魔法つかいプリキュア! 〜奇跡と魔法と幸福の翼〜 作:シロX
「あれ皆んなは?」
いつの間にか、ことはとナギの二人だけになっていた。その他翼達の姿がどこにもない。
確かにみらいが扉を開けて皆んなと一緒に先へ進んだが、気付けばこの通り
「みらい〜!リコ〜!」
石造りで出来たドーム状、ただ広いだけの空間に、虚しくも返事は返って来ず
「モフル〜ン!翼〜!」
「呼んでも無駄よはーちゃん。恐らく部屋に入った途端、何かしらの力が働いて私達を分断したに違いない」
「じゃあどうすればいいの?」
「それは…嗚呼丁度良いわ。そこに居る"悪魔"に聞いてみましょ」
はーちゃんとナギの視線の先には、一人の赤毛の女性が紅のドレスを着て佇んでいた
「よく気付けたわね。褒めてあげる」
「悪魔なんかに褒められても得なんて無いわ」
「皆んなを何処にやったの?」
「お前さん達と同じ様に別の空間で孤立している」
それを聞いたことははひとまず安心する。何か変な事はされて無い事は確認出来た
後は此処から出る方法を聞き出すだけ
「ついで感覚だけど帰り道も教えてくれない?」
「それは無理よ。私が居るから」
「それで充分よ。もうそれだけ聞ければ出る方法は見つけた」
「そうなの!?」
「ようはあの悪魔を倒せば出れるって訳よ。でも…」
悪魔は不敵に笑っている。どうやら正解のようだった。
けれどそれと同時に面倒な事にも気付く
そんな単純明快な方法で出られるとなると、余程腕に自信があるとナギは直感する
「だとして倒せるって?そんな間抜けヅラの小さなプリキュアと?」
「はー!!怒った、わたし怒ったよ!!」
「キュアップ・ラパパ!」
「エメラルド!」
「フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!」
「あまねく
「貴女を浄化します。覚悟して下さい」
「キュアフェリーチェ、噂のエメラルドのプリキュア。だが侮らないことね。私は黒い目の悪魔けれど……黄色い目の悪魔とそう大して変わらないわよ?」
悪魔は地面を蹴り飛ばしてフェリーチェとの距離を一気に詰めた
(早い!)
悪魔の蹴りを腕でガードしてから、弾き返して手の平で押し返した
「フェリーチェ大丈夫?」
「はい、なんとか」
「ゾクゾクするわ。その強さ」
悪魔の瞳が黒く変わる
フェリーチェの腕が痺れる程の攻撃の強さだが、悪魔からすればこの程度はほんの小手調べ
「その強さに免じて教えてあげる。私は『アバドン』」
「「アバドン…」」
「そしてさようなら」
アバドンの手の平から紫の光弾が放たれると同時に、ナギは防御体勢に入る
「白魔法──キングダム・ビギニング!」
城壁の盾を即座に展開して光弾を防ぐ
更にフェリーチェは盾をアバドンに向けて蹴り飛ばす。
それは攻防一体の荒技。例え先程の様に攻撃して来ても盾がそれを弾き、何もしなければ盾が直撃して攻撃にもなる
「それなら避ければ何も問題は無い」
アバドンは体を回転させ盾をヒラリとかわし、そのまま捻らせた勢いで次の攻撃体勢へと移ろうとした時だった
「ッ!?」
避けた先には小さな魔法陣が幾つもセット展開されており、陣から魔法文字の鎖が飛び出してアバドンをがっちりと拘束する
「白魔法──ロジック・ビギニング」
「これでどうですか!!」
身動き出来ないアバドンに容赦無く右手で指圧攻撃を繰り出した。
その衝撃が下まで伝わり地面が割れ、勢いよく壁に激突して埋め込まれる
「ナイスフェリーチェ。良い攻撃」
「ありがとうございます……と、浮かれるのは少々早いかと」
壁から出て来たアバドンの表情、ダメージを負わせたというのに何処か余裕の笑みを浮かべていた
「今の人間がここまでやるなんて、少し本気でやろうかしら」
「…フェリーチェ嫌な予感がする。一気に決めるよ」
「はい」
フェリーチェが飛び出し、ナギはその場に動かずグリモワールを開けて援護する
「白魔法──ベスト・ビギニング!」
ケンタロウ型の守護騎士を二体召喚させ、フェリーチェが正面からに対して左右から挟み込んで仕掛ける
