この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話   作:change

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忙しくなるなぁ、と言いながら更新する。いつも言ってんな?


第26話 「試されすぎた大地」

「さて・・・・・・デュエルは終わったけど・・・・・・」

 

しまったな、やり過ぎた。

緑磨くんとのデュエルは、最初に出会った頃よりはヒヤッとするものがあって成長を感じる部分があった。だからだろうか、少しだけ、そう、ほんの少しだけ、負けるのは嫌だな、と相手の戦意を根こそぎ奪うような真似をしてしまった。まぁ、油断出来なかったのもあるが、それにしてもやはり、成長させる為のデュエルにしては、やり過ぎてしまった感がある。

緑磨くんも泣きそうな顔をしながら、どうして・・・・・・と、俯いた状態で自分のカードを見ている。

 

──うわぁ、すっごい居たたまれない・・・・・・でもフォローせず帰ったら、寧ろ不調起こし続けそうだよなぁ・・・・・・。

 

「Nofaceさんは・・・・・・何でNofaceさんは、そんなに強いんですか!?」

 

僕がそんな事を思っていると、緑磨くんは僕が声を掛けるより先にそう聞いて来た。

何で強いか、か。真剣な思いで聞いてそうな緑磨くんには悪いが、僕はNoface本人ではない。故に、その質問への回答は、蒼神 悠としての僕が答えることしか出来ない。

 

まぁ、そんな顔で聞かれると断りづらいというか、黙っているのが申し訳ないというか・・・・・・中学生くらいの子を泣かせそうにしたという罪悪感に耐えられない為、少しだけ話をすることにした。

 

「そうだなぁ・・・・・・強いって言われるのは素直に嬉しいけど、君がまだ、デッキに振り回されてるとか、馴染めてないからとかじゃないかなぁ?」

「っ、それは・・・・・・」

 

まぁ、此処で嘘を吐いたりは流石にしない。飽くまでこれの目的は君の成長だ。別に褒めたりしない訳ではないけど、今は成長する為にどうしたら良いかの方向性を示してやることが先決だろうからな。

手助けしてあげろ、ただし手伝い過ぎるなとも、Nofaceから言われている。まぁそれが良いとは僕も思う。珍しくNofaceと純粋に意見が合ったかもしれない。

 

「まぁそう凹まないで?最後まで聞いて、な?」

「・・・・・・はい」

「よぉし、良い子だ。うん、偉いぞぉ」

 

この見た目で子供褒めてるの、凄い胡散臭いな・・・・・・まぁそれは良いや。

僕は緑磨くんに、今だけ純粋な一人の、蒼神 悠が持つDMPとしての意見を口にする。スイッチの切り替えというものを脳内で行い、軽く息を吸って、吐く。

 

「・・・・・・まず、自分のデッキでしたい事の軸を定めることかな。その後は、倒したい相手が居るなら、その相手のデッキを自分で回してみることだ。真の意味で手っ取り早く強くなれるような方法は無いけど、少なくとも、すぐに効果が出て来やすいのは、特にこの2つかな」

 

逆に、僕から見たらそれ以外に関しては指摘する程のものでもない。緑磨くんもプレイヤーとして良く成長していると思うし、そもそもこんな事言わなくとも、彼はその内自分でそこらも上手くやりくりしていたかもしれないとさえ思う。恐らく、僕なんかより才能がある人間だろう。その内僕もプレイヤーとして彼に敗北する可能性がある・・・・・・とは思っている。飽くまで予想に過ぎないが。

 

「自分のデッキでしたい事の軸・・・・・・それならあります!《モモキングRX》と戦いたいって、それじゃ駄目なんですか!?」

「その思いは良いものだと思うよ?僕が言ってるのは、動きを絞れってことだね。《モモギンガ》と《アルカディアス・モモキング》、君は今回、その2枚をエースにしていたんじゃないかな?」

 

まぁ、これに関しては僕が一緒に組んだ時から知っていることだ。間違い無い。

緑磨くんはコクリと頷く。付け加えるなら、《グランドライン》と《モモギンガ》のコンボもある、と、彼は言った。僕が教えたコンボだが、まぁ実際使ってみて、そのもどかしさを感じてくれたなら良いんだが・・・・・・。

 

