「ちっ。砕いた分だけ増えてくる!」
「ああ、これではキリがない…!」
仲間と分断された後、弥勒と珊瑚は雲母に乗って道なき道を進んでいた。
弥勒の体は既に限界を迎えている。あと数度風穴を開けば、己自身が飲み込まれるか、瘴気の毒が心臓に達してしまう。珊瑚もその事情を理解していたが故に、決して弥勒に風穴を開かせようとはしなかった。
しかし、奈落はそんな彼らを嘲笑うかの如く、執拗なまでに追撃を繰り返していた。全方位からの絶え間ない攻撃を受けて、徐々に消耗していく二人。
戦いの中で珊瑚は防毒面を、弥勒は武器である錫杖を落としていた。
やがて隙が生まれた珊瑚を目掛けて、強い瘴気を含んだ触手の刃が飛来する。
「しまった…!」
「いかん、珊瑚!」
窮地と見て、反射的に右手を構える弥勒。
「ダメだ、法師さま──」
その動作を見て珊瑚は制止の声を上げようとしたが、切羽詰まった状態ではどうにもならなかった。
「風穴!」
猛烈な勢いで珊瑚に向かっていた奈落の触手は、吸い寄せられるままに方向を変え、弥勒の掌へと収まっていく。
「ぐ……ううっ!」
「法師さまっ!!」
触手の勢いが止んだと同時に、弥勒は風穴を閉じて数珠による封印を施す。
額からは大粒の汗が流れており、息も絶え絶えといった状態だ。
これまでは瘴気に苦しんでいても平静を装うことでなんとか誤魔化せていたが、いよいよやせ我慢をする余裕もなくなっていた。
そして……弥勒は苦渋の末に、一つの決断を下す。
「珊瑚、ここで二手に別れよう」
「何を言って…!」
「私の風穴は、もういつ裂けてもおかしくないところまで来ている。
そうなった時に、おまえを巻き込んでしまうことだけは避けたい。だから──」
その時、弥勒の体に衝撃が走った。
反射的に身構えたものの、その正体が珊瑚の抱擁だと分かり、安堵とともに驚きの感情が浮かぶ。
「そんなの……絶対に嫌だ!」
「な、何を……」
まるで駄々子のようにしがみついてくる珊瑚のことを無下にするわけにもいかず、弥勒はひとまず珊瑚を宥めることに専念する。
「落ち着け珊瑚。何もここで死に別れるということではない。風穴が限界を迎える前に、奈落を倒しさえすれば──」
「だったら、ここで離れる必要なんかない!
せめて私が側にいれば、法師さまが自分から風穴を開くこともないだろう!?」
「しかし、それでは……」
「もし風穴に限界がきた時は、それで構わない。少なくとも私は、最後まで法師さまから離れないって、そう決めているから」
思いもしなかった。まさか自分のせいで、珊瑚にここまでの決意を抱かせていたなんて。
まさしく一蓮托生の思い。しかしそれを受け入れてしまえば、いざというときに彼女を巻き添えにしてしまうことは明白で。
「珊瑚、死ぬことが恐ろしくはないのか?」
「……怖くないって言ったら、嘘になる。だけど私は、まだ諦めてないから。
"せめて片方だけでも生き残って"だなんて、そんな悲しいことは絶対に言わせないから。
二人で──ううん。ここにいる皆で、絶対に奈落を倒して……皆で生き残ろう…!」
冷や水を浴びせられたという言葉は、まさしくこのような時に使うのだろう。
自分は半ば死ぬ覚悟でいたというのに、珊瑚は少しも諦めていなかったのだ。
弥勒は己の不甲斐なさを恥じた。それと同時に、こんなにも強い意志を示してくれた珊瑚のことを、改めて守り抜かねばならないと思い知らされる。
「……済まなかった、珊瑚。おまえの気持ちを蔑ろにするようなことを言ってしまって」
「法師さま……」
手を取り合い、お互いの想いを再確認する二人。
しかし、この空間を支配している黒幕が望んでいるのは、そのような感動的な一幕ではなかった。
「実に下らぬ三文芝居だ……反吐が出る」
遂にその姿を露にした宿敵──奈落。
