呪 ! 1 周 年 記 念 !
「うめーぞ、この
「食べながら喋るな。服に汁が飛び散ってしまうぞ」
出された料理を片っ端から平らげているのは、赤い和服を纏った少年──犬夜叉。過去に何度かこの時代を訪れてはいたが、このように洒落た店で料理を食べるという経験は初めてであった。
一方でそんな彼と向かい合う席に座る桔梗は、犬夜叉の行儀をたしなめつつ、自らが注文した『ぱふぇ』なる異国の菓子を口に運ぶ。元の時代にはない独特の甘みが口いっぱいに広がり、思わず顔をほころばせた。
──令和の世にて。
時代を超え、現世の支配を目論んでいた神久夜を討ち果たした一行は、本当なら百江の力を借りてすぐにでも戦国時代へ舞い戻る手はずであった。
されど、どういう風の吹き回しか。桔梗が突然『元の時代へ戻る前に、少しだけ現代の世を見て回りたい』という願いを口にしたのである。『数日の間なら私の中で死魂が尽きることもないから』とも。
この時代には死魂虫が存在しておらず、桔梗は魂を得ることができない。神久夜との戦いでそのことを耳にしていた百江は当然ながら桔梗の体を心配したが、さすがに自分の命に係わることで嘘はつかないだろうと判断して桔梗の要望を受け入れた。
そこからは百江主催の行き当たりばったりな日本縦断ツアーが始まり、現在に至る。
魑魅魍魎が跋扈する戦国時代と比べて圧倒的に平和で豊かな現代の暮らし。実際に滞在していたのはたった数日間だけだが、桔梗はこの時代のことをいたく気に入っていた。己の体に纏わる制約さえなければ、この時代に残って暮らすことも悪くないと思えるほどに。
過ぎた望みであることは自覚しているが、あらゆるしがらみから解放された今となっては、その願いすらいつかは叶えられるのではないかと思ってしまう。端的に言うのであれば、この時の桔梗は物凄く前向きな考えを抱いていたのである。
そんなことを考えつつ、パフェの残りを食べようとして。
「……ん?」
目に映ったのは、いつの間にか空となっていた透明の容器。
なぜだ。最後の一口を楽しみにとっておいた筈なのに、どうして跡形もなく消え去っているのだ。
まさか妖怪の仕業か。いやしかし、この場においては犬夜叉たち以外の妖気は感じられない。
「おっ、どうした桔梗?」
「ひと口ぶん残しておいたはずなのに……ここに入っていないではないか」
ふと対面にいる犬夜叉の顔を見やれば、否が応でもあることに気付かされる。
その口元に付着していたのは、先ほどまで自分が食べていた甘味に相違なかった。
「まさか、最後のひと口を食べたのか!?この中の中で!?」
「げっ…!いやそのこれは、もうおまえが食わねーと思ってよ……」
「……」
「す、すまねぇ……」
段々と言葉が尻すぼみになっていく犬夜叉を見て、桔梗は内心でほくそ笑む。
反省はしているようだが、食べ物の恨みは末代まで続くほどに怖いのだ。桔梗はそのことを犬夜叉に
彼の口元に付着しているクリームを手で掬い取り、なんとその勢いのまま舐めとってしまう。
これにはさすがの犬夜叉も完全な想定外だったらしく、湯気が出るのではないかというほどに顔を真っ赤にしていた。
「なっ、なな、何を…!?」
「さっきの仕返しだ。せ、せいぜいその顔を羞恥に染めることだな」
そう言いながらも、犬夜叉と同じかそれ以上に顔を赤らめていた桔梗であるが……流石にそれを指摘するほどの度胸を犬夜叉は持ち合わせていなかった。
「さすがに、犬夜叉解体ショーまでは漕ぎつけなかったみたいだね……」
そんな二人のイチャイチャバカップルぶりを野獣の眼光で遠巻きに眺める百江は、自らが注文したアイスティーに粉砂糖を入れる。サーッ!という乾いた音が僅かに聞こえたが、別に睡眠薬などは混じっていない。
同卓の神楽は先ほど頼んだケーキを猛烈な勢いで平らげており、神無の方は控えめにソフトクリームを舐めていた。
「っていうか、なんであんたはこっち側にいるんだい。そんなに二人のことが気になるなら、同じ席に座ればよかったじゃないか」
「そういうわけにもいかないよ。人の恋路を邪魔するやつは、炎蹄に喉元食いちぎられて地獄に堕ちるっていうし」
