ああ^~ノンケになるぅ^~ RTA、はじまるぜ。
王道を征く日常回を経て、これより先に待ち受けるは桔梗ですら苦戦するレベルの強敵たち。
心してかかりましょう。ベストを尽くせば結果は出せる(至言)
そんなことより次の戦場はどこ?……ここ?と心配しているホモの兄ちゃん方のために説明しておきますと、改めて他の目的地に向かう必要はありません。それというのも、前partで買い物をするために立ち寄ったこの城下町こそが、次話の舞台となるからです。
(チャート管理)なかなかうめえじゃねえかよ。
そして今回の進行フラグは『町の人から血を吸う鳥の群れのうわさを3つ以上聞く』ことです。この条件を達成することで、翌日になると戦闘フェイズが開始されます。
▼皆が寝静まったころ、突如として人々の悲鳴が重なった。
▼一体何が起きたんだろう?とても嫌な予感がする……
急いで宿屋を飛び出しつつ上空を見上げると、ペットサイズのプテラノドンみたいな妖怪が何十何百と飛び交っています。
こいつらの名前は吸血鳥。武蔵の国に君臨する大妖怪『鉄鶏』の体に回る毒を薄めるため、鉄鶏の娘である『阿毘姫』の指揮のもと、人間の血を奪うために町や村を襲いまくっている連中です。
鉄鶏と阿毘姫は共闘の打診をしてきた奈落を信じず、反対に奈落と関わりのある城を襲う計画を立てました。それが現在の襲撃にあたるわけですが、この城には奈落の心臓部としての役割を果たす赤子が預けられているため、阿毘姫たちは期せずして奈落の命を脅かすところまで迫っているわけです。
とはいえ何も知らずに城下町に住んでいた人間からしたら、それはもう大迷惑。どころか普通に命の危機が迫っています。
言わずもがなですけど、こういう数で押してくるタイプの妖怪は我々人間にとって一番厄介な存在なんですよ。原作でも殆どの人間が吸血鳥の犠牲になりましたからね。
まあもっとも、今回に限ってはそんな悲惨な結末が訪れることはありません。
なぜかってここには妖怪退治のエキスパートが二人もいるでしょ?目の前におるじゃんかぁ……(勘違い無職)
吸血鳥はその名のとおり人間の血を吸い尽くす妖怪です。これに関しては近づいてきたところを骨喰の薙刀で倒せばいいだけなので、苦労することはありません。問題なのは──
「な、なんだ?鳥が燃えて……こっちに向かって来るぞ!」
アツイアツイ!ねーちょっ、アッツいねんそれ!(ひで流関西弁)
こいつらは吸血の他に発火という特性を持っており、これをやられるとあっという間に周辺が火の海となってしまいます。残念ながらこちらに水属性の攻撃手段は持ち得ていないため、あの鳥たちを消火することは出来ません。
が、しかし……ほもちゃんには
▼百江 は破魔の竜巻を放った。
▼吸血鳥 をまとめて倒した!
▼3560 の経験値を獲得!
▼百江 の段位が 34 に上昇!
ンギモチイィッ!
獄龍破の威力には一歩及びませんが、破魔の竜巻は妖怪に対して絶大な効力を誇ります。こうやって妖怪の群れをまとめて倒した時の快感、癖になっちまうよ……
「なんという数だ……これではきりがない。百江、ここは二手に別れよう。おまえは城へ向かった鳥たちを!」
あ、いいっすよ。多数の妖怪を一から調教するなんて久々だから、楽しみっす(快諾おじさん)
桔梗から行動を別にする旨の指示を受けたら、早速城の方へ向かいましょう。道中では一般通過兵士くんたちが決死の形相で吸血鳥たちと戦っていますので、適度に加勢しつつ本丸御殿に近づいていきます。
ちなみに城周辺のマップはかなり精巧な造りとなっており、平和な時ならバーチャル観光ができるくらい風情のある場所です。みんなで一緒に城巡り、しよう!
