この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話 作:change
※微修正しました。
「さぁ、デュエル開始だ───」
僕は確かにそう言った。そして、この《禁時混成王》の力で、目の前の男を・・・・・・まぁ、ちょっと危険そうだから、少し痛めつけて尋問しようかと考えていた。消す、というのも嘘だ。そのような命令は受けていない以上、そういった行き過ぎた真似をするのは、あまり良くないだろうと考えたからだ。
だが・・・・・・いや、どういうことだ?
「・・・・・・あれ?」
「おい、お前、何をした?」
デュエマをする為に他の妨害が入らないようにフィールドを展開しようとしたのだが、それがいつまで立っても発動しない。不思議に思い、目の前の男を睨むも、特に怪しい素振りもしていなければ、何か手を打ったという風にも見えない。パラレル幹部各員に渡されているフィールド展開の為のカードを念の為確認すると、カードそのものに異変を確認することが出来た。
「なっ・・・・・・カードから色が脱けて・・・・・・」
この現象には、見覚えがあった。寧ろ、パラレルで活動していれば、必ずどこかで見ることになるだろう現象だ。
パラレルはディスペクターを作成する為に、素材となるAFカードから全てを抜き出す。その際に抜き出されたカードからは、色や効果テキストなどが失われ、白と黒のモノクロカラーとなっていくことになる。
そして、現在フィールド展開の為のカードに起きている現象は正にそれだ。勿論、僕は可笑しな事はしていない。考えられるとすれば、僕以外の外部からの干渉。
「・・・・・・この場所だからか?」
思わず地下への入り口を見る。あの人曰く、地下には禁じられた存在とその施設が眠っているらしいが、考えてみればそんな場所を守っている組織が、何も対策を施していないとも考えにくい。
──しまったな・・・・・・軽率過ぎた。カードの力も使えなさそうな、対策してないこの状態で、地下に挑むのは危険そうだが・・・・・・。
今更自分の愚かさに後悔しても遅いが、思わず自分への評価を気にしてしまう。しかし、此処で成果を上げなければ更に評価は下がってしまうだろう。
──そうだ、僕は此処で成果を上げ、いつか姉を・・・・・・姉さんを元に戻して貰わなければならない。あの人の力なら、いつからか様子が可笑しくなって力に固執し始めた姉さんを、元に戻すことが出来る筈なんだ。だから・・・・・・認められなければ。
「・・・・・・一つ、お伝えしたいことがある・・・・・・んだけど」
「何だ」
目の前の男が急に怯えながらも此方に声を掛けてくる。何だ?僕を言いくるめでもするつもりか?
「・・・・・・」
無言で暫く言うのを躊躇う素振りを見せる男に、何をする気なのか分からない事への不安を感じる。今まで内心少し見下していたが、この男は聖魔連結王の存在について詳しく知っており、この組織の一員でもある。何かしら防衛を任されるだけのものがこの男にはあるのだろう。
「・・・・・・下手な事をすれば、消す」
「・・・・・・ぼ、僕は、秘匿されているパラレルの懐刀なんだ」
・・・・・・は?
「・・・・・・は?」
青峰君は僕の発言にフリーズした。そうだ、そのまま凍ってろ。
さて、僕は正直もう限界である。パニックに陥っていて頭がまるで回らない。だがしかし、このままでは彼に何らかの方法で消されてしまう可能性が高い。そこで考えた。
それならもう、大嘘吐いて彼を全力で惑わすしかないのでは?と。
「・・・・・・僕はパラレルのあの御方の懐刀でね、パラレルの中に出て来た裏切り者を処分するのが仕事なんだ。地下へ入るのはオススメしないよ、入った瞬間、此処のボスの許可が無いと出られない」
「な、何を言ってる・・・・・・!そんな筈──」
「無いと言い切れるか?」
全力で悪い顔をする。青峰君は想定外のことに冷静な判断力を失っているのか、良い反応を見せている。自分の演技力に少し自信が付きそうだが、もうこんな命を掛けた演技はしたくない。
「・・・・・・」
「だが君はそうだな、そう言っても信じないかもしれない。だからディスペクターの全ての王について言ってみせよう」
「全て・・・・・・だと・・・・・・!?」
「あぁ、聖魔連結王、禁時混成王、勝災電融王、零獄接続王、邪帝縫合王・・・・・・そして、禁じられし竜の王」
「禁じられし・・・・・・竜の王・・・・・・?」
禁断竜王の事を知らなそうな為、此処でわざとらしくあっ、やっべ、という風に口が滑った風を装う。段々と道化らしさも付いてきたような気がするが、今はそんなことを気にしている余裕は無い。此処さえ、此処さえ切り抜けられれば、生きてさえいれば後でどうにか出来るのだ。
「おっと、このことは秘密だったっけ・・・・・・。まぁ、僕が王の名前を知ってるのはこういう事。隠された王だなんて、パラレルの構成員である君ですら知らないようなこと、所属しても無い奴が知ってると思う?」
