「そらあっ!」
犬夜叉が結界破りの"赤い鉄砕牙"を湖に向かって振り降ろすと、盛大な水しぶきと共に時空を超える扉が繋がることとなった。
間違いなく神久夜は、この場所から別の時代へと旅立って行ったのだろう。
「これで神久夜を追いかけられるぜ。おれが行ってぶっ飛ばしてくるから、桔梗はここで待ってろ。いいな?」
「ああ、承知した……などと言うわけがなかろう。私も共に行く」
桔梗はどこぞで学んだノリツッコミを披露しながら、独断専行気味な犬夜叉を諌める。
神久夜には相手の力を吸収し、跳ね返す技があった。その意味で力押しを得意とする犬夜叉一人を送り出しても、返り討ちに遭う可能性は否めない。
そして、もう一つ。
桔梗には絶対に神久夜を追わなければならない理由が存在していた。
神久夜は桔梗の破魔矢から霊力を奪い取り、命鏡に時を越える力を宿していた。
それならば……彼女が繋げた別世界というのは、自分と繋がりの深かった百江が生きる時代であっても、何らおかしくはない。
かねてよりの望みが叶うかもしれない。
そのまたとない好機を前にして、桔梗は己の意志をはっきりと表に出したのだ。
「言うと思ったぜ。けどな桔梗、もし行き先が百江のいる時代じゃなかったら──」
「その時はその時だ。おまえと一緒なら、私に恐れるものはないよ、犬夜叉」
「っ…そ、そうか。ならいいけどよ……」
真っ直ぐな言葉に、分かりやすく赤面する犬夜叉。
彼の代名詞と言える意地っ張りな部分も、桔梗の前には形無しだった。
「やれやれ、見せつけてくれるねえ」
「……」
と、その場の空気に一切ほだされず、犬夜叉と桔梗の間に割って入る二人組がいた。
神楽と神無だ。
先ほどの様子からして、神楽は人質をとられていたらしいが……今は既に解放されたようで、幼姉は彼女の後ろにじっと控えている。
「まだやり合おうってんなら容赦しねえぜ」
「そう身構えなくても、これ以上あんたたちと戦うつもりはないさ」
「ならば、おぬしらがこの場に留まる理由はないはずだ。
まさか私たちと共に、神久夜を倒しに行くわけでもなかろうに……」
「察しが良いね。あたしたちがしようとしていることは、その"まさか"だよ」
犬夜叉と桔梗は、信じられないという思いで神楽を見やった。
彼女の打算的な性格は、かつての交わりを通じてよく知っている。
神無ともども無事だったのなら、これ以上深入りしても得られるものは少ないはずだ。
そのため、犬夜叉たちが"何か裏があるのではないか"と疑念を抱くのはもっともな話であったのだが──なにやら姉妹の側にも、譲れぬ思いがある様子で。
「やられっぱなしってのは性に合わねえのさ。あの余裕綽々な面、ぶん殴り返してやらなきゃ気が済まねえ」
それに、と神楽は続ける。
「繋がってるかも知れないんだろ?あの百江がいる時代に。
それを聞いたら、うちの姉上さまが"もう一度会いたい"って、うるさくてね……」
神無と多少の縁があった桔梗はともかく、犬夜叉は今度こそ目が点になる思いであった。
奈落の分身の中で、最も意思と感情に乏しかったはずの神無が、本当にそんなことを?
