鬼殺隊の鉄砲鍛治《ガンスミス》   作:ヨシフ書記長

1 / 1


どうも、ヨシフです。
何とか生きておりまする。ワンピースなどほかの2次に詰まったので息抜きにやっていきまする。駄作ですが…

どうぞぉぉぉぉ!


玄弥が銃を手にした理由

ある藤の香る山のある開けた所で…

「やァァァ!」

 

青竹にひたすら木刀を打ち込み、青年は顔に汗を滲ませながら肩で息をする。

そんな青年を木の影から見ていた大男がこう言った。

 

「南無…玄弥…少し話がある…」

「あっ…悲鳴嶼さん…わかりました!」

 

玄弥は悲鳴嶼に言われるまま、ついて行くのだった。


 

日輪刀を作る職人が隠れ住む里のハズレのハズレ

硫黄臭い煙の奥に洋館風の建物があった。入口には硫黄反応で変色した鉄扉とむき出しのレンガの壁がそびえ立つ。そこに1人の訪問者が…

 

「鉋焔さーん!何処にいるんですかー!」

 

ひょっとこのお面をつけた少年は重い鉄扉を開け、家の中に入ると大声で言った。すると…何処からともなく

 

「鉋焔様はあちらに…あちらに…」

 

黒服姿の人が現れた。しかも、それは黒い服でわかりにくいが、不自然な形の腕で必死に奥の方を指さしていた。

 

「あ…ど、どうも」

 

少年はドギマギしながら、その指さされた方向へ進むと…。静寂を壊すかの様にタァーン!という発砲音が湯けむりの中を響き渡った。

 

「鉋焔さん!」

 

少年が声をかけた先には黒子を3人引連れ、砂山に向かって固定した鉄砲を発射する男の姿があった。

 

「もう1発〜引いてみろ」

 

男がそう言うと、黒子は手元の縄を勢いよく引いた。

すると…!バカンッ!という破裂音に似た音が響き、銃身が破裂してしまった。

 

「やっぱりダメだっかぁ〜。惜しいなぁ〜。もう少し銃身の耐久性を上げるしかねぇなぁ?なぁ?おい?」

 

男は固定していた銃を外し、マジマジと見るとそう言った。周りにいた黒子達は返事をする様に頷くと、壊れた銃を男から受け取りはけていった。

 

「鉋焔さん!」

「ん?おお、なんだ!小鉄か!どうした?鋼鐵のバカが俺を殺しにでも来たか?」

「違いますよ!岩柱様からお手紙が届きましたよ!」

「ん?悲鳴嶼から?何の用だよ?」

 

小鉄から受け取った手紙を開けてみると、鉋焔は目を細めながらこう呟いた。

 

「ふぅん、なる程ねぇ〜。もうそんな頃合いかい」

 


 

目を布で覆われた玄弥は、真っ暗な視界の中で悲鳴嶼から言われた事が反芻する。

 

「南無…。玄弥…気を落とさず聞け。残念だが、お前には呼吸の才能がない…」

 

悲鳴嶼からのその言葉に玄弥は強いショックを受けた。「才能がない…。才能がない…」と言う言葉だけが…ナイフの様に心にグサグサと刺さっていく。

玄弥は魂が抜けた様に呆然となる。その様子を感じ取った悲鳴嶼は、合掌しながら数珠を鳴らすとこう言った。

 

「しかし、気を落とす事は無い。玄弥よ…。鬼を倒す方法は何も呼吸だけではない」

 

悲鳴嶼の言葉に俯いていた顔を、バッと向けると玄弥は縋り付くような声でこう言った。

 

「ほっ、本当ですか…?呼吸以外にも方法が…?」

「南無…。うむ…まだ確立されたものでは無いがあるにはある」

「そ、それは一体…?」

「それは…私よりも当の本人から聞く方がいいだろう」

「当の本人…?」

「ああ…その方法を生み出した男だ…。玄弥…お前には暫くその男の元へ行ってもらうことにした…南無」

「その人は何処に?」

「刀鍛冶の里にいる。私から手紙も送ってある…南無。隠がもうすぐお前を迎えに来るだろうー」

 

玄弥はその後すぐに岩柱の屋敷に来た隠に連れられ、刀鍛冶の里へと向かった。

 


そんな事を思い出していると、引っ張られていた手が離され歩みが止まった。

そして、隠がこう言った。

 

 

「で…では、目隠しを外させて頂きます」

 