珊瑚は咄嗟に飛来骨を構え、弥勒を庇うようにして前に出た。
「珊瑚よ、法師の命は風前の灯のようだな。早く逃げないと風穴に巻き込まれてしまうかもしれんぞ?」
「黙れ奈落っ!おまえさえ倒せば、風穴の呪いは消える!!」
頭に血が上った珊瑚は、怒りに身を任せる形で渾身の必殺技──飛来骨を投げ飛ばす。
奈落はそれを待っていたとばかりに、体内のあらゆる場所から瘴気を吐き出していく。
「忘れたか!私の飛来骨は、瘴気を打ち砕けるんだぞ!」
「くくく……そうだったな」
飛来骨は奈落の体を真っ二つに打ち砕き……強い瘴気を纏った状態のまま、珊瑚の手元へ返って行く。
「っ……いかん!」
弥勒が直前になって気付いたものの、時すでに遅し。防毒面を着けていなかった珊瑚は、奈落の瘴気を浴びるように受けてしまったのである。
常人離れした身体能力を持つ彼女とて、毒への耐性は早々鍛えられるようなものではない。
たちまち意識を失い、雲母の元から崩れ落ちていく珊瑚。風穴を使えずに一部始終を見ていることしか出来なかった弥勒は、頭から落ち行く彼女を受け止めた。
「珊瑚!しっかりしろ、珊瑚!」
「残念だったな……法師よ、おまえがどれほど手を尽くそうとも、珊瑚はもう助からん」
「奈落、きさま…!」
いつの間にか万全の状態に戻っていた奈落を前にして、今度こそ決断を迫られる弥勒。
しかしそれこそが奈落の真の狙いであった。
そもそもこの場に存在している奈落は、体の一部を使った分身体に過ぎない。
様々な要因が絡まり判断力が鈍っている弥勒は、最後の抵抗とばかりに目の前の奈落に向かって風穴を開いてしまうだろう。
そうなれば珊瑚もろとも道連れになり、奈落としては邪魔な敵二人を労せずして排除できる。
彼らの死は深い絶望を呼び、四魂の玉にさらなる闇の力を与えることになるだろう。
奈落は内心でほくそ笑みながら、弥勒最期の攻撃を待ち構えんとしていた。
※※※※※※※※※※
法師と退治屋を救っていくRTA、はーじまーるよー。
前回はよく分からんところにいた夢幻の白夜をよく分からんまま倒しました。
その後、最終決戦に参加した弥勒と珊瑚の元へ向かっている状態です。
移動時間はなるべく短縮していきたいのですが、至る所に奈落が仕掛けた罠が存在しているため、それらをヒトツヒトツ突破していかないといけません。
と、言ってる側から進行方向に完全体の奈落が現れました。その手に掲げているのは清浄な光と邪悪な闇とがせめぎ合っている四魂の玉。
どうやら曲霊が消え去ったことにより、穢れた玉に光が戻ったようですね。
「遂にわしの元へ辿り着いたか。おまえが一番乗りだ、百江」
いかにもラスボスらしく待ち受けていたと言わんばかりのワカメですが……嘘だよ。
本物の奈落がこんな辺鄙な場所にいるはずがありません。ましてや神通力のスキルにより、玉の気配が遥か遠くにあることはお見通しです。
この露骨な時間稼ぎに付き合ってやるほどほもちゃんは暇じゃねーんです。よってこの偽物は華麗にスルーするー(激ウマギャグ)
すると今度は至る所で地殻変動が発生し、物理的にほもちゃんの行動を妨げてきます。
エリア内の壁と足場は全て奈落の体の一部ですから、そういうこともできるんでしょうけど……この期に及んで地味な嫌がらせとか恥ずかしくないのかよ?
ともかくここで空洞に嵌って
バグ有りRTAの場合は助走をつけてからの
少女364364倍速中……
到着しました。ここがあの女のハウスね…!
視界の開けた場所に佇んでいるのは弥勒様。その傍らには意識を失っている珊瑚ちゃんの姿もあります。
そして何やらケツ意を固めた表情をしている弥勒が対峙しているのは、先ほどほもちゃんの前にも現れた幻の奈落。
「どうした法師。なぜ風穴を使わない?」
「くっ…!」
何やってんだ~おい。
楽しそうだね~?
