奈落の屋敷。
結界が解かれたこの場所に私たちが訪れたのは、先の戦いから暫くの時が経ってからのことであった。
屋敷内は既にもぬけの殻となっており、至る所に激戦の跡が残っている。
奈落はこの拠点を突き止めた犬夜叉らと交戦したのち、忽然と姿を消したらしい。
おそらくはより強大な力を手に入れるべく、他人の目に止まらぬ場所へと身を隠したのだろうが……
問題なのはそれ以降、奈落の気配が一切感じられなくなってしまったということだ。
これまでであれば、私には奈落の居場所が手に取るように分かっていた。
しかし、ある日を境にその気配が嘘のように消え失せてしまったのだ。
四魂の玉が完成に近付いている中で、奈落の消息を掴めなければ後手に回ってしまう。
さて、どうしたものか……
「あ、霊夢。またサボり?
休憩中よ。
きっと、今日は休憩の日なんだよ。
じゃあ、明日は?
神社閉店の日!
くぉら!
きゃっ!」
「百江、おまえは一人で何をしているんだ……」
「え?何って、クッキー☆の朗読ゥ……」
「訳の分からぬことを言っている場合か。こうしている間にも、奈落は着実に力をつけようとしている。この世に災いをもたらす存在となる前に、何としても葬り去らねば」
「おっ、そうだね。私や桔梗からすれば、とっくに災いをもたらす存在になってるけど……
でも、どうやって奈落を探すの?あいつの気配はここで消えちゃってるんだよね」
「こればかりは、地道に足を使うしか無いだろう。死魂虫で奈落の邪気を探らせているが、僅かな手掛かりすら見つけられない状況だ」
「うーん……ねぇ桔梗。私の時代には、こんな諺があるの。"木を隠すなら森の中。ほもを隠すならホモビの中"ってね」
「木を隠すなら……ほも?」
「ごめん後半のやつは忘れて。ともかく今の諺には、『何かを隠すなら似たものの中に紛れ込ませるべき』って意味があるんだ。ひょっとしたら奈落は、自分の邪気が認識されないような辺鄙な場所で縮こまってるのかもしれないね」
いつものようにふざけてばかりと思えば、急に鋭いことを言い始めるから、まったく油断も隙もない……
百江の直感力には目を見張るものがある。
危機に陥ったとき、あるいは何かに迷ったとき。彼女が私を導き、それによって助けられたという話は、一度や二度では収まりがつかない。
ゆえに、半ば無意識的にではあるが、百江の発する言葉を常に注意深く聞こうとする癖が出来てしまった。
彼女の独特な言葉遣いや、急に発せられる冗談なども含めて。
つまるところ──私もいつの間にか『現代』に通ずる言葉を多く覚えてしまったのである。
"あくしろよ"や"ありがとなす"などがその最たる例と言えるだろう。
そのことを本人に告げてみると、「ミーム汚染はまずいですよ!?」と焦った表情を浮かべていたが……そんなに不味いことだったのだろうか。
……話を戻そう。
先の諺には、奈落の居場所を探る上で大きな足掛かりを得るような意味合いが含まれているような気がした。
木を隠すなら森の中。では、奈落の邪気や結界の気配を隠すなら──
たとえば、強固な結界の中であればどうだろう。
奈落の発する邪気を完全に覆い隠すほどの結界が存在すれば、私とてその内部までを把握することは出来ない。
それが正しい結論かどうかはさておき……後の時代を生きる者も、なかなかどうして面白い言葉を残すものだ。
長い道のりとなる事は覚悟していたが、ある程度場所を絞れれば、奈落を見つけるのも存外容易であるやもしれぬ。
「どうやら次の行き先が決まったみたいだね。よし、じゃあ参るか!」
「ああ……そうだな。"じゃあ、参るか"」
例の"語録"とやらをそっくりそのまま返してやると、百江はいつぞやのように引いていた。
まったくもって解せぬことだ。
「今年のクリスマスは平和だったな。
平和?何言ってんのよ~。
あいつらこんなに散らかして帰って、ただで済むと思ってるわけ?なにがクリスマス会よ!」
「百江……百江!」
「頑張るんだぜーじゃな、く、て!あんたも手伝いなさいよ──あ、ごめん桔梗。どうかした?」
「いつもの冗談であれば、どれだけ言ってくれても構わない。
だがその小噺だけは……どうにか止めてくれぬものか」
「あ、そっかあ。ちなみにその心は?」
「何故かは分からぬが……その朗読には、途轍もなく冗長な雰囲気が漂っている気がしてならないんだ」
※※※※※※※※※※
戦国時代にクッキー☆のヤバさを察する桔梗様は予知能力者だった…?なRTA、はーじまーるよー。
無双撃破後、一度古寺に戻ってから奈落の屋敷へ赴くと、そこは既にもぬけの殻となっていました。
どうやら本筋のイベントは滞りなく発生しているらしく、奈落は犬夜叉たちとの戦闘後、自らの拠点を捨てて別の場所に潜伏先を変えたようです。
ここからは桔梗と共に奈落の消息をつかむ旅が始まるのですが、実際にあちこちを調べて回る必要はありません。
プレイヤーは奈落がどこに隠れているのかを知っていますから、そこから逆算して手がかりを得るイベントを発生させていくだけです。
道中は稀に現れる敵妖怪を倒しつつ、全速前進DA!