目隠しが外されると、目の前には鉄の扉とレンガの壁があった。

 

「こ…これにて失礼します!」

「ああ…」

 

玄弥が凄むように返事をすると、隠はそそくさと帰っていった。1人残された玄弥は開けるべきか悩みながらも、鉄扉をどんどんと叩きこう言った。

 

「すみません…!岩柱様からの紹介出来たんですが!」

 

玄弥がそう言うとガチャリと鍵が外され、ギィッと扉が少し開けられた。中から黒い布を被った者達が現れた。

 

「ようこそ、玄弥様…岩柱様から聞いておりまする。当屋敷の主が中でお待ちです。どうぞ、中へ」

「あ、ども」

 

玄弥は恐縮しながらも扉の中へと進む。鉄扉の向こう側にはレンガで作られた洋館があった。

玄弥は玄関の扉へ手をかける前に、ゆっくりと扉が音も無く開けられた。その扉の先は真っ暗な闇が広がっていた。それを見た玄弥は生唾をゴクリと飲むと足を前へと進めた。

 

玄弥が屋敷の中へ入ると、玄関の扉がバタンと急に閉まった…。それにビクッとなったが、ゆっくりと辺りを警戒した。すると、真っ暗だった屋敷に灯りがつき始めた。外の立派な作りに違わぬ立派な内装が施されていたが…玄弥は廊下の壁やそのそばに置かれたものを見て、目を大きく見開いた。

 

壁には火縄銃からマスケット銃、フリントロック式ライフル、ボルトアクションライフル…更には機関銃まで所狭しと飾られていた。

その周りの光景に引きつつも玄弥は悲鳴嶼の言葉を思い出す。

 

「鬼を倒すのは何も呼吸だけではない…」

 

その言葉の意味を初めて理解したような気がした。すると、廊下の奥からフルートの音色が聞こえてきた。

玄弥はその音に導かれる様に廊下の奥へと進むと、書斎と書かれた部屋に着いた。ドアノブに手を掛け、ゆっくりと開けるとそこは本や紙の束など溢れ返っていた…。その真ん中に置かれた洋机の上で蓄音機がフルートの音色を流していた。近くにはそのレコードの入れ物が置いてあった。

玄弥はそれを手に取ると曲名をじっと見た。すると、自分の後ろから声が響く。

 

「いい音だよなぁ、このレコード…気に入ってんだ。あの子爵様がまさかこんないい曲を作曲するとは思わなかったぜ」

 

玄弥は何処か聞き覚えのある声に慌てて、後ろを振り返った。そこには一人の男が立っていた。

 

スーツに身を包み、頭にはハンチング帽を深く被り、靴は拍車のついたウエスタンブーツを履いて、顔には般若の面をつけた男が立っていた。

玄弥はそんなチグハグな格好の男の登場に、驚いていると男は言った。

 

 

「お前が悲鳴嶼の継子の玄弥だな?」

 

その男がそう言うと、玄弥はドギマギしながらこう言った

 

「ええ、岩柱様の元で修行させてもらってる玄弥です」

「おっと、自己紹介がまだだったな。この屋敷に住んでる鉋焔だ、ヨロシクな、ボウズ」

「よろしくお願いします」

 

鉋焔は書斎室の椅子に腰掛けるとさらにこう言った。

 

「俺は鬼殺隊の開発局局長ってのをやらせて貰ってる。例えば、お前の着てる隊服の生地とかはうちが作った」

「そ、そうなんすか」

「あとは財産運営の為に会社運営もしてる」

「え…?」

 

鉋焔の言葉に玄弥は困惑する。「財産運営…?」何の事だろうとハテナが頭の上に沢山出てくる。そんな様子を見て、鉋焔はこう言った。

 

「お前は不思議に思わねぇのかァ?このご時世に刀をぶら下げて、あんな特徴的な隊服を着た奴らが彷徨くのを、陸軍や警察が不審に思わねぇとでも思うのかよぉ?」

 

鉋焔は少しバカにしたような雰囲気で玄弥を見つめる。

玄弥は鉋焔の言葉に衝撃を受けた。

確かにそうだな…っと今まで気にした事が無かったが、確かに鬼の存在を知らない一般人から見れば自分達は異様に見える。

 

