ついに満月の日が訪れました。この日のために殿は道順を覚え、脱出の手順を何度も何度も頭の中で繰り返しました。
勝負は一回限り。失敗すれば二度と脱出の機会は訪れないと思うと緊張してしまいます。
いつもと違う様子の殿に城娘たちは不審に思いますが、殿は最近戦ばかりで疲れているので夜に月を見ながら宴を開こうと言いました。
城娘たちは宴の準備に大忙しとなり殿の様子の変化は見過ごされました。
宴が始まると城娘たちが自分の地方の名物を持って殿の周りに集まります。
殿は美味しい料理と美しい城娘たちに囲まれて本来の世界に帰りたいと思う気持ちが揺らいでしまいます。
宴の場から抜け出して空を見上げると満月が浮かんでいました。満月を眺めていると近くに何かの気配を感じました。
声をかけると一人の城娘が姿を現しました。彼女は忍者であり殿の警護をしていると答えました。
警護の内容を聞いてみると殿の気づかないところで殿は監視されていることが分かりました。
何にも縛られずに空に浮かぶ満月と比べて自分の現状は余りにも窮屈だと感じた殿は改めて脱出の意思を固めました。
宴の場に戻り城娘たちとの食事を再開していると神娘の一人が殿に目配せをして退席しました。
その後しばらくすると城娘が演習用に保管していた兜の人形が動き出して暴れているとの報告を持ってきました。
殿は城娘たちに周辺の封鎖と人形の制圧を指示しました。そして自分は厠に向かい準備ができ次第すぐに向かうと伝えました。
厠に入ると殿はすぐさま壁の一部に手をつきました。すると壁の一部が外れて外への抜け穴ができました。
殿はあらかじめ抜け穴を作るのが得意な海外の城娘に依頼して秘密裏に緊急用の抜け穴を作ってもらっていたのでした。
抜け穴から外に出ると殿は穴をふさぎ、兜の人形が暴れているのとは反対の方向にある裏門へと向かいます。
裏門は三人の幼い城娘たちが警備をしていました。殿は兜の人形が暴れているのでそちらに向かうように指示を出しました。
三人は指示に従おうとしましたが一番年上の城娘は警護もつけずに現場に向かおうともしない殿の行動を不審に思い、武器を抜いて殿に現場へ一緒に向かうように言いました。
殿はそれはできないと言い、懐から神娘から貰った招城符を抜き放ちました。
殿の手から放たれた招城符は光を放ち、光の中から槌を持った青くて長い髪の城娘が現れました。
「御城道とは守ることと見つけたり。」
そういって青い髪の城娘は三人の城娘たちに向かっていきます。
青い髪の城娘は売店でしか売っていない雷をまとった槌を持っていました。突然現れた城娘に驚いた城娘たちはたちどころに打ち倒されてしまいます。
「ううう、水害の影響だね。」
「焼き尽くされたトラウマが~。」
「火は駄目ぇ、あああ燃えるぅ。」
殿は青い髪の城娘に一緒についてきて欲しいと頼みます。
しかし青い髪の城娘は首を振り、指をさします。
指をさされた方向から騒ぎを聞きつけたほかの城娘たちがやってきていました。
青い髪の城娘は時間を稼ぐので殿に先に進むように言いました。
「皆さんは私が守ります。」
守りの計略を発動させた青い髪の城娘に礼を言い、殿は裏門から出て鳥居を目指します。