目が覚めたら声出なくなっててオマケにウマ娘になってた 作:何処ぞの魚の骨粉
ふと目が覚めたら、目の前に知らない男がいた、
.........どちら様?
驚いて反射的に声をかけたが、僕の口から出るのは もがもが という唸り声だけであった、
僕の口はガムテープか何かで覆われていたからだ、
身体を動かそうとしても動かすことができない、それもその筈、僕の身体はロープで縛られていたからだ、
(?????)
訳もわからず混乱していると視点が高速で動いた、そして遅れて来る顔の痛み、どうやら僕は顔を殴られ、吹き飛んだらしい、
僕は何故か拉致られて、オマケに暴行をされている、いや、なんでさ...
僕みたいな男誘拐して何がしたいんだ...とも思ったがここで苛ついても何も変わらない、
自分でも何故こんなに冷静でいられるかわからなかったが、今は何をしても無駄だと判断した。
早くこの痛みが終わって欲しい、その想いで
眼を閉じたが痛みが消える事は無かった。
俺がそのウマ娘に会ったのはとある夜、先輩トレーナーと一緒に飲みに行った帰りである、
その日は冬でも無いのに、風が冷たかった、
半ば無理矢理飲まされた様な慣れない酒に吐き気を催しふらふらと歩いていた時の事である、
「......?」
路地裏に大きなずた袋の様なものが見えた、
普段だったら気にもしないであろうモノ、だのに何故か、気になってしょうがなかった、
込み上げてくる吐き気を何とか抑えながらそのずた袋らしきモノに近づき、先程まであった吐き気は吹き飛んだ、
トレーナーである自分には絶対無いもの、その大きな耳と尻尾を見たらどんな物分りの悪い奴でも分かるであろう、
人とは比べ物にならない脚力を持ち、車よりも早く走れ、人間よりも優れた美貌を持ち、この世界で知らない人などいないだろう、そんなまるでアイドルの様な人々を魅了する存在である彼女ら、
「ウマ...娘...?」
そう、ソコには身体中ボロボロの芦毛のウマ娘が死んだように横たわっていた、
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(真っ白な天井だな...)
目を開けると、染み1つ無いであろう真っ白な天井があった、
(ここは、一体...)
暫く何があったのかわからずボーッとしているとふと思い出した、
そうだ!さっきの男は?
そう思いつつ身体を起こそうとすると、天井の様に真っ白な服、おそらく看護服であろう物を来た女性が慌てて駆け寄ってきた、
「目が覚めたんですね...!良かった...」
彼女は心配してくれていたのだろう、だがこの時、僕は彼女の話を一切聞いていなかった、何故なら彼女の頭の上には大きな耳があったからだ、
(??????)
僕は混乱した、え?ウマ娘?何で?
見間違えかと思い目を擦り、再び彼女の頭を見る、
立派な2つの触り心地の良さそうな大きな耳は彼女の動きに合わせ、ふわふわ揺れていた、
......
これは夢だろうと思いほっぺたをつねる、ちょっとした痛みが返って来るだけである、
痛みがあるって事は夢じゃない...?
そこで一つの答えが僕の頭に浮かんできた、
あまり触れた事は無いが、実在の競走馬を擬人化した作品がある、ゲームやアニメまであるその作品のタイトルは ウマ娘 プリティーダービーと言う...
...まさか僕はウマ娘の居る世界に来てしまったのか...!?
嘘だろう、と思ったが何より目の前の彼女がその事が嘘では無いことを物語っている、
「大丈夫ですか...?」
ーっしまった、話しかけてくれたのに何も答えないのは失礼だな...
(すみません、ぼーっとしてて...大丈夫ですよ!)
と、答えたが声が出なかった、
「ーーーっーーーー!」
口から出たのは言葉とは言えない、もはやただの風と同じだった、
代わりに来たのは喉への激痛である、
(どういう事なんだ!喉が凄い痛いしオマケに声も出ないじゃ無いか!)
僕が自分の首を押さえていると、目の前の彼女が深刻そうな顔で言った、
「すみません......落ち着いて聞いてください......今の貴女の喉は声を出す事ができません」
.......え?
じゃあ大丈夫ですか?って聞くなよ...
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「先生!彼女の状態は...?」
俺は近くにあった病院へ気絶していた彼女を運んだ、
病院も直ぐに対応してくれて彼女は今病室のベットで寝ている、
自分も何故彼女があんなところで倒れていたかは分からないが、少し遅かったら大変な事になっていたかもしれない、と聞かされた時は、思わず安堵の息を吐いた、
が、彼女は一向に眼を覚さなかった、
そんな中、病院の先生から話しがある、と言われて今、少し難しそうな顔をして彼は言った、
「彼女の容態ですが、喉へ強い衝撃を与えられたのでしょう...声が出せないです」
「ーーッ!?」
「ですが喉以外は大丈夫でしょう、ウマ娘の自然回復速度はやはり不思議ですね...暫くは通院という形を取らせていただきますね...」
俺はひとまず安堵の息を吐いた、
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看護士さんらしきウマ娘に何故僕が病院にいるのか話してもらった、
彼女の話しを聞くに、とある男性が自分が路地裏でボロボロになって倒れていたところを見つけ、この病院まで運んできてくれたらしいのだ、
...申し訳ない事したなぁ...と、思い思わず俯いた、その時、頭の上にある違和感に気付いた、
何だこれ...?