「だから、そう言うのを目をつぶってもらう必要があるのさ。例え、御館様のお家が代々続く名家だったとしても…それが通用したのは江戸時代迄だ。今の世の中にゃあ、効き目が薄い。それにィ…鬼殺隊の運営をするには莫大な資金がいる。御館様のお家が裕福でも限度がある。財産のな?だから、会社運営もしてる」

 

「な…なるほど」

「んで、運営してる会社の名はなぁ…藤乃家株式会社だ」

「藤乃家?」

「あぁ…御館様の名前で会社を作る訳にゃぁいかねぇからな、んで、うちの会社の大元な財源は化学工業だ…火薬製造のな」

 

玄弥はその事を聞いて…少し考えた後驚いた様に目を見開く。

 

「そうだ、この会社の作った火薬を納めてるのは軍だ。だから、多少の事は目をつぶってくれるのさ…。まぁ、他にも色々してるんだが、それは置いておこうか」

 

鉋焔はそう言うと、ポケットから石ころを出して玄弥に見せた。

 

「これが何か分かるか?ボウズ?」

「これは…。どっかで見た気が…」

 

玄弥は思案顔してたが、鉋焔は冷めた様な目線を玄弥に向けながらこう言った。

 

「コレはなぁ?狒々緋鉱石だ。最終選別でお前は見たはずだぞ?それともぉ?御館様の御子息に手をかけたから覚えてねぇのかい?」

 

鉋焔の言葉に玄弥は俯きながら、気まずそうに上唇を噛む。

 

「お前さんが何を焦ってるのは知らんが…女子供に手を挙げてしまったら、おしまいだろうがァ?違うかぁ?」

 

鉋焔の言葉がグサグサと玄弥に突き刺さる。そんな様子を見て、鉋焔は少し溜息をつき、立ち上がるとこう言った。

 

「それで?お前が来た理由は悲鳴嶼の手紙から知ってるが…。お前さんはどうしたいんだ?」

「え…?」

「鬼を倒す理由だぁ…何の目的で倒す?何でそんなに力が欲しい?ん?」

「そ、それは…」

 

玄弥は鉋焔の言葉に中々見合った返せる言葉を出せなかった。

 

「早く答えないと、この話はお流れだァ…。さっさと帰ってもらおうか?」

「ッッ!」

 

鉋焔はそう言うと背を向けた。玄弥はそれを見て吐き出すようにこう言った。

 

「に、兄ちゃんに謝りたい!俺の言った事で傷ついた兄ちゃんに会って謝る為に鬼を倒せるようになりたいんだ!」

 

玄弥が目に涙を浮かばせながらそう言うと、鉋焔はこう返す。

 

「ほう、そうかぁ…その為に焦ってんのか…。よぅし、良いだろう」

 

鉋焔はそう言うと玄弥の方を向くと、入口に歩き始めた。

 

「おい、ちょっとこっちへ来い」

「は、はい!」

 

玄弥は袖で涙を拭うと、鉋焔の後をついていった。

 

「お前も気づいてるだろうが…鬼を呼吸以外で倒す方法ってのは銃での倒し方だ…」

 

鉋焔は廊下の壁に飾られた銃を見ながらそう言う。

 

「戦国時代にあった種子島銃では確かにぃ?この威力では鬼は殺せきれんだろうし、装填するのも遅かった…。だからァ、銃を使った戦法は生まれなかったんだろう。例え…抱え大筒であったとしてもだ

しかぁし!鬼殺隊が鬼を殺す為に呼吸法を編み出したのと同じく、銃とて進化する。効率的に敵を殺傷する為にな?」

 

鉋焔は玄弥に力説しながら、銃を指刺してそう言った。

 

「玄弥、そういやお前…銃を触った事あるか?」

「い、いえ。無いです!」

「お、そうか…。んじゃあ…」

 

鉋焔はそう言うと壁に近づき、壁を押した。

すると、突然!

 

「え?」

 

玄弥は自分の足元を見ると、先程まであった床が消え去り。深い深い闇がこちらを覗いていた。

 

「ちょっとした訓練を受けてもらうしかねぇな」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「安心しろぉ、お前がソコから生きて帰ってこれたら、お前用の銃を用意しといてやるよぉー」

 

玄弥はそのまま真っ暗な闇の世界へ吸い込まれる様に落ちて行った。

 


 

水が滴る音が響き渡る

 

「うう……。はっ!」

 

玄弥は顔を濡らす水滴で目を覚ますと、慌てて周りを見渡した。そこは真っ暗だったが、段々ぼんやりと目が慣れ始めた。

どうやら、大きな鍾乳洞の様な空間だった。

 

「と、取り敢えず、早く出口を探さねぇと…」

 

玄弥はふらつきながらも立ち上がると、ゆっくり前へ進み出した。

しばらく歩くと、光が見えてきた!

