死界は異なる世界にも 作:ゴツゴツクリスタル
これは 世界に絶望した一人の心優しいモンスターの話
光が収まり、目を開くとそこには幾人もの人が祈っているような姿が見えた。状況確認のために周りを見渡すと神殿みたいな場所で自分たちはそこ広場にいる事に気づいた。周りの今も祈っている人たちの服装は法衣に身を包んだ聖職者のそれだった。
その法衣集団の中で特に豪奢で煌びやかな衣装を纏った老人が一歩前に進んだ。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎いたしますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位についておりますイシュタル・ランゴバルドと申すもの。以後、よろしくお願い致しますぞ。」
(は?)
老人は今何故自分たちを勇者などと呼んだ。いやその理由はとうにわかっている。これはいわゆる異世界召喚というものなのだろう。
(いやいや待ってください、何故僕たちみたいなただの学生を?)
───目の奥が痛んだ。
この世界の空気は先程までいた世界とは異質過ぎて眼鏡越しに線がくっきりと見えるようになっていた。
「雫さん…これは」
「え、えぇ、なんなのよ、ここ…」
他の生徒もイシュタルと名乗った老人が急に自分たちの事を勇者と言ったことへの反応よりも場所への確認を優先させている。
「この場ではゆっくりお話しできませんでしょう。ついてきてください」
そう言ってイシュタルは自分たちに背を向けていくつもの長テーブルと椅子が置かれた別の広間へと誘った。
案内された広場は晩餐会などをする場所だろう。生徒全員が座った事でメイド達が入ってきた。彼女たちを凝視していた男子は女子に冷たい目で見られていた。士道縁は給仕してくれたメイドさんに笑顔でお礼をして女子全員が感心していた。みなが落ち着いたと感じ、イシュタルは恍惚とした表情で話を始めた。
「では、この世界について説明させていただきます。」
要約すると生徒達をこの世界に召んだのは神エヒトという絶対神であり、トータスには人間族、魔人族、亞人族が存在して最近魔人族が魔物を使役するようになったせいで今まで拮抗していた人間族との戦争の均衡が崩れ、人間族が滅びの危機を迎えている。という内容だった。
(なるほど、神の意思は絶対。いつの時代も宗教は怖いですね)
「ふざけないでください!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しませんよ!私達を早く帰してください!きっとご両親も心配しているはずです!あなたたちのしていることはただの誘拐ですよ!」
(愛子先生頑張りますね、風格はありませんが頼りになります。)
自分の考えは他の生徒も同じようでほっこりした顔をしていた。
「お気持ちはお察しします。しかし、あなた方の帰還は現状では不可能です」
(は?)
「ふ、不可能って…ど、どういう事ですか!?よべたのなら帰せるでしょう!?」
「先程言ったとおりあなた方を召喚したのはエヒト様です。なので、あなた方が帰還めきるかどうかもエヒト様のご意志次第ということですな」
「そ、そんな」
その答えは自分がいままで聞いてきた中で最悪のものだった。帰れない。そうなると
「妹は…どうするんです」ボソッ
周りも状況の深刻さに気付いたようで帰れない事実にパニックに陥っていた。その中で士道縁は誰よりもその事実に絶望していた。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。放っておくことはできない。救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。イシュタルさん?どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救済主の願いを無碍にもしますまい」
「俺たちには大きな力があるんですよね?」
「ええ、この世界のものよりも数倍から数百倍は力は持っているかと」
「なら大丈夫!俺は戦う。人々を救い、皆んなが家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな」
「今のところそれしかないわね。…気に食わないけど…私もやるわ」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「三人とも…」
そう宣言した天之光輝に周りの生徒達は活気を取り戻した。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。流石のカリスマだ。だが、
「じゃあ「待ってください!!!」!?」
そんな参加ムードの中声を荒げて縁は天之川光輝の言葉を遮った。
「…なんだい、この案で可決しようとしているが、ないかあるのかな」
「い、いやいや、わかってるんですか!?これの意味が!戦争ですよ!?」
「あぁ、だが大丈夫!全員俺が守ってみせる!」
「そんな確証ないじゃないですか!」
「だから!俺がいるから大丈夫!」
「っっ」
声にならない。この男は自分がいるということで絶対守り切れると言っている。ただの学生の身分だった分際で。全て覚悟の上での言葉ではない。無責任にも自分だからという理由で他の者を死地へと送ろうとしていた。
(いや、なにより)
イシュタルがこちらを鋭い眼光で睨みつけている。この感じからすると余計な事をっと言ったところか、わざと天之川光輝というカリスマ性のある人物を選んで、こうなるよう仕向けたのであろう。
(ここで不興を買うのはまずい。ここは下がるしかないですか…)
苦虫を噛み潰したような顔で反抗する意思を押しとどめた。他の生徒達はなぜ自分がここまで突っかかるのか理解できてないようだった。
「……えぇ、そうですね、『あなたが』守ってくれるんですから」
「あぁ!任せろ!」
「………」
ここからだった。世界の残酷さを見せつけられるようになったのは
ここからようやく面白く?なる?