魔法つかいプリキュア! 〜奇跡と魔法と幸福の翼〜 作:シロX
ではスタート!
「違う、こうでもない…う〜ん……」
『ゲゲ、何やってんだアイツ?』
『フフ、ずっとあの調子よ』
ゲゲとフフは、机で項垂れてる翼を見て首を傾げていた
翼は今何か手紙らしき物を書いてはいるが、その内容が気に入らないのか書いては捨てての行為を繰り返していた。
お陰でゴミ箱の中身は紙で溢れていた
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「皆んなおはよう!」
「おはようございます」
いつも通りの朝で、みらいとリコは教室に入って元気な挨拶をクラスメイト全員に向ける
二人が教室に入るのを見て、壮太はすぐさま声を掛けた
「なぁ、翼と何かあったのか?」
「え?何もないと思うけど」
「何かあったの?」
「実は…」
壮太は席に座ってる翼に目を向ける。
そこでは、手紙を黙々と書いては捨ててを繰り返す姿があった
「おはよう翼君……翼君?」
挨拶をしてみるも全く反応が無い。というより気付いていない
「翼?」
「あ?……うわっ!?」
リコが目の前に顔を出して呼び掛けてようやく存在に気付いたのだが、翼からしたら突然目の前に現れたと思い椅子から転げ落ちてしまった
「ビックリしただろ…」
「大袈裟ね。ね、ところで何を書いていたの?翼にしては真剣に書いてたけど…」
リコが机に置かれてある紙を手に取ろうとした時、それを取られない様に引ったくった
「見るな…」
「手紙ならわたしも考え──」
「これは大事な手紙なんだ!余計な事はするな!!」
息を荒げてそう言われた。リコも大事な手紙と言われたら、これ以上何も言えなくなり黙ってしまった
「…後で説明するから」
翼はもう一度座り直したが、今度は周りに見られない様に腕を使って書き始めた
「邪魔しちゃ悪いし席に着こ?」
「う、うん…」
それからというものの、隣の席であるリコは翼の手紙の内容が余計に気になり目が離せなくなる
覗き見しようとものなら、余計体を縮こませたりする。
休み時間も場所を変えたりと、極力一人になっていた
はーちゃんのお世話も兼ねて体育館裏に来た時、その事についてゲゲとフフにも尋ねてみる
「ゲゲ、フフ。翼の様子がおかしいのだけど何か知らない?」
「リコ、あまり聞かない方がいいと思うけど。翼君にだって手紙の一つや二つくらい書きたい時だってあるし」
『ゲゲ、そう言われてもなぁ……昨日から一睡もせず書いてるのは知ってるけど』
「「一睡も!?」」
よくよく思い返せば、確かに朝から顔色が悪い様に見えた。
目の下にはクマが出来ており、げっそりとした表情をしていた。声にも覇気が無かったりと
『フフ、内容までは知らないけど相当悩んでるわよ。ワタシが予想するに……フフ、ラブレターだったり?』
「ラブ!?」
「レター!?」
『フフ、あれはきっと恋に違いない!』
『ゲゲ、ツバサが色恋沙汰に興味あると思うか?』
『フフ、人生何が起こるか分からないから面白いじゃないの。ワタシ達がそうであるように』
そんな大人の話をするみらい達に、はーちゃんは首を傾げて意味を聞き始めた
「ねぇ皆んな、『恋』ってな〜に?」
「恋って言うのは、人を好きになることモフ!」
「じゃあ、はーちゃんも皆んなに恋してるんだね〜!」
『フフ、少し違う気もするけど……フ、ツバサ?』
フラフラとおぼつかない足取りで、翼がみらい達の元へとやって来た
「や、やっと見つけた…リコちょっといいか?」
「え、え?わたし?」
言われるがままついて来たリコ。この場は学校の屋上なのだが、居るのは翼とリコの二人っきり
みらいやゲゲ達は来ないようにさせた。それは翼が望んだこと