 

「…!」

 

玄弥はその光の漏れる方へ慌てて走り出すと…洞窟から外へ出れた。

しかし、洞窟をぬけた先に拡がっていたのは、薄暗い山の中だった。

どうやら、鉋焔の屋敷の裏にある山の様だった。

玄弥が困惑していると、足元に手紙と風呂敷に包まれた何かが置いてあった。その手紙にはこう書かれていた。

 

(風呂敷のやつを担いでこの山から無事に出れたら、銃を作ってやる。まぁ、頑張れ)

 

玄弥が風呂敷を開くと、そこには銃架から取り外されたマキシマム機関銃が鎮座していた。そして、もう1つは散弾銃と弾が十数発あった。

玄弥が散弾銃を手に取り弾丸をポケットに入れ、風呂敷を包み直し担ごうとすると、あまりの重さに玄弥はよろめいた。

 

「ぐっ…クソ!」

 

重さのせいか1歩1歩がまるで老人のような足取りになりながら、歩みを進め始めた…。すると、森の中から不気味な声が響く。

 

「ようこそ、我が巣へ…!この山は仕掛けだらけの死の山だ!無事に降りれるかな?フゥハハハーハァー!」

「ハァ…ハァ…なんだと!?」

 

玄弥がそう言うと少しよろめき足を横へずらした瞬間!何かが切れる音と共に丸太が前から向かって来た!

 

「うぉ!」

 

玄弥は避けようとしたが、背負ってるものの重さで上手く動けず丸太に跳ねられて後ろに吹き飛んだ。

 

「ぐぅ!」

 

風呂敷のせいで上手いこと受け身も取れず、マトモに衝撃を体に受け身体から空気が全部口から抜けた。

 

「げぇっほ!げっほ!おぇぇぇ!」

 

食道からせりあがってきたものを吐き出すと呼吸を整えた。

 

「ハァハァ…クッソがぁ!」

 

玄弥は悪態をつきながら立ち上がろうとしたら。何かが折れる音と共に横向きになった青竹が、まるで鞭のようにしなりながら玄弥に迫った!

 

「うわっ!」

 

慌ててしゃがんで回避したが、また戻ってきた青竹の枝が玄弥の頬を掠めた。

たらりと流れる血を触り、玄弥は言った。

 

「そうか、わかった。そう簡単には銃を使って鬼を倒せねぇってことか!」

 

玄弥は決意するように叫ぶと、あの重たい風呂敷を担いで立ち上がり前へ進み出した。多数の仕掛けを作動させながら

 

「兄ちゃんと一緒に戦えるように…!俺はなるんだァ!」

 

 

 

そして、夜明け…玄弥は青アザや擦り傷、切り傷だらけになりながらも、山の入口まで半分の距離に来ていた。

 

「あと少しだ、あと少し…もうすぐで入口のはずだ…」

 

玄弥は満身創痍の様相を呈していたが、それでも前に進んでいた。

すると、急に玄弥にめがけ何かが飛んできた!

 

「うぉ!うっ!」

 

玄弥は避けきれず、肩にそれに当たった…。当たったそれは矢先を布でくるんだ矢だった。すると、また森の中から声が響く。

 

「貴様は今ので肩甲骨の靭帯を損傷した。それでは刀も何も持てんぞぉ?未熟者が」

 

その声の主は、ある木の上から飛び降りて姿を現した。それは鉋焔の屋敷で案内してくれた黒子だった。玄弥は困惑するとその黒子は言った。

 

「俺の名は刑部!貴様の身のこなし!あれでは実戦で戦えん!例え藤襲山で戦い抜けたとしても、あれはまだ序の口だァ!貴様がまだ見た事のない襲われる本当の襲われる恐怖を教えてやろう!」

 

刑部はそう言うと跳躍し、また木上へ戻って行った。そして、声が響く。

 

「さぁ、散弾銃を使って応戦しろ!私に当てれるものならな!フゥハハハーハァー!」

 

また何かの切れる音と共に、丸太が玄弥に向かって振り下ろされる!

 

「クソっ!」

 

玄弥は悪態をつきながらも必死に避ける。しかし、避けた地点を分かっていたかの様に矢が飛んできた!