「・・・・・・確かに、それなら王の事を知っていたのも納得が行く・・・・・・っ、だが、何故そのような役割の者が此処に?此処の襲撃を指示したのもあの人だ。これでは、君の事を知らない僕達が襲ってしまうことも──」
「君は試されたんじゃないかな?どれだけ自分の考えを汲み取れるのかを、さ」
適当な事をさも知っていますよ風に言うだけで、青峰君は真実を目の当たりにしたかのように、目を見開いてハッとしている。あれは・・・・・・そんなまさか・・・・・・いや、だが・・・・・・思い返してみれば・・・・・・とか考えている顔だ。口元に手を当て、口元をパクパクと何か言いそうにしている様子を見るに、相当思い当たる節があったのかもしれない。
「・・・・・・さて、君には選択肢が2つある。1つは、僕と殺し合いをするか。これはまぁ、オススメしないかな?僕も殺されたくないからね。君を殺してしまうかもしれない」
「っ・・・・・・!」
「2つ目は・・・・・・此処で退くこと。確かに地下の事は分からなかったけど、僕の存在を君は知り、その上で撤退を選んだこと、サバイバルのデッキについて、データも取れたのだから収穫は0ではない。あの人も、自分の考えを汲みながらデータまで取ってきたとなれば、かなり評価してくれるだろうさ」
正直此処はとても不安だ。彼が少し冷静にでもなれば、すぐに、言うはずが無いだろうそんなことを!!僕の上司が!!と僕を殺しに来るかもしれないのだから。だから勢いだ、全ては勢いにある。
「さて、どうする?時間は有限だ。僕としては、サバイバルのデュエルが終わる前に決断して欲しいところだね。戻って来られたらこの状況、お互い面倒だろう?」
「・・・・・・良いだろう、今回はお前の言う通り退いてやる」
そう言うと青峰君は僕の事を消すのを止めたのか、そのまま外へと出て行こうとする。
「・・・・・・だが、もしお前の言ったことが嘘であると分かった場合は、僕が全力で君を消そう」
「オー、コワイコワイ・・・・・・」
立ち去る途中に睨み付けてくる青峰君に正直死ぬほど恐怖したが、何とか彼はこのラボから出て行ってくれた。
僕はそれを見届けてすぐ、抑えていた足の震えでバランスを崩して床に尻餅をつく。
──た・・・・・・助かったぁぁぁぁ!!!!体の震え止まらなくて立てないけど!咄嗟に何言ってたか正直もうほぼ忘れかけてるけど!!どうにか、どうにかなったぁぁぁぁ!!!ガバッガバの嘘だらけだったろうけど、勢いだ!!大事なのは勢いだった!!!あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛い゛き゛て゛る゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!
僕は年なんか関係無く情けなく泣きまくる。安心したら疲れてきたな・・・・・・はぁ・・・・・・眠くなってきた・・・・・・。
「・・・・・・ん、やべぇ・・・・・寝る・・・・・・」
この後すぐ、床の上で爆睡をかました僕は、この後戻って来た仲間に叩き起こされることとなる。
「《カツムゲン》・・・・・・ちっ、何だそのクリーチャーは・・・・・・っ」
「知らないのか?勉強不足だな。それでお前はどうする?ターンエンドか?」
「・・・・・・ちっ、ターンプレイヤーの効果処理が先だ。お前の《カツムゲン》着地宣言より前に、俺の《ヴァルハルザーク》で新たに1枚をシールド化し、パワー+6000する・・・・・・ターンエンド」
此処で殴っても、打点が足りずに更にカウンターで負ける可能性が高い。そう踏んだジャックは攻撃するのを躊躇し、ターンを渡す。サバイバルはそのまま自分のターンの宣言をし、勢いよくカードを引き抜く。
「俺のターン、ドロー!ノーチャージで手札から3マナで《電脳の女王 アリス》を召喚。効果でトップ3枚を見て1枚を手札、1枚を墓地に。そして1枚をトップに置く。更に2マナで《龍装鬼 オブザ08号》を2体召喚。効果により《ドルファディロム》と《ヴァルハルザーク》のパワーをそれぞれ-8000する!」
「っ、不味いっ」
《ヴァルハルザーク》のパワーは7500だ。《ドルファディロム》は何とか耐えきることが出来ても、パワー0になれば幾らディスペクターでも、EXライフを貫通してその身を崩壊させてしまう。
「くっ、《ヴァルハルザーク》のEXライフが強制発動し、パワー0で更に破壊。くそ、頼みのシールドが減った・・・・・・!」
「そうだな、シールドが減ったな?」
サバイバルがそう言ったと同時に、デカい剣を置いて《カツムゲン》がドルファディロムへと急接近する。
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!』
「な、何が!?」
「《カツムゲン》は対ゴッド、対ディスペクターのカードだ。《カツムゲン》はゴッドとの戦いでは∞のパワーを誇る他・・・・・・相手のシールドの増減に反応し、敵にこんな風に、拳を叩きつけることが出来る」