「《モモギンガ》も《アルカディアス・モモキング》も、どちらも良いカードだとは思うけれど、コンボを組むなら、あまり考え無しにカードを入れたりしない方が良いかもね」

「と、言うと?」

「《モモギンガ》と《グランドライン》のコンボを意識して、それに特化したデッキにするか。それとも、《アルカディアス・モモキング》を軸に、相手にプレッシャーを与えながら押していくデッキにするか、とかかな。まぁ、ビルダーとしての腕に自信があるなら両刀みたいに、何かしらのシナジーを見つけてデッキにするのも良いけど、あまりデッキビルドに自信が無いのであれば、あれもこれもと欲張らない方が良い」

 

というか、そうしてくれ。《モモギンガ》を入れると言ったから組んだが、正直アレをレクスターズ意識しながらジョーカーズ増やして水文明投入に光を含む《アルカディス・モモキング》に・・・・・・と、結構大変だったのだから。

 

「僕のデッキで例えるなら・・・・・・そうだな、このデッキは主に、《勝災電融王》の効果を使って大型ディスペクターを展開し戦っていくというコンセプトだ。その《勝災電融王》を早く出せるように、マナと手札と墓地を増やせる《デドダム》や、マナを一気に増やせる《獅子王の遺跡》、マナや墓地に落ちたクリーチャーを出せる《蒼龍の大地》と《灰燼と天門の儀式》・・・・・・と、まぁこんな感じで、1枚1枚にしっかりとした目的を持たせてサポートカードを入れている。フィニッシュやカウンターの為に、《聖魔連結王》とかも入ってるね」

「1枚1枚に、しっかりとした目的を・・・・・・」

 

まぁこれ僕の組んだデッキではないし、何ならカードも全部Nofaceが用意したものだけど・・・・・・それでも、僕が見た限りではそういう意図を感じるリストだった。Nofaceは人間性を捧げすぎたか疑うレベルのカスだが、このデッキのことは嫌いじゃ無い。寧ろこういうビマナのような構成は僕の好みに近い。

 

「不安にならなくても、君ならそう遠くない内に理解出来るようになると思うよ?僕から見て、君はなかなか上等な才能を持っている」

「そ、そうですか・・・・・・?っ、で、でも僕は、貴方の使うディスペクターに負けてしまって・・・・・・」

「そりゃそうだ。今の君になんか負けるか。意地でも勝つ」

 

何というかこう、成長途中感ある彼に負けるのはちょっと格好が付かないというか、年上としての見栄を見せたい思いが強い。今回もそんな感じではあったが・・・・・・普通に大人げないと思われそうだ。年齢関係なしに全力で挑むのが礼儀だとは思っているが、囲碁の世界に指導碁というものがあるように、常にただお互いに勝つことのみを意識して戦ってばかりでは、成長にも限界が来る。多くを学ぶ為の戦いというものも同じくらい大事な筈だ。

 

僕の意地でも勝つ発言に、緑磨くんは少し意外そうな表情をした後、少し気を緩めるような顔でふふっと笑った。今の何か可笑しかったかな・・・・・・。

 

「あぁ、すみません。不気味で良く分からない人だと思ってたんですけど・・・・・・今の言葉は、意外と子供らしい理由だったなって」

「へ、へぇ?喧嘩売られた?僕」

 

子供に子供らしいとか言われた。クソガキがよぉ・・・・・・。

とはまぁ冗談で、場が和んだのなら良かった。緑磨くんも少し良い顔になったし、こうして良い関係というか、悪くない人だと思われるのは、僕の精神的にも良い。

 

「あはは、すみません、つい・・・・・・。アドバイスありがとうござました。あとその、ディスペクターはあまり使わない方が良いと思います」

「あー、まぁ、うん」

 

正直その話はどう返したら良いか分からないんだよな・・・・・・本人じゃないから。

 

「でも、不思議でした。本来、AFカードから作られたディスペクターの声も僕は聞こえるんですけど、Nofaceさんの使う王のカード・・・・・・《聖魔連結王》と《勝災電融王》からは、何も聞こえてこなかったんです」

「・・・・・・」

 

聞こえなかった・・・・・・?あの、クソ五月蠅い破壊マンの声が?

