ようこそ心配事が多い教室へ   作:御米粒

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5巻で佐藤が美少女かしている件


5話

「凄い広さだな。プールなんて50メートルはあるんじゃないか?」

 

 昼休みが終わり5時限目。

 高度育成高校が誇る室内プールに俺は驚愕していた。

 

「さすが高度育成高校だね」

 

 隣りに経つ平田も感動しているようだ。

 更衣室で平田の裸は何度も見ているがやはりいい身体をしている。

 女子に持てそうな細マッチョって感じだ。

 

「やっぱり男子は早いね」

 

 俺たちから遅れること5分。

 スクール水着姿の松下が声をかけてきた。

 

「まぁな。ていうか松下はちゃんと授業受けるんだな」

「ポイント減らしたくないからね。何人かは見学みたいだけど」

 

 ギャラリーを見上げると軽井沢、長谷部が離れて座っているのが見える。

 

「あの二人って仲悪いのか?」

「悪くはないよ。あまり絡まないだけで」

「そうか」

 

 軽井沢は脇腹の傷を気にして見学なんだろうな。

 長谷部は男子のいやらしい視線に嫌悪感を抱いて見学ってところか。

 

「それより男子たち静かだね」

「立花くんが注意してくれたおかげだね」

 

 平田が俺の功績を称えた。

 

「じろじろは見てるけどな」

 

 そればかりは仕方ないだろう。

 なにせうちのクラスは美少女が多い。

 

「しかしなんで四月に水泳の授業なんだろうね?」

「茶柱先生曰く何か意味はあるみたいだけどな」

 

 松下の問いに答える。

 もしかしたら夏に水泳大会があるのかもしれない。

 

「平田、ちょっと来てくれー」

「わかった。それじゃまた後で」

「ああ」

「いってらっしゃい」

 

 男子に呼ばれ平田は駆け足で向かう。

 プールサイドは危ないから滑らないように気をつけろよ。

 

「立花くん」

「なんだ?」

「私の水着姿どう?」

 

 挑発めいた笑みを浮かべる松下。

 

「いいと思います」

「ありがとう」

「でも松下は黒いビキニの方が似合いそうだ」

「……見たいの?」

「見せてくれるなら」

「考えておくね」

「お願いします」

 

 俺って松下相手だとこんなことも言えるんだな。

 中学の時は女子と話そうとすると、いつも幼馴染がいて、ここまで砕けた会話は出来なかったな。

 

「格闘技してただけあって、けっこういい身体してるね」

 

 そう言いながら、松下が俺の胸板をつんつんしてきた。

 くすぐったいからやめてほしい。

 

「筋トレとかしてるの?」

「腹筋と背筋くらいかな」

「偉いね」

「松下も一緒にやるか?」

「やらない。運動はあまり好きじゃないし」

「運動神経いいのに?」

「得意と好きはイコールとは限らないよ」

「そうだな」

 

 俺もキックボクシングが得意だが、別に好きでジムに通っていたわけじゃない。

 あくまで自分を守るためだ。

 今の時代、いつ自分がいじめの標的にされるかわからない。

 うちのクラスを見る限りそこまで心配しなくてよさそうだが油断は禁物だ。

 軽井沢を守るために、俺もそれなりの地位を築かなければならない。

 いじめられっ子など論外だ。

 

 やがて人間とゴリラのハーフのような教師が来て授業が始まった。

 まず先生は見学者が少ないことに感心をしていた。

 どうやら他のクラスは見学者が多かったらしい。

 

 先生が夏休みまでにかなづちの生徒も必ず泳げるようにさせると豪語していたので、夏休みになにかイベントがあるのか質問したが答えてくれなかった。

 茶柱先生と違って狼狽えていたのも面白かった。

 

 授業の内容は簡単なものだった。

 まず全員50Mを泳ぎ、その後男女に別れて自由形の競争が行われた。

 優勝者には5000ポイントが支給されるボーナスがあり、男女とも真剣に泳ぐ生徒が多かった。

 男子の優勝者は高円寺、女子の優勝は水泳部の小野寺だった。

 ちなみに俺は高円寺に大差をつけられての2位だった。

 

「惜しかったね」

 

 息を切らしながらプールサイドに上がると松下に労われた。

 

「いや惨敗だろ」

「相手が悪かっただけだよ」

「ああいうのが化物って言うんだろうな」

「見た目が?」

「身体能力がだよ」

 

 確かに個性的な見た目だが化物と言うのは失礼だろう。

 とりあえず松下がナルシストでマッチョな男はタイプではないことはわかった。

 

 

♦♦♦

 

 

 その日の晩。またしても軽井沢が部屋にやって来た。

 

「今日はどうしたんだ?」

 

 今日は俺がベッドに座り、軽井沢は座布団に腰を下ろしている。

 

「別に何もないけど」

「ないのかよ」

「用事がないと来ちゃいけないわけ?」

「そういうわけじゃないけど」

 

 俺の部屋は軽井沢が楽しめるようなものは何もない。

 節約の為、小説は図書館で借りて、漫画は漫画喫茶で読んでいる。

 ゲーム機もないので、娯楽とよべるものは何もないのだ。

 

「あのさ、また水泳の授業があったら出たほうがいいかな?」

「そりゃポイントのことを考えたら出たほうがいいだろ」

「だよね……」

 

 よほど肌を晒したくないのだろう。

 

「もしポイントがクラス単位だったら、授業を欠席したあたしが責められる可能性もあるのよね……」

 

 もしかして俺の心配性が軽井沢に伝染してる?