お兄ちゃん俺らも混ぜてくれや。
ちょっとアツいんじゃないこんな所でー。
ねーお兄ちゃ~ん。
混ぜてほしいんだけど。
わーい(無邪気)
「やはり命は惜しいか。それとも、珊瑚を道連れにすることを躊躇っているのか?」
「黙れ奈落!今さら私に恐れるものなど何もない。それはきっと、珊瑚とて同じはず……」
うわぁ、これはまるで聞こえていませんね。間違いない……
どういう仕組みなのかは分かりませんが、弥勒の目には幻の奈落しか映っていないようです。このままでは幻と一緒にほもちゃんも吸い込まれてしまいます。
さしものほもちゃんとてブラックホールに吸い込まれたら生きて帰れないため、取り急ぎ彼を止めなければなりません。
しかしこちらからの言葉は一切通じていないようなので、風穴を使われる前に接近して物理的に弥勒様を止めましょう。
「許せ、珊瑚──風穴!!」
(掌の穴が)見える見える。
ああ〜ダメダメダメ!
ほもちゃんが入っちゃう!
風穴に吸い込まれちゃうあぁ許して~!
間に合っ・・・たぁ!!!
『こっちに向かって走ってくる野獣先輩BB』の如く突撃して、どうにか弥勒を抑えることに成功しました。
大人しくしろ!(最猛勝を)バラ撒くぞこの野郎!
「奈落、きさまだけは絶対に…!」
抑え込んでも尚ほもちゃんの存在に気付いてくれないのは悲しいなぁ……
仕方ないので彼の背後に回って、ほもちゃんお得意のスリーパーホールドで無力化させましょう。
落ちろ!……落ちたな。
縛らなきゃ(使命感)
「間一髪のところで法師を救ったか。あと少しで、きさまもろとも風穴の道連れに出来たものを」
(弥勒を救うことが)何の問題ですか?何の問題もないね♂
ほもちゃんの妨害によってこれ以上の心理的な姦計は不可能と判断したのか、弥勒の前に現れていた奈落の分身は捨て台詞を吐きつつ消え去っていきました。
弥勒と珊瑚の安全確保はこれで完了。瘴気を浴びて苦しんでいる珊瑚を浄化したら、気を失ったままの二人を運んで奈落との最終決戦へと洒落込みましょう。
……今さらになりますがこのあたりのプレイング、試走時と比べるとやや時間を食っちゃってます。
主な理由は前回のパートで夢幻の白夜を延々と探していたからですが、全体を通してみるとまだまだ最速タイムを叩き出せているので、まあどっこいどっこいやなどっこいどっこい。
「っ……百江、さま…?」
と、ここで早くも弥勒様が目を覚ましました。
おはようございまーす!(例の挨拶)
「私と珊瑚を片手ずつで運んでしまうとは……やはり百江さまは私が見込んだとおり、規格外のおなごですな」
それは褒めているのか暗にゴリラだと言っているのかどちらでしょうか。後者だったら抱えたまま再び締め落としますわよ?(過激派お嬢様)
「ひえっ……
犬夜叉が『かごめさまや桔梗さま以上にとんでもねー女』だと言っていたのも、頷ける話です……」
ん?何か言いましたか?
……ああ、先ほどの奈落はTDN分身だったもんで、普通にスルーしてきましたよ。本物は四魂の玉の気配と共にもっと奥のほうにいるはずです。
「分身……そうとも知らずに、私は風穴を開こうとしていたのか。なんとも情けない。
というか百江さま。もう普通に歩けますから、そろそろ降ろして頂けると──」
「んっ…百江。それに、法師さま……」
「珊瑚、目を覚ましたか!」
「ああ。どうやら命拾いしたみたいだけど……一体どういう状況なんだ、これは?」
「残念ながら、私にも良く分かりません」
その後、ある程度の事情を察した二人は、ほもちゃんに対して降ろしてくれと再三に渡り要求してきましたが、こちらの方が移動効率が良かったためすべて却下しました。
友好度などは多少下がってしまうかもしれませんが、どの道残す敵は奈落のみであるため、影響は無に等しいです。
肝心の奈落に対してはチャート上きちんとした攻略法が確立されているため、これ以上のガバは起こり得ません。
はっはっは!最後に笑うのはこのほもちゃんなんだよ!