「それでも所詮はこの程度」
アバドンは両の手を左右に開き、ケンタロウ二体を悪魔が持つ念力で捻り潰して消滅させた
一瞬でやられた事にフェリーチェが怯むが、それでも尚進む事を恐れず突き進む
得意の指圧で仕掛けたその直後、アバドンは見事に横に避けて、フェリーチェの手首を掴んだ
その力を利用して、自分を軸にして回転さてフェリーチェをナギに向けて投げ捨てる
「ちょ、フェリーチェ!」
「ッ!」
ナギと衝突寸前の所で、フェリーチェは小さな羽を広げて目一杯空中で踏ん張り、なんとか止まることが出来た
「あ〜危なかった!フェリーチェが飛んで来た時はヒヤッとした」
「…本当にそう思っているのですか?」
どこか信用出来ないといったトーンで、フェリーチェはそう答えた
「何その態度?」
「今、この状況で言うのはとても変ですが、わたしは貴女に言いたい事が山ほどあります」
「確かにこの状況で言われるのは変。目の前に悪魔が居るのに、それ以上に言わなければならない事は何?」
突然始まったバチバチと火花を散らすフェリーチェとナギの様子を見て、アバドンは薄笑いを浮かべていた
「仲間割れ?いいよ続けて。待ってるから」
果たしてそれは本当なのかと思うが、実際アバドンは爪の手入れをし始めて敵意は無い。その言葉に嘘はない
フェリーチェも、その事を確認して再度口を開いた
「貴女は翼に酷いことし、友達であったみらいやリコにも酷いことをしました。それを許す事は出来ません」
「じゃあこの共闘辞める?」
「……」
今思っている本音を言えば、この戦いは一気に終わりを迎える。共闘を辞めれば、相手にする数も増えるだけではなく、別の場所に居る翼達にも危険が伴う
フェリーチェ一人での勝手な判断で決める事は出来ない。
だから何も言えず、もし黙ってしまうしかないのだ
この共闘自体、誰もが不本意と思っている。誰もがそれを理解した上で望んだ
「…悪魔との戦いが終わるまでです」
「なら、頑張って倒すわよ」
ようやく話が着いてアバドンへ視線を向けると、長々と話している間が暇だったのか、どこからか用意していたワインを、片手に持って有意義にしていた
「話終わった?」
「はい。ですが、どちらにしろ勝つのはわたし達です」
「じゃ、続きと行こうか。威勢だけで終わらないでよね。エメラルドのプリキュア、魔術を使う人間」
アバドンの瞳が黒く染まり、黒い魔力の塊を手の平から撃ち出した。
フェリーチェも、フラワーエコーワンドにリンクルストーンをセットして対抗。ナギは、手に持つグリモワールを黒く光らせて、迎撃の準備をする
「リンクル・ピンクトルマリン!」
「黒魔法──ヘル・エンド!」
////////
フェリーチェとナギが飛ばされた様に、翼達も同じ様な石造りのドーム状の場所に居た
『キュアップ・ラパパ!』
『ルビー!』
『ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!』
「ふたりの奇跡!キュアミラクル!」
「ふたりの魔法!キュアマジカル!」
『魔法つかいプリキュア!』
「
しかし、どうやら穏やかな状況ではない様子。
それもその筈、翼達も同じく相対して悪魔・アザゼルと火花を散らそうとしていた
前回は、ミラクルとマジカルの二人だけで戦ってその結果敗北。その時は運良く、翼とフェリーチェが介入して退いてくれた。尚且つ今回に至っては翼も始めから参戦している。
だからといって、気を引き締めて挑まないと一瞬で此方が負ける。
それ程までに、黄色い目の悪魔との実力の差は開いている
油断は一瞬たりとも出来ない
お互いに長い睨み合いが続く。先手を打つのが有利とは限らない。特に得体の知れない相手には
これまで悪魔と幾度となく戦って来たが、それでも悪魔という存在の底を見たことがない。
それどころか、地に這いつくばる回数の方が大半
アザゼルの出方を伺って動きたい。だけど、翼達には時間が無い。こうしている間にも、ことはも頑張っているに違いないのだから