吸血鳥の幾度にもわたる襲撃を抑え込みつつ二の丸を突破すると、強制イベントが発生。本丸の手前で襲撃者の総大将が姿を現しました。
「よくも私の鳥たちを…!」
ッスゥゥゥゥー……はい。
彼女こそ『プレイヤーが個人的に好きな女妖怪ランキング第2位』の阿毘姫ちゃんです!!
美人で勝ち気な姿がこう、たまんないんすよね。あと声も良き!!(性癖丸出し)
「おまえも奈落の味方かっ!」
私は違います(半ギレ)
そちら様と同じく奈落をギッタギタにしてやりたいと思ってる勢力ですよ。
「ふざけるな!だったらなぜ私の邪魔をする?八つ裂きにして一滴残らず血を搾り取ってやるから、覚悟しろっ!」
阿毘姫ちゃんになら血を搾り取られてもいいな(クソノンケ)と思う今日この頃ですが、残念ながらRTAではそんなことを抜かしている暇はありません。敵は開幕と同時に火炎攻撃を放ってくるので、まずは後方へ避けるように動きましょう。阿毘姫の操る火は吸血鳥のそれとは比べ物にならないほど高威力・広範囲なので、下手を打つと火に囲まれてあっさり死にます。
「さあ行けおまえたち。一匹たりとも人間を逃がすな!!」
さらに阿毘姫と戦っている間、当然のことながら吸血鳥の動きが止まることはありません。戦いが長引けば長引くほど町の被害は甚大になるので、尚のこと決着を急がねばならないわけです。
「う、うわあああっ!」
「助けてくれええ!」
お、待てい!ヤメロォ(本音)ヤメロォ(本音)!
あっ……この人たちはもう駄目だ。助けようとしてもほもちゃんの攻撃が間に合いません。
RTAにおいては時に非情な判断を下さねばならいというのが辛いところで──ファッ!?
▼吸血鳥が町の人に襲い掛かろうとした刹那。
▼視界の外から放たれた豪火によって、鳥たちが焼き尽くされた……!
発火する吸血鳥を滅するほどの高火力……それを繰り出したのは、勿論阿毘姫ではありません。このマップにはもう一体、強力な火炎属性の攻撃を放てる妖怪が残っていましたよね。
▼炎蹄だ。炎蹄が町の人を助けてくれたんだ。
▼ひょっとして、私の思いを汲み取ってくれたのだろうか……
炎蹄くん大好き。ホントニアコガレテル。
これは仕込みとかではなかったので普通に驚きました。颯爽と現れて窮地を打開してくれる味方とか、超カッコいいよなあ!?
「おまえ……人間の分際で炎蹄を飼っているのか!?」
そうだよ。
炎蹄くんは伝説的な妖怪のため外にも名が知れています。どうや阿毘姫ちゃん、羨ましいやろ?
「調子に、乗るなぁっ!」
ぐぬぬって突貫してくる阿毘姫ちゃん。かわいい(かわいい)
続いて彼女から繰り出される攻撃は、近接武器『三叉戟』による斬撃。
この三叉戟は奈落の骨から作られた代物であり、斬撃のほか結界を張ったり瘴気をぶち撒けたりすることができます。攻防一体で使い勝手も良いのですが、如何せん奈落の意思で腕ごと武器を消滅させられるため、私の中では完全な地雷武器という認識です。
阿毘姫も不死身ではないのでこの場で倒しきることも可能ですが、プレイヤーとしてはその選択は取りません。三叉戟に付与されている結界が切り崩されると即座に撤退するので、そこを狙っていきます。
わざわざとどめを刺さない理由は前述のとおり、阿毘姫ちゃんのことが大好きだからです!!(わがまま)
まあタイム的には倒さずともそこまで変わりませんし、経験値を回収できないなどのデメリットはありますが誤差だよ誤差!じゃけん結界を破りにいきましょうね~!
……おっぶぇ!?勢い余って阿毘姫の三叉戟までぶっ壊してしまいました!!
