死界は異なる世界にも 作:ゴツゴツクリスタル
早朝
誰もが少しばかりの緊張と未知への好奇心を顔にうかべながら大迷宮入り口へと立つ。
(未知の開拓は人であれば避けられない興味です。僕も人が死ぬような場所じゃなければ目を輝かせていたんですが)
死んだ目をしている士道がクラスメイト達とメルド団長の説明を聞いていた。普段の優しい印象からは考えられない負のオーラが遠藤からは寝れなかったせいかと勘違いされた。
「お〜い、士道。どうしたんだお前?」
「遠藤くん、やっぱり今すぐ大迷宮攻略やめませんか?きっとみんな気分が悪くなると思うので。もちろん予知です。」
「何言ってんだお前…だいたいいつかは行かなきゃならないんなら別に今日でよくないか?」
「…はぁ」
遠藤浩介の正論にため息をついてストレスを発散するしかなくなった。帰ったら南雲くんに胃薬を作ってもらおう
「よーし!入るぞお前ら!」
博物館の入場ゲートのような入り口をくぐりオルクス大迷宮攻略が始まった。浅い階層ではいい稼ぎ場所として人気があるようで人が自然と集まっていた。もう少し奥に進むとと通路は暗くなりさきの賑やかさは無くなっていた。広間に出るとここからが大迷宮本番と言わんばかりに群れで襲いかかってきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備しておけ!あれラットマンという魔物だ。すばしっこいが、大した敵じゃない。冷静に行け!」
(だとしても控えめに言って気持ち悪いですね)
士道はゴキブリなどの人間が生理的に受け付けない生物でも比較的いける部類だが、ムキムキのねずみにはその限りではないらしい。雫の顔を見ると頬が引き攣りまくっている。だがそこは流石の勇者一行。魔物の群れは一瞬にして全滅した。
「ああ〜、うん、よくやったぞ!次はお前らにもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド団長。その後も順調に迷宮を探索していき二十階層に到達した。
(天之川くんが突っ込みすぎなところはありますがそれ以外は問題なさそうですね。騎士団員もいますしここはプロに任せましょう)
心に余裕が出来たので少し周りを見渡すと南雲ハジメと白崎香織が見つめあっているシーンを目撃した。すぐに目を逸らしたハジメに香織がショックを受けて拗ねている。
「はぁ、微笑ましくはありますが大迷宮でやることじゃありませんよ…」
「どうした士道?」
「当たり前のように後ろに立つのはやめてください遠藤くん」
心臓が飛び上がったのは表情に出さずに咎める。声をかけられただけで気づいただけ褒めてほしい。
「いやそんなつもりなかったんだけど…で、どした?」
「カップル成立の瞬間を目に焼き付けていただけです。青春ですね〜」
「は!?だ、誰が?誰と!?」
「さぁ誰でしょ〜、あ。魔物来ましたね〜」
「おいぃ!!?」
暗殺者に爆弾を落として魔物を刈りにむかう。向かってくる猪のような魔物に牽制で投擲をする。今の士道は投術師で目潰しに投擲をし、暗殺者で後ろから首を断つ、という戦闘スタイルになっている。試行錯誤をした結果大体の敵にはこの戦法が1番しっくりきた。錬成を使って牽制するのもアリではあったが、魔力量の差で南雲ハジメを上回っている僕は技能が下がっても彼よりも広範囲の錬成が出来る。職泥棒の士道からしてもそれは可哀想だったので錬成は切羽詰まる場面でしか使わないようにしている。
大分下まで潜ると魔物も強さを増し、苦戦することが多くなってきたが大体は天之川光輝がなんとかしてくれるため怪我は一人も出なかった。途中八重樫雫や白崎香織に攻撃した魔物に激昂し無駄すぎるオーバーキルをしてメルド団長に叱られてたがその程度だった。
(もうそろそろ本格的に気を引き締めないとまずいですね。)
「あれ、何かな?キラキラしてる……」
その言葉に、全員が白崎香織の指差す方へ目を向ける。そこには青白く発光する鉱物が花咲くようひ壁から生えていた。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりしていた。
(何呑気に見惚れてるんですか…)
こっちの気も知らないで気を緩める生徒達に心の中で八つ当たりをする。少し顔に出てたようで遠藤くんから引かれた。
「な、なんだぁ、どした?最近機嫌悪いじゃん…」
「…別に」
冷たい反応をしてしまったことに申し訳なさを感じつつみんなの見惚れているグランツ鉱石にもう一度目を向けると
「だったら俺らで回収しようぜ!」
グランツ鉱石に手を伸ばす檜山大介の姿が目に写った。
「っっっあの馬鹿っ!!」
檜山が鉱石に手を触れると鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石に魅せられて不用意に触れたものへのトラップだ。
「団長!トラップです!」
「ッ!?」
すぐに部屋に光が満ち、一瞬の浮遊感が襲う。眩さを感じなくなり目を開くと巨大な石造りの橋の上だった。橋の下には川などなく深淵の闇が広がっていた。落ちれば確実に助からない
(くそっ、少し目を離した隙にこれですかっ!結局僕も警戒心が足らなかったって事ですか…」
自分の不甲斐なさに歯噛みする。依頼で一対一で相手を殺す事を得意としていた士道は他人に目を向けながら戦うことははじめての経験だった。
「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」
雷の如く轟く号令に、わたわたと動き出す生徒達。しかし、
「なんだよ…こいつら。多すぎんだろ…」
「………」
遠藤の怯えた声に心の中で同意する。流石にトラウムソルジャー100体は多すぎる。しかもやつらの魔法陣からは今もなお増え続けている。
「これはまz」
反対の通路から今までにない殺気を感じた。人の狂気染みた殺気は知っている。獣の生存本能による殺気も知っている。だがこれは知らない。感覚としては獣に近いがそれは生存本能ではない
「はは、大きい魔物の殺気ってこんなにヤバいんですね」
思わず笑ってしまう。相手を殺す。純粋にただそれだけのために殺気をぶつけてくる相手は初めてだった。その未知は士道に恐怖を植えつけた。ここまでの殺気は初めてのようで他の生徒は足を止め呆然としている。
「ベヒモス……なのか…」
メルド団長の呻くような呟きに士道は戦慄を覚えた
サトシ「いけぇぇぇ!ベヒモス!突進だ!」
ベヒモス「グルァァァァァァァォァァァァ!!」
サトシ「いいぞ!そのまま一兆ボルトだ!」
ベヒモス「グルァァァ…ア?」
やってみたかった