勝ったなガハハ!風呂入ってくる!
この戦いが終わったら、私桔梗に告白するんだ……
あらん限りのフラグを乱立させたところで今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
※※※※※※※※※※
「間違いない。この肉壁を挟んだ先に、奈落がいる」
「下がってろ……冥道残月破!」
犬夜叉は自身の必殺技で、立ちふさがる肉壁を文字通りに消滅させた。
あらゆるものを冥界送りにするこの技の前では、障害物など存在しないに等しかった。
「いくぜ桔梗。準備はいいな?」
「無論だ。共に行こう……犬夜叉」
かつてのように、桔梗一人で立ち向かおうとするのではない。自分のことを頼ってくれる。
死地へ赴き、是が非でも奈落との因縁に終止符を打たんとする犬夜叉にとっては、その言葉が百人力の励みに感じられた。
「ついにここまで来たか……犬夜叉。そして桔梗」
四魂の玉を掌の上に携えた奈落は、犬夜叉たちの到着を待ちわびていたかのようだった。
いつものように不敵な笑みを浮かべながら、仰々しく口を開く。
「奈落、今日こそおまえをぶっ倒してやる!」
「散れっ!」
問答無用とばかりに、いきなり最大限の攻撃──冥道残月破と破魔の矢が放たれる。
しかし奈落は意表を突かれるでもなく、至って冷静に二人の技を受け流した。
「なっ、冥道に飲み込まれねぇ!?」
「破魔の矢を瘴気で防いだか……」
「これが四魂の玉の力だ。何度砕け散っても、あの世へ葬り去ろうとしても、玉は時空すら超えて舞い戻る。
桔梗。かつてわしと同じように玉の力を使おうとしたおまえになら、理解できる話だろう?」
「……」
思い返すのは、悔やんでも悔やみきれない過去の記憶。
自らの命と引き換えに封印したはずの四魂の玉は、紆余曲折を経てこの世に戻ってきた。
それが意味するところは、四魂の玉の不滅性だ。この世に在り続けようとする意志が、玉に込められているのだ。
「奈落、おまえは四魂の玉に何を望む?」
「なに…?」
桔梗の唐突な質問に、その真意を測りかねる奈落。犬夜叉もまた、意味深な言葉に桔梗を一瞥する。
「四魂の玉の力を得れば、確かにおまえは完全な妖怪になることができるだろう。だがそれを受け入れてしまえば、おまえの心は玉に食われ、理性を失った怪物へと変貌してしまう」
「……」
「そうなることを、おまえは恐れていた。今なお四魂の玉を取り込んでいないのが、その証……」
完全な妖怪になるということは、すなわち人としての心を捨て去ることと同義。鬼蜘蛛の人格を強く受け継いでいたがゆえに、奈落がその一線の前で踏み止まっていることを、桔梗は見抜いていた。
「もう一度問おう。奈落、おまえは四魂の玉に何を望む?
四魂の玉は、本当にその願いとやらを叶えてくれるのか?」
四魂の玉に願うことは、何もない。
最後の分身である夢幻の白夜すら測りかねていた、奈落の本心。
目的こそ大いに違えど、奈落と同様に四魂の玉を使おうとした桔梗だからこそ、その結論に至ったのだ。
「黙れ桔梗……」
ざわり、と奈落の漂わせる妖気が一変していく。
そうだ。本当の願いが決して叶わぬことぐらい、とうの昔に分かっている。
奈落を形作った妖怪の恨みの心が、桔梗を殺してしまったときから。
あるいはそれよりもっと以前に、桔梗があの半妖に恋い焦がれるようになってしまった時から。
「そのような言霊で、このわしを鎮めようとでもいうのか!?」
気に入らない。
何もかもかもが気に入らない。
故に奈落は、負の力を以て犬夜叉と桔梗を殺さんとする。
たとえその先に……奈落自身の望みが無くとも。