死界は異なる世界にも 作:ゴツゴツクリスタル
その後、イシュタルの後をついていき国王と会合した後晩餐会が開かれる事となった。活気を取り戻した生徒達は各々が席で異世界の料理の珍しさに目を輝かせている。
(帰れない…ですか…クソっ!最悪といわざるを得ない…とりあえず今は言う通りに戦争に……いやだめだ。ここにいるほぼ全員が自分がいつ死んでもおかしくないという事実に気づいていない、見るのを避けているかな?…そこはまぁ天之川くんの守ると言う宣言を信じましょう。)
(でもいつかは人を殺すことになるんでしょうね。依頼以外の殺し…やっぱりいつまでも慣れませんね…いえ、慣れないことが自分への罰ですね」
一人悶々と今の危険な状況を一つずつ把握しようとしていた。
ずきん ずきん 眼鏡をかけていてもまた線が見えている。ここまで長時間見てきたからか吐き気がし、その気持ち悪さに必死に蓋をする。
「…うじうじ悩んでいても仕方ありませんね」
「士道くん、となりいい?」
「あ、はい、どうぞ」
思考を巡らせていると隣に南雲ハジメが座りこんできていた。
「どうかしましたか?」
「い、いや、さっき天之川くんの発言に戦争の意味がわかってるかって聞いてたから…その、やっぱりそういうことなのかな」
「───驚きました。この中であの波に呑まれず事の重大さを理解していたんですね」
「ま、まぁ、ちょっとイシュタルって人が怖くて、冷静に考えたら歴史とかで見た戦争思い出してね…」
「そうですか…あの状況でそこまで考えられているのなら心配ない…わけではありませんがいざ命を奪うときにこんなはずじゃなかったとはならないと思います」
南雲くんはその頭の回転の早さをもう少し他の者たちに見せてあげれば学校であのような扱いにはならなかったであろうに…
「はは、あ、ありがとう……そのー、その件の事でちょっと気になったんだけど…」
「なんですか?」
そう考えていると少し逡巡した素振りを見せた後意を決したように
「なんで、あの時そんなに泣きそうになってたんですか?」
「───」
南雲ハジメside
ずっと気になっていた。学校での彼の普段の態度は誰にでも優しく接して困ったことがあれば必ず相談に乗ってくれるお兄さん的存在だった。そんな彼が急にここに喚び出されて天之川くんがまとめようとした瞬間今まで聞いたことがないような切迫詰まった声で待ったをかけた。
(帰れないってイシュタルさんが言った時から息を荒げてた。みんなちょっとしたパニックだったのに対して士道くんだけが完全に今の状況を理解してた……もしかしてだけど、)
「この世界に来たことがあるの?」
士道縁side
南雲くんの答えは違うものだった。自分が人殺しだということに気づかれたかと思った。多分彼の言い分としては僕が前にこの世界に来ていれば前の世界に帰ることがどれだけ困難か理解しているから帰れないと告げられた時誰よりも絶望した、ということだろう。自分は持っていたフォークを一度机に置いた。
(いや、だとしても僕が人殺しだと言うことは言うべきか?これから戦争の仲間になるかもしれない人達にそれを黙るのは背中を預けるに値しない…)
だが、
「いえ、僕、ちょっと頭いいんですよ!」
少し微笑んで
僕は 嘘をついた
南雲ハジメside
(なんで、そんな苦しそうに笑うんだろう。)
自分にはわからなかった。そんな顔をする理由が、そんなにも辛い何かあったのだろうか…
聞くことは出来なかった。
「僕はそろそろ寝室に戻りますね、おやすみなさい。」
「あ、う、うん、おやすみ」
結局何も彼についてはわからなかった
(最低ですね…僕は)
頭の痛みがさらに加速した。
翌日から早速訓練と座学が始まった。メルドと名乗った笑い方が豪快な騎士団長は生徒達に銀色のプレートを渡すと説明を始めた。
「よし、配り終えたな。それはステータスプレートと呼ばれていて文字通り自分のステータスを数値化して示してくれるものだ。身分証明書でもあるから失くすなよ?」
そうしてステータスについて説明した後血を魔法陣に擦り付けて自分たちのステータスを見始めた。反応はさまざまだったが綺麗な魔法陣という未知の体験にだいたい心を奪われていた。メルド団長の呼びかけに天之川光輝が早速ステータスの報告をしに前へ出た。
「ほぉ〜、流石に勇者様だな。レベル1で既に三桁か…技能も普通は2つ3つだが…この規格外め!頼もしい限りだ」
「いやぁ、はは」
天之川光輝は予想通りの勇者だったようでみな納得の顔を浮かべている。
(僕もやりますか。…多分予想が正しければ現在進行形で持っている異能も反映される筈)
そう思って自前のナイフで指を切り、血を魔法陣にかけた。
士道縁 17歳 レベル:1
天職:変貌者
筋力:52
体力:34
耐性:89
敏捷:146
魔力:95
魔耐:47
技能:直死の魔眼・気配感知・罪罰執行・赫子・言語理解
?