いかん危ない危ない。もう少し深く斬り込んでいたら阿毘姫の首と胴体が離れているところでしたよ。
「ちくしょう……覚えてろっ!」
代表的な捨て台詞を残しつつ、撤退を開始する阿毘姫。これにて戦闘終了です……
惜しむらくは、ここで阿毘姫を逃しても彼女の生存が保証できないということ。
奈落はあの世とこの世の境へ行くため、阿毘姫の母にあたる鉄鶏の首を狙っています。したがって、この先鉄鶏の潜む巣穴へ戦闘を仕掛けることは確定事項。彼女らもいち妖怪としてはかなりの強さを誇るのですが、奈落を相手取るとなれば話は別です。
鉄鶏は首を落とされ、阿毘姫も奈落の触手に貫かれて死亡……というのは原作の流れですが、主人公たちがこの戦闘に絡まない限りは概ねそれと同じ展開が発生します。仮にこの戦いへ介入したところで、「単純な時間ロス」+「桔梗に不信感を与えてしまう」とデメリットしかないため、本RTAでは泣き寝入りせざるを得ません。ランダム要素で生き延びてくれることを願うばかりですが、阿毘姫生存の確率は著しく低いといっても過言ではないでしょう。
この件については四魂の玉に願をかけておくとして(届かぬ思い)、ストーリーを進めていきます。
ほもちゃんに残された仕事は城の本丸に残っている吸血鳥どもの排除と赤子の発見です。本丸内には姫君とお付きの方々が籠っていますので、警戒させないように先制挨拶をかましておきましょう。
こんにちはほもです。妖怪退治やってます。いつの日か世界を救うと信じて(セフィロス)
「助太刀感謝する!しかし、おぬしのような若きおなごが退治屋とは……」
城の人間は基本的にいい人揃いなので簡単にほもちゃんを信じてくれます。ちょろいぜ。
そしたら戦闘にかまけて少しずつ赤子の元へ近づいていきますよ~イクイク……ヌッ!
ここでほもちゃんの存在を感知したのか、それまでずっと眠りについていた赤子がめちゃくちゃもがいてます!一体どうしたんでしょうか。まさかほもちゃんにビビってるの?なんで??
ままええわ。とりあえず姫君から赤子を取りあげましょ。
「止めて!この子は、私の大切な世継ぎなの!」
なんだその反抗的な態度は?ジュージューになるまで焼くからなオイ!(焼肉奉行)
姫君はこの赤子が自分の産んだ子だと全力で洗脳されていますので、早急に黙らせましょう。
ちょっと
「う……ああ…!」
"悶絶姫君専属調教師"と化したほもちゃんのチョークスリーパーで姫を気絶させたら、突然の出来事に動揺しているお付きの人々も順次無力化していきます。本来彼らは奈落に命じられた琥珀の手によって皆殺しにされる運命なのですが、齢11の少年にさらなる大罪を重ねさせるのは心苦しいものがあるため、ここはほもちゃんが一肌脱ぎましょう。君たちも殺されないだけありがたいと思いたまえよ(暴論)
落ちろ!……落ちたな。
落ちろ!……落ちたな。
落ちろ!……落ちたな。
縛らなきゃ(使命感)
この場に居た人間を全て無力化させたところで、いよいよ奈落の心臓である赤子に迫ります。
ほもちゃんはねえ、君みたいな赤ちゃんの怯え顔を見るのが大好きなんだよ!
ここで奈落の心臓たる赤子の息の根を止めることは簡単で、実際にそれをやると本体の奈落もマジで消滅します。ただしそうすると残ったかけらを集めて四魂の玉を完成させることが死ぬほど難しくなるため、拳を握りしめての我慢です。
奈落から赤子を守れと命じられているはずの琥珀くんとはここまでの道のりで一度も遭遇していないため、向こうで桔梗と鉢合わせしている可能性が高いです。そうなると彼は十中八九この場所までたどり着けないので、現在は赤子を連れていってくれる敵側の増援を待っている次第です。
はぁ~あ。どこかにしれっと現れて赤子を連れ去ってくれる奈落の分身が居ねえかな~。
「……」
▼神無 が現れた!