 

「うわ!」

 

矢は玄弥の胸に当たった。すると、また声が響く。

 

「これで貴様は胸を貫かれた。本来ならば、肺に血が溜まって息も出来なくて呼吸法も使えん。まさに死に体…鬼の餌だ…!貴様!その片手に持ってる物はなんだ?

それを使って応戦しろ、生きたいのなら何が何でも撃て!気を抜くな!

日露戦争じゃあ…その一瞬の気の迷いが自分の死に繋がり、戦友を危険に晒すのだ!」

 

刑部が言い終わると、また縄の切れる音ともに仕掛けが作動する。

玄弥はそれを避けると、矢が同じように飛んできた!

しかし、玄弥は慌てずに散弾銃をサッと矢に向けて発砲する!

 

「ぐぅ!」

 

ズシンとくる反動に呻き声を漏らしたものの、矢を破壊することに成功する。

 

「そうだ、そうやって応戦しろ!気を決して抜くな!気を抜くのは死ぬ時だけでいい!」

 

また縄の切れる音と共に仕掛けが作動するのだった…!

 

 


 

玄弥が山に入って1週間後…

 

〜鉋焔side〜

 

鉋焔は書類仕事に精を出していた。

 

「鉋焔様、こちらは今期の決算書です」

 

黒子に渡された書類に目を通すと、鉋焔は判子を押す。

 

「九州の炭鉱の調子はどうだ?連中に怪我人とか出てねぇか?」

「はい、大きな炭鉱事故は今の所何も起きておりませんが、安全に関してはこれからも徹底させます」

「そうか、各路線の販売所の調子は?」

「それは概ね順調であります。藤の花家紋の方々を適度に雇うことによって、支援者にも金を稼げるようにしております」

「よし、それでいい。支援者が居ねぇと地方での戦闘で傷ついた隊士を救えんからな…。幾ら助けた恩があったとしても、ずっと甘える訳にはいかんからな」

「その通りでございますね…。それと…鉋焔様…。招待状が届いております」

「招待状?」

 

鉋焔は黒子に渡された便箋を受け取ると、まじまじと眺めた。そして、封蝋のマークを見てこう言った。

 

「宮内省からだが…。成程、差出人は"陸軍卿"山縣有朋さんかい…。また何か無茶言いたいって所かねぇ?」

 

仮面の奥で喉を鳴らしながら笑うと、鉋焔はそう言った。

 

「お前も着いてくるかい?"土方"?」

 

鉋焔は後ろに控える長身の黒子に向かってそう言った。"土方"と呼ばれた黒子はその言葉にこう返した。

 

「生憎、その日は隊士を鍛える日なので遠慮する」

「そうかい、それならいいぜ」

 

鉋焔はそう言うと、また書類に向かおうとしたその時ー!

部屋の扉が勢いよく開けられ、ボロボロの玄弥が転がり込むように入って来た。

 

「や、約束通り…!お、下りました…!」

「おー、やるじゃねぇか。ボウズ、あの刑部の山から生きて下りて来れたとはな」

 

鉋焔は立ち上がり、玄弥に近づいた。

 

「多少は体力と射撃の腕はついたようだな」

「は、はい」

「んじゃ、約束通り銃を渡す前に…。おい」

『はっ!』

「温泉にぶち込んでこい。垢を綺麗に落として禊済ましてから、銃は渡してやるよ」

「え…?」

 

玄弥は困惑する間もなく黒子たちに抱えられ、温泉へと連行されるのだった

 

 

 

玄弥は連行された温泉にゆったりと浸かりながら、この猛烈な1週間を思い出しながら痛む身体を労る。

 

「早く出て…。早く銃を受け取らねぇと…」

 

玄弥は重い身体を起こすように、露天風呂からゆっくりと腰を上げ脱衣所へ向かった。

 

「玄弥様、こちらをお召しください」

「あ、はい」

 

何処からとも無く現れた黒子が隊服を手渡してきた。玄弥はそれに着替えると、黒子は何やら白い液体の入った冷えた瓶を渡してきた。

 

「こちら、藤乃家株式会社の新製品、セーキになります。よく振ってお飲み下さいませ」

「え、あ、どうも」

 

玄弥は吃りながらも瓶を受け取った。それは白い冷気の出るくらいに冷やされていてすごく驚いた。玄弥はそれをよく振るとキャップをとって飲んだ。

それは火照った身体に染み込むように浸透した。そして、一気に飲み干すとこう言った。

 

「うんッめぇぇぇ!」

 

あまりの旨さに玄弥が叫んでると、声が響いた。

 

「おーおー、そこまで元気になったのなら作ってる甲斐があるな」

 

鉋焔はそう言うと玄弥にさらに言った。

 

「さて、銃を渡す前にだ…。お前が今から手に入る力はお前自身の力ではない。いいか?銃の性能が良いからって慢心だけはするな?わかってるな?

