年を待つくらいになった12月の夜。僕は自室であの人がジャックに下した判断について考えていた。

 

──《聖魔連結王》を奪われただけでなく、更には《魔帝連結》と《熱核連結》を奪われたジャックは、あの後、連結ディスペクターのデッキを置いて行方不明となった・・・・・・らしいが、真偽の程は明らかじゃない。

 

あの戦いの後、今は奪われてしまった《電融王》を従えていたローゼンに、僕とジャックはパラレルへと回収された。もしかしたら、ジャックは処分されたという可能性は十分にある。元々あの人は勝利こそ至上、勝者こそが全て、というような、敗者に厳しい人だ。ローゼンもNofaceに敗北して《電融王》を奪われていたが、彼女には彼女の役目があるらしいが、ジャックは一度サバイバルに負けていたし、今回の作戦で2度目の敗北、更には重要なカードが複数枚回収されていたとなれば、重い処置が取られたのだとしても不思議ではない。

 

「・・・・・・まぁ、もうあの汚い顔を見ずに済むし、僕からしたら清々したってところだな」

 

ふん、と、鼻をならして、それ以上ジャックの事を考えないようにする。これではまるで、居なくなったことを少し気にしているようで気持ちが悪い。そんな事よりも、重要なのはNofaceだ。

僕はあの時、Nofaceと遭遇し、デュエルを仕掛けるも敗北することとなった。正直、苦戦は覚悟していたのだが、負けたとはいえ良い具合に接戦には持ち込めていたようにも感じる。

 

──感じたのだが・・・・・・。

 

それすらも、恐らくはアイツの調整なのだろう。時間稼ぎでもあったと考えれば、ギリギリのラインになるようにプレイしていたと考えられる。僕が手応えを感じたように錯覚してしまったのも、それが原因だろう。最初から情け容赦の無い倒す事へ全力を出したNofaceであれば、恐らく僕は勝てるかもしれないという希望すら見出せなかった筈だ。

 

「それにしても・・・・・・《禁断竜王》か」

 

あの人には勿論報告した。報告してすぐに回収するようにと言われたが、残念ながらあれ程の力を持ったカードとの戦いとなれば難しいだろう。少なくとも、王の中でも一度場に出てしまえば圧倒的な力を誇る《禁時混成王》でさえも、奴の《禁断竜王》はぶち抜いていった。こうして考えていると、アレだけの存在を生み出した素材も恐ろしく思える。見れば分かるが、アレは殿堂王と呼ばれている《無双竜機ボルバルザーク》と、禁断の伝説である《禁断機関 VV-8》のディスペクターだ。合体しなくても凶悪だったクリーチャー同士を我欲の電磁で引き合わせたともなれば、手に負えないのも仕方無い。

 

──恐らくアレがあの蒼神とかいう奴の言っていた、パラレルでも秘匿されていた王なのだろう。成る程、確かにアレは隠すべきだ。あんなものがあると分かれば、如何にあの人の統制があっても、力を欲して裏切りや叛逆も起きかねない。アレは人を魅了する危険な力だ。人を狂わせるには十分過ぎる。

 

だが、あれをフルスペックで十分に使い熟すにはかなりの腕が必要だ。仮にただのパラレルの構成員に使わせても、最早道具に使われているという残念な事になってしまうのが関の山だろう。

・・・・・・結局、蒼神という男のことはまだ少し疑っていたが、本当にあの人の協力者と見て良いかもしれない。出任せと言うにはあまりにもパラレルの持つ王などを言い当て過ぎていた上に、今はNofaceという裏切り者が出ている。少なくとも、あの男を見かけても放置して良いだろう。僕もNofaceを倒せば評価を上げられると思っていたが、想定よりも相手が強すぎた。手に負えない以上、あの男がNofaceを倒してくれるのなら好都合といったところだ。

 

「状況整理は終了。後は──」

 

皮のベルトに付けていたデッキケースを手に取る。昔、姉さんが作ってくれたデッキケースだ。その中に入っているのは、あの時Nofaceとの戦いで使用した《禁時混成王》を使用したデッキ。

改造は・・・・・・するべきではないと判断した。現在使用出来るカードでは、恐らくこのリストが一番手に馴染む。強さ云々はあるだろうが、今はもう少しこのデッキへの理解を深めることを優先するべきだろう。

 

「・・・・・・ん?《禁時混成王》のカードが今、少し赤く光ったような・・・・・・気のせいか」

 

最近少し疲れが溜まってきているのかもしれない。ジャックの犠牲で漸く緑磨 赤矢の存在が如何に危険かを理解して貰えたが、ジャックが抜け、Nofaceに襲われて以来ローゼンも何やら本調子ではない様子である為、任務の量も倍増している。最近は姉さんも嬉しそうにしている事が増えた為、笑顔の姉さんを見て嬉しい反面、《零龍》を宿し、混ざっている状態の姉さんが喜ぶような事を想像すると、一体何を企んでいるのか、と警戒してしまう。気が休まる時が無いのだ。師走は忙しいと言うが、こうも忙しいと、僕も流石にキツい。