もし、ことはの身に何かあった場合の事を考えるとゾッとする
翼は、ミラクルとマジカルに目配せで合図を送る。今まで肩を並べて来た二人なら、息をすると同じくらい簡単に理解出来る
「二人共────行くぞ!」
悪魔の翼を大きく広げ、堂々と正面から向かって迫る。
アザゼルは少し笑い、余裕の表情をして動かない。
動かないならそれで好都合。容赦無く切り捨てるのみ
全力で、真っ向からの切り下ろしで仕留める
「ハァッ!!」
だが、その全力の一閃を容易く片手で受け止めた
「何ッ!?」
「それで本気のつもりか?もっと力を込めたらどうだ?」
「あ゛ぁ゛?俺達は全員で戦ってるんだ。何勝手に人数減らしてんだ!」
翼の背後から、ミラクルとマジカルが左右に散って飛び出した。
定石通りの動き。翼の攻撃を受け止めるなんて最初から想定済み。翼は囮で、本命はこの二人なのだから
「「リンクルステッキ!」」
位置に着いた二人はリンクルステッキを構えて、それぞれリンクルストーンをセットする
「リンクル・ペリドット!」
「リンクル・アクアマリン!」
ミラクルはペリドット、マジカルはアクアマリンを使用してのダブル攻撃。
アザゼルの両側から、葉っぱと氷の吹雪が同時に襲い掛かって来る
普通ならここで、逃げる動作に切り替えるがアザゼルは違った。寧ろその逆で、その場から一歩も動かない
「仲間ごと攻撃しに来たか。お前も苦労するなぁ」
『ゲゲゲ、食うのはお前だけだ』
翼の右腕から悪魔魔法・因果が全身に流れ、薄い膜で包み込む。
これにより、外からの攻撃は全てシャットアウト。悪魔魔法・因果の特性を活かした、無敵とも言える戦法
(最初からまともに戦おうなんて思っちゃいねぇ)
(少しズルい気もするけど)
(それで倒せるなら!)
翼が魔法を身に纏ったのと同時、ミラクルとマジカルの魔法がアザゼルに直撃した。二つの魔法が嵐の様に渦巻き、アザゼルを苦しめる。
ここまで派手な魔法になっても、因果の魔法で翼は守られている
「やったモフ!」
離れた場所で避難していたモフルンも、この手応え
しかし
「───やはり期待していた通りだな」
「「ッ!?」」
嵐の様に渦巻いていた魔法は鎮まり始め、葉っぱは枯れ果て、氷は溶けて液体と化した。魔法が弾けるとアザゼルは無傷。更には、翼の首を片手で締め上げていた
「「翼(君)!!」」
「期待していた通り、これならお前達を徹底的に痛ぶれる」
アザゼルの言う『期待』の言葉の意味。それは、その弱さに、己の圧倒的な強さで三人を痛ぶれることだった
「こ゛の゛ッ!!」
首を絞める手を離させようと、抵抗をするもビクともしない。寧ろ力が強まり、息苦しさが増していく
「そんなに離してほしいか?なら、離してやるか」
アザゼルは、翼を大きく振り回して投げ飛ばした。受け身が取れず、壁が崩れる程強く叩き付けられ、その衝撃を受けて瓦礫と共に石造りの床に倒れる
「翼君!!」
「……ミラクル危ない!!」
倒れた翼を心配するあまり、ミラクルは無防備な背中を見せてしまった。アザゼルは容赦無く光弾を放ち、マジカルはそれに気付いて走り出した
突き飛ばして、代わりにマジカルがその攻撃を受けて吹っ飛ばされる
「マジカ…がっ!?」
マジカルに翼と心配して気を散らして、隙を見せたミラクルの喉元にアザゼルの腕が伸びる。更にはそのまま持ち上げて、力も強まる
老体の力とはとても思えないもの。悪魔の力は、想像を遥かに超えている
「あと少し力を込めれば首の骨を折る事が可能。もう、ここまでの様だな」
ジタバタともがくミラクルだが、肺に空気が思うように行き渡らず力が入らない。寧ろ、もがけばもがく程力は抜けていく
「そろそろお終いにして、楽に死なせてやる!」
「…グッ、ミラクル…ッ!!」
翼は
『フフ、ツバサ正気?天使と悪魔の力を同時に扱うなんて自殺行為よ』
「だとしてもだ!ここで負けたら全員終わりだ。前に進んで朽ちるか、何もせず朽ちるなら、俺は前に進む!」
『…ゲゲゲ、ならバランスが一番大事だ。フフ合わせろ』
