晩御飯を食べ終えて食器を洗いながらソファーで寛いでいるクリスを見ていた。クリスは今日記帳してきた通帳を見ながらぶつぶつと呟きながら何か考えている。そう言えばシンフォギア奏者は特異災害対策機動部からのお給料は結構貰っている。俺もオペレーターとして働いている、アルバイト代もこれまで掛け持ちしてたアルバイトの月の給料よりも遥かに多く貰っていて驚いた。たぶんクリスは俺よりもたくさん給料を貰っているだろう。
「よし、空明日出かけるぞ!」
「明日? 突然だね」
「どうしても欲しい物があるんだよ。空は結構力持ちだったよな」
「うん、普通の人よりも力持ちだと思うけど。どうして聞いてきたの?」
「明日それを買って持って帰って貰おうと思ってな」
「成程、荷物持ちね。うんいいよ、明日楽しみにしてる」
突然クリスからデートの誘われた。それもなんと初デートだ。これまで特異災害対策機動部で仕事をした帰りにスーパーなどに寄ってお買い物をする事はここ最近やったけど、休みの日に1日クリスと出かけるって事はちゃんとしたデートだろう。まさかクリスから誘われるとはな、俺はここ最近デート雑誌を読んでクリスが喜びそうなデート場所を探したり、響ちゃんや未来ちゃん女の子が喜びそうな物や最近流行しているスイーツなどを聞いてじっくり考えていたが、俺は未だにクリスをデートに誘った事はなかった。クリスにデートに誘われた事はとても嬉しいけど、男として初デートは自分から誘いたかったな、じっくり考え過ぎたのか……悔しい!!
「どうしたんだ空、難しい顔なんかしてよ」
「いや、何でもない。ちょっと明日着ていく服を少し考えていただけよ」
「服なんかいつもどおりでいいんだよ」
「そうかいつもどおりだね」
“いつもどおり”難しい言葉だ。本当にいつもどおりの服を来てクリスの前に現れたらクリスが張り切った服を着ているかもしれない。もしそうならクリスにガッカリされてしまう。そんな事があってはならない!!
逆に俺が張り切った服を着てクリスがいつも通りの服を着てくるかもしれない。駄目だ考えても考えても答えが出ない、俺はどうしたらいいんだ!!
「おい、本当に大丈夫か。もし無理してるなら明日は休んだ方が」
「明日じゃないと駄目だ。明日絶対にクリスとお出かけする!」
「そ、そうか。そんなにあたしと出かけたいのか?」
「うん。すごく楽しみにしてる」
「そ、そうか。そうかよ」
クリスは照れた顔をしてからクッションで顔を隠した。
俺は食器を洗い終えてクリスの座っているソファーの隣に座ってテレビを観た。テレビは夏休みに行ってみたい観光地の特集をやっていた。そう言えばそろそろ夏休みになるんだな。リディアンの新校舎が完成するのは夏休み中になるだろう、だからクリスが編入するのは2学期からになるだろうな……編入テストに合格できたらだけど。まぁ、クリスは地頭が良かったから直ぐに覚えていっているから余裕だと思う。
そんな事を思っているとクリスが俺の肩に持たれ掛かってきた。クリスの方を見るとテレビをジーッと見ているが耳と頬が赤くして照れている。そんな愛おしい彼女を見て俺はテレビの方を見た、テレビでは海やプールなどの特集をしている。そろそろ夏だから海やプールとか行きたいな……でも、特異災害対策機動部やクリスの編入とか色々とあるし、ノイズとかとあるから行けないだろうな。
少しがっかりしたが、クリスとまたこうやって過ごせるから嬉しいからいいや。それに明日はデートなんだからその分楽しまないとな!
次の日になり俺はいつもよりも早く起きてクリスとのデートの準備をした。髪の毛はワックスをつけて、服もいつもの私服ではなくクリスのデートの時用についこの間に買ったばかりの服を着てリビングで待っていた。すると上の階から扉の開く音が聞こえてきてバタバタと階段の降りてくる音が聞こえてきた。そしてクリスは出会った時の紅の服を着ている。相変わらず似合ってるなその服、この服は櫻井了子さんが買ってくれたのかな? 流石出来る女櫻井さんだな!……あれ、フィーネなのか?