決して驕り高ぶるな…。謙虚に地道に自身を鍛えてやっていけ、いいな?」

「はい!」

「よぅし、なら着いてこい」

 

玄弥は鉋焔の後を着いて行くのだった。

 

 

 

 

連れてこられた先には、広場のような所だった。その真ん中にはポツンと置かれた机と布に隠された銃…その奥には標的のカカシがあった。

 

「さぁて、お前にやる銃だが、少し謝らないといけないことがある」

「え?」

「それはこの銃は完成品ではないという事だ」

「それは…どういう」

「簡単に言えば試作1号型って事でもある。まぁ、とりあえず見てもらおうか」

 

鉋焔が机の上に被されていた布を取り払うと、そのには短く切り詰められた散弾銃が鎮座していた。

 

「ウィンチェスターモデル21…。そいつは元アメリカ製の水平2連式散弾銃だ」

 

鉋焔はそれを持ち上げるとこう言った。

 

「堅牢な作りな上に改造もしやすい。銃身を切詰める事で至近距離でも散弾が散開する。ストックも切り詰めるだけでいいかと思ったが、ピストルの様になるべく手に馴染むように特別製を作った」

 

流れるように鉋焔はそう言った。さらに鉋焔は弾を並べるとこう言った。

 

「さて、ここら辺はただのソードオフ・ショットガンの説明だが…。ここからがミソだ」

 

鉋焔は弾を玄弥に見せてこう言った。

 

「これは日輪刀と同じ、猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石出てきている。弾丸版の日輪刀という訳だ。更に…日輪刀の鋼にはある特色がある…小僧1回撃ってみろ」

 

鉋焔は玄弥に銃を手渡す。玄弥は受け取り、奥に見えるカカシに向かって構えると発砲した!

 

すると、その軌跡は赫く輝いていたように見えた。

 

「気づいたか?この鋼はある一定量の圧力と熱が加わると赫く輝く。これを可能にするために発射薬を特殊に配合する事で対処した。これはな、鬼を一撃で葬れる方法の可能性一つなのさ」

 

玄弥は鉋焔の言葉に愕然とした。何も証明されていなくとも何故かすごく説得力があったからだった。

 

「さぁて、散弾銃のゲージは12ゲージだ。それで3種類の弾丸を用意した。1つはさっきお前が撃ったやつのバックショット、そして、遠距離用のライフルスラグ弾、もう一つの種類はこれだ」

 

玄弥に見えるように鉋焔はある物を見せた。それは2個の鉛玉がワイヤーの両端につけられているものだった。

 

「こいつはァ…まぁ、なんと言うか…これも試作品だが…。まぁ試しに使ってみろ」

 

それの入った弾を鉋焔は玄弥に手渡し、それを銃に装填した玄弥はカカシに向かって発射した!

 

心地よい発砲音と共に、弾の内部に仕込まれていたそれが回転し始めると、ワイヤーを伸ばし始めた!

そのまま、カカシにそれが激突すると着弾した所より上が破断した!

 

「うわ!」

「こいつは特殊弾だ、簡単に言えば切断専用弾と言うべきかな?発射することにより両端の鉛玉がワイヤーを伸ばして、着弾した対象を断ち切る。中々にいい代物だろ?」

「切断専用…」

「おっと、これは大量生産は難しいからな…精々お前に渡せるのは10発だ」

「すげぇッスよ…それでも」

「おー、気に入ってくれたようで嬉しいぜ」

 

鉋焔は仮面の奥で笑う。少し声のトーンを落としながらこう言った。

 

「だが、少しその銃には弱点があってなぁ…」

「弱点?」

「あぁ、その方式の性質上…どうしてもその弾を装填する箇所が脆弱になりやすくてな。下手すりゃ暴発したら吹き飛ぶ可能性がある。しかも強力な火薬を使用できないこれ以上はな…。その分給弾不良は起きにくいが…」

「そ、そうなんすか…」

 

