犬夜叉RTA 桔梗救済ルート   作:パプリオン

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Part36 夢幻の白夜撃破

 

犬夜叉は奈落の体内をひとり歩いていた。

 

赤く染まった瞳に加えて、頬には紫の痣が浮かび上がっている。犬妖怪としての特徴が前面に押し出されたその姿は、彼自身が妖怪の血に染まりきったことを意味していた。

奈落の手によって穢された四魂の玉の力は、彼の人の心を留めようとする鉄砕牙の力をも上回っていた。まして、常に傍らで犬夜叉を浄化し続けていたかごめの姿も、ここにはない。

まさしく八方ふさがりの状態で、犬夜叉が妖怪の力に支配されてしまうことは当然の帰結だった。

 

「ちく、しょう……」

 

しかし驚くべきことに、犬夜叉はまだこの状況でもまだ己の理性を保っていた。

ぼんやりとする頭の中で繰り返し思い出されるのは、あの瞬間。あの光景。

 

『犬夜叉っ!』

 

『桔、梗……』

 

想い合っていたはずの二人は、互いを憎しみながら一度目の最期を迎えてしまう。封印されて眠っていた犬夜叉と違い、桔梗は本当に命を落としてしまった。命に代えても守ると誓ったはずの女を、みすみす死なせてしまったのだ。

 

でも、だからこそ。

 

だからこそ、もう二度と桔梗を殺させるわけにはいかない。

 

少なくともこの時代には、"生きている桔梗"がいるのだから。

 

今度こそ、おれがあいつを守ってみせる。

 

「……っ」

 

その時、微かに漂った優しくて懐かしい匂いに、犬夜叉の敏感な鼻が反応した。

 

「き、きょう……桔梗の、匂い…!?」

 

恐怖や痛みを一切感じない、親譲りの妖怪の血に身を委ねていた犬夜叉の自我が、急速に覚醒していく。

他の何者にも代えがたい大切な存在。命懸けで桔梗を守らんとする犬夜叉の強い意志が、彼に人の心を取り戻させたのだ。

 

それからはあっという間の出来事だった。

我に返った犬夜叉は、桔梗の匂いを辿って彼女の元へ向かおうとする。

すると運命の悪戯かの如く、居場所からほど近くの空洞上部より、桔梗が舞い落ちてきたのである。

 

内心では驚きもありつつ、とにかく先ずは桔梗の安全を優先すべきだと判断した犬夜叉は、持てる限りの全速力で飛び上がり、桔梗のことを抱きかかえる。

 

あまりに突飛な出来事の連続。それゆえに一瞬これが夢なのではないかとも考えた。

しかし……両腕にかかる桔梗の"生"が、現実であることを物語っていた。

 

 

 

「すまない犬夜叉。また、助けられてしまった」

 

「そりゃお互い様だろ。おれだって何度おまえに助けられたか分からねえしな。

……それで、一体何があったんだ。奈落と戦っていたのか?」

 

「四魂の玉、その邪念の集合体である"曲霊"が現れてな。それからは、その…百江が操られてしまって……」

 

どうにも歯切れの悪い様子に大体のことを察した犬夜叉は、首を振って桔梗の言葉を遮った。

 

「だったら、とっとと助けに行こうぜ。敵の気配は感じられるんだろ」

 

「うん、そのことなんだが……何も感じないんだ」

 

「何も感じないって、そりゃどういう──」

 

「おそらくは一人になった百江が、何らかの方法で曲霊を倒したのだろう。先ほどまで戦っていた場所からは、百江の清浄な気配しか感じられない」

 

しかし、あの曲霊に乗り移られながら一体どうやって……と考え込む桔梗を尻目に、犬夜叉は内心で胸を撫で下ろしていた。"何者かに操られた百江と戦う"など、二度も経験したいことではない。

 

「それで、どうする?戻って百江と合流とするのか?」

 

「今の私たちは奈落の体内にいる。やつがその気になれば、戻ろうとする道すらも自在に変えることが出来るはずだ。

それならば、私たちが向かうべきは──」

 

