この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話 作:change
86を一気見するなら気をつけろよ皆、情緒が行ってきますするぞ。
どうも、最近何故か仲間からの目線に疑念が込められているのを感じる蒼神です。え?何で?と思ってそれとなく小蛇に聞いたところ、どうやって禁時混成王を持つ青峰君を僕が倒したのかでクローバー全員が疑問に思っていたのだとか。
まぁ、素直に口先で誤魔化したとだけ伝えた。これからは口先の魔術師と呼べ。そして崇めよ。
「で、何これ?」
「あ、蒼神さん・・・・・・ですか?始めまして、緑磨 赤矢です。紅蓮さんの弟子をやってます」
知ってる。知ってるけど何でラボに居るん?僕何も聞いてないんだが・・・・・・。
あの襲撃から3日が経ったが、またパラレルから襲撃なんかが来る気配もなく、比較的平和と呼べる日々だった。鍋パするくらい平和だった訳だが、まぁ・・・・・・アイツらに酒を出すと碌な事にならないということは良く分かった。あんな地獄はもう嫌だ。小蛇は「私の居たとこじゃ酒は水みてーなものでござるよぉ!」とか言ってがぶ飲みしまくって吐くし、紅蓮は水だと思って小蛇の注いだ酒を飲んで酔い、そのまま急に服のボタンが弾け飛んでムワァ・・・・・・って感じの効果音出てたし、サバイバルはアルコール除菌だとか言って酒をビドゥンの頭の上に思いっきり掛けていた。ビドゥン?サングラスで目は見えなかったけど、口元は笑顔だったよ。因みに後日3人は二日酔いを起こし、
まぁそんなこともありながら、今日は僕と小蛇がラボで待機の日だったんだが、何故か緑磨くんがラボに居た。小蛇が呼んだというのは無さそうだが、何しに来たのだろうか。
「蒼神 悠、宜しくね。因みに紅蓮は今日任務で外出してるけど、何か用?」
「実はその、この前またパラレルと戦って・・・・・・負けたんです」
「あぁ、強くなりたいんですーって?僕は弱いから無理だけど、小蛇なら相手にはなると思うよ。今自室に居るだろうし、呼んで来ようか?」
「いえ、大丈夫です。師匠は蒼神さんに強くなる秘訣を聞きに行けって言ってたので・・・・・・」
・・・・・・?
え?僕に?マジで?
「何か師匠は、前に俺が見た人に似た雰囲気のデュエマをしてるから、内に秘める強さは俺以上かもしれない、とか言ってましたよ」
「アイツが馬鹿なだけじゃない?」
今の話を聞いてもまるで納得行かないんだが・・・・・・とはいえ折角来てくれたのに、強くなりたいという話まで聞いてしまっては断り難い。
「まぁ、ほんと僕は弱いけど、変な期待とかしないでね?」
「は、はい!」
「そういや君、青峰くんに負けてたっけ・・・・・・んじゃ彼のあのカード、プロキシで回すか」
「プロキシ・・・・・・?」
「違うカードをそのカードのように使うこと。まぁ、持ってないけど効果は分かってるからな。それくらいのことなら出来るよ」
凄い・・・・・・持ってないのにすぐデッキを作って回せるなんて・・・・・・と緑磨くんは驚いているが、勿論僕の所持しているデッキがベースである。禁時混成王がメインであれば、少し手持ちのデッキのカードを弄れば完成する。
「まぁこんなもんか・・・・・・じゃあやろうか」
「はい!」
そうして、緑磨くんの使うモモキングRXデッキと、僕の禁時混成王のデッキで暫くデュエマをしていた。スリーブに入れた裏面のカードを禁時混成王として、僕はこの世界に来てから久々に触るディスペクターに、若干心が踊っていた。
「《禁時混成王 ドキンダンテXXII》を召喚。EXライフを発動しながら、出た時の効果で《ボルシャック・モモキングNEX》の効果を無効化するよ」
「そ、そんなぁ・・・・・・」
「ターンエンド、どう?訓練になってる?」
「っ、はい!正直、デッキタイプは違うけど、それでも青峰の《ドキンダンテ》との戦いは近そうなので、助かります!」
そうかねぇ・・・・・・と、僕は内心少し不安だった。
理由は2つあり、1つは背景ストーリー上では、聖魔連結王を倒し、聖霊王の力を継承した《アルカディアス・モモキング》が居たことが《ドキンダンテ》攻略の鍵であったということだ。効果的にも、《アルカディアス・モモキング》が居るか居ないかでは、大きな差が出るだろうと考えられる。果たしてこの世界でもそういった流れがあるのかどうか、そこが分からない以上、どうなるか不安ではある。
もう1つは青峰くんが負けるところを想像出来ないところ。何というか彼、任務なんかで見ている時も、緑磨くんのことをデュエマで勝てているのに、どこか聳え立つ壁のように思っている節があるように見えた。これは個人的な考えだが、挑戦者という立場の人間は油断や慢心が消え、スポーツで言うゾーンに僅かに近付く事がある。彼を倒すには、まだ緑磨くんには実力に大きな差がありすぎるだろう。
「そういえばさ、青峰くんと君って、何でそこまでライバル的というか、お互いを意識してるの?」
「・・・・・・僕と青峰は、元は仲間だったんです。一緒に零龍とか倒して、友達だと思ってた・・・・・・でも、急にパラレルなんかに入って・・・・・・だから今は、クリーチャーは兵器じゃないって気付いて欲しいなって思ってデュエマをしてます」
「・・・・・・ふぅん、まぁ君が頑張ってくれれば、僕らも活動しまくる必要無いだろうし、応援してるよ」