むしろ何故今まで気付かなかったのか不思議なくらいの大きな違和感、
まさか...
そう思い、頭の上に手を伸ばす、
フサっとした感覚が手に伝わる、随分と大きな寝癖...そんな訳なかった、
そこには 耳 の感覚があったから...
......これって、
目の前の彼女と同じ...?
(ウマ...娘になってる!?)
そう叫んだが、口から出るのはやはり、声にならないただの吐息であった。
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俺は彼女が起きたと聞いて病室へ向かった、
途中、看護師をやっているウマ娘に部屋の番号を聞き、病室の前へ辿り着いた、
手の甲で扉を軽く叩き扉を開ける、
「失礼するぞ...」
と言いつつ部屋に入る、
そこには朝日を眺める美しい芦毛が腰の辺りまで伸びたの少女がいた、
部屋に入ると此方に気付いたのか、俺の方にゆっくり振り返った、
その眼を見て俺は一瞬後ずさってしまった、
彼女はまるで夜の深い海の様な、淀んだ光が一切見えない無い瞳をしていたからだ、
直ぐ姿勢を戻し、彼女に話しかける、
「え、え〜と...目が覚めて良かったよ、君は路地裏で倒れていたんだけど...何か覚えてる事は無いかな?」
そういうと彼女は指先で何かを掴む様なジェスチャーをした、
彼女が何をしているのか、一瞬分からなかった、
......しまった、彼女は喋ることができないはず...
俺は急いでポケットに入れていたメモ帳とペンを彼女に渡す、
彼女はそれを受け取りすぐに俺に返してきた、
早いな...と思いつつ私はその紙に書いてある文字を見た、
紙には わからない
とだけ書かれてあったのである、
色々な質問もしてみたが、内容は全て、
わからない、知らない
だけであった、
...まさか...
とある考えに行き着き、俺はある一つの質問を恐る恐る聞いた、
「君の名前は...?」
すると、彼女の様子が急におかしくなった、持っていたペンが手の間から彼女の横になっているベットの上に滑り落ちた、
彼女は顔を蒼白させて動かなくなってしまった、とっさに背中をさっていると、落ち着きをとりもどしたのか、ペンを取り直した、そして俺にメモ帳を返してきた、そこに書いてあった答えは先程の質問の答えと全く同じモノであった、
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看護士さんのウマ娘が出て行った、
暫く暇だし何もする事がなくただボーッと、窓の外を眺めていた、
コンコンッ
と突然部屋の扉を叩く音がした、
「失礼するぞ」
と言う声が聞こえ、誰が入ってきた、
声かけんなら返事くらい待てよ、と思いつつ
ゆっくり振り向くと、そこにはあまりパッとしない、スーツを身に着けた男が立っていた、
いや誰だよお前、と思ったが当然そんな事言える訳も無く、その男をじっと見つめる、
少したじろぎながら男は僕に話しかけてきた、
「え、え〜と...目が覚めて良かったよ、君は路地裏で倒れていたんだけど...何か覚えてる事は無いかな?」
......?
あ!もしかしてこの人が僕を運んできてくれた人なのか!
とか思ってたら男が急にメモ帳とペンを差し出してきた、
なんだ?これ...ってうわっ酒臭っ
...そういやさっき何か質問してたな...ヤベェ全然聞いてなかった、素直にわかんないって書いとこ、
ささっと殴り書きした わからない と書いたメモ帳を返す、
彼は少し困った顔をしていくつか質問をして来た、
どんだけ質問するんだよ...いくら助けてくれたからって知らん人に色々言えるか!全部知らんとかわからないって書いてやれ!
などとお気楽な事を思いつつ男の質問に適当に答えた、
すると男は急にハッとした顔をして
「君の名前は?...?」
と少し小刻みに震えながらそう質問してきた、おいおいちょっと前に流行った映画のタイトルかよ...僕の名前は.......
...何だっけ...
.....................ボクノナマエッテナンダッケ?
先程の質問を受けている時に何故気づかなかったのか、
自分の名前も、家族の事も、友人の事も、全てが自分の記憶からすっぽりと無くなってしまっていたという事に、
どうしようどうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしよう.......
頭の中が真っ白になったその時、誰かの手が僕の背中をさすってくれた、ふと横を見ると先程の男が心配そうな目で此方を見つめていた、
なんでこの人は見ず知らずの僕をここまで見てくれるんだ...
少し申し訳ない気持ちになって僕は思わず
(ありがとう...)
と呟いたが、自分の喉を通るのは乾いた風の様な声にならないモノだけであった、
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間違いない、このウマ娘は...彼女は記憶喪失だ、彼女の背中をさすりながらそう思った、
家や家族もわからずオマケに自分も名前もわからないと答えた、きっと彼女の心の中は混乱してるに違いない...
今思い返すと我ながら随分と勝手な事をしてしまったのだろうと思ったが、この時は自分の中は、何とかしなくては!と言う気持ちでいっぱいであった、
彼女の力になってあげたい、自分にできる事は無いか!?
その一心で俺はあと先考えずに思わず彼女にこう言っていた、
「そうだ!君!トレセン学園に来る気はないか!?」
彼女はキョトンとした顔をして俺の顔を見つめていた、
これが俺の担当する事となるウマ娘との出会いである。