「それを言うなら馬に蹴られて、だろ……」
炎蹄に喉を食われたら命がいくつあっても足りゃしないよ、と呆れ気味に続ける神楽に対して、百江は己の素直な心情を吐露する。
「二人が揃っている時は、なんか声をかけづらくってさ。遠巻きに眺めてるくらいがちょうどいいのよ」
それは百合の間に割って入るおじさんを決して許さない、彼女なりのポリシーだった。
「まぁ、何となく言いたいことは分かるけどね……」
「でしょ?それにこっちの席にいれば、神無ちゃんを愛でることもできるし。一石二鳥ってやつ」
調子のいいことを言いながら、神無の白い髪を優しく撫でる百江。慈愛に満ちたその表情からは一切の下心を感じさせないが、油断は禁物だ。
昨日も同じような展開でこの二人を放置していたところ、突然発作を起こした百江が『か゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛か゛ん゛な゛ち゛ゃ゛ん゛』といって神無をお持ち帰りしようとしていた。その際はすんでのところで神楽が静止に入ったわけだが、やはりこの女は何をやらかすかわからない。純粋無垢な姉にはまだ知らなくて良い世界だと言い聞かせているが、神無は神無で百江に対し絶大な信頼を抱いているため、いつか本当に一線を越えて過ちが起きてしまうのではないかと気が気でないのだ。
「あっそうだ神無ちゃん。まずうちさぁ、屋上があるんだけど……日向ぼっこしてかない?」
「ひなた、ぼっこ…?」
「そそそ。ポカポカしたお日様にあたりながらぼけーっとするの。今なら特製オイルもあるから、全身にくまなく塗ってあげられるよ!」
「……(コクリ)」
と、言った側からこれである。オイルというのが果たしてどんなものを指しているのか分からないが、当の本人がクッソゲスい笑顔を浮かべていたので確信犯に違いない。神楽は本日何度目かのため息をつきながら、姉を守るべく全力で百江を制止することに決めた。
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再び戦国の世へと舞い戻る実況プレイ、は~じま~るよっ!!(三度復活した大物youtuber)
皆さまお久しぶりです。悶絶神久夜専属調教師の、ほもでございます。
前回の投稿から約半年、いちばん最初の投稿からは早1年。桔梗救済ルートのチャートを作成するうえで、『どうしてもここまではやりたかったんや!』と考えていた部分までイってみたいと思います。
具体的には犬夜叉の劇場版第4作目『紅蓮の蓬莱島』に沿った話を進めていくつもりなので、よろしくお願いさしすせそ。
そんじゃイクゾォォォォ!
と、いいつつ(フェイント)
投稿があまりにも久々すぎてこれまでの展開を忘れてしまった方もいると思うので、少しだけおさらいしておきましょう。
・陰湿ワカメこと桔梗大好きおじさんこと奈落をぶっ倒すも、時代をまたいで離れ離れになってしまった桔梗様とほもちゃん。
・その後新たに出現した強敵"神久夜"を倒すため、再び戦国時代に戻るはずが、逆に桔梗らが現代へとタイムスリップ。
・何故か北海道まで行って神久夜を倒した一行はその帰り際、疲れからか不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
・後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは……
大体こんな感じです。*1
で、今回はその直後からスタートしていくわけですが、なーぜーかーその前に桔梗の発案で現代の世を観光して回ることに。お前さ桔梗さ、さっきヌッ……原作だとそんな性格じゃなかったよなぁ?
戦国時代で一緒に旅をしていたころはどこか愁いを帯びた表情を崩さなかった彼女ですが、今じゃ見てくださいよこの顔!観光名所やご当地の名産品に目を輝かせてるじゃないですか!それにまんざらでもない顔で付き合う犬夜叉と、いつの間にか現代に順応している神楽&神無姉妹もよき!