い ま し た
数日前にほもちゃんをこてんぱんに
原作では隙を見て逃げようとした姫の魂を奪い、赤子を保護していました。奈落一派の中でこういう役回りは大体彼女に回ってきます。まあ奈落としても自分の心臓を回収させるなんて大仕事、裏切りに定評のある神楽とかには絶対任せられませんよね。
「その子を……返して」
神無は開口一番に鏡を向けてくるので、その動きを確認したら即座に横移動!流石に以前のような醜態を二度も晒すわけにはいきません。
で、この先制攻撃を回避さえしたら戦闘は実質終了したようなものです。なぜかって、本戦闘の終了条件には「赤子を神無に渡す」という内容が含まれているためです。
そもそも神無がここに現れた目的は、ほもちゃんを倒すことでなく赤子の回収です。つまり先ほどからほもちゃんの胸の中で必死に抵抗している赤子を返却すれば、双方が戦いを続行する理由は簡単に失われるわけですね。
ってなわけでもがき続ける赤子を神無にパス!!オルルァ!!(全力ブン投げ)
すると神無はわずかに目を見開きつつ、鏡の力で衝撃を和らげて赤子を優しく受け止めます。
「どうして…?」
その疑問はほもちゃんがあっさりと赤子を渡したことか、それとも赤子をぶん投げたことに対する疑問なのか。
まま、細かいことは置いておいて。それよりもまた会えた記念に飴ちゃんをあげましょうね~(二度あることは三度ある)
ほもちゃんから差し出された飴を受け取り、さらに???マークを頭の上に増やす神無ちゃんでしたが、その疑問に対する答えはいずれ自分の手で見つけることができるはずだ(投げやり)
それじゃあ私、桔梗のところに帰るから……
いくらほもちゃんの背中が無防備だからって、攻撃を加えるのは絶対に駄目だぞ!フリじゃないからな!!
…………よし、何もしてこないな!(指差し確認)
そうと分かったら桔梗のもとへユクゾー!
デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ! ぺーぺぺぺーぺーぺーぺーペペペペッペー ペッペッペペペーペペペッペッペーペペー (デッデッデデデデ!〈カーン〉デデデデ!) ぺーぺぺぺーぺーぺーぺーペペペペッペー ペッペッペペペッペーペッペーペーペペー (デッデッデデデデ!〈カーン〉) テレレーレーレレーテレレレーレーレテレレッテー(カーン) テレレーレーレレーテレレレーレーレテレレッテー(カーン) テレレーレーレテレレーテレレレレーテレレレレー (ドドドド!) パラパーパラパーパラパパパーパラパー パラパパパラパーパラパーパパパパパー パラパーパラパーパラパパパーパラパー パラパパパラパーパラパーパララー (ドン!) デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!
誰も得しない尺稼ぎをしたところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
※※※※※※※※※※
迫り来る吸血鳥をあらかた射ち終えた桔梗は、共闘していた侍たちからの称賛を軽く受け止めながら、なおも近辺に沸く"悪意"のようなものを感じ取っていた。
やはりこの場所には、何かがある。
そんな己の第六感に従い、戦いが終わった後も気を抜くことなく神経を研ぎ澄ませていると……やがて、瘴気に蝕まれたかけらの気配を感じ取ることができた。
間違いない。奈落に通じる者がすぐ側まで迫っている。
そのことを悟った桔梗は、かけらの持ち主と接触する決意を固め……ひとりの少年と対峙した。
(人間、か。どうやら七人隊と同じように、かけらの力で命を繋いでいるらしいが……)
少年の名は琥珀。
退治屋の里に生まれ、優しく臆病な性格ながらも秘めた腕前は親譲り、そして姉譲り。