 いや、これくらいなら普通の人間も心配するか。

 

「今月は池、山下、須藤がやらかしたから大丈夫だと思うけど」

「山下ってだれ?」

「池と須藤とよく一緒にいるやつだよ」

「山内じゃない?」

「そうなの?」

「うん」

 

 名前間違えて覚えてしまっていたのか。

 失礼なことをしてしまったが、山内から俺は嫌われてるので気にしないことにした。

 

「そんなんだから男子の友達がいないのよ」

「平田がいるだろ」

「平田くんだけじゃん」

「うぐっ」

「あたしを守るためにも、友達増やしなさいよね」

「なんて偉そうないじめられっ子だ」

「うるさい!」

 

 軽井沢は怒鳴りながら俺の右肩を殴りだした。

 こいつ本当に虐められてたのかよ。

 俺にはいじめっ子にしか見えないぞ。

 

「それと松下さんとイチャイチャしすぎ!」

「してないだろ」

「してた。付き合ってないのに距離近すぎるのよ」

「そうなのか」

 

 仲が良いとは思っていたが、俺と松下の距離は近すぎるのか。

 何だか嬉しいな。

 幼馴染以外でこんな親しいと評価された女子は初めてだ。

 

「なにニヤついてんの? キモイんだけど」

「おいキモイは傷つくからやめろ」

「あ、ごめん……」

 

 言いすぎだと自覚したのか、素直に謝る軽井沢。

 急にしおらしくされると調子が狂う。

 

「別にいいよ。話を戻すけどこれからも水泳の授業は休むつもりか?」

「出たいとは思うんだけどさ……」

「出られない理由があるんだな」

「……うん」

「まぁ無理には聞かない。今後も授業があるようなら補習で補えるか聞いてみるか」

「一緒に聞いてくれるの?」

「もちろん」

「……ありがと」

「どういたしまして。補習があれば俺も付き合うぞ」

「なんで?」

「軽井沢の水着姿見てみたいし」

「……っ」

「軽井沢は赤いビキニが似合いそうだな」

「あ、あかっ……ビキニぃっ……」

 

 軽井沢の顔がみるみるうちに耳まで真っ赤に染まっていく。

 この子純情すぎるだろう。

 見た目と中身のギャップがありすぎる。

 

 

♦♦♦

 

 

 一週間後。午前の授業を終えた俺は松下、軽井沢と昼食を取っていた。

 

「今日の小テスト最後の3問だけ難しくなかった?」

 

 松下が言う小テストは3時限目の社会の授業で行われたものだ。

 問題の構成は1科目4問、全20問で、各5点配当の100点満点のテストだった。

 

「難しかった。ていうか解けなかった」

「私も解けなかったよ」

 

 テスト問題のほとんどは中学の復習レベルだったが、最後の3問だけけた違いの難しさだったのだ。

 

「ラスト3問以外は全部解けたから80点は取れてると思うけどな」

「私もそれくらいかな。軽井沢さんは?」

「あ、あたしは、40点くらいかな……」

 

 あの内容で40点なのか。

 もしかして。

 いや、もしかしなくても……

 

「軽井沢ってお馬鹿さん?」

「馬鹿じゃないし! 勉強が嫌いなだけだから!」

「馬鹿なんじゃん」

「立花くん、違うよ。軽井沢さんは、私はやればできる子だって言ってるんだよ」

 

 付き合いが長くなってきたからか、松下も軽井沢を弄るようになった。

 

「そこまで言ってないけど」

「そんなんで中間テスト大丈夫か?」

「やばいかも……」

 

 いじめにあうこともなく平和に学校生活を送れている軽井沢だが、このままでは成績不振で退学してしまうかもしれない。

 

「予習や復習はしてないのか?」

「するわけないじゃん」

「軽井沢はよくこの学校に入れたな」

「喧嘩売ってんの?」

「素直にそう思っただけだ」

「なおさら質が悪いわよ!」

 

 やはりこの学校で問題児の集まりなんじゃないか。

 特にうちのクラスは生徒のバランスが悪すぎる。

 茶柱先生に聞いても教えてくれないし、いつになったらクラス構成の狙いがわかるんだろうか。

 

「とりあえず復習はしておいた方がいいぞ」

「わかったわよ。すればいいんでしょすれば」

 