「それで一体?」
「実はお前に渡す物があるんだ……コレ」
差し出したのは封をしてある一枚の手紙。
リコは先程の会話のやり取りを思い出す
『──フフ、ラブレターだったり?』
「ッ///」
その瞬間、一気に顔の熱が高まるのが分かった。それと同時に緊張も走り出し、色んな考えが脳内を駆け巡る
(落ち着け、落ち着くのよリコ。よく考えてみなさい。これまでの事から察して、これは多分予行練習よ…そう予行練習!本命は他の子、何も緊張する事はないわ!さぁいつでも来なさい!魔法界で優等生のこのわたしに掛かれば、告白の練習なんてちょちょいのちょいの楽勝もんよ!え、ちょっと待って…練習でもわたしに告白するのよね?あ、何かそう思うと緊張して来た。い、いや、何翼相手に緊張してるのよ!翼とは"友達"の関係よ!そんな深い関係なんて有り得ないわよ。だってそうじゃない。翼本人だって言ってたじゃない『俺はお前の事が嫌いだ』って。あ、でもその後で褒めてくれてた様な……て、何こんなにも悩んでいるのよわたし!わたしはあくまで練習相手、そこが一番重要よ。普通に相槌で返せばいいのよ。フラれた時のパターンと成功パターンの……それって告白を受け入れるって事よね!?『好き』って言葉にわたしが『はい』って返すの!?無理無理無理!そもそも何でわたしを練習相手にするのよ?相手ならわたしに限らず周りに沢山居るじゃない。まゆみや勝木さん、壮太だっているのに……みらいだっているじゃない!相手を選ばないのであればモフルンやはーちゃんだって!わたしを選んだ理由が分からないわ……そうよ分からないなら聞けばいいじゃない!何でこんな簡単な事に気付かなかったのかしら?全くわたしったらダメね、いつもそう。知らない事は聞くのが一番よ。それが立派な魔法つかいになる為の近道!さぁ聞くわよ!聞いてやるわ!覚悟しなさい……の前に一度深呼吸しないと。言葉を詰まらせたら気不味くなるもの。本番でもこうやって不意打ちで聞かれるかも知れない。こんな考えに至るなんてわたししかいないわ!フフン、わたしが練習相手だった事を感謝して欲しいわ!もしみらいだったら、気付かなくてそのまま一言返事で返してそれ終わりになっちゃうもの!ありとあらゆるパターンを考え、本番に備えさせて心に余裕を持たせるのも練習相手の役割よ。わたしが軽く助言すればイチコロよ!恋に落ちる事間違いなし!よし!そろそろ練習を始めるわよ!カウント三秒前…五秒前がいいのかな?それとも十秒?かなり余裕を持って一分?それとも『せ〜の』の掛け声の方がいいかしら?でもでも、人によっては、タイミングが合わせづらいかも知らないし……あ〜もう!いつまででも悩んでもしょうがないわ!一気に行くわよ一気に!行くわよリコ!頑張れリコ!負けるなリコ!気合いよリコ!深く息を吸って…いっせぇ〜のッ──)
長い長い長考から帰って来たリコは、深呼吸してから纏まった考えを翼に言った
「この手紙は何かしら?」
「…恥ずかしいが開けて読んでも構わない。お前に宛てた手紙だからな……内容はアレだが一応込めて書いたやつだ」
「そ、そうなんだ…あはは」
予想外の返しにリコの脳内は再度駆け巡る
(あ〜れぇ〜?おかしいな?今翼、わたしに"宛てた手紙"って言いましたよね?え、何?この告白ってまさか…まさかまさか!!?)
頭から煙が立ち上がり背中を向けて顔を隠そうとする
(告白の練習と思っていたけどそれは勘違いで、わたしに宛てた手紙っていうのがラブレター!?うぅ〜どうしよう…そんなの聞いてないし、心の準備なんて尚更出来てないわよ!急過ぎるわ!そもそもわたし、翼の事なんて嫌いよ……でも、付き合ったらそんな気持ちも少しは変わって好きになっていくのかな…なんて思ったり?)