前回までの間に効率良くレベルアップができているため、敵とエンカウントしても高確率でワンターンキルが可能になっています。いいゾ~これ。
山を2つ、森を3つ抜けた先にある『湖畔の村』に立ち寄るとストーリーイベントが発生します。面倒くさがってスルーしないように!(1敗)
村人に話しかけると、付近の霧沼を根城とする凶悪な物の怪を退治する流れになります。
沼に着くと巨大な亀の妖怪が出てきますので、相手は桔梗に任せましょう。華麗な弓術を拝むことが出来ます。
▼桔梗が振り向きざまに放った破魔の矢が、妖怪を貫く…!
▼桔梗 が 湖畔の亀妖怪 を倒した!
▼桔梗が 500 の経験値を獲得!
▼桔梗 の段位が 34に上昇!
「ここも、違ったか……」
邪気の正体が奈落のものでないことを確認したら、次行こうぜ(イケボ)
村に戻って妖怪退治の成果を報告するとお礼を貰えますが、費用対効果を考慮してここはスルーします。
村はずれの道まで進むと、一人の浮浪者のおっさん(69)が刀を抜いた状態で現れました。
手震えてますよ(指摘)
「おまえら、妖怪退治の礼を村からたんまりもらったんだろう。有り金そっくり置いていきな…!」
「金だと?そんなもの貰っていない」
「へっ、嘘をつくとためにならねえぜ?」
「嘘だと思うなら調べてみるがいい」
桔梗ルートで遊んでいると毎回ここでびっくりするんですけど、桔梗ってたまにとんでもない大胆発言してくるんですよね。
まあ本当にまさぐって探そうとしたら容赦ないガチビンタを食らわされそうですが。
それにしたってちょっとは慎みを覚えなアカンでほんまに。一体この子は誰に似たんやろか……(後方オカン面)
「けっ、霞でも食らってるってのか?」
「まあ、そんなところだ」
「……じゃあ、もういい。消えな」
そう言ったきり、足をふらつかせながら木にもたれかかる老人。誰がどうみても病人ですねクォレハ…
さらにここで『神通力』のスキルを使ってみると、彼の胸元付近に光る何かを発見することができます。四魂の気配感じるんでしたよね?
当然ながら、その事には桔梗も気付いたようで。
「四魂のかけらを持っているのか」
「なっ…おまえ、見えるのか?」
「それがおまえの命を繋ぎ止めている。そうなんだな?」
「……ああそうだ。こいつさえあれば、おれは死なねえ。まだ、死ぬわけにはいかねえんだ」
「そんな体で、何をしようというのだ」
「死に、場所をな……目指して──うぐっ…!」
老人は2・3度咳き込むと、そのまま前のめりに倒れこんでしまいました。
これに相対するは、四魂の玉完成を目論む桔梗とほもちゃん。
何も起きないはずがなく……
「百江」
ぐぬぬ、どうやらほもちゃんの魂胆は桔梗に筒抜けだったみたいですね。しゃーなしとばかりに倒れた老人の介抱を手伝いましょう。
あとどうでもいいんですけど、桔梗のほもちゃんに対する扱いがペットのそれになっているように感じるのは私だけでしょうか。
特に最近は『百江』の一言で諫められることが多く、ご主人様の命令を忠実に守る姿はさながら忠犬ハチ公のようで……
まあでも桔梗様の命令は絶対だからね。仕方ないね。
ということで、ここからすぐ近くの場所に都合良く人のいない仏寺がありますから、不本意ながら老人を運んでいきしょう。
えっさ、ほいさ……
アアッ!ハァッ…ハッ、イキスギィ!