いずれは幾多の妖怪を退治し、里を背負って立つ退治屋になれると期待されていた。琥珀本人もそうなれることを夢見ていた。
だが……その夢は彼の初陣であっけなく崩れ去ることとなる。奈落の手によって仕組まれた、卑劣な策謀によって。
気付くと琥珀の周りには誰もいなくなっていた。父や一族の仲間たちは、みな血だらけになって惨殺されている。そして、返り血をたっぷりと浴びた琥珀の手に残る感触は……彼らを己が持つ鎖鎌で貫いた感触。
この瞬間……年端の行かぬ少年の心は、呆気なく壊れた。
正気を取り戻した琥珀は、涙ながらに姉の珊瑚に縋りつくもその場で命を落としてしまう。
しかし、彼の悲運は死して尚続くこととなる。奈落は退治屋の生き残りで犬夜叉一行の仲間となった珊瑚の心を揺さぶるべく、琥珀を四魂のかけらの力で蘇らせたのである。
琥珀は生前の記憶を失ったまま、奈落の言いなりとなって動き始めた。珊瑚は唯一の肉親で弟にあたる琥珀を傷つけられない。そういった事情も相まって、琥珀は皮肉にも奈落の道具として生き続けることが出来ていた。
しかし彼の奥底で眠る悲惨な記憶は、珊瑚らと接触するうち徐々に呼び起こされつつあった。
「その汚れた四魂のかけらは、奈落によって授けられたものだな」
桔梗は冷静に弓を構えながら、琥珀へあえて問い掛ける。十中八九答えの分かりきった質問だったが、そうであるという確証を取りたかったのだ。
彼が奈落に操られているだけならば、命を奪う以外に尽くすべき手があるかもしれない。そんな考えに至ったが故に。
「おれは……っ!?」
『桔梗か……丁度良い。琥珀、その巫女を殺せ』
琥珀の脳内に奈落の低い声が響いた。その声を拒む術を持たない琥珀は、命じられるままに己の獲物である鎖鎌を両手に構える。
刹那──猛烈な速さで飛翔する鎌が、桔梗の体を掠めた。彼女の帯する巫女服より、斬撃で千切れた裾の部分が空を舞う。
寸分たりとも油断をしていなかった桔梗だが、それでも今の攻撃を完全に見切ることは不可能だった。生身の人間と戦うことには気が引けたが、鎖鎌を用いた的確な攻撃を前にして、それをあしらえるほどの余裕は無い。桔梗は飛来する鎌を弓でいなしつつ、距離を取って矢を番えた。
『琥珀、死を恐れるな。そのまま攻撃を続けろ』
この状況は、琥珀を操る奈落には願ってもない好機だった。
もし琥珀が桔梗を殺してしまえば万々歳。奈落としては労せずして最大の障壁を取り除くことができる。反対に琥珀が返り討ちにあったとしても、琥珀の姉である珊瑚が犬夜叉の仲間に加わっていることから、双方の関係に不和を生じさせることは容易い。
どちらにしても状況が不利に転じることはないのだ。
そんな奈落の魂胆を知ってか知らずか、桔梗は弓を引きながらも矢を放とうとはしなかった。
しかし……その間にも琥珀の動きが止まることはなく、桔梗が不得手な接近戦を挑まんと、一気に間合いを詰めようとする。その間琥珀の体が無防備に晒されることは周知の事実だったが、やはり桔梗の元から矢が射られることはなかった。
「……っ!」
力を掌に込めた琥珀が、遂に桔梗の首元を狙う。鎌の鋭利な切れ味からしても、掠るだけで致命傷を与えることは自明の理。
(まただ……また、人を殺めてしまう)
ぼんやりとした意識のなかで、琥珀の良心がちくりと痛んだ。
琥珀に一つの誤算があったとすれば……"桔梗には弓矢以外に戦いの手段が無い"と、そう思い込んでいたことだろう。
ここまでの戦いがあまりに単純で、有利な状況が続いていたために生まれた、無意識的な警戒の怠り。
琥珀は足元からゆっくりと近づいていた2匹の妖怪に、まるで気付くことが無かった。
「あ…!」
桔梗の死魂虫。それが視界に入るころには、琥珀の体は雁字搦めに拘束されていた。
策が成ったことを確認した桔梗は、静かに弓矢を降ろす。琥珀を狙って構えていたのは、死魂虫から目を逸らさせるための誘い水だったのである。