神楽が口から出任せを言っているだけではないのか。そんな風に思って不意に神無と目を合わせると、彼女は躊躇いなく首を縦に振った。
「一緒に、行きたい。あのときのお礼、まだできていないから……」
神無が吐露した心境は、その真っ直ぐな瞳と相まって、とても嘘を並べているとは思えないものだった。
「どうやら、私たちの志は同じ方を向いているらしいな」
あり得ないこと続きですっかり固まってしまった犬夜叉を尻目に、桔梗が一歩前に出る。
決して握手をするような仲ではないが、少なくとも打倒神久夜という点において、神楽たちは信頼に足る相手であると判断したのだ。
「お互い同じ敵を持つもの同士……仲良くしようじゃないか」
「けっ。言っとくが、おれはまだ信じてねえからな!」
それぞれの思いが交錯する中で。
期せずしてこの場に集った四人は、
そこに人や妖怪といった種族の差は、ほとんど意味をなさなかった。
先の見えない暗闇。
この場所の重力は現世と比べるとかなり小さいらしく、虚無の空間を自然落下の要領でゆっくりと下っていく。
文字どおり"時を超えている"感覚を味わいながら、彼らは今まさに未来へ行きつこうとしていた。
「いいか。もしたどり着いた先が『げんだい』だったら、油断するな。あっちの時代には神久夜以外にも色々と危ねえもんがあるからよ」
「そう、なのか?百江の話では、現代は私たちの時代より平和な世だと聞いていたのだが……」
「そうでもねえと思うぜ。かごめはよく『しけん』とかって名前の敵と戦ってたし、おれが向こうの時代に行ったときは、鉄の車がとんでもねえ速さで行き交ってたりしたからな」
この中で唯一現代の世界に行ったことのある犬夜叉の脳裏に、かつての記憶が蘇ってくる。
反射的に鉄の車へ斬りかかろうとして、かごめに「おすわり」を食らわされていたあの頃が、今となっては懐かしい。
「何百年後か知らないけど、先の世ってのは随分と物騒なんだねえ。まあ、あんな風にぶっとんだ女が生まれてくる時代なんだから、それも当たり前か……」
神楽のそんな呟きに反論するものは、悲しいかな誰もいなかった。
※※※※※※※※※※
ハァ、ハァ、敗北者…?な実況プレイ、はーじまーるよー。
前回はほもちゃんが戦国時代にレッツゴーするつもりが、突如として神久夜が現代に出現し、戦闘状態に移行しました。
お前、いつからそんなテクニシャンになったんだ……(キノガッサ)
そして結論から申しますと、鏡から出てきた光の鞭でしばかれて普通に負けました。
何ができるんだよおまえはぁ!(オク男)
で、現在。
ほもちゃんは神久夜の手により本郷神社の御神木に縛り付けられたうえ、放置されています。
レバガチャで縛り付け状態から必死に抜け出そうとしていますが……これがなかなか、難しいねんな。
通常なら他の仲間が側にいて助けてくれるパターンが多いのですが、現代において味方が誰もいない状態ではどうしようもありません。
『気を抜くな 油断一瞬 ガバ一生』
RTA&実況界隈にはこんな標語があります。
これまで再三のガバを繰り返してきた私には耳の痛い言葉ですね。
さらにここでプレイヤーに襲い掛かってきたのは、本編Part19以来となる尿意でした。
あのさあ……いくらこれがRTAじゃないからって、準備を怠りすぎだってそれ一番言われてるからな。
いやほんと、もしゃもしゃせん(自問自答)
もちろん今回は、『トイレ中にオート戦闘で蛮骨と戦わせる』ような狂気の沙汰ともいえる行為はいたしません。もしそんなやつがいたらガバすぎて鼻で笑っちゃいますよ。はっはっは。
されど尿意に関してはこのまま我慢できる感じではないため、今のうちに行ってきたいと思います。
ほもちゃんは拘束状態で今のところ話の進展も無さそうなので、まあ大丈夫だろ!!
仮に問題が起きたとしても、高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処すれば大体なんとかなるから安心!!!!
と、いうことで!
お花摘みにイテキマース!!
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あ~すっきりした。それじゃあ続きをやっていきましょうかね……ってうおおおおおい!!!!
おるやんけ!おるやんけ!桔梗様おるやんけ!!!!
あ、犬夜叉兄貴オッスオッス……ってなんで神楽姉貴が!?え、神無ちゃんまでキテルノ!?!?