《カツムゲン》の鬼神の如きラッシュが、弱った《ドルファディロム》に反撃を許さずに襲い掛かる。
相手のシールドの増減に反応し、自身と相手を強制バトルさせる効果。これがEXライフを持つディスペクターへの対抗札と《カツムゲン》が言われた理由。パワーでさえ勝っていれば、《カツムゲン》により全てのディスペクターはバトルゾーンに出てすぐEXライフと共に殴り飛ばされることとなる。
『無駄ァァァァ!』
《カツムゲン》は最後にそう言って、その巨大な拳を《ドルファディロム》の胸へと叩きつける。そこから連結部が解けていき、大きな爆発音と共に《ドルファディロム》は破壊される。
「さぁ、覚悟は良いか?俺は出来てる」
「や、やめ──」
「《カツムゲン》でシールドをブレイク!」
たった今《ドルファディロム》を殴り倒した《カツムゲン》が、即座にジャックの前に移動し、今度は持っていた大剣をシールドへと振り下ろす。
「ぬぉぉぉぉ!?」
直後、自分に襲い掛かってくる風圧に吹き飛ばされそうになるが、ジャックは気合いで何とか耐え抜く。しかし、悲しいかな。そこで粘ったところで、チャンスは無い。
「S・トリガーは・・・・・・く、クソが!こんな時に2枚目の《ドルファディロム》だとぉ・・・・・・!」
「運に見放されたな。──終わりだ、《カツキング》でダイレクトアタック!」
サバイバルのその言葉を聞いた《カツキング》の拳が、ジャックの元へと落とされた。
目前の巫山戯た汚ぇ男を倒し、心底嫌だがカードの回収の為に近付こうとする。
「さて、コイツのカードを回収して、急いで戻らねぇと──」
「その必要は無い」
「っ・・・・・・ん?お前・・・・・・確か零無の弟の・・・・・・」
「・・・・・・コイツの持ってる王はまだ渡す訳には行かない。僕は姉さんを正気に戻すためにも、あの人の為に成果を上げるんだ」
青峰 白。随分と前に、俺もコイツがパラレルに所属しているのを知っていた。だが、こうして直接対面するのは初めてだった。昔に零無が仲間だった頃、写真やアイツ伝いにどんな奴かを見聞きしたぐらいだったが、成る程、コイツがパラレルに所属しているのは、そういう理由があった訳か・・・・・・。
「・・・・・・零無は元気か?」
「・・・・・・姉さんは、変わったよ。昔はもっと真面目というか、大人しくて、人の事を想う優しい人だった。でも、今は違う。力に固執して、人が苦しんだり困る様を見て、楽しそうにしてる・・・・・・多少の変化なら良い、でも、あれは流石に可笑しい。異常だ」
青峰の言うことは正しい。零無はビドゥンも言っていたが、《零龍》とかいうお騒がせなドラゴンの影響を受けたと言う。恐らくはその影響を与えた因子だとかいうのを何らかの方法で取り除くことが出来れば、元に戻るのかもしれない。
だが──
「それでクリーチャーを兵器運用するヤツらの味方して、クリーチャーの尊厳を破壊しまくることが許されると思ってんのか?」
「思ってない。後で幾らでも報復を受けたって構わないつもりだ。僕は、何としても、姉さんだけは幸せにしてみせる。友達の居なかった僕に優しくしてくれた、あの姉さんを、取り戻す」
俺は、青峰の今の言葉を聞いて、あぁ、コイツはやり方が間違っては居るが、その意思は、尊重できるかもしれない、と・・・・・・正直、素直にそう思った。コイツの願っているものは、誰しもにある家族を思うものだ。何も間違ってはいないし、その願いの為に、犠牲を覚悟しているのを知ってしまうと、どうにも哀れに見えて来てしまう。
「・・・・・・辛くはないのか?こんなことして。もっと他に、方法があるんじゃないのか?」
「もしかしたらあるかもしれない。でも、今はこれが、一番可能性があると踏んだ。ただそれだけだよ。・・・・・・僕は、このまま姉さんが元に戻らずにずっとそのままであることの方が、遙かに辛い」
青峰はそう言って、握りしめた手に力を入れていた。相当なものなのだろう、その辛さは。俺が軽率に同情すれば、今すぐにキレて襲い掛かってくるのだろうと、そう思えるくらいには、コイツからは今、暗い闇を感じる。
「・・・・・・分かった、お前のその願いに免じて、今回は見逃す。だが、次会った時はお前も倒して、その王のカードを貰うぞ」
「見逃す?馬鹿を言わないで欲しい。僕と貴方がやり合えば、勝つのは僕だ」
お互いが睨み合い、少ししてフッと笑う。
「・・・・・・僕達は既に、未来を掴んでいる。今も、そしてこれからも」
青峰はそう言って、ジャックを連れてその場から瞬間移動したかのように消えていった。未来を掴んでいる、か。そりゃあまぁ、恐ろしいことだ。
「・・・・・・この戦い、零無がどうなるかで、大きく変わるのかもしれないな」
蒼神「ディスペクターの王について知ってるし、隠された王についても知ってます!!!パラレル所属です!!!(大嘘吐き)」
青峰「コイツ、相当強いのかもしれない・・・・・・(純粋)」
黒幕「う、胡散臭ェ~~~~~!!!」