死界は異なる世界にも   作:ゴツゴツクリスタル

2 / 21
主人公像わかりにくいかな


過去話2

中学2年生の春。

終業式が終わって僕は久しぶりのちゃんとした休みだったので雫さんに前から誘われていた八重樫家の道場に来ていた。

 

 

「来てくれたのね、士道くん」

 

「えぇ、本格的に体を動かすのは体育の時間以外ありませんから、今日の間だけですがお世話になります。」

 

「ふふっ、そうね、ビシバシと指一本動かせないくらいまで鍛えてあげる!」

 

 

雫さんは僕を体操選手にでもにでもするつもりなんでしょうか。思わず苦笑いしてしまった。雫さんに案内されながら道場の扉を開けるとものすごい熱気と共に大声が聞こえてきた。みな一斉に竹刀を振り下ろし、上げて、また振り下ろすという作業を掛け声と共に行っている姿が目に映った。一生懸命に汗を流してる彼等を見て少し羨ましいと感じてしまった。

 

 

「とりあえず着替えれてきてくれる?その格好で稽古しようとすると怪我しちゃうわ」

 

 

そう言って剣道着を渡された。剣道をやりにきたとはいえ今日限りでしか竹刀を振らないような部外者がこの場にいると気が散るかと考えて更衣室まで足早で着替えに行った。道場から出る直前に振り返って稽古中の彼らをもう一度見た時、少し赤黒い線が見えた気がした。

 

先程いた道場から少し離れた場所にもう一つ小さい道場があった。棚に置いてあったいくつかの剣道防具を見たところ全て八重樫という名前が書いてあった。多分家の所有者専用の道場なのだろう

 

 

「士道君は今日一日くらいしかやらないから最低限の基礎と竹刀の扱いだけ覚えてもらってそこから簡単な試合でもしましょっか」

 

「僕が雫さんから一本を取るのに1日は難問すぎますよ…」

 

「安心して、本気の50分の1くらいで相手するから」

 

とても嬉しそうにそう答えてくれた。

 

 

(50分の1ですか)

 

 

すごく手加減している様に見えるが八重樫雫は大会では負けなしの超がつく猛者である。その手加減が僕の実力と拮抗するくらいのレベルにまで落とされているかは不明だった。疑問は試合を始めればわかるだろうと思考を放棄して稽古に付き合ってもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、これやっぱりこれレベル違いすぎましたね」

 

「うっ、ごめんなさい…縁なら運動神経いいから大丈夫かなって思ってたわ」

 

 

予想通りだった。うん、次からは竹刀を持たないってルールにしよう、それなら公平だ。

それだと剣道とは、という話になるが僕は今雫の最初の宣言通り地べたに転がって指一本動かせないくらい状態になっていた。実力は抑えても経験でやはり押されてしまう。試合は押されてしまうという生易しいものではなく一方的に攻撃されたという表現が正しかった。

 

「ここまでで手加減されてても雫さんの試合での圧は体によく響きます。対戦相手が少しかわいそうに感じました。」

 

「そんな事ないわよ。剣道みたいな1on1の試合形式のスポーツは極限まで感覚を研ぎ澄ますものだから私みたいのなんていくらでもいるわよ」

 

時刻はもう夕方になろうとしていた。道場の門下生達もそろそろ帰るようでわいわいと楽しそうな声が聞こえてきた。

 

 

「そういえば結局士道くんは高校どこ行くの?」

 

「そうですね…正直まだ決まってません。出来るだけ近くてお金のかからない所がいいですね」

 

「へ、へー、そう……その、じゃ、じゃあ私が行こうとしてる高校なんてどうかしら?」

 

「───」

 

「ほ、ほら、私の行こうとしてる所学費も他と比べて安いしここからでも結構近いじゃない、だ、だからあなたがちゃんと行くには条件として悪くないというか、な、なんていうか……」

 

 

驚いた。

遠回しではあるが一緒の高校に行かないかと誘われるとは思わなかった。確かに条件としてはあっているから別段断る理由はなかった。

 