ともかく、もう一度翼の方へ振り返る。少し緩む頬を何とか戻すせいで、絶妙な表情となっている
側から見れば嫌々相手をしてる様にも見えてしまう
「あ、開けるわよ」
ドキドキする気持ちを全身で感じながら、封を切って中身を確認しようとし時だった
「この様な場所で出会うとは奇遇ですねプリキュア」
声のする空へ見上げると、バッティと脇には縄とホッピングを合わせたヨクバールが居た
「プリキュアに変身…っていない!?」
プリキュアに変身しようとするも、みらいとモフルンがいない。
更に言えばゲゲとフフもいない
戦える手段をどちらも持ち合わせていない
二人に残された選択肢は一つ
「逃げるぞ」
「あっ!」
リコの手を引いて扉へと駆け出すが、それよりも先にヨクバールが回り込んだ。
逃げ場はその扉一つしかない
他にあるとすれば
「……」
視界に映るのは屋上の手すり
そこへ猛ダッシュする
「何処へ逃げても無駄ですよ」
「無駄だろうな。俺だけは」
「──え」
「リコは魔法つかいなんだ。ほうきでひとっ飛びすれば、こんな状況くらい切り抜けられるだろう。そしてみらいと合流してプリキュアに変身すれば」
「中々理にかなったこと。ですが、そうやすやすと逃しませんよ!ヨクバール!」
「ギョイ!」
体の一部である縄を大きく振り回して叩いて来る
上か右か左か何処へ逃げても無様に食らってしまうのがオチ。
ならばいっそのこと
「受け止めてやる!!」
体全体で縄を受け止め、全体重を乗せて踏ん張ってみせた。
相手の力に対して、よく吹き飛ばされなかったと思う
「リコ逃げるんだ!」
「で、でも!」
「いいから…うわっ!?」
掴んだ縄は酷い事に翼を軽々と持ち上げて振り回す。
当たり前と言えば当たり前だ。どんなに力を入れたとしても、人間の全体重程度の力などヨクバール相手には通じないのだから
こんなピンチな状況でも、翼はリコの事が心配でならなかった
「早くみらいの元へ行くんだ!」
「それだと翼が──」
「い──」
中々飛び立とうとしないリコに最後の言葉を投げようとした時、手に力が抜けて屋上の外へ投げ出された
完全に宙へ放り出された翼。このまま地面へと落下すれば命を落とす
なのに翼が思う事はただ、あまりにも楽観的だった
(人生って案外呆気ないもんだな)
ゆっくりと落ちて行くのが分かる。しかし、そこからどうする事も出来ない
奇跡など起こる訳がない。魔法こそ使える筈もない。パートナーが居ないと空すらまともに飛べやしない
だけど、それでも
「───翼!!」
友達は居た
リコは屋上から身を投げ出して、落下する翼の手を掴んでみせた
魔法の杖やほうきなんて物は使ってない。自分の身など顧みずその手を掴んだ
しかしそれは勇気とは言えない。無防備と言うものだ
「キュアップ・ラパパ!」
けれどそんな無防備から這い上がる力さえ持ち合わせていれば、それは無防備な行動ではなく勇気ある行動へと変化する
「ほうきよ、飛びなさい!!」
魔法の言葉を唱え、ふわりと浮かび上がるほうきだが落下速度の方が速い
「──ッ!!」
気合いでほうきを起こし上昇させようと操作し、地面スレスレの所でほうきは飛び上がった
「ふぅ…危機一髪ね。もう無茶をする!」
「その言葉、そのままそっくり返す。ここからどうする?」
翼もほうきに跨って体勢を整えれたのはいいが、ここからどう巻き返すか考えていなかった
「リコー!翼くーん!」
運はまだ見放していなかった。
騒ぎを聞き付けたみらいが、ほうきに乗って屋上まで飛んで来たのだ
「良かった!二人共大丈夫そうで!」
「行くぞ皆んな。反撃開始だ!」
「「キュアップ・ラパパ!」」
「「ルビー!」」
「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」」
「ふたりの奇跡!キュアミラクル!」
「ふたりの魔法!キュアマジカル!」
「「魔法つかいプリキュア !」」
「
「クッ…ヨクバール!」
「ヨクバール!!」
ヨクバールはホッピングの特徴を活かしたジャンプ力で、翼やほうきに乗るミラクル達の所までひとっ飛びする
同時に正面四つの縄も襲い掛かって来る
「ここは任せて──リンクルステッキ!」
ほうきから飛び降りながらマジカルが飛び出した
「リンクル・ムーンストーン!」
満月型のシールドが幾つも展開し、ヨクバールの攻撃を全て防ぎ切った
「ミラクル行け!」
「やあぁ!!」
翼がミラクルを投げ飛ばし、勢いのついた拳がヨクバールの顔へと減り込んだ
「ヨクバ!?」
「まだまだ!」
マジカルが先行し、その後に翼とミラクルと続いて接近戦へと持ち込む。
しかしヨクバールも負けてばかりではない。すぐに立ち上がっては、ジャンプして拳や蹴り、剣の攻撃をかわしていく