以前のアップデートで現代日本のマップを拡張した理由は、我々にこの姿を見せるためだったんやなって。
このまま犬夜叉と桔梗のいちゃつきっぷりを眺めたり、神無ちゃんにちょっかいをだして神楽姉貴にたしなめられる日々をずっと享受していたいところですが、「桔梗の死魂尽きちゃう問題」の手前、そうも言ってられません。
お洒落なカフェテリアで茶をしばいたら戦国時代へと発つべく荷造りを始めましょう。ほもちゃんのおうちは由緒正しき『本郷神社』の家柄なので、使えるアイテムがあればリュックサックに詰め込めるだけつめっ、詰め込もうぜぇ!(噛み噛み)
味方の好感度を上げる甘味や、薬草以上の効力を有する回復薬、それから娯楽用品のギターなんかを一つまみ。おそらく使用する機会はないでしょうが、”突然演奏して、びっくりさせたる”展開があるかもしれないので念のため。
それから桔梗に渡す用でお化粧品の類も忘れず回収していきましょう。彼女の好感度は既に上限突破しているため本来であれば必要のない行為ですが、ほもちゃんとプレイヤーの行動原理は『桔梗様の心からの笑顔を拝みたい』というところに基づいているので、何の問題もありません(公私混同)
じゃけん早速現代のお化粧セットをプレゼントしましょうね~。
「これを、貰ってもよいのか…?ありがとう。とても嬉しいよ」
▼やった。すごく喜んでもらえたみたいだ。
「ときに百江、私に紅は必要ないから。これはおまえが使うといい」
▼化粧品セットの中で口紅だけいらない、とは一体どういうことだろう。気になったのでその話を掘り下げてみる。
「実を言うとな……紅だけは、犬夜叉から貰ったとっておきがあるんだ」
▼彼女が服の中から取り出したのは、子安貝で作られた紅差し。どうやら桔梗は、これを犬夜叉からプレゼントされたらしい。
んほおおおおお!!!!!まさか桔梗様に惚気られる日が来ようとは思いませんでした。
はぁ~堪らん堪らん。幸薄系美女が己の運命を乗り越えて幸せになっていく姿、気持ちよすぎだろ!!
彼女の優しい笑顔が万病に効くようになる日もそう遠くはないでしょう。
奈落くん!奈落くん(あの世から)見てるかー!?
悔しかったら今度はお前が桔梗救済ルート走るんだよ!
以前に話したとおり、奈落プレイで桔梗をヒロインとして攻略するのは難易度クソ高すぎてじゅうべえくえすと並みの苦行を強いられることになるでしょうが、回りくどい策略で桔梗を殺そうとするよりかは何倍もマシだルルォ!?
と、未開拓のルートへ一石を投じたところで全員集合。桔梗の命を繋ぐべく、再び戦国時代にイテキマース。
補足しておきますと、前回のプレイ時、咄嗟の判断で神久夜を取り込んでしまったほもちゃんには時空を超える能力が新たに備わっています。この力をうまく使えば、"菅野○穂"発言の真意やポルターガイストくんの謎を解き明かせる可能性が微レ存…?
ただでさえヤベー女にさらなるヤベー力をつけさすんじゃない!下北沢にカエレ!……という声も聞こえてきそうですが、桔梗を救うにはこの手しかなかったんです。だから許してや、城之内。
それでは気を取り直して。
イクゾオオオオ!!!!
新作ゥ……
タイムスリップ!タイムスリップ!YO!YO!YO!YEAH!
※※※※※※※※※※
"最速"の名を冠とする炎蹄は、かつて桔梗らと共に旅をしていた妖怪である。圧倒的な戦いぶりを見せた百江のことを主として認め、絆をもって付き従ってきた。
だが、百江は奈落との最終決戦の折に現代へと戻らざるを得なくなってしまった。それ以降は退治屋である珊瑚と琥珀が炎蹄を引き取ることにしたのだが、主を失った炎蹄を御することは未だ敵わず。
「くっ、うわあっ…!」
「落ち着け琥珀。そいつの視線を見て、次に向かう先を予測するんだ!」
暴れ馬に振り落とされまいと必死にしがみつく弟の様子を眺めながら、珊瑚が檄を飛ばす。
(気性の荒さは雲母とは比べ物にならない、か。まったくとんでもない置き土産を残していってくれたもんだよ……あいつも)
そもそも炎蹄は神泉和尚に封印される以前、『主と認めた者に天下を取らせる』とまで言わしめたほどの伝説的な妖怪であり、珊瑚自身も退治屋の中で『蘇ればこの世に大きな災いをもたらすことになる』と伝え聞いていたほどだ。
裏を返せばそんな逸物に対して易々と力を認めさせていた百江が異常……ということになるのだが、彼女であればやりかねないと思えてしまうところが百江の百江たる所以なのかもしれない。
唯一の救いは炎蹄がこちらに向かって直接的な攻撃を仕掛けてくることはない、ということぐらいだろう。
一応琥珀とは旅を共にした仲であるという認識はあるらしく、これまでも炎を吐かれたり光弾を放たれたりといった惨事には至っていない。
とはいえ