この世界で所持デッキを必死に誤魔化して生き抜くお話 作:change
「何ともならねぇぇぇぇぇぇ!」
「ウォォォォォ!?何だこりゃぁぁぁぁ!?」
拝啓、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は今、パラレルの構成員と一緒に全力で走っています。
「おいお前どうにかしろよディスペクターとか何か実体化させろこの野郎ォォォ!?」
「出来たらしてるわ馬鹿!何か急に実体化しなくなったんだよ!」
後ろからは無数のナイフ。道は直線1つしか無い。
「な、何かあそこ穴あるぞ!穴!」
「入れぇ!急いで入るんだよぉ!」
何故このような事になってしまったのか・・・・・・元はと言えば、すべてビドゥンの出して来た任務が原因だったのだろう。
「ということで、今回は蒼神くんに、古代遺跡の調査と、そこに眠るAFカードの回収を御願いしようと思いまして」
「へー、古代遺跡ね・・・・・・連れは?」
「今回は紅蓮くんと一緒ですよ、良かったですね?」
「は???何も良くないが???」
ラボでビドゥンにそう命じられた僕は、仕方無く紅蓮と共に古代遺跡を訪れた。
古代遺跡は街の外れにある深い森の中にあり、人間の管理が行き届いていない事が分かるくらいに、石に苔などがビッシリと付いていた。
「んで紅蓮、お前はなーんで半袖短パンピッケル装備なんだよ、カセキホ○ダーか何かか?」
「遺跡探索・・・・・・そう聞いたら胸が躍るだろう?」
「男の子の心解放しやがって・・・・・・」
ドヤ顔で言ってくる紅蓮にどこかイラっと来ながらも、完全に目の前に居るのが身長だけ伸びた小学生男児と判断して僕は遺跡へと入っていく。うえ、蜘蛛の巣・・・・・・顔にくっついた。
「うえぇ、ペッペッ」
「口に入ったのか?」
「いや、多分大丈夫だと思──」
紅蓮に返事をしようとしたところで、カチッ、という音がした。遺跡、不自然な音、この瞬間、僕の中で2つの点と点が線で繋がる。
「・・・・・・紅蓮」
「なんだ」
「わりぃ、死んだかも」
僕がそう言った瞬間、遺跡の床が崩落する。咄嗟に紅蓮が僕の手を掴もうとするが時既にお寿司。物理の法則に従い、僕の体は底知れない闇の中へと落ちて行く。
「っ、蒼神!」
「んでお前落ちてねぇんだよぉ!そこは仲良く落ちるもんダルォォォ!?」
「いや、すまん、何か咄嗟に下がったら落ちずに間に合った」
「こんの裏切りもんがァァァァァ!!!」
僕はこうして謎の遺跡の地下へと落ちて行き、焦りながらも頭は冷静にこのままだと自分がどうなるかを想像させてくる。全身で訪れるであろう激痛と死を覚悟しきれず、僕は大声で泣き叫びながらひたすらに落ちて行った。
「くそぉ!何なんだよもぉ!!僕が何したっていうんだよぉ!せめて死ぬなら綺麗な女の人とかに看取られたかったなぁぁぁ!!!チクショォォォォォ!!!」
「あぁ!?なんだぁ!?」
落ちていると、下から声が聞こえてきた。誰かと思い下を見ようとするが、思うように体が動かない。上を向きながら落下していき、徐々にその声の持ち主との距離が近付いていく。
5・・・・・・4・・・・・・3・・・・・・もうすぐで地面にぶつかる。そう覚悟し、目を瞑る。
鈍い痛みと共に、ドガッ、という音がした。死んだか?と思ったが、どうやら奇跡的に生きているらしい。
意外にも痛みは少なかった。何故かと思えば、その理由は自分の尻の下にあった。
「・・・・・・あんた誰?」
「・・・・・・その前に退けや」
結構ガラが悪そうなお兄ちゃんが、どうやら僕のクッションになっていてくれたらしい。だが結構汚らしいクッションだ。クリーニングに出した方が良いかもしれない。
「ちゃんと洗濯してる?汗とかシミになったら大変だぞクッション」
「誰がクッションじゃ!俺はジャックだ!」
「も、元キング!?」
「そっちじゃねぇよ!舐めてんのかテメェ~!?」
意外と愉快な兄ちゃんだ。だが何をしに此処に来たのだろうか?それにジャックという名前、どこかで聞き覚えがある。それも最近聞いたような気がするが・・・・・・何だっけな、思い出せない。
「すまんすまん、面白い奴だなお前。で、何しにこんなとこに?人が居るとは思わなかったんだけど」
「はっ、俺は此処に眠る伝説のAFカードを探してるんだよ・・・・・・そう、《魔光大帝ネロ・グリフィス》をな」
《魔光大帝ネロ・グリフィス》・・・・・・確か、スーパーデッキなんかに収録されてたりもした、ナイトに関係する効果を持ったシステムクリーチャー。《魔弾グローリー・ゲート》や《魔弾アルカディア・エッグ》なんかと共に使われたり、《魔弾アルカディア・エッグ》にはこのクリーチャーの名前も効果に記されている為、知っている人は多いかもしれない。
だが、そんなカードを狙うとなるとパラレルか・・・・・・また僕パラレルと2人っきりなの?何コレ、パラレルホイホイみたいな体質でもあんの僕?