ジャンプで間に合わない時は、数少ない屋上の建物を縄で掴んで利用して回避する
「ヨクヨク!」
先程まで殴られたとは思えぬ余裕の笑い。調子に乗っているのが目に見えて分かる
『フフ、それが命取りとなるのよ』
「ヨク…ヨクバール?」
ジャンプしていたヨクバールの動きが突然止まって棒立ちになった。
足元を見れば、ツタが張っておりヨクバールに巻き付いていた
「動きながら種を撒いていたんでな。気付かなかったのか?」
大天翼之剣の剣先から、屋上全体へ種を出していた。
地面ならともかく、コンクリートと上となると気付きやすいと思われたが、ヨクバールはそれ程まで油断していたのだ
絡み付くツタを振り解こうとするも、今更もう遅い
「行くわよミラクル!」
「うん!」
「「ルビー!」」
「「紅の情熱よ!わたし達の手に!」」
「「フルフルリンクル!」」
「「プリキュア!ルビー・パッショナーレ!」」
////////
「リコ、手紙を開けてくれ」
「え、えぇ!?今!?」
「今」
「此処で?」
「此処で。別に家に帰ってからでもいいが、別段此処で開いても変わらないと思うが?」
先程までと違って、みらい達が隣でまじまじと見ている
「ほ、本当に此処で開けて良いの?」
「その方が俺の気持ちが伝わると思うが…」
「大胆!大胆だよ翼君!」
『フフ、はいはいみら子。リコ子が恥ずかしがるから煽らないの。少し離れましょう』
フフに連れられて、みらいは離れた場所へと移された。
リコはそれを見て少しホッとする
何せ今持っているのは自分に宛てたラブレター。
いくらみらいでも、デリカシーというものを知って欲しい
リコは潤んだ瞳で封を開けて中身を取り出す。
ドキドキは最高潮に達しており、頬を赤く染める
(ど、どんな内容かしら?翼の事だしストレートな内容なのかも。でも案外遠回しな文章かも知れないわ。でもどんな内容でも嬉しいわ。だってきっと、わたしはそれを受け入れるに違いない。で、でも少しは返事に時間は欲しいわね!そうねそうしましょう!敢えて、そうあ・え・て返事を遅らせるの。別に、わたしがこの場で言うのが恥ずかしいとかそんなんじゃないんだからね!)
そんな脳内乙女爆発なリコは中の手紙を開いた
その内容は
『ごめんなさい』
「???」
脳内が乙女のお花畑から一転して、リコは疑問だらけになる
(え、え?いや本当に『ごめんなさい』って何?わたし告白される前から『貴女の事は好きではありません。ごめんなさい』って意味のごめんなさいなの?フラれたの?告白してすらないのに!?ままま待ちなさいよ!そんなフラれ方あるの!?聞いた事ないし!あ、そうよこれはきっとブラフってヤツよ!きっとまだ封の中に手紙が………無いわ!え、え?逆さまにして振っても出て来ないわ!二枚目の手紙が無い!まさかまさか、心を込めた大事な手紙が嫌いの意味を込めたこの手紙なの?じゃあわたしがさっきまで有頂天になって、アレやこれやと想像して楽しんでいた時間は何だったのよ?ハッ、まさかわたしがこうやって悩み苦しむ姿を見て楽しんでるって訳ね……良い度胸じゃない翼。わたしの魔法を使えば、落ちてなくても落ちるようにしてやるわ……何言ってるのだろうわたし……そんな事はどうでもいいのよ!もしかしてわたし弄ばれてるの?今も翼の手の平の上で転がされてるの?焦らされてる?わたし焦らされてる?予想の斜め上を行く遠回しな告白なの?だとしたら侮れないわ。取り敢えず先ずは、この『ごめんなさい』の意味を解明するのが先決。問いただす!!)
今のリコに瞳に光などない。しかし笑みは決して崩さず問い掛ける
「翼、この『ごめんなさい』ってどういう意味?」
「そのままの意味だ」
「そのまま……前からある状態の事、ありのままという意味…あは、あはは…」
リコは膝から崩れ落ちて、補習と言い渡された時以上に落ち込んでしまった
「なぁリコ、何か勘違いしてないか?」
「勘違い…?」
「俺は、これまでのお前に対する
「───へ?」
「ほら、前にはーちゃんとお互いに謝ったじゃないか。モフルンにもお父さん代わりみたいな話もしてたし、そんな手本となる俺達がしょうもない事で口喧嘩するのはどうかと思ってな。そこで考えを改めてリコ、俺は心を込めて謝罪する……ごめんなさい」
頭を下げての謝罪をリコは初めて目にする
「あ、う、うん大丈夫よ。気にしてないから…」
今まで考えていた時間は何だったのかと思う
それと同時に、そんなにまで思う程に翼の事で夢中だった
「そんな訳で──改めて宜しくなリコ」
「ッ///」
そう、リコは知らず知らずの内に彼の事を────
途中のリコの台詞、あれ一回の台詞で1000文字超えてるんですよね。三年以上小説していて初めての体験です。
そんな訳で次回からは心改めた主人公です
ここまでの拝読ありがとうございました!