イクゥイクイクゥィク…アッハッ、
ンアッー!(≧Д≦)
失礼、クッソ汚い喘ぎ声が出てしまいました。
そもそも桔梗に任せときゃ死魂虫で運んでくれたんじゃね?とか後になって思いましたが過ぎたことを考えても仕方ありません。
寺に着いて老人を寝かせると桔梗が手製の薬を作ってきてくれます。病気でもなんでもないけど私も飲みたいと思った(飽くなき欲望)
「これを飲め。少しは楽になるだろう」
「おまえら……なぜ、おれを助けた」
「話の途中だったからな。こうした出会いも、何かの巡り会わせだ」
ここらへんの会話、桔梗という人物の聖人っぷりが色濃く現れているように思います。
彼女の場合、困っている人や傷ついている人が目の前にいると放っておけない性質なんですよね。
かくいうほもちゃんもタイムスリップ直後に行き倒れにならなかったのは桔梗のお陰ですし……
鬼蜘蛛の場合はその優しさが裏目に出た訳ですが、それこそが彼女足らしめる部分であると私は考えています。
おそらく誰も聞いてねえであろう桔梗考察を語った所で、プレイ画面に戻りましょう。
桔梗と老人の間には、目に見えぬ因縁が存在していました。
彼は大昔に"羅刹の勘助"として名を馳せた悪党で、当時あの鬼蜘蛛と郎党を組んでいたことを語り始めます。しかし四魂の玉を巡って鬼蜘蛛に裏切られた勘助は、彼を建物ごと焼き払い、簀巻きにして谷底に落としてしまったと。
それこそが奈落誕生のきっかけとなり、桔梗にとってはあの悲劇の運命に繋がっているわけです。
「ふっ……成る程な」
「どうした急に。なにがおかしい」
「先にも申したが、やはり巡り会わせというのは不思議なものだと思ってな」
「ああ?そりゃ一体……」
「もし、私がその巫女──"桔梗"だと言ったら、どうする?」
「なっ…!」
イベント中の会話内容は進行度や各キャラの状態によってどうとでも変わるので、流石に驚きはしませんが……桔梗はあっさりと自分の正体をカミングアウトしてしまいました。勘助の寿命がどんどん縮んでいきますよ~!
「それじゃおめえが、かつて四魂の玉を清めていたあの巫女だっていうのか…!」
「ああ。この世に少し未練があってな。それで舞い戻ってきた次第だ」
「へっ……悪い冗談だぜ」
勘助はどこか観念したような表情を覗かせながら、視線をほもちゃんの方に移してきます。お前さ今さ、私のことチラチラ見てたよな?(言いがかり)
「で、そっちの変わった身なりをしている女はただの人間か。随分と変わった組み合わせだな」
TDNは人間だった…?(当たり前)
改めましてドーモ。勘助=サン。桔梗の付き人やらせて貰ってます、ほもです。
「こやつとは、奇妙な縁があってな。今は私の旅路に付き合ってくれている……仲間だ」
……えっ、いまなんて言いました桔梗様?
仲間って言った?ほもちゃんのこと仲間って言ったの?
ねえねえねえ、どうなんですか?
ちょっと聞こえなかったんでもう一回言ってくれませんか!?
あ、そーれもう一回!もう一回!
「っ…もう二度と言わぬ。おまえなど知らん!」
あた~……これはやってしまいましたなぁ。
でもそうやって拗ねちゃうところも魅力的ですわね(桔梗様全肯定bot)
それにしても、遂にここまで漕ぎ着けましたか。
桔梗が仲間であると公言してくれたということは、友好度がほぼMAXまでいった証拠です。地道な稼ぎが実を結びましたね……
この友好度を最後まで維持したままエンディングを迎えられれば、本RTAの題目を達成することができます。
なお、ストーリーはまだ半分近く残っている模様(絶望)
「……」
「どうした。私の顔に何かついているか?」
「いや、ちょいと驚かされてな。四魂の玉を守る巫女ってのは、もっと高潔な存在で……誰にも弱みを見せないような、聖者だと思ってたぜ」
「私だって、初めからこうだったわけでない。この世に再び蘇って、いつの間にかそうなっていただけのことだ」
「そうかい……けど、感情押し殺して生きるより、そっちの方がよっぽど人間らしくていいんじゃねえか?」
「……かもしれぬな」
なにやらいい感じのほっこりタイムが生まれていますが、そろそろこの空気をぶち壊しにする悪いやつ(小並)が出てきます。僅かな妖気を感じ取ったらすぐに備えましょう。
「四魂の玉を、よこせーっ!」
▼大目玉の妖怪 が現れた!