曲霊の邪気が祓われ、奈落と四魂の玉の気配がより鮮明になった今。

狙うべくは奈落の首一つのみだと、桔梗は覚悟を決めていた。

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

ラストに向けて超大事な根回しをしていくRTA、はーじまーるよー。

 

前回は四魂の玉に宿る邪念の化身──曲霊と戦い、死んだふり作戦で最速撃破を実現させることに成功しました。

ここまで来たら、クリアまでの障壁は殆ど無いと言っても過言です(KZH構文)

 

さて、一人になったほもちゃんは現在、瘴気に塗れた奈落の体内を移動しているわけですが……ここで、本RTAの最終章における絶対遵守事項についてお話します。

 

それはズバリ、『夢幻の白夜を桔梗の半径100m以内に近づけさせないこと』です。

そうする理由は白夜兄貴にストーカー規制法が適用されているから……ではなく、『能力を写し取る刀』で桔梗を斬らせないようにするためです。

 

奈落は犬夜叉の冥道残月破に備わる能力をこの刀に写し取らせ、自身を滅することのできる巫女を冥界(実際は四魂の玉の内部)に閉じ込めることを画策しています。

原作ではかごめがその被害者となり、最終話の手前で冥道に飲み込まれてしまいました。奈落曰く、「そうすることを望んだのは自身でなく、玉の意思だった」とのこと。

つまるところが真の黒幕は奈落ではなく、四魂の玉だったというオチですね、初見さん。

 

ちなみに四魂の玉は、『唯一の正しい願い』を口にしない限りこの世から消えることは無く、それどころか持ち主の真の望みだけは絶対に叶えてくれません。つまりプレイヤーの私が四魂の玉を手に入れたとして、桔梗を俺の嫁にしてくださいと願っても、それが成就することはないわけです。

 

お前ホンマ使えんわ~。やめたらこの仕事?

 

ともかくそういった事情もありまして、夢幻の白夜には出来るだけ早い段階でこの世から退場してもらう必要があります。仮に桔梗が原作のかごめと同じ状態に陥った場合、タイムロスどころかゲームオーバーに直行する可能性も否定できません。

 

したがって現在画面上で全力ダッシュしているほもちゃんの目標は、奈落の本体でなく白夜兄貴ということになります。

奴は通常の場合神出鬼没な存在ですが、こと最終章においては冥道残月破の力を得るべく犬夜叉の近くをうろついているはず。神通力のスキルで犬夜叉が発している半妖特有の妖気を辿っていけば、労せずして白夜兄貴と遭遇することができるでしょう。

 

 

 

 

……

 

………

 

…………

 

 

 

【3分経過】

 

すいませへぇ~ん、ほもですけど。ま~だ時間かかりそうですかね~?

 

あれ、ヤバくない?

試走の段階ではこの辺にいたはずなのになんで?

まさかまさかのフラグ管理間違えなんてことは……

 

 

 

【5分経過】

 

はぁ〜〜〜〜 あ さ く さ

 

最後の最後にこれとかマジで持ってませんね……親譲りの屑運恥ずかしくないの?

 

どうやら白夜兄貴はチャートから逸脱した行動パターンで動いているようです。

彼に指示を出しているのは当然奈落のはずで、白夜兄貴の性格上、その命令を無視して独断専行しているということはあり得ません。

しかし、現時点で冥道残月破の取得より優先度が高いものはないはずですが……

 

と、とにかくこうなったらありとあらゆる場所を探し回り、白夜兄貴を見つける他ありません。

早く出てこいやゴルルァ!

 

 

 

【10分経過】

 

「久しぶりだな、百江」

 

▼夢幻の白夜 が現れた!

 

おるやんけ!おるやんけ!白夜おるやんけ!!

 

このままじゃ一生会えないかもしれないと諦めかけていた矢先、遂に白夜兄貴と遭遇しました!

