死界は異なる世界にも   作:ゴツゴツクリスタル

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天之川くん…いいのかい?


意思は硬く、矛は脆く

今日が大迷宮攻略の前日になる。

訓練施設内はいつも通りほどほどにという表情を浮かべていた。これから自分たちは迷宮という地獄への一本道を進むことになるが、クラスメイト達は天之川光輝のカリスマに当てられて盛り上がって死ぬかもしれない事実をひた隠しにしている。

 

 

(クラスメイトに人死の確認をしたら十中八九死にたくないから迷宮には行かない。だがそれをしたら聖教教会に捨てられる可能性がある。逆に伝えないと迷宮で最悪の場合全員…いや、メルド団長が実践『訓練』って言ってるしそれを信じるしかない…光輝くんもいますしそれに賭けるしかないですね。)

 

(そうですよ、この八方塞がりの状況を理解しているのは多分僕だけ…いざとなれば直死の魔眼を使えばなんとかなるはず…)

 

「こうなってしまえばとことんやるしか無いですね。事実地球に一刻でも早く帰りたいですし…」

 

「何一人でぶつぶつ言ってるのかしら?」

 

 

振り向くと雫さんが刀を持って長いポニーテールを揺らしながら自信満々の顔で立っていた。

 

 

「少し、考え事を……あのー、僕としてはそれよりも雫さんの持っている刀が僕に向いているように見えるこの状況を説明して欲しいのですが…」

 

「あら、これで私が何をしたいかわからないかしら?」

 

(いやそんな挑戦的な眼差しを向けられても…)

 

「…いえ、第一何故僕ですか、ご覧の通り体力のないもやし体型で、天職の役職上極めれたものなんてない。一方的な雫さんの勝利で終わりますよ。)

 

「それが…」

 

 

 

 

「あなたの戦いの全てかしら」

 

「───」

 

 

辺りがざわめいた。縁は思いもやらぬ問答に困惑した。何故雫さんがそこまで僕と模擬戦をしたいのかかま全くわからないからだ。そこまでして僕と模擬をする理由がない。先程言った通り士道縁は一つのものを極めてはいない。かと言って色々な天職を即座に使えるほど天職を扱えているわけでもない。だが、

 

一方的な勝利で終わるというのは全くの嘘だった。

 

 

(八重樫雫が何故自分に挑んできたかは覚悟の目をみればどうでもいいですね)

 

 

決闘のような雰囲気に縁は知らず知らずのうちに獰猛な笑みを顔に滲ませていた。

 

 

「模擬戦といえど人と剣を交えるのはあまり好みませんが…えぇ、他ならぬ雫さんの頼みです。受けて立ちましょう」

 

「えぇ!士道くんとはまだ1回もやった事なかったもの!手加減はなしよ!」

 

(少し、面白くなってきましたね)

 

 

 

 

 

 

 

雫side

 

 

気付けばいつも士道くんを求めていた。私が聞いて欲しい愚痴を文句一つ言わず声を掛けてくれる、一人の女子として見てくれる、そんな士道くんに精神的に守られていた。でも、

 

 

(士道くんに勝つ、それが、わたしが彼を守ることができる証明になる!)

 

 

いつまでも守られっぱなしじゃない…ここでくらい、

 

(あなたを守る盾になりたい!)

 

 

それが八重樫家の長女、八重樫雫の覚悟だ

 

 

 

 

 

場所は訓練場。いつもは勇者御一行が各自に模擬戦や自己の鍛錬で賑わっている場所だが、今日は嵐の前の静けさになっている。士道縁と八重樫雫という非常にレア度の高い模擬戦が見られることになるからだ。この試合を見逃す手はないと鍛錬や模擬戦は一時中断し、クラスメイト達は今か今かと待ち侘びる観客になった。

 

「みんなの頼れる兄貴vs姉貴の対決ねぇ…これは目に焼き付けないとねぇぐへへ」

 

「鈴、ヨダレ出てる。」

 

「いやぁ!頑なに試合しなかった士道が遂にやる気になるとはなぁ…やっぱり士道から八重樫さんを誘ったのかなぁ」

 

「ばかちげーよ!俺八重樫さんが士道に宣戦布告するとこ見てたぜ!」

 

「はぁ!?なんで士道に!?」

 

「知らねーよ、でも今んとこ八重樫さんが戦闘職で相手にしてねーの士道だけじゃんか。やっぱり全員たおしたいんじゃね?」

 

「八重樫さんそんなバトルジャンキーだったっけか?」

 

 

観覧席からは三者三様な意見が飛び交っている。その中でも多かった疑問が

 

 

「やっぱ、八重樫さんが勝つんじゃね?負けたことあるのいまのとこ天之川だけだしさ」

 

 

どちらが勝つのか

 

 

 

 

 

 

「ん?なんだこの集まりは」

 

 

 

休憩が終わった天之川光輝と坂上龍太郎は、戻ってくるといつもと違う騒がしさとクラスメイトの密集度に疑問を覚えた。

 

 

(まさか、敵襲でもあったのか!?)

 

「檜山、何があった!?」

 

「え?あ、あぁ、なんでか知らねーけど八重樫と士道が模擬戦するらしい」

 

「模擬戦?そんなのいつものことじゃないか?」

 

「まぁ、そうなんだけどよ。士道が誰かとやり合うとこ見たことないからこいつら士道の実力拝みたいって…」

 

「…なるほどな」

 

 

確かに訓練や自主鍛錬の時に士道縁が模擬戦しているとこは見た事がない。模擬戦をする訓練でもメルド団長に休むと連絡しているのかは知らないが姿を現さない、そんな平和主義とも捉えられる士道の実戦を一眼拝みたいと思うのは当然の思考である。

 

 

(だが士道は昔雫に邪な気持ちで近づいた危険なやつだ…やめさせたほうが…いや、ここにはみんながいる。それにメルド団長公認となれば不埒な行動はできないから試合ぐらいは大丈夫か…)

 

 

天之川光輝にしては冷静な考えだが、それでも士道の評価は散々だった。

 

 

「あの士道がなぁ…ふん、ちょっと興味惹かれるな、光輝」

 

「そうだな、龍太郎」

 

(お手並み拝見だ)




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