 素直に言うことを聞く軽井沢。

 しかしこの発言が原因で俺のプライベートな時間を奪われることになるとは思いもしなかった。

 

 

♦♦♦

 

 

 5月1日。今日は入学してから2回目のポイント支給日だ。

 俺は起きてすぐに振り込まれたポイントを確認した。

 

 76000ポイント。

 

 ポイント変動説は正しかった。

 真面目に授業を受けていた俺でこれだけ下がってるのだから、恐らくポイントはクラス単位で変動されるのだろう。

 確認のために平田、松下、軽井沢、佐藤、篠原にラインを送ったが、誰からも返信が来なかった。

 

「まだ早かったか」

 

 時計を見ると5時になったばかりだった。

 ちなみに毎日早起きしているわけではない。支給されるポイントが気になって仕方なく目が覚めてしまったのだ。

 

 一時間ほどして平田から返信が届いた。

 平田も同じく76000ポイントが振り込まれたようだ。

 続けて松下、篠原、佐藤、軽井沢の順で返信がきた。

 やはり支給されたポイントは全員同じだった。

 

「おはよう」

 

 エレベーターを降りるとエントランスに松下の姿があった。

 

「おはよう。俺を待ってたのか?」

「うん。ポイントの話をしたいんじゃないかと思ってね」

「よくお分かりで」

 

 二人並んで学校に向かう。

 

「やっぱりクラス単位だったね」

「だからクラス替えがないんだな」

「だね。詳細は朝のホームルームで茶柱先生が説明してくれるでしょ」

「そうだといいんだけど」

「やっと質問に答えてくれるんじゃない?」

 

 入学してから一ヶ月。

 俺は茶柱先生に質問をしまくった。

 ほぼ10割が未回答だったが、茶柱先生の反応で答えが分かるようになった。

 

「二人ともおはよう」

 

 軽井沢が小走りで追いかけてきた。

 

「おはよう」

「おっす」

 

 運動が苦手な軽井沢はすでに息を切らしていた。

 

「はぁはぁ。二人とも早くない?」

「茶柱先生に早く質問したくて」

「そう考えてると思ってエントランスで待ってたの」

「……やっぱり仲良すぎ」

 

 軽井沢が何か呟いたが、声が小さすぎて聞き取れなかった。

 

「ていうか早朝にライン送らないでくれない?」

「悪い」

「おかげで目覚めちゃったじゃない」

「そうなのか。その割に返信遅くなかったか?」

「お、女の子にはいろいろあるのよ!」

 

 いろいろって朝シャンとメイクくらいだろう。

 

「そうか」

「軽井沢さんも5時過ぎに送られてきたんだ?」

「うん。松下さんは起きなかったの?」

「寝るときはマナーモードにしてるから」

「そうなんだ。眠りに集中したいタイプ?」

「そう。軽井沢さんもマナーモードにしてから寝たほうがいいよ。誰かさんが早朝や夜中に連絡してくるかもしれないから」

 

 ジト目で俺を見る松下。

 だって気になったんだから仕方ないじゃないか!

 

 美少女二人を引き連れて職員室に行ったが茶柱先生は捕まらなかった。

 何やら準備で忙しいらしい。

 仕方ないのですぐに教室に向かおうとしたが、軽井沢の提案で軽くお喋りをしてから向かうことにした。

 教室に着くと、みんなポイントの話をしているようだった。

 自席に着くまでに多くのクラスメイトに声をかけられ、感謝されたり褒められたりした。 

 

「どうやらあなたの考えはあっていたようね」

 

 自席に着くと堀北が久しぶりに声をかけてきた。

 

「思ったよりポイントが減ってたな」

「そうね。これ以上迷惑はかけてほしくないわね」

 

 そう言いながら池たちを一瞥する堀北。

 

「ちなみにポイントの増減について茶柱先生から何か聞いているかしら?」

「聞いたけど教えてくれなかった。もしかしたらホームルームで教えてくれるかもしれない」

「……そう」

「ポイント以外にもたくさん質問したけど、ほとんど答えてくれなかった」

「ちなみにどんな質問をしたの?」

「たくさんあるから何から言えばいいやら」

「なら放課後空けておきなさい」

「え」

「それじゃよろしく」

 

 俺の回答も聞かずに堀北はそのまま自席に戻ってしまった。

 

「これは強制なのか」

 

 堀北みたいな性格の女子は苦手なので断りたいところだが、断ったら怖そうなので我慢することにした。

 

 数分ほどして茶柱先生が入ってきた。

 手にポスターの筒を持っており、なんとも言えない表情をしている。

 いつもはすました顔をしているのに。

 

「これより朝のホームルームを始める。質問は……後ほど受け付ける」

 

 なぜ俺の顔を見た。

 さすがに質問だけでホームルームの時間を潰すつもりはないぞ。

 

「あー……その、なんだ……おめでとう」

 

 急にお祝いの言葉を述べる茶柱先生。

 

「今日からお前たちはBクラスだ」




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