 

「《セブ・シュテロン Λ》は苦しそうな声が聞こえてきたんですけど、どうしてもその2体からは聞こえなくて・・・・・・その、何をしたのか聞いても?」

「・・・・・・企業秘密さ」

 

分からん。僕も今知った。えぇ・・・・・・何それぇ・・・・・・。

 

「・・・・・・っと、そうだ」

 

僕は緑磨くんとの会話を一旦止め、背中でスマホを隠しながら零無に連絡を取る。まずはメッセージをチャットで飛ばし、緑磨くんから離れたところで、今度は電話を掛けよう。

 

「っし、送信完了。既読・・・・・・は付かないか。ということはお取り込み中かね」

「何してるんです?」

「あぁいや、別に。・・・・・・さて、それじゃあ僕は此処らで御退場と行こうかな。また今度、普通のデュエマでもしよう」

 

緑磨くんに引き留められる前に、颯爽とその場を離れる。正直、最近は任務の影響で体力が付いてきた気がする。この世界に来る前の怠惰な生活を送っていた肉体と比べれば、かなり健康的で筋肉が付いた。その御陰か、凄い早く走れる。走れるが、顔に当たる風が冷たい。おのれ冬め。

 

「緑磨くんが見えなくなって来たし、此処らで電話──って」

 

河川敷から少し離れていき、遠くに大きなショッピングモールが見えてきたところで、僕は足を止め、言葉を失った。そして、唖然としていたところで電話が掛かってくる。相手は──クローバー、小蛇だ。

急いで変調器を取り外し、電話に出る。

 

「もしも──」

『蒼神殿!緊急事態でござるっ。ショッピングモールで今、紅蓮とサバイバル殿が青峰 零無とデュエマをしていたところなのでござるが・・・・・・』

「マジか」

 

早速、零無は紅蓮かサバイバルとデュエマをしていたらしい。運が無いな、と思いながらも、小蛇の話の続きに耳を傾ける。正直、今は僕の視線の先にあるあのショッピングモールでの異変についての情報が欲しかった。

 

『途中でデュエルが中断。その理由が・・・・・・』

「理由が?」

『っ、驚かないで欲しいでござるが・・・・・・古代の遺物と言われている、災害級兵器がディスペクターとして暴れ始めたでござる』

 

 

 

あ?????

 

 

 

「何で急にそんなもんが・・・・・・」

『それが分かってたらこんな焦ったりしないでござる・・・・・・。で!そのディスペクター、デュエ粒子とマナを別次元から持って来て実体化してるとか何とか・・・・・・パラレルの技術力みたいなの無しに、多分古代の遺物に宿るエネルギーで暴れてるんでござる!』

 

デュエ粒子・・・・・・あぁ、何か良く分からないけど、確かアプリゲームのPLAY'Sで出て来た架空のエネルギー的なのだったか・・・・・・?まぁ何かヤバいことをするのに利用出来てしまう、クリーチャーとデュエマ絡みのものだった筈だが、こっちにもそれあるのか。マナは土地のエネルギー的なものだろう。直感だが。

 

「状況は分かったけど・・・・・・あ、あれもしかして《チャクラ》か?・・・・・・あぁ!そういうことか!」

『うわぁ!?急に大声出さないで欲しいでござるぅ!』

 

大体分かった。成る程、古代の遺物とやらの正体も見えてきた。となると、残りのディスペクターもあのサイキックサイクルとの合体だろう。正直カードとしてのスペックはそこまで脅威でもない奴らだが、普通にデュエマ関係なく暴れるのは勘弁して欲しい。

 

僕はひとまず小蛇との電話を切り、急いで零無に繋ぐ。向こうは今どんな感じなのか、正直言って不安しかない。いつかは倒さなければならない零無だが、今は協力関係にある仲間だ。心配にもなる。

 

「出ろ・・・・・・早く出ろぉ・・・・・・」

 

祈るように、急かすように独り言を苛立ち混ざりに口にする。正直安否の確認が出来ればそれでも十分だが、答え合わせもしておきたい。もし予想が当たっているなら、今後何が起きてくるかを予測することが出来るかもしれない。

 

──正直、僕の予想通りならこの世界、下手したら《ドルマゲドン》とか《零龍》とかより前に、滅びるんじゃないか?

 

『っ、あー、悠?今ちょっと手に負えないというか──』

「分かってる。小蛇から連絡あった。そっちに見えるディスペクター、5体か?」

 

どこか確信を持ったように聞く。強い風の音にクリーチャーの声でノイズが凄いが、辛うじて零無の声は聞こえる。

僕の質問に不思議そうな声音で零無はそうだよと返答する。やっぱりかぁ・・・・・・。

 

「となると、うーん、でも5体っていってもデュエマ関係無く暴れてるんだろ?どうすれば・・・・・・」

『今、紅蓮が持って来てた刀で実体化してるそのディスペクター達と単身やり合ってるところ。サバイバルは周辺の人達を非難させてて、私も《無龍》実体化させたりして応戦してるけど・・・・・・ちょっと厳しいかも。災害そのものに抗おうとしてるような感じ。折角此処から蹂躙開始だって時に、急に出て来てデュエル空間ぶち壊して来たり、凄いやんちゃみたい』

 

零無からデュエルを中断させられた事への怒りと、急に出て来た5体のディスペクターへの困惑を感じる。まぁ要するに押されてるということだろう。個人的には紅蓮が化け物みたいな事してるのがヤバいと思うが。何アイツ?マサル○イモンの親戚か何かか?