どっ、もうわけ分かんねえよ(半泣き)
黒騎士とりあえず落ち着け。
落ち着いて状況を整理しましょう。
どのような理屈かは分かりませんが、桔梗たちは神久夜を追って現代にタイムスリップしてきたようです。
これはアップデート以前であれば起こり得なかった現象であるため、前述した神久夜の行動に影響されてのものであると考えられます。
つまり、現代のマップ拡張→神久夜襲来→桔梗たちも来ちゃった♡
という一連の流れが成立したわけですね。なるほどわからん。
プレイヤーとしてはこの時点で物凄く攻略Wikiを見たい衝動に駆られているわけですが……そこに書かれている情報は確実にネタバレであり、面白さが半減してしまうためあえて見ないことをケツ意しました。
視聴者の皆様と、死なばもろともーッ!!(イデオン)
なお、もしゲームオーバーになった時のためにチキンセーーーブだけはきっちりとしておきましょう。これで安心だずぇ!(一門伝統)
とにかくそんなわけで、当初の想定とはだいぶ異なる形となってしまったのですが……
目の前に桔梗様がいてくれる。
それだけでほもちゃんにとって、ひいてはプレイヤーの私にとって、もう十分ニチィ!パワーを貰えますよぉ、はい。
「必ず会えると……そう、信じていた」
画面上ではちょうど目覚めたほもちゃんが桔梗と感動の再会を果たしています。死別の涙ではなく、邂逅の涙を流せたこと、私もメタメタ嬉しいですよ。
今だけは何をしても許されると思うので、可能な限り桔梗様成分を補給しておきましょう。
ママ゛ーーーーーーー!!!!桔梗マ゛マ゛ーーーーーーー!!!マッマ゛ーーーーーーー!!!*1
あぶぶばぶマ゛ッ……桔梗マ゛マ゛ァーーーー!!!ビエーーーーーーwwwwwwwwイヒーヒヒヒヒwwww*2
おっぱいちゅーちゅー!!!ちゅーちゅーするの!!!マッマ゛ーーーーーーー!!!!*3
…………はい。
桔梗様からバブみを感じてオギャったところで幾分か冷静さを取り戻したので、他のメンバーとも一通り会話を交えておきます。
犬夜叉兄貴、ご無沙汰しております。悶絶巫女専属調教師の、ほもと申します(あらすじ回収)
桔梗とは仲良くやってる?それはなにより……う、羨ましくなんてないからな!
彼曰く、「桔梗は今日という日までほもちゃんに会うことを諦めていなかった」とのこと。おいおいなんだその告げ口は。ほもちゃんのことを嬉し死にさせる気かぁ?
で、神無&神楽の姉妹コンビはなにゆえこの時代に?
ほもちゃんにお礼を言うために同行して来た、って……なんだそれは、たまげたなぁ。
神楽姉貴からは顔を赤らめながら「こんな言葉は死んでも言わねえと思ってたが……あの時は、その……ありがと、よ」というお言葉をいただきました。やったぜ。
この表情は基本的に彼女の恋愛ルートでしか見ることができないものなので、とても貴重なやつですね。
そして奈落家長女の神無ちゃんからは、言葉少なに何かを手渡されました。
▼神無 から 蓮の花で編んだ髪飾り を受け取った!
どうやらこれはお礼の印だそうで、先ほど桔梗も同様の品を貰っていたとのこと。
はいかわいい。ひたすらにかわいい。お返しに家にある飴ちゃんをしこたまあげようね。
あっ……見てくださいよ神無ちゃんのこの顔!拡大すると口角がほんの少しだけ上がっていることが窺えます!
完全に想定外のところではありましたが、彼女との信頼イベントを発生させることに成功しました!
