死界は異なる世界にも 作:ゴツゴツクリスタル
戦闘描写は初めてなのでここはこうしたほうがわかりやすいなどのご指摘お願いします。
訓練場で対面する2つの影が映る。一人は普段の優しさを捨て、キッとした瞳を対面した影に向ける。もう一人は目を細め、考えの読めない微笑を浮かべている。
「ルールは簡単。17メートル距離を取り、俺が『始め』と言ったらそれが試合の合図だ。勝敗は自他共に深い怪我をしない範囲で勝機がないと判断したら俺が『勝負有り』と告げる。武器は隠して持ってくるのもあり。説明は以上だ」
「メルド団長、僕は試合は初めてですが見てはいますのでルールは知ってますよ」
「まぁ一応な。知らなかったじゃ済まないからな!」
実にいい笑顔で士道に言葉を返す。大雑把だけど律儀、こういうところがみんなに人気な訳なんだろうなと試合前に呑気なことを考える。ちなみにみんなとはみんなである。それ以上でもそれ以下でもない。のほほんとした士道の空気を察したのか八重樫雫の眉がいつも以上にキュッと閉まる
「随分余裕ね。それだけ自信があるってことかしら?」
「ははっ、ご冗談を。こう見えてなるようになるって考え方なので。もちろん…」
「負ける気はありませんが」
視線と意識を八重樫雫に固定する。ここから先は
(雫さん、あなただけを見ましょう)
「では…始め!!!」
合図が鳴った。だが、
「お、おい、あの二人全然動かねーぞ?どうなってんだ」
「あれ?もう合図なったよなぁ…」
続く沈黙に観覧席にいる生徒達は困惑している。
「違う…イメージしてるんだ……相手を倒す」
誰かに聞いて欲しくて誰にも聞かれない遠藤浩介がいた。
先に長い沈黙を破ったのは雫だった。
八重樫雫は士道縁目掛けて一直線に駆ける。至近距離になるのを阻止するべく士道も後ろにステップを踏む。
(逃がさない!)
さらに足に力を入れて近づこうとするが、
(ナイフ!?)
士道の指の隙間にに6本の投げナイフが仕込まれていた。士道は雫の攻めを止めるべく投げナイフを2回に別けて飛ばすも虚しく斬り伏せられる。雫が投げナイフに意識を割かれた合間に士道は床に手をつけしゃがんでいる。
(なにを…!!)
瞬時にその場から身を引く。すると雫が先程いた地面が唐突にもりあがる。
(やっぱり!床に手をつけるのは南雲くんだけ!)
雫は士道の変貌者の厄介さを再確認した。変貌者は何にでもなれて何にもなれない天職でありランクの補正も受ける。しかし重要なのは何にでもなれるという点
(いつどこでどの天職を出してくるかわからない!相手が天職固有の技を使ってこない限り、警戒して全てが後手に回る!)
さらに手数という武器は士道の専売特許になっていた。士道は訓練の途中転職を繰り返していると『高速思考』『臨機応変』の技能を覚えた。それにより士道はその場で最適な行動をいち早く実行する事ができる。士道に死角はない
「くっ」
回避した先の地面も同様にもりあがり雫は高さ6メートルの足場に固定される。慌てて地面を見渡すが士道の姿はない。となれば
「後ろ!!」
刀を背中に回すとキィンと甲高い金属音が聞こえた。音もなく現れた事から暗殺者にでもなっていたのだろう
「えぇ!?それはないでしょう!」
(槍術師!)
背中越しに驚いた声が聞こえる。振り向くと士道の手には錬金術で作り出したらしい土のついた長い矛が握られていた。
「ほんとにその天職鬱陶しいわね!」
「お互い様でしょう!」
高さ6メートルの隔絶された地面で槍と刀がぶつかる。躱し、躱され、突き突かれるの攻防を繰り広げていくうちに何かが壊れる音が鳴った。
「チィっ」
この状況で痺れを切らしたのは槍の方だった。ここで錬金を待つほど雫は節穴じゃない。それを理解している士道は仰向けで崖から落ちる。
「もう、逃がさないわ」
雫も後を追うように崖から落下する。その行動も読んでいるとばかりにニッとした笑みをする。
(job change、風術師!)