 

「了解。そっちは応戦することに集中してて。僕はその間にNofaceにどうにか出来ないか聞いてみる。アイツなら何か知ってるかもしれないしな」

『分かった。それじゃあ悠、良い報告期待してるね?』

 

通話が切れる。まぁこれ放置は流石にマズいから、僕も出来ることをしなければ。Nofaceに連絡を飛ばすと、すぐにアイツの声がした。出るのが早くて助かる。

 

『お、何かな蒼神く──』

「古代の遺物と混ざったディスペクターが急に5体も出て来たらしい。対策なんかあるか?」

『ふむ・・・・・・あぁ、成る程ね。それなら《零獄接続王》の力が役立つだろうね』

 

《零獄接続王》の?全然ピンと来ないが、どういうことだろうか?

 

『アレの素材は、煉獄王こと《邪眼皇 ロマノフⅠ世》と、ゼニスの祖である《「無情」の極 シャングリラ》だ。その2体の力を使えば、5体のディスペクター同士を争わせ、消滅させることが出来る筈さ。あぁ、ゼニス化とかさせないよう気を付けてね』

 

それって街1つくらい吹き飛ばされない?と不安に思うが、Nofaceは、そこまでの被害を出す気は恐らく無いと、まるで誰が仕向けたものか知っているかのように断言する。コイツまた何か知ってて言ってないな・・・・・・。

 

『もし本当に危険そうだったら、僕も出よう。だから安心して《零獄接続王》の力を振るうと良い』

「あー、何かマナとかデュエ粒子とか、そういうのは大丈夫なんだな?」

『零無ちゃんはホラ、《零龍》の因子があるからね。そこら辺のエネルギー問題は寧ろ他より余裕がある方さ。何より、彼女と《零獄接続王》は相性が良いからね、燃費も良いし、問題無い』

 

良く分からんが、良く分かった。問題無いならこれ以上通話してても仕方がない。色々と引っかかることはあるが、すぐに零無に電話をかけ直す。

 

「零無、《零獄接続王》だ。Noface曰く、《零獄接続王》の力で、あのディスペクター共を仲違いさせれば良いらしい。ゼニス化させんなよ、とも言ってたが」

『うーん、《無龍》よりは疲れるからやりたく無いんだけど・・・・・・まぁケチケチしてても仕方無い、か。了解、・・・・・・何かあったら、助けてね?悠』

 

急に心臓に悪い声で囁くな。

兎も角、これでどうにかなる筈だ。曇ってきた空と、空中で暴れ回る5体のディスペクター。雷やら炎やら、まるで天変地異といったところだが、本当に、僕は今日緑磨くんとデュエマしに来て良かったと思った。

 

「巻き込まれずにこうして連絡取ったりするだけで良いの、楽だな・・・・・・見てるだけってのも心臓に悪いけど」

 

僕がそう呟くと、零無のものと思われる《零獄接続王》が実体化する。こうしてデュエマ以外で実体化した王のクリーチャーを見るのは2度目か。

 

「・・・・・・うわっ、すっげ」

 

《零獄接続王》に撃たれた5体のディスペクターは、急に標的を他の災害と混ざったディスペクターへと向ける。すぐに仕事は終わったという風に《零獄接続王》は消えていったが、5体のディスペクターは未だに争っている。しかし、徐々に霞んで来ているのはエネルギーの消耗、ガス欠のようなものだろうか。

 

──・・・・・・成る程、こうやって背景と重ねてくるのか。となると、後11個か?いや、もしかしたらもう何個か起きていたりするかもな・・・・・・。

 

僕は遠くから5体のディスペクターが完全に消滅するまでその場を動かず、消滅と共に晴れ始めた空に浮かぶ黒い歪みのようなものを見ながら、これからの事を考えていた。




実体化したディスペクターと刀1本でやり合う男、紅蓮。
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