「へぇー、もう見つけたの?」
「ちっ、まだだよ・・・・・・というか、テメェは何なんだよ、こんなとこにわざわざ来るとか、お前もまさか──」
「いやいや、僕はただ、ほら、森で虫取りしてたら遺跡見つけて、足を踏み入れただけだよ。あー困ったな、甲虫王者見つけたかったなー!」
「へー、あっそ」
こ、コイツ・・・・・・全然信じてないぞぉ!?
「まぁ邪魔しなきゃ言うことはねぇが・・・・・・邪魔したら分かってんな?」
「イエス、ユア・ハイネスッ」
多分今までの僕の人生で一番の敬礼をし、出口も分からない為、なんとなくでジャックに着いていく。どうやら邪魔しなければ本当に良いらしく、一言も話掛けて来ない辺り、僕自身にあまり興味が無いのだろう。助かった。
「あーくそ、これどうなってんだ・・・・・・おいお前」
「・・・・・・あ、何か用?」
「俺は考えるのに疲れた。お前がこの仕掛け解け」
「めっちゃ上から目線やん・・・・・・まぁ、僕もさっさと此処から出たいし、仕方無いか・・・・・・えー、なになに?」
壁画のようなものと共に書かれている文字を読む。禁断文字のようだが、生憎と僕は特技の1つとして禁断文字を暗記している事が挙げられる。つまり、翻訳など何も見ずに出来る。まぁ解明されていない大文字とかは厳しいが、前後の文字で分かるだろう。
「『アルカディアス様は光に生きる者かどうか』・・・・・・いやまぁ光だろ《アルカディアス》なら。イエスは左か。左が正解っぽいけど、行く?」
「おう、《アルカディアス》は光だろ。んじゃ行くか」
そして僕達は暗い遺跡の分かれ道を、左へと進んだ。《アルカディアス》は光文明、お互いそう納得して進んだ。
そしてその結果・・・・・・。
「ァァァアアア!あっぶね、穴の中針だらけじゃねーか!何!?何で一問ミスって此処まで殺意高いの!?というか《アルカディアス》は光文明だろーが!」
僕とジャックは背後から無数のナイフが投射される遺跡の直線の廊下を走っていた。穴に飛び込んでナイフの雨を非難しようとするも、良く見れば串刺し穴という殺意の高さ。これがナイトのやることかよぉぉぉ!
「お、おい!あれ、何かデカデカ書いてあるぞ」
咄嗟に入りかけた串刺し穴を二人同時に仲良く飛び越え、ジャックの声に反応した僕は目の前の壁に書かれていたクソデカ禁断文字を読む。そこに書かれていたのは──
「『不正解だ!アルカディアス様は闇文明にもなっている!アルカディアス様は光と闇が合わさり最強の存在に見える御方だ愚者共!』だとぉ!?」
「知るかバーカ!!これだからオタクは嫌なんだよぉ!!」
というかこれ右の光文明じゃないを選んでも絶対同じだったろ!!