「おぉ、なんか気合入ってるな」
「楽しみにしてたからね」
「それじゃあ行きますか」
そしてクリスと一緒に外に出た。
今はクリスの後について行っている。クリスの行きたい場所って何処なんだろうか? クリスは結構インドアだからあまり外に出たいタイプじゃない。そのクリスが行きたい場所とは気になる、次からのデート場所に参考になる。
今はデートをしている。だけどクリスについて行っているだけでは何だかデートって感じがしないな。よし、クリスの手を握ってみよう。
俺はクリスの右手を握ると、クリスはビクッとなってあわあわしながら俺の方を見て来た。
「ちょ、おお……お前何しやがる!?」
「何って手を握っただけだよ?」
「手を握っただけっておかしいだろ。どうして手を握るんだよ!!」
「どうしてって今日はクリスとデートだから」
「て、デート!?」
「えっ?」
クリスの驚いた顔と声に俺は困惑してしまった。
あれ、これはデートではないのか? 俺のデートへの定義が間違っていたのか? よし、取り敢えずクリスと相談してみよう。
「よしクリス、いくつか聞きたい事がある」
「あぁ」
「俺とクリスは幼馴染でもあり恋人同志だよな?」
「…………おう」
「その恋人同士が休日に二人で仲良くお出かけをしています」
「うん」
「これってデートじゃない?」
「…………デートだな」
クリスがそう言ってから俺達は互いに見つめ合って固まった。するとクリスの顔がカーッと赤くなっていった。どうやらクリスはデートって事は意識せずに普通に今日お出かけに誘って来たって事になるのか。俺が浮かれて勘違いしていたって事になるのか。俺だけ浮かれていたって事になるよな…
「いや違うんだ。あたしはそんな事を考えずに普通に買いたい物があって空を誘ったんだ」
「そうか。ごめんクリス、俺が勝手に浮かれてデートだと勘違いしてた。さっき言った事は忘れてデートじゃなくて普通に今までどおりの買い物にしよう!」
俺はそう言ってからクリスの手を離してゆっくりと歩き出した。
俺の勘違いの所為でクリスを困らせてしまった。クリスをデートに誘うのはしばらくはやめておこう、また失敗するのが目に浮かぶ。
そんな事を思っていると俺の右手を誰かが握って来た。振り返って見るとクリスが顔を赤くして左手で俺の右手を握っていた。
「し、仕方がねぇから付き合ってやるよ。その、で……デートによ」
「えっいいの?」
「あ、あぁ。お前にそんな顔されるくらいならデートくらい付き合ってやる」
「…………ごめんねクリス。嫌なら無理に付き合わなくていいよ」
イヤイヤ付き合ってやると言われてクリスは優しいっと思う反面、俺は情けなく思えた。彼女に同情されて無理矢理に付き合わせてしまう事に。
本当に情けない彼氏だよな、司令や緒川さんのようなOTONAならそんな事はなかったんだろうな……本当に情けない。
「ちが、そうじゃねぇ! あ、あたしもお前とで、デートしたかったんだよ!!」
クリスは顔を更に赤くして大声で叫んだ。
「その、空からデート誘われるのを待ってたんだよ!!」
「そ、そうだったのか。ごめんねクリス、デートに誘おうと思ってたんだけど中々いいデート先が決められなくて。せっかくなら思い出に残るようにしようも考えていたんだ」
「なんだそんな事で悩んでたのかよ。あたしは場所とかそんなのどうでもいいんだよ、お前となら何処でもいいんだからよ」
「く、クリス!!」
俺は歓喜のあまりクリスに抱きしめた……道の真ん中で。
やばい、俺の彼女カッコ可愛い過ぎだろ。なんだよ、もう……好き、大好き!!クリスしかありえない!!
「ちょ、おまえ、空!! ここ人前だから!!」
「クリス大好きだ!!」
「人の話を聞け!!」
空が落ち着きを取り戻すまでクリスを抱きしめ続けた。クリスは顔を真っ赤になりながらもがいていたが、その顔は満更でもなかった。クリスを離してから二人手を繋いで歩いている。
「あはは、ごめんねクリス。つい嬉しくて」
「全くよ。そう言うのは家でしてくれよな」
「なら帰ってからするよ」
「お、おう」
「それでクリスは何処に買い物に行きたいんだ?」
「その……仏具店」
「仏具店?」
「あぁ、パパとママの……それとおじさんとおばさんの為の仏壇が欲しくてよ。パパとママにも空の家に帰って来て欲しくてな。そしてこの家でパパとママ達がまた仲良く居られるように」
「そうだね、なら四人が一緒に居られるくらい仏壇を買わないとね」
「あぁ。なら店で一番カッコいい仏壇を買うぞ!」
「家に入るくらいの物にしてね」
二人は仏具店に行ってクリスが気に入った仏壇を買った。クリスは俺に仏壇を運んでくれと言って来たがどうやっても無理だった。だから宅配便にお願いした。仏具店で仏壇を買った後、クリスと一緒にショッピングモールに行ってお昼ご飯を食べてから服や小物を買ってから今日の晩御飯の食材を買って家に帰った。
次の日に仏壇が無事に届いてクリスと一緒に開封して仏壇をリビングの空いているスペースに飾った。リビングに仏壇を置いたのはクリスがパパとママ達は騒がしいのが好きだから、なるべく俺達がよく居るリビングに置く事にした。
「位牌の書き方ってこれでいいのかな?」
「仕方ねぇだろ、分からねぇんだからよ」
「でも、クリスのお父さんとお母さんの名前は分かるんだからパパとママと書かなくても」
「いいんだよ、あたしにとってはパパはパパでママはママなんだから」
「それもそうか。なら俺もお父さんとお母さんにしとこ」
仏壇に位牌を飾ってから正座をしてクリスが鐘を4回鳴らした。
「クリスさん、たぶん4回も鳴らさないと思うよ」
「いいんだよパパとママにおじさんとおばさんは騒がしいのが好きなんだからよ。空も鳴らせよ」
「いや、クリスが鳴らしたんだからもう大丈夫でしょ」
「別に良いだろ何回も鳴らしたってよ」
「たぶん決まってるよ。鳴らしすぎると父さんや母さんにソネットさんや雅律さんが怒られるよ」
「大丈夫だってパパとママとおじさんとおばさんがそんな事で怒られたねぇよ」
「そ、そう?」
そして空が鐘をゆっくり2回鳴らすとクリスがもっと強く鳴らせと言われていてもう一度鳴らした。
そんな二人の光景を温かい目で眺めている二組の夫婦が居た。
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