▼どうやら勘助の持つかけらの気配に誘われて、この場所を嗅ぎ付けたらしい。
こいつは奈落の体から不要な部分として切り離され、四魂のかけらを探して彷徨っていた妖怪です。大王目玉みたいな見た目してんなお前な。
原作では桔梗・勘助共々に苦戦した相手ですが、今回は二人に加えてほもちゃんが居ます。ので、この妖怪に見せ場は塵一つ分もありません。許してや城之内……
折角の機会なので攻撃のタイミングを桔梗と合わせ、二人で破魔の矢を放ちましょう。
合体してるから……合体してるから安心!(インパルスガンダム)
▼大目玉の妖怪 を倒した!
▼500 の経験値を獲得!
▼金 250文 を手に入れた!
経験値たったの500か。しけてんねぇ!
※※※※※※※※※※
勘助の持つかけらを狙って現れた妖怪は、その接近にいち早く百江が気付いたこともあり、実に呆気なく滅することが出来た。
私と百江が放った破魔の矢は、妖怪を撃破四散せしめるのに十分すぎるほどの力を持っていたのである。
「しけてんねぇ!」
いつもの"語録"を使う百江を尻目に、勘助の無事を確かめる。
幸いなことに戦いには巻き込まれていない様子であったが……如何せん彼の体は、重い病に犯されている。無理がきくような体ではないのだ。
「……大した女どもだ。もし五十年前だったら、きっと見過ごさなかっただろうぜ」
「そんな冗談が言えるなら大丈夫だな。さあ、立てるか?」
「いや……もう、いい」
勘助の口ぶりに、私は思わず言葉を噤む。
彼が生きる気力を失っていることを、悟ってしまったから。
「しかし、四魂のかけらさえあれば、おまえはまだ──」
「いいんだよ。こいつは、おめえにくれてやる」
「……」
「代わりと言っちゃなんだが、一つ頼まれてくれねえか」
勘助は小刀で器用に自らの髷を斬ると、これもかけらと同じく私に預けてきた。
「これを、白霊山に」
「白霊山?」
「ここから北の方角にある、霊山の聖域さ。聞いた話じゃ、この世のいかなる罪人も受け入れてくれるという」
「その場所を目指していたのか。おまえは」
「別に、今さら極楽に行きたいとは言わねえ。ただ、成仏しきれずにいつまでもこの世を彷徨い続けるってのは、俺らしくねえと思ってな」
「……分かった。約束は出来ぬが、その白霊山とやらに行ってみよう」
「ああ。頼んだぜ……桔梗さんよ」
一人の男が、最期の時を迎えようとしていた。
「それにしても、人の一生ってのは……分かんねえもんだな。
おれは誰にも気付かれないところで、ひっそりと死ぬつもりだった。
これから地獄へ落ちる男に、他人の見送りなんざ不要だと。
けど…けどよ。こうして誰かに看取られて逝くってのは…案外、悪くねえのかも、しれねえな……」
そう言ったきり、勘助は静かに目を閉じた。
せめてもの冥福を祈り……私と百江は手を合わせる。
生き様は人の数だけ千差万別にあれど、死ぬときは得てして皆同じ──か。
※※※※※※※※※※
ということで勘助の遺言を叶えてやるべく、白霊山に向かうこととなりました。
勘助との出会い、そして白霊山への誘い。これらがすべて奈落の手で仕組まれたものであったなどと、このときには知る由もありません(壮大なネタバレ)
「っ…すまない。少し、休ませてくれ」
ほどなくして、桔梗が急に膝をついてしまいました。白霊山まではまだ距離があるので、結界の影響は受けてないはずなのですが……一体どうしたのでしょうか。
「気付かぬうちに、死魂を減らしていたようだ」
あっ……これはいけない。
死魂は桔梗の生命線とも呼ぶべき代物です。おそらくはこれまでの激戦続きによる反動が来てしまったのでしょう。
死人の生態は『動けば動いた分だけ魂が減っていく』というガソリン車のようなシステムで成り立っていますので。
「前々から聞こうと思っていたのだが、おまえはこの光景を見て何も感じないのか?」
ん?『この光景』というのは、死魂を満たしている姿のことでしょうか。
だとすればそうですねぇ、(特に何も感じ)ないです。犬夜叉ファン歴20年、桔梗様ファンクラブ歴20年のプレイヤーにとっては、あまりに見慣れた光景ですので。
強いて感想をあげるとするならば、"はえ~すっごい神秘的"と言ったところでしょうか。
「神秘的、か。そんなふうに言ってくれるのは、後にも先にもおまえぐらいだろうな……」
桔梗がひとつ息をついたので反射的に思いっきり深呼吸をしたところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。