おーおーおー、おめぇどこ行ったんだよおめぇよぉ逃げやがってよぉ、おぉ?(HND△)

 

っていうかこんなところにいたら犬夜叉の冥道残月破の力を回収できないやん!

相手に助言するつもりはないですけど、一体なぁにやってるんですかねえ……

 

「奈落の言ったとおりか。ったく、損な役回りだぜ」

 

そして走者の不安をさらに煽るかのごとく、白夜兄貴が不穏発言をしてきます。

まるでほもちゃんの行動が見透かされているかのような……いや、まさかね。

 

RTAじゃ考えるよりも先に動かなきゃダメなんだ。だからさっさと頃しちまおうぜ!日が明けちまうよ!

 

 

 

さて、通算2度目となる夢幻の白夜戦ですが……基本的には以前と同様の戦法で問題ありません。

相手が身代わりの幻術を使えなくなるまで破魔の竜巻でゴリ押しです。

 

「おっと、問答無用かい。だけどこっちにも役割ってもんがあるんでね」

 

役割……?なんすか役割って?

犬夜叉の刀をコピーするって話なら、あなた自分から放棄してましたよね?

まさか奈落からほもちゃんの足止めをしろと命じられていることもないでしょうし。

いずれにせよここでほもちゃんと会ったが最後、その役割とやらは果たせずに終わることでしょう。

 

そんなわけで夢幻の白夜、かくごー^^

 

「簡単にはやられないぜ、おれもな」

 

逃げんじゃねーよ!お前はもうこっから逃げられないんだよ!(KBTIT)

 

等身大の折鶴を用いてほもちゃんから距離を取ろうとする白夜ですが、KBTITと違って下半身が貧弱でないほもちゃんの脚力を舐めないでください。

あの程度の飛行速度なら簡単に追いつけます。だから大人しくリアルタイムアタックの餌食になるのです!!

 

▼百江 は破魔の竜巻を放った。

▼夢幻の白夜の姿が、蓮の花に成り代わる。

 

こっちが急いでる時に限って遅延行為してくるのヤメロォ!

おまえがそういうことするからこの犬夜叉RTAが「ちょっと早い実況プレイ」とか言われちゃうんだろ!いい加減にしろ!

 

▼百江 は破魔の竜巻を放った。

▼夢幻の白夜の姿が、蓮の花に成り代わる。

 

また幻術だ!まーた幻術だぁ!バババババ……

もうあいつめっちゃうざい!夢幻の白夜ってやつ!(ピネガキ)

 

奈落最後の分身だけあって、流石にしぶといっすね。

ここまで長時間幻術を使い続けられるということは、白夜兄貴は攻撃を捨てて防御・回避に全力を尽くしていると見ました。

最初からほもちゃんとまともに戦う気などさらさらなく、いたずらに時間を消費させる害悪プレイに走っているということですね。

 

逃げてんじゃねえよおいオラァ!!!!YO!!!!

 

本気で怒らしちゃったねぇ私のことね。ほもちゃんのこと本気で怒らしちゃったねぇ!?

 

こうなったら白夜の身代わり媒体となっている蓮の花に狙いを切り替えていきます。

 

……と、簡単に言ってはみましたが、ピンポイントでアレを狙うにはかーなーりーの腕前が必要です。

 

まず第一に表面積がクッソ小さい。お互いにちょこまかと動き回るこの戦いの中で、正確にお花さんを狙うのはいやーきついっす(素)

そして第二に狙うタイミングがクッソ鬼門です。白夜が身代わりを使うのは当然こちらの攻撃が当たる直前であり、それまでは見えないところに蓮の花を仕舞っています。

 

以上の二点から身代わりを事前に防ぐことは至難の技であることがお分かりになると思いますが……このほもちゃんを侮らないで頂きたい!(豹変)

プレイヤーだって伊達にこの作品を繰り返し周回していたわけじゃありません。

以前私が自発的に行っていた縛りプレイ『超余裕!瀕死の桔梗が弓矢だけで完全クリア』で培った精密射撃のスキル、見たけりゃ見せてやるよ(震え声)