玄弥は手にある散弾銃を眺めながらそう言った。

 

「ま、だから、これは試作品なのさ…安心しろ。ちゃんと完成品はお前に渡す。だが、今のままでは俺の気が収まらん。そこでだ」

 

鉋焔は指を鳴らすと、すっと黒子が現れ小さなトランクを机に置いた。

 

「開けてみろ」

「は、はい」

 

玄弥が開けると、一丁のピストルと弾丸があった。

 

「そいつァ、モーゼルC96。ドイツ製の自動拳銃だ。連射性能も最高。威力も抜群。鬼に対しても足止めなどには使えるだろう。この弾丸も散弾と同じようにしてある」

 

玄弥が呆気に取られていると、鉋焔は続ける。

 

「完成品を渡せねぇ、俺なりの詫びだ…。サイドアームとして使ってくれ」

「あ、ありがとうございます!」

「弾が任務終わりで少なくなったと思ったなら、鎹鴉を使って俺に伝えろ。黒子が即日届けに行く」

「あ、あの、」

「なんだ?」

「完成品って言ってますけど、この銃みたいに既にあるやつを改造するのじゃあダメなんすか…?」

「くふっ…ふふふふ…」

 

玄弥の言葉に鉋焔は笑を零す。

 

「す、すいません。気を悪くしましたか?」

「い、いや…面白いことを言うやつだと思っただけだ」

 

鉋焔はそう言うとさらにこう言った。

 

「お前の命は妥協出来るのかと思っただけさ、お前はそれを使って鬼退治をするのに、不具合があったせいで死んでしまったら無念じゃねぇか?」

「そ、それは」

「安心しろ。完成品は極上の品を用意してやる。"創造神"に頼んだからな」

 

玄弥はその言葉になにか引っかかりつつも、自分の銃を眺めた。

 

「さぁ、これから踏ん張れよ。ボウズ…!これでいっちょまえの隊士では無いかもしれんが、お前の兄貴とのスタートラインには立てたぞ」

「はい!」

 

玄弥は嬉し涙を流しながらそう返事するのだった

 

 

 

 

玄弥が帰ったあと・・・・,

 

「なぁ、刑部…。お前から見てあいつはどう写った?」

「それはどういう事でしょう?」

「戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争を経験したお前にあいつはどう写った?」

「あれが新たな時代の担い手なのだというのであれば…合格点ですな」

「そうか、ご苦労さん、刑部」

「いえ、こちらこそ」

 

鉋焔と刑部は何故か目を細め合うのだった。

 

 


 

それから半年後ー 場所はアメリカ合衆国

 

「郵便でーす!」

 

ある一軒の邸宅に郵便局員が尋ねてきた。それに気づいた黒人の家政婦は郵便物を受け取ると、家主へ渡しに向かう。

 

「旦那様…郵便物が届いております」

「そこへ置いておけ」

「わかりました」

 

家主は大量の設計図を訂正したり、書き直したりしていた。暫くすると、煮詰まったのか家主は席を立つと。郵便物を見てため息を吐く。

 

「ベネットめ…くだらん事を…」

 

忌々しそうに郵便物を投げ捨てると、一通の手紙が飛び出した。

 

「む?」

 

家主がその手紙を持ち上げ、差出人を見るとこう言った。

 

「ホーエンハイム…!生きてたのか!」

 

家主は嬉しそうにそう言うと、手紙の内容を見て更に顔を綻ばせる。

 

「メリー!メリー!」

 

家主は家政婦の名を叫ぶと

 

「なんでしょうか、旦那様」

「今日はとてもいい日だ、バーボンの入れた紅茶を至急持ってきてくれ」

「かしこまりました。Mr.ブローニング」

 

家政婦はにこやかに去っていくのだった




大正時代って夢がありますよね
調べたら鬼滅の刃の時代は第一次世界大戦前なんすね。ギリギリ

急に始まるコソコソ大正話

今回はジョン・ブローニングおじさん
この人を簡単に説明すると、なろう系主人公、強くてニューゲームって感じの人
レベルが違いすぎる。チートだよ、チート。彼の設計した機関銃は未だに現役でアメリカ軍も我が国も使ってる。絶対この人、未来人だよ
我が作品内では取り敢えず、玄弥くんのショットガンを設計してもらおうと思ってる。
玄弥くんのショットガンがシュワちゃんの持ってたレバーアクション式になる日も近い。

感想をお待ちしておりまする。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。