成る程な・・・・・・まぁ、知ったところで僕は関与しないが。
正直、青峰くんには金輪際会いたくないまである。当然だ、嘘を吐いていたとバレれば命が危ない。取り敢えず今後そういった非常事態に備えて、一つ考えがあったりなかったりもするのだが、危険ではあるのでそう試したくはない。
「・・・・・・ま、満足行くまでデュエマすると良いさ。どうせ早々襲撃なんて来ないだろうしな」
「はい!じゃあ、ターン貰って・・・・・・うーん、此処は何もせず、ターンエンド」
「じゃあドロー、マナチャージして、そのまま《ドキンダンテ》でT・ブレイクだ」
元気な声で返事をされると、自然とこっちも笑顔になるな。でも、容赦はしない。このまま勝ちを貰っていくか。
「S・トリガーは・・・・・・無い・・・・・・っ」
元気が良いな・・・・・・で、トリガーは無し、と。
「ターンエンド」
「僕のターン、ドロー・・・・・・!く・・・・・・《モモキングNEX》で攻撃!」
この後、《モモキングNEX》で攻撃してくるも、緑磨くんは《ドキンダンテ》を倒す事も、僕にトドメを刺すことも出来ずに敗北した。まぁ、やはりというか、正直、《ドキンダンテ》を倒すにしても順序というものがあるということなのだろう。
「なぁ緑磨くんよ、此処は一つ、違う王から落として強くなってから禁時混成王に挑んだらどうかな?」
「・・・・・・そうします・・・・・・」
「ただいま、姉さん」
「帰って来たんだ?お帰りー」
夕方頃、今日もパラレルの幹部として活動を終え帰宅。あの襲撃から3日が経過したが、本当に色々なことがあった。
僕はソファの上で薄着のまま寝転がる姉さんに対して、真っ先に今日あの人から言われたことを問い質す。
「姉さん、街でカード狩りをしてるっていうのは本当?」
「あ、バレちゃったんだ。・・・・・・んー、まぁね。でも私が負けたらイイコトしてあげるって言って了承してきたんだから、合意の元だよ。私の力、前より弱くなっちゃったし、そうして補強していかないと、ね?」
姉さんは此方をチラッと見て怪しく微笑み、そう言ってソファの横の机に置かれている縦に重ねられた2つのデッキに片手を伸ばし、掴み取る。
「レクスターズもディスペクターも、“それ以外”も・・・・・・全部私の力にする。そしていつか世界を──」
「そうはさせない」
僕はハッキリとそう言った。姉さんの思い通りにさせる訳にはいかないと、そう姉さんの目の前で。
「ふぅーん、力を手に入れて自信でも付いたのかな?」
「それもある。でも、どんな手を使ってでも、僕は元の姉さんを取り戻してみせる」
「元の姉さん、ね・・・・・・」
何故か少し憂いを含めた表情で、姉さんはポツリとそう呟いた。
「・・・・・・んー、ねぇ白、何かそっちで面白い事無かったの?襲撃とかしたって話、この前聞いたけど」
「・・・・・・クローバーにはあの人の懐刀であるパラレルの人間が潜んでいる。確認も取れた」
思い出されるのは、あの人にあの男の事を聞こうとした時のこと。
『・・・・・・以上で報告は終了です。その、少し聞きたいのですが──』
『────』
『ありがとうございます。その、ある人物についてなのですが・・・・・・』
『────』
『な・・・・・・では、
あの人は確かに、あの集団の中に、自分の理解者であり協力者が居ると言っていた。あの男については何も言ってこなかったが・・・・・・知っている情報の量からしても、関係があるか本当にそうだという可能性は高いだろう。
「・・・・・・ふーん、何かつまんないね」
「姉さんは興味無いんだ、こういうの」
「別に?ただ・・・・・・あそこは私がいつか支配したいって思ってたから、先に手を出されてるって思うと、ちょっとやだなーってだけ」
《零龍》は世界を0にするという意思を持った、言わば終末をもたらす宇宙より飛来した存在だった。
あの頃は僕も、緑摩 赤矢と共に、戦っていた。だが、僕は《零龍》に負けて一度死亡し、奴は勝った。
《零龍》を倒すこと、がそもそも難しかった。プレイヤーを倒しても、《零龍》を倒さなければ、《零龍》は滅びず、また別の人物を主とするだけだった。しかし、アイツはそれを、《零龍》に
そして、その《零龍》は滅んだ。しかし、詰めが甘く、《零龍》は自らの因子をあろうことか地球の一人の女性に送り込んだ。その送り込まれた女性が姉さん、青峰 零無だ。
因子を浴びた姉さんの意思は、《零龍》の世界を0にするという意思を引き継いでいるとあの人も言っていた。姉さん本人の口からもそういった言葉が偶に出てくる以上、これは紛れもない真実なのだろう。
そんな姉さんが、支配したいと思っていた場所・・・・・・正直、少し驚いた。今の姉さんであれば、滅ぼしたいなどたやすく言ってしまうだろうと思っていた、が・・・・・・支配する、と確かにそう言った。
「0にするのではなく、支配?」
「そ・・・・・・あそこは、少し特別だから・・・・・・私の力が取り戻された暁には、あそこに顔を出して、皆を分からせてあげよってね」
「・・・・・・分からせが趣味なの?」
「違うから!?そういう意味じゃないから!?」
冗談だが、やはりあそこは姉さんにとって、大事な場所・・・・・・なのだろうか。少し雰囲気がどこか・・・・・・昔の姉さんに近いものを感じたような気がする。
──まぁ、僕の気のせいかもしれないがな。