 

(いや、それ以前に)

 

 

僕は気付いていた。彼女が自分にどんな感情を向けているのか。気付いていて尚知らないふりをしていた。だってそれは僕なんかに向けていいものではなかったから

 

(そう、僕みたいな…)

 

 

突然なんの前触れもなく道場の扉が開いた。

 

「雫、こんところで何をしてるんだ?」

 

「光輝…彼とちょっとした試合をしてたの」

 

「彼?後ろで寝転がっている彼か?」

 

「こんにちは、士道縁です。」

 

話すのが初めての相手に寝転がったまま挨拶するのは失礼だと思って痛みを我慢しながら座った姿勢で挨拶をした。

 

 

「士道くん、彼が天之川光輝よ。」

 

「よろしくお願いします」

 

「………」

 

 

?反応がない。

 

 

「雫、彼といつ知り合ったんだ?」

 

「?多分1年くらい前からじゃないかしら」

 

「彼とは本当に友達なのかい?」

 

「なっ、そんな失礼な事言わないで!」

 

「雫!俺は心配してるんだ!雫に積極的に関わってくる男子なんて下心があるに決まってる!」

 

「そんなの初対面の光輝にはわからないじゃない!」

 

「いや、雫には男子の怖さがわからないんだ」

 

「だからって勝手に決めつけて私の交友関係にケチつける理由なんてないじゃない!!」

 

「だから言ってるだろう、俺は雫が心配なんだ!」

 

 

どうやら天之川光輝は僕が下心を持った獣と考えているらしい。聞いてた通り思い込みが激しく女性の事を宝石のように考えてる節がある。彼はきっとこの事実に気づいてないが。

天之川光輝は僕に視線を移した

 

 

「士道縁くん、金輪際雫には関わらないでもらいたい」

 

「ちょっと光輝!!」

 

「…わかりました」

 

「士道くん!?」

 

 

これは何を言い返しても無駄と判断して早々に話を切り上げて、更衣室に行って剣道着を脱ぎ、綺麗に折り畳んで棚に置いた。道場に戻ってきた時には雫さんと天之川光輝はまだ喧嘩をしている。雫さんの表情は怒りの感情で埋め尽くされており天之川光輝の俺は君のためを思ってという態度がさらに雫さんの怒りのボルテージをあげていた。

 

 

「雫さん、今日は稽古付き合ってもらってありがとうございました。」

 

「し、士道くん!その…」

 

「聞き分けがいいな、本当にもう関わらないんだろうな」

 

「聞き分けって、あなた何歳ですか…まぁいいです、では帰る前に歪んだ正義感を持った天之川くんに一つだけ忠告、もとい警告をしましょう」

 

「警告だと?」

 

「えぇ」

 

そして雫さんを庇うように立っている天之川光輝の横に移動する。

 

「───」

 

「!!」

 

 

雫さんは僕が何を言ったのか聞こえなかったようで不思議そうな顔をしている。

 

 

「では、雫さん、今までありがとうございました」

 

 

雫さんの呼び止める声を聞く前に道場の扉を閉めた。

 

 

 

 

 

天之川光輝side

 

なんだったんだあの男は

雫に馴れ馴れしそうにして、絶対に邪な気持ちがあったに違いない。

 

 

「光輝…あなたっ」

 

「これで安心だ、でも雫も気をつけるんだ。ああいう輩が世の中にはいるんだから」

 

「っっ」

 

「お、おい雫!?」

 

 

雫は走って道場を抜け出してしまった。よくない男に騙されてたんだ、無理もないだろう。俺も早く着替えよう、明日も学校がある。

 

 

(だが最後のあれはなんだ?)

 

 

 

『正義だって見方を変えれば悪になる、とびっきりのね?』

 

 

……いや、戯言だな。今日は勉強するか

 

 

 

 

 

 

 




ヤッベェ、考えてたら自分で言った設定とか伏線忘れそぉ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。