僕とジャックは内心そう叫びながら、兎に角走り続ける。
「あ、扉だ!」
「よっしゃ入るぞぉ!」
ヒィヒィ言いながら、何とか二人で古びた木製の扉を開き、ナイフの襲ってくる廊下から逃げ去る事に成功する。
肩で息をしながら、僕はジャックに一つ気になる事を聞くことにした。
「なぁジャック、《ネロ・グリフィス》見つけたらどうする?」
「決まってんだろ・・・・・・ぶん殴る」
「よし、僕とお前は仲間だ。絶対一発ぶん殴るぞ」
ジャックと僕は固く握手する。この時、僕とジャックは《ネロ・グリフィス》見つけたら一発ぶん殴ろ、と気持ちがシンクロしていた。こんな形で友情なんて芽生えたくなかった。
「次のステージは・・・・・・何だ?また問題?えー・・・・・・『あなたの好きな《アルカディアス》様のCPは?』って、いや何でカップリング聞いてくるんだよ。限界オタク極め過ぎだろーが」
「選択肢とかは無いのかぁ?」
「んー、無いから口にすれば良いんかな。でもこれ、滅茶苦茶怖いな・・・・・・」
これは数多のCP騒動を見て来た経験から来る予感だが、地雷カップリングを引いた時はもう瞬間的に命が消え去るかもしれない。このクリーチャーの性癖を当てる事、それだけが今、示されている希望への唯一の道。
《アルカディアス》のCPといえば、まぁ僕としては《悪魔神バロム》が浮かんでくるのだが、《バルカディアス》は少し危険な可能性もあるにはある。《バロディアス》?流石に無いだろ・・・・・・。《モモキング》も少し考え難い。
いや、《NEX》・・・・・・《ボルシャック》はどうだ?《バルカディア・NEX》はかなり奇跡の合体!みたいな、お互い合意してそうな雰囲気もあったし、《ボルシャック》と《アルカディアス》ならデュエマの主人公とライバルのエース的な面もある。これは決まったかもしれない。
「よし、決まった。僕は《ボルシャック》だ」
「俺は《バロム》にしとくか」
「いやちょ──」
危険じゃないか!?そう思いジャックに僕の考えを伝えようとするが、それより先に遺跡全体から女性の声のようなものが聞こえてきた。
僕とジャックは唐突に響く大きな声に驚き、周囲を警戒する。
『どちらも良いCPだ・・・・・・《ボルシャック》は確かに良い。あの拳と《アルカディアス》様の聖なる光がぶつかり合い、その果てにお互いを意識し合い、自らの好敵手として認めていき、ドラゴンと天使という種族の垣根を超えて、やがて熱い友情が芽生えていく二人の勇姿には、私も心のチ○コがふにゃふにゃ低パワーの《ゼリーワーム》に《THE END》をクロスしたかのようにバッキバキになってしまう』
「おいテメー今すぐ口を慎め。そして全国の《ネロ・グリフィス》ファンに謝れ」
何が心のチ○コだよ。《グシャット・フィスト》すんぞ。
『《バロム》と《アルカディアス》様・・・・・・犬猿の仲とも言える悪魔と天使、仲が良いかと聞かれれば、絶対に無いとお互い言うであろう姿が容易に想像出来る・・・・・・だが、それが良い!お互いに嫌悪していながらも、実力は評価している上に、互いに高貴な精神を持っているが故の上に立つ者としての立ち振る舞い・・・・・・一緒の空間に居るだけでピリピリとした空気を出しそうなところも、部下が居ないところで遠回しに煽り合う姿を想像したりすると・・・・・・ハァ、ハァ・・・・・・ヤバい、達する』
「なぁ俺コイツディスペクターの素材にするの凄い嫌なんだけど」
僕はそんなジャックの言葉に、心の中で《ザウルピオ》に全力で敬礼した。こんな変態と組まされるとは、奇抜な髪した全裸恐竜が哀れに思えてきた。
『良いだろう、同士達よ。共に《アルカディアス》様について語り続けよう!そしてお前達も《アルカディアス様に縛られたい》サークルに参加しないか!?』
「断る。というか勝手に同士にすんな!後縛るって呪文ロックだろ!?変な名前の付け方すんな!」