 

まずは相手の動きを予測して加速からの先回り。したらば三度破魔の竜巻を放って相手の身代わり発動を誘発させます。

白夜兄貴は身代わりの術を使う際、必ず蓮の花を胸元へ持ってくる癖があります。なのでその瞬間を狙って花を射抜くことができれば、幻術がキャンセルされてほもちゃんの攻撃を直当てすることができるんですね。

 

ということで破魔の竜巻を放ったらすぐさま武器を薙刀から弓矢に切り替え。

白夜兄貴の進路方向と分身の動作を予測して…………

 

 

こ ↑ こ ↓

 

 

「なっ…!?」

 

先立って届いた破魔の矢が蓮の花を貫き、時間差で破魔の竜巻が夢幻の白夜を囲みました。

工事完了です……

 

▼夢幻の白夜 を倒した!

▼5000 の経験値を獲得!

 

「奈落が死ねば同時に滅ぶ分身の体だ。未練はないね……」

 

他の分身と違い、生への執着心を見せずに消滅していく白夜兄貴。好感度や信頼度を上げているとまた違った展開になったりもするのですが、今回はほぼ原作通りの形で退場と相成りました。

先の不穏発言もあり、何か仕掛けてくるんじゃないかと思って身構えていたのですが……まま、エアロ。

白夜兄貴が持っていた『刀身の存在しない刀』も無事に処理できたため、これで安心だずぇ!

 

 

 

さて、残す敵はいよいよ奈落のみとなりました。

一直線に向かってボッコボコのギッタンギッタンにしてやりたいところですが……その前に最後の寄り道をしとうございます。

 

懸念すべきは先刻別れ離れとなった弥勒と珊瑚の件についてです。

弥勒法師は奈落の呪いである風穴を自らの武器として使用してきました。しかしこれまでに吸い込んだ瘴気の毒は浄化しきれず彼の体を蝕んでおり、最終章の現在ではその毒が心臓に届く直前の状態なのです。

奈落の体内では珊瑚と二人で苦戦を強いられることになります。そして追い詰められた状態の彼らを放っておくと、最悪の場合弥勒が風穴を限界まで開いて無理心中をする可能性があるんですね。

だからほもちゃんが自ら行って、弥勒に"最後の風穴"を使わせないようにしないといけません。

 

▼体の中から元気がみなぎってくる……!

▼いつもより何倍も力が出せそうだ!

 

丁度この段階で、冒頭に使用しておいたアイテム『まほろだんご』の効果が最大効率を保ってくれるようになりました。現状でほもちゃんの攻撃力は通常時と比べて約2倍に達しています。

こうなったほもちゃんに恐れるものは何もありません。

 

顔 面 発 射 の ド 迫 力 並の力強さです。

 

ということで弥勒珊瑚をササッと助けて、奈落をパパッと倒しにいきましょう。

 

キリの良いところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

「死んだか、白夜……」

 

巨大な蜘蛛の形を模した己の体内。その奥深くで。

結界の中に独り浮かぶ奈落は、僅かな感傷もなくそう言い放った。

 

奈落が作り出した最後の分身──夢幻の白夜は、まさしく命令通りの役目を果たしてくれた。

本来白夜には別の役割を与える手はずであったが、これまで常に場をかき乱し続けてきた百江の存在を懸念し、直前で命令を変更していたのだ。

結果として白夜は散ることになったものの、少なからず時間稼ぎをすることには成功していた。後はこちらに向かってくる犬夜叉と桔梗の相手をするだけだ。

 

奈落は邪気に染まった玉を掌の上にかざし、語りかける。

 

「これで良いのだろう。四魂の玉よ──」

 

それはまるで、奈落が四魂の玉の思念に従っているかのようで。

 

 

 

様々に交差する思惑の中で、奈落は己が望みに思いを馳せる。

 

 

 

決着の時は、近い。

 





満月の日はすこぶる元気で新月になると調子を崩すことが多々あるんですよね。
ワイは犬夜叉だった…?
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