 

──・・・・・・学業の方も、疎かに出来ないしな。

 

僕は浅い溜め息を吐き、すぐに勉強を始めることにした。余り考えた事は無いが、あの緑磨 赤矢は勉強をしているのだろうか。・・・・・・まぁ、していなかったとしても、僕には関係の無い話だが。

 

元々青峰家は厳しい家系だった。現実を見ろ、勉強をしろ、上に立つ人間になれ、と、今は亡き高学歴の父に言われ、僕と姉さんは育てられた。僕はまるで駄目で、毎日泣くまで叱られたり罰を与えられたりしたが、姉さんは天才だった。殆どの事を容易くやってしまう姉の姿は、僕にとって強い憧れだった。

母も亡くなっているが、母はITなどに携わるような高学歴で厳しい人だった。僕が小さい頃は、良く叱られている僕を庇おうとした優しい姉さんと良く喧嘩していたが、僕が大きくなるに連れ、不出来な僕と共に姉さんも良く理不尽に怒られるようになった。

姉さんは、何も怒られるような事をしていなかったのに。不思議な話だ。

 

・・・・・・思い出すと、嫌な気分になってくる。惨めな自分の姿から、今の自分は変わっているのか、と。

 

「・・・・・・あの頃とは違う。僕はもう、あの時のような未熟な男じゃない」

 

そう、だから僕はデュエマも、勉強も、蔑ろにはしない。姉さんのように、僕は青峰家として相応しい男となるように、励まなくてはならないのだ。

そしていつか・・・・・・いつの日か、元の姉さんを取り戻す。優しくて僕の憧れだった姉さんを、この手で・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《禁時混成王》の暴走だぁ?」

 

僕はラボの自室でスマホを見ながら呆れたようにそう呟く。

僕はクリスマスの後、クローバーのメンバーには無断で、Nofaceを中心として作られた『Poker』という組織に加わることとなった。まぁ、組織と言うには人数が3人だけなのだが、零無も居ると思えば、十分脅威度と力があるだろう。Nofaceがどれだけヤバいのかはまだ実際には見て居ない為知らないが、確かパラレルで一番強かったと聞いている。それが嘘で無ければ、それだけの力はあるのだろう。

 

そんなNofaceは今後の為にと、僕と零無、Nofaceの3人でのグループを連絡アプリのDIENで作成し、今後の事について話始めていた。クリスマスの日、別れ際に長い話はまた今度しようと言っていたが、まさかそれが、《禁時混成王》の暴走についてなんて話だとは思わなかったのだが。

 

『白の持ってるディスペクターの王が?』

『そうそう、零無ちゃんの弟くんが持ってる《禁時混成王》が、近い内に暴走を起こす筈さ』

『何で分かるんだよそれ』

 

零無、Noface、僕の順で話が進む。まぁ当てずっぽうというのは無いだろうが、説明が無ければ納得も出来ない。

 

『そもそも、禁断級のクリーチャーを素材にするのは、中々無理があるんだ。《禁時混成王》の素材となっている禁断王は、正直言って使い手と認めていない相手に長く使役されるのを嫌がる程には、恐らく他と比べても自我が強い。切っ掛けさえあれば、自らディスペクターの状態から解放され、禁断の使徒として暴れ回るかもしれないね』

『大問題じゃん。お前どうにかしろNoface、役目でしょ』

『Nofaceがどうにか出来るなら私達も何もしないで良いねー』

『君達、そんなに僕を虐めても何も出てこないぞぉ?』

 

お兄さん悲しい!とか何とかほざいているが、まぁ真面目な話、禁断の使徒が大暴走とか洒落にならない。《禁時混成王》だろうがそうでなかろうが、僕の見えない、関与しないところで暴れて欲しいものだ。

 

『で、だ。今まではその《禁時混成王》のもう一方、時の法皇と呼ばれていたクリーチャーの御陰で、青峰くんは辛うじて禁断の力に飲まれず使えて来ていたんだけどね。あのクリーチャーは時を操るからねぇ、禁断の影響も遅らせる事が出来ていたんだ』

『はぁん、でもそれがもう限界で~、みたいな、そういう話?』

『そうだね、もうそろそろ危険な状態に移る筈だ。元から黒幕は青峰くんを使い潰す気で居たんだろうが、僕としてはそれをスルーすることも出来ない。彼にはまだ役目があるし、《禁時混成王》にも働いて貰う必要があるからね。世界を救う為には、《禁時混成王》は確実に手中に収めておきたい』

『また何か悪巧み?でも、それなら私は白を気に掛けたりとかした方が良いの?』

 

零無は青峰くんと一緒に住んでいる。確かに変化などを観測するには打って付けかもしれない。

Nofaceもなるべく変化があれば教えて欲しいと零無にそう返し、ついでにと僕へ話掛けてくる。

 

『蒼神くんにも頼んでおきたい事があってね』

『ほいほい何でしょ』

『出来るだけで良いから、緑磨くんの強化を御願いしたいんだ。なぁに、クローバーの中でも弱いらしい君の為に、僕の用意したデッキを貸すからさ、頼んだよ!』

『オイオイオイオイオイ』

『やったね、悠。これで私ともデュエマ出来るんじゃない?』

 

有無を言わさぬ高速画像投下。デッキリストが送られてきたようだが、明らかにマズいものが見えている。お前これ僕に使えと?殴って良いか?