「……次からは、もう少し周りに気を配ることだ」
もっとも、その腕前は確からしいがな。一言付け加えた桔梗は、思考を切り替えて琥珀の様子を見遣る。
おそらく彼は、奈落の命令に逆らうことができないでいたのだろう。操られるがままの彼を射抜いたところで、奈落を追い詰められる手立てにはならない。
然らば言葉で説き伏せ、琥珀を改心させられるかといえば……それも否。彼の背中には穢れた四魂のかけらが埋め込まれているのだ。少なくとも琥珀と初対面の桔梗では、奈落と彼の因果を断ち切ることはできないだろう。
(さて、どうしたものか……)
桔梗は珍しく迷っていた。琥珀を捕えてからしばらくの時が経っても、判断を下しきれぬほどに。
(このひとは、どうしておれを殺さないんだろう……)
そして、その意思は当然琥珀にも伝わるところだった。彼は朦朧とする意識の中で桔梗が立ち止まったままの理由を模索しようとするが、本人にすら存在しない答えが出てくることはない。
「琥珀っ!!」
暫くの間をおいてこの場の沈黙を打ち破った人物は……琥珀の気配を察知してこの場所へ駆けつけた女性──珊瑚だった。
琥珀の姉である珊瑚は、半ば飛び込むような形で琥珀を抱きしめる。もう離さない、離したくないという強い思念のままに。
「……」
顔つきの似通った二人には、おそらく血のつながりがあるのだろう。そんなことを考えながら、桔梗はこれ以上拘束の必要が無いことを悟り、琥珀の体に巻きつかせていた死魂虫を退かせる。
「琥珀……あたしのことが本当に分からないのか?」
珊瑚の涙ながらの訴えに戸惑いながら口を開こうとした瞬間、押し寄せた突風が琥珀をさらう。下手人は、奈落より琥珀の回収を命じられた神楽だった。
「待て、琥珀っ!」
そんな叫びも虚しく、羽根に乗せられた琥珀の姿はみるみるうちに小さくなり、闇夜に消えていく。これでは雲母で追いかけることも出来ない。
あと一歩のところで弟を逃がしてしまったことに、珊瑚はただ悔しさを噛み締めることしかできなかった。
「あやつは、おまえの弟か」
「あんたはひょっとして、桔梗…?」
かごめと似た雰囲気を漂わせる巫女。彼女の側を彷徨いているのは、亡き女の魂を運ぶといわれる死魂虫。
犬夜叉一行の中でも聡明さに長ける珊瑚が桔梗の正体を悟ったことは、当然の帰結だった。
「琥珀は、あんたのことを襲っていたのか?」
「まあ、そんなところだ」
「っ…そう、か。本当にすまない……」
珊瑚の中では、琥珀が里の皆を惨殺した光景が蘇っていた。
あの子はまた、同じ過ちを繰り返そうとしている。それだけはなんとしても防がなければならない。唯一生き残った、姉の責務として。
「大方の事情は理解しているつもりだ。おまえが謝るようなことではない。
それにしても奈落のやつ、つくづく下衆なことを……」
珊瑚と琥珀の関係をあらかた察した桔梗は、吐き捨てるように奈落の名前を出した。
今となっては随分と年も離れてしまったが、桔梗にも楓という妹がいる。同じ姉として、その気持ちが分からぬ道理はない。
そして……そんな桔梗の姿を目の当たりにして、珊瑚は自分でも驚くほど悪い感情を抱かなかった。
これまで桔梗に対しては「奈落に犬夜叉との仲を引き裂かれ、未だにこの世をさまよっている死人の巫女」という程度の印象しか持っていなかった珊瑚だったが、肉親を想う気持ちと清々しいまでの奈落に対する罵倒の言葉は、彼女にとって大いに共感の念を抱かせたのである。
「どうした。戯けた顔をして」
「いや……あんたのこと、少し勘違いしてたみたいだ」
「そうか。まあ、仕方のないことだろう」
口数こそは少なかったが……二人の間に、明確な接点が出来た瞬間だった。
『プレイヤーが個人的に好きな女妖怪ランキング』堂々の第1位は逆髪の結羅ちゃんです。当たり前だよなあ?