ゲゲが乗り気な事に目を見張るが、フフはそれを仕方なく了承する。確かに何もせず終わるくらいなら、何か起こしてから終わる方がマシ
例えそれが────命を落とすことになってもだ
『フフフ、失敗しても恨まないでよね』
翼は大天翼之剣も握り、侵食率を上昇させる
「大天翼之剣、侵食率…に、23、パーセント!!」
ジワジワと侵食率を上げてはいるが、悠長にしていたらミラクルの身が危ない。慎重に、だが早くしなければならない
「ッ!!?」
全身に激痛が走る。無理矢理、相容れぬ力を同時に扱おうとしているのだ。負担は思う以上に体に表れている
27、30、42と上昇する速度は早くなる
「もう…少し…ッ!!」
侵食される左半身に天使の翼が生え、白銀に輝くガントレットが装備される。そして最後の仕上げとなる
「侵食率50%!!」
悪魔と天使の魔力。その二つが同時に体中を駆け巡り、今までにない程の力が溢れ出る
右半身は、悪魔が侵食されて凶悪な腕となり、敵を切り裂く為の爪。左半身は、天使に侵食されたもの。
頭に悪魔の角が一本生え、頭の上には天使の輪っかが左半分
左右非対称の姿となる
「中々良い根性をしている」
アザゼルはミラクルを投げ捨て、翼の方へ興味を示す
『ゲゲ、煉魔之刀剣──侵食率50%!』
『フフ、大天翼之剣──侵食率50%!』
「見せてやる、俺達の本気!!」
希望を目指して最後の望みに懸ける。それがこの姿
「完了───天魔フォーム!!」
天使と悪魔の力が漲り、溢れ、今にも暴れたい興奮すら覚える
翼は両翼を大きく広げては飛翔し、天井を足場にしてキックする。
加速はついた。急降下する勢いも重なり、瞬間速度は数百キロを優に出す
「天使魔法──エレメンタルブレイカー!!」
大天翼之剣に湧き上がる無限の魔力を、纏えるだけ纏い振り翳す。翼は、この攻撃が通れば勝てると確信する。
いくら黄色い目の悪魔とて、高密度で練り上げた四元素と浄化の力を食らえば
だがアザゼルは────それを嘲笑うかのように軽々と片手で受け止めては、あっさりと砕いたのだ
「ッ!!?」
大天翼之剣にはダメージは無いものの、爆発的に威力が増したエレメンタルブレイカーを簡単に砕いたのだ。
受け止めた手には外傷は無く、今までの事は全てお遊びに過ぎないと言わんばかり
翼はただ、目の前で起きた事に理解が追い付かず放心していた。
それは翼だけに限らず、ミラクル達もゲゲやフフもそうだった
これはもう、実力の差がどうこうの問題ではなくなった。どんなに足掻こうと、アザゼルには勝てないと決定的なまでの、確信たる絶望を突き付けられた
「…ハッ!翼逃げて!!」
放心していたマジカルだったが、今はまだ戦闘中の事を思い出して、翼に逃げる様促すも一足遅かった
言った側から、アザゼルの拳が顔面にクリーンヒットして壁際まで吹っ飛ばされた。
マジカルは翼の元へ駆けて抱き起こし、ミラクルもまたモフルンを抱えて側に寄る
「翼…ねぇ翼!!」
「マジカル動かしちゃダメモフ!」
今の翼は鼻から血を流して気絶している。更に言うと鼻は粉砕骨折してる。
それだけでは済めば良いが、かなりの衝撃があった筈だ。脳にも何か異常があるかも知れない
「終わりだな」
三人の目の前に、どうしようもない絶望の波が呑み込んだ
やっと主人公に強化が入りました〜。
天魔フォーム
右手に煉魔之刀剣、左手に大天翼之剣を持って同時に侵食率50%まで引き上げた強化フォーム。
天使と悪魔、対となるエネルギーを同時に使用している為、体に負担が掛かる。
その分力は折り紙付き。天使と悪魔の魔法を同時に扱え、魔力量も底が見えないほど莫大に上がっている
右半身は煉魔之刀剣、侵食率50%の状態と同じ様に黒く染め上がり、凶悪な腕に敵を切り裂く凶暴な爪が目立つ。頭には一本の悪魔の角が生えている。そして悪魔の翼を右翼生やしている
左手半身は大天翼之剣、侵食率50%の状態と同じく白く染め上がり、腕はガントレットを装備される。頭の上には半分だけしかないが、天使の輪っかが現れる。そして天使の翼を左翼生やしている