 

「いや・・・・・・《聖魔連結王》に《勝災電融王》じゃん・・・・・・」

 

そう、Nofaceから送られてきたデッキは、名前を付けるなら5cディスペクターと言った内容で、そのリストの中にはこの前の作戦でNofaceが回収した《聖魔連結王》と、完全に奪ってきたと言わんばかりの《勝災電融王》が写っていた。

曰わく、《聖魔連結王》は中に入っていた天聖王こと《聖霊王 アルファディオス》と、《悪魔神 ドルバロム》の魂は抜き取られ、今入っているのは《聖魔連結王》としての全く新しい魂だとか何とか。僕は良く分からないが、この王を使う資格云々に関しては問題無いだろうとの事だ。《勝災電融王》も同じく、何なら君との相性は比較的良いかもしれないとまで言われた。何で?

 

『こんなもん使ってたら僕が疑われるどころか即討伐対象になるんだけど?』

『安心したまえ。僕と同じ変装道具あげるから、君はそれで上手く僕の真似でもしてて欲しい。僕はその間に、《禁時混成王》への戦いに備えて、ちょっとディスペクターのパーツでも揃えることにするよ』

『悠がNofaceの真似かぁ~。悠がデュエマするとこ、私見た事無いし期待しちゃお』

 

いや何?僕もしかしてこれから──

 

『君には暫く、そういった事をするとき僕として活動してくれると助かるかなぁ。あまり僕が裏でコソコソしてるとも気付かれたくないし、囮としてね?』

『ふーざーけーんーなー』

『流石に可哀相に見えてきた、悠大丈夫?』

 

僕のデュエマ見れるじゃん、とか言っていた零無すらも同情するふざけんな案件に、画面を見ていた僕は深い苛立ちを含めて溜め息を吐く。コイツあれだ、人の心とか無いんか?無いんやろなぁ・・・・・・。

 

だが、此処でただ仕方ない仕方ないと頷く訳にもいかない。最終目標である世界の終わりを回避する為には、僕の器が必要な筈。僕の重要性が高いなら、僕の意見はそうそう無視出来ない筈だ。

 

僕はそう思い、早速指を動かし文字を打ち込む。

 

『却下。流石に危険過ぎる。勝ち負け以前に、僕が紅蓮とかと遭遇したら終わりだぞ。アイツ、デュエマするだけで誰か分かるっぽいし』

『あぁ、そこは大丈夫。零無と行動して周辺を警戒して貰えば良いからねぇ。なぁに、あの《零龍》の力を持つ零無ちゃんが味方なら、紅蓮くんも怖くないとも。僕のディスペクターも渡してあるしね』

『うん、確かにこの前貰ったよ。どれも強い力で嬉しかったよ~』

 

何かしれっと零無が強化されてんな・・・・・・。後が怖いが、今はそれどころじゃないか。

 

『悠、大丈夫だよ、今の私は紅蓮にも負けないから』

『うわぁ、絶対邪悪な顔してんな今』

『まぁそういうことだから、宜しくね。これが上手く行かないと、どっちにせよ世界が滅んで君も帰れないかもしれないし』

 

「うぐ、そう言われるとな・・・・・・」

 

嫌だが・・・・・・凄い嫌だが・・・・・・仕方がない。確かにこの目で一度零無が紅蓮に勝利しているところは見ているし、このリストなら、僕は恐らくまだ緑磨くんに負けない。例え仮にあの《アルカディアス・モモキング》が相手になろうが、恐らくはこのデッキなら悪くない戦いが出来そうだ。いや本当に戦いたい訳じゃ無いんだが。

 

『それじゃあそういうことで。また何かあれば連絡するから、宜しく頼んだぞぉ』

 

Nofaceはそう言って、以降既読もしなかった。実際に対面した時ぶん殴る程度じゃ済まないから覚悟してろよ、と、僕はこれからの事を考え、深い深い溜め息を吐いた。

 

「・・・・・・もうこの世界、未来から蒼井○太とかでも来て全部どうにかしてくんねぇかな」

 

起きる筈、無し。




勝災電融王「漸く出番すか!?」
ローゼン「私のカードが私より先に出てきそうなの、何?」
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