本当に《ネロ・グリフィス》ファンに謝って欲しい。誰がカードのコイツを見て、こんな変態女騎士だと思うだろうか。
『《アルカディアス》様に呪文ロックされながら、一方的に・・・・・・あン、そんな・・・・・・駄目です・・・・・・』
「想像して喘ぐなぁぁ!くそっ、さっさとデュエルしてコイツ回収したら、こんなとこ出て行ってやる!」
「ジャック、気をつけろ、負けたら恐らく洗脳される・・・・・・!《アルカディアス》様サイコー、しか言えない体にされてしまう!」
ジャックはデッキを取り出し、《ネロ・グリフィス》とデュエルを始める。
何ターンかが経過し、漸く《ネロ・グリフィス》が動きを見せた。
『呪文、《魔弾アルカディア・エッグ》!《アルカディアス》様の名前が付いた卵から、私、《魔光大帝ネロ・グリフィス》が産まれる・・・・・・!』
「あれそういう事だったの!?推しの卵から産まれるって感じなの!?もう止めてくれ!ディスペクターになる前から尊厳を自分で棄てていくの止めてくれ!」
見れば実体化したナイトのクリーチャーの中には、うわぁ・・・・・・という顔をしている者も居た。もう駄目だよ、ナイトはお終いだよ。時代はファンキー・ナイトメアだったんだ・・・・・・。
「くそっ!ふざけやがって・・・・・・!それならこっちはこうだ!来い・・・・・・!破壊の創造主!《聖魔連結王 ドルファディロム》!」
『・・・・・・』
《ドルファディロム》が登場し、場の殆どのナイトが爆散する。《ネロ・グリフィス》は生き残ったが、《ドルファディロム》は正直手強いだろう。
「はっ、お前の大好きな《アルカディアス》様の転生体の力はどうだ?呪文も思うように使えねーだろ!」
『よくもそのような歪な姿に・・・・・・!』
あ、そこは感性まともだったんだ・・・・・・。
『許さんぞ!そんな・・・・・・ア、《アルファディオス》様の体を、尊厳をグチャグチャになんて・・・・・・そんな・・・・・・ゴクリ』
「おい少し興奮してるの丸分かりだぞ。何なの無敵なの?」
『くっ、こんな輩になんて負けないんだから!』
そう言って、《ネロ・グリフィス》は多色呪文が殆ど無かった為に、2ターン後に《ドルファディロム》によって敗北した。即堕ち2コマである。
『くっ・・・・・・殺せ!』
「はっ、テメーもすぐにディスペクターにしてやる」
『やめて!酷い事するつもりでしょう!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!』
「変な期待してんじゃねぇこの変態がァ!」
ジャックは何だかんだで《ネロ・グリフィス》を手に入れる事に成功したようだ。《ネロ・グリフィス》が倒されたことで、どうやら奥の扉から外へとすんなり出れるらしく、2人でやり切った・・・・・・という顔をしたまま遺跡から脱出することに成功した。
「結局殴ることは出来なかったが・・・・・・まぁ、他のナイトの尊厳を守れたと思おう」
「コイツがどんなディスペクターになるのか分からねぇが・・・・・・まぁ、あんま使いたくねぇな」
「ジャック、僕達は変態の住まう巣穴から、何とか逃げ出せたんだな・・・・・・」
「あぁ、そうだ・・・・・・俺達、案外仲良くなれそうだな」
「・・・・・・ジャック、友として1つ、お前に伝えておきたいことがある」
ジャックの方を向き、一息ついてから覚悟を決めて口にする。僕が───ずっと遺跡の探索中に、ジャックへ抱いていた気持ちを。
「風呂入れ」
「うるせぇ殺すぞ」
この後、お互い別れたところで、僕は紅蓮と再会した。何故か虫採り網とカブトムシを持っていたが、もう何も突っ込まずにラボに帰還することにした。
星の輝く夜空を見上げ、今日の出来事を振り返って、ふっ、と笑みを零して、ポツリと呟く。
「帰ったら、ビドゥン殴ろ」
恐帝接続「ちぃーっす!ナイトの会議室って此処っすかぁー!?」
ナイト一同「帰って、どうぞ」