以前にも少しだけお話ししと思いますが、友好度が一定以上に達すると神無ちゃんの笑顔を拝むことができるんですね。
奈落ルート以外だとそもそもの絡みが少ないため、このイベントを起こすのは至難の業と言われているのですが……神楽を助けたことと飴ちゃんをたくさん献上していたことが功を奏しました。
この小さな笑顔を、私たちの力で守り抜いていくんぜよ!(令和の夜明け)
……桔梗たちとひとしきり再会の喜びを分かち合ったところで、今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
※※※※※※※※※※
時の狭間を抜け、現代に降り立った彼らを迎えたのは、立派な門構えを残す神社。
その鳥居に書かれていた「本郷神社」という文字を見て、一行は百江のいる時代に行き着いたことを確信した。
死人である桔梗の体に、心の臓は存在しない。
しかしそれならば、この胸の高鳴りは一体何だというのだろう。
錯覚などではない。桔梗は確かに、彼女の気配を感じ取っていたのだ。
一歩、足を踏み出す。
もう一歩、さらに一歩……
気付いた時には走り出していた。
後ろから掛けられる声には、目もくれずに。
もう一度会いたい。会って話がしたい。
その強い思いが、桔梗の体を突き動かしていた。
全長30メートルはあろうかという、巨大な御神木。
その中央部に括り付けられていた百江は、安らかな表情のまま目を瞑っていた。
「もも、え……」
かつて……犬夜叉を封印した時を思い起こさせるような光景を前にして。
桔梗は、久しく遭っていなかった友の名を口にした。
「百江っ!!」
神久夜の瘴気が残っていたことと、微動だにしない百江の姿を見て、最悪の想像が頭をよぎる。
しかし、百江の胸が僅かに上下していたことから、桔梗が抱いた不安は一気に払拭された。
その後……桔梗を追いかけてきた犬夜叉らと力を合わせ、彼女を拘束していた触手を全て取り払うと、百江は寄りかかるようにして桔梗の腕の中に収まる。
人の気も知らずにすやすやと寝息を立てる百江に苦笑しながら、桔梗は彼女の額を軽く弾いた。
目を覚ましたばかりの百江は、視界に入った光景を夢の中の出来事であるとしばらくの間錯覚していた。
彼らが本物であることを無意識的に悟った彼女は、その瞬間桔梗の胸に飛び込んでいく。
「桔梗……私も、会いたかった。ずっとずっと、そう思ってた……うう、うわああああん!ママー!!!!」
そこからは、めちゃくちゃに泣き叫び、桔梗をママと称して幼児退行する百江の独壇場であった。
遠巻きに眺めていた犬夜叉は、彼女の暴れっぷりに若干顔をひきつらせつつ、それでも慈愛の心をもって優しく抱き締め返す桔梗の姿を見ると、それを咎めるような真似はできなかった。
果てに「おっぱいちゅーちゅー!!!」などと言い出した時は、さすがに変な声が出そうになったのだが……それでも桔梗は「相変わらず、しかたのないやつだ」と宥めながら百江の頭をなで続けており、謎の絆の強さを見せつけられる形となった。
ちなみに先の発言を受けて、側にいた神楽が盛大に吹き出していたことから、犬夜叉が百江に対して常日頃から抱いていた"この世の誰よりもやべー奴である"という感想は、あながち間違っていないことが証明された。
ややあって冷静さを取り戻した百江は、一行からことのあらましを聞くことになった。
神久夜の襲来、それぞれの闘い、果ては命鏡を用いてのタイムスリップ……にわかには信じがたい話ばかりであったが、本来戦国時代に生きる彼らが令和の時代に存在していることがなによりの証拠であった。
そして神久夜は、百江が見つけた天の羽衣を奪い取り新たな力を得てしまった。
このまま彼女を放っておけば、現代にどのような災厄が降りかかるのか想像もつかない。
時代を越える再会を果たした彼らには、目に見えぬ新たな使命が課されていた。
が、しかし……
どれほど勇もうとも、腹が減っては戦はできぬ。盛大に腹を鳴らした犬夜叉のこともあって、今日のところはひとまず鋭気を養うことになったのである。
「そうと決まれば、まずは腹ごなしからだね。当家自慢のフルコースを……堪能して貰おうかな?」
なにやら不穏な言葉を残して、百江が台所に立とうとする。以前に彼女と料理を作り、その腕前を知っていた桔梗は、下味を何も付けずいきなり肉を焼こうとする百江の隣についた。
それは、戦前の腹ごしらえで味方内に不和が起きることを危惧しての行動だった。
「ダメだよ桔梗、今日はあなた達がお客さんなんだから。私が腕によりをかけて、食通の皆を思わずうならせちゃう料理を作ってあげるね!」
「百江……その気持ちは、とても嬉しく思っている。だけど私は、いつかの時のようにおまえと一緒に料理を作りたいんだ」
「も、もう。桔梗ったらそんな嬉しいこと言ってくれちゃって……//」
咄嗟に放った一言にわかりやすく嬉しがる百江を見て、桔梗はほっと胸をなでおろす。この世で最も百江の扱い方を心得ているのは、間違いなく彼女だった。