直死の魔眼はわかるがなんだろうかこの赫子というのは…自分の辞書に引っかかるものは何もなかった。そしてこの天職
(変貌者…文字通りなら何にでも姿形を変えることができる能力といったところですかね)
「士道くん、どうだった?」
「雫さん。はは、よくわからない天職でした。雫さんはどうでしたか?」
「ん、」
「…あー、雫さんらしいですね、剣士とは」
「ふふん!そうでしょう!これなら士道くんを守ることも出来るわ!」
「ははっ、それでしたらお願いしましょうかね」
実に満足気な雫を見て微笑んでいると向こう側から見下した声が聞こえてきた。
「おいおい、南雲。もしかしてお前非戦闘系か?鍛治職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんですか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲〜。お前、そんなんで戦えるわけ?」
「さぁ、やってみないとわからないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボいステータスは高いんだよな〜?」
南雲ハジメは檜山大介の態度にめんどくさくなったのか投げやり気味にステータスプレートを渡すとみんなにわざと聞こえる声で爆笑し始めた。
「ぶっははははっ〜なんだこれ!完全に一般人じゃねぇか!」
「むしろ平均が10なんだから場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな〜」
次々と笑いだす生徒に香織が漠然と動きだす。しかし、
「ギャハハハっぶべらっ!」
笑いを止めない檜山に士道は後ろから足を引っ掛けて転ばす。
「な、何して「動かないでくださ〜い?」ひっ!」
そうして少し屈んで首元にナイフを添えると小さく怯えた声を出した。
「檜山く〜ん。そんなに笑いたいなら迷惑にならない自分の部屋にしてくださ〜い?君幼稚園児ですか〜?見ていて不愉快なので即刻やめてくださ〜い」
「い、いや、でも」
「でもじゃありませ〜ん。二度目は言いませんよ?」
「は、はい」
僕がとてもいい笑顔で返事を強要すると涙目になって首を縦にぶんぶん振ったので、これ以上は意味がないと感じて檜山から離れると何事もなかったようにメルド団長にステータスを見せに行った。
「ふむ…変貌者、聞いたことがない天職だな…」
「多分文字通りなら自分の体を作り替える能力だと思います」
「体を作り替えるか…それは明日訓練で使ってみるとして、この直死の魔眼と赫子というのもなんだ?」
「…いえ、僕にもさっぱりです」
半分はほんとで半分は嘘、直死の魔眼については知っているが…
『だって、どんな時でもを助けるって約束したじゃない! だから』
『───信じてるね!私だけの正義のヒーロー!』
(あまり、人に話していい代物じゃない)
あのひまわりのような笑みを思い出した。自分をただひたすらに信じて疑わなかった少女はもういない、それでもこびりついて離れない呪詛のような言葉が僕に生きろと命じてくる。たとえ赤黒く染まったこの狂った視界を映していたとしても。
(あぁ、わかってるよ)
「うーむ、よしわかった!少しこちらでも色々調べておこう!」
「はい、ありがとうございます」
「な、南雲くん!?」
南雲ハジメが愛子先生の思わぬ矢にダメージを受けたらしく倒れ込みそうになっている。この時はまだ楽しいと言える状況だった。
微妙