士道の手に風が纏う。やはり本来の風術師より風の強度は落ちてはいるが、空中で身動きの取れにくい相手ならば
(撃ち落とすには充分!)
風を雫目掛けて撃つ。雫もそれは覚悟の上だったらしく体を捻ってすんでのところで躱す。雫から苦しげな吐息が微かに聞こえてきたことで士道は勝利を確信する。
(もう避けられませんよ!雫さん!)
両手に風を纏わせて完全に撃ち落とす算段をつける。瞬間
「は?」
雫をよく見ると手にはなにも握られていない。疑問に思い直感で右に視線を向けると士道の服の袖に
刀が突き刺さっていた。
「いやいやぁ、ウッソでしょ…」
士道は刀を視ながらその光景に驚愕した。『瞬歩』を使って一度体制を立て直すならばわかる。下に向かって『瞬歩』をすると自由落下で制御が出来ないから横に離脱することでとりあえずはこの状況を打破出来るから。
刀を振って風を消しにかかるならまだわかる。消された後に出す予定だった炎や氷も同じよう斬れば僕には逃げられるがこの状況は先程と同じで打破できる。だが、
「かはっ!相打ち覚悟とはっ」
打ち出された刀によって急速に落下し、地面に激突する。背中から思いっきり地面に当たったことで苦々しげに喘ぐ。その間も雫は風魔法を身体強化でくぐり抜けてこちらに拳を向けて迫る。風魔法を抜けた事により服はビリビリになっていた。逃げようと体を動かそうとするが、地面に刺さった刀が服を縫い付けて離さない。
(まずいっ、刀をとる時間はない!くそっ!あなた剣士じゃないんですか!?…一か八かっ)
「っ!job change!結界師!!」
仰向けの状態で今出せる全魔力を結界の強度増強に廻す。
(あなたも僕の変貌者に翻弄されて体力は無いはず!ここを凌げば勝機はある!)
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
雫の咆哮と士道の咆哮が重なり、魔法とこぶしがぶつかり合う。
「どっち!?どっちが勝ったの!?」
「わかんねぇ!粉塵で何も見えねぇ!」
砂埃が晴れた先には
結界を保った士道と破らなかった雫がいた。
「はぁはぁはぁ」
「……………はぁ、僕の負けです」
瞬間、パリンッとガラスの割れる音が聞こえた。
「勝者!八重樫雫!」
メルド団長の勝利宣言により観覧席からわっと歓声が上がる。刀を抜き取り座る。辺りを見渡すと余程いい勝負だったようで興奮してる様子が窺える。
「はぁ、ずるいですよ、剣士以外の行動するなんて」
「あら戦場では勝つ事が正義でしょう?」
満足そうに微笑む雫を見て、負けたことにいじけてそっぽを向く。
「ふん、まぁそうですね、あれさえなければ勝てましたし」
「え? ふふっ、あっはははっ!あ、あなたってほんと時々子供っぽい事するわねっ」
笑われた事でよりいじける。
「そうですぅ、まだ10代の子供ですヨォ」
「ふふっ、冗談よ、笑って悪かったわ」
いまだに笑いを堪えてる姿を見て絶対悪いと思ってないと確信しつつも、雫から差し出された手を取って立ち上がる
「うん…でもいい勝負でした。強いね、雫は」
「…!!」
嬉しそうに頬を赤らめながら視線を逸らす。
「ありがとう…これであなたを守るくらいはできるわ」ボソッ
「?何か言いましたか?」
「いえ、なにも」
その時
「おい!みんな!南雲が檜山達にリンチにされてる!」
「なんだって!?」
野村健太郎の切羽詰まる声に士道の目に赤黒い線が少し浮かんだ
なんだぁてめぇ
という事で野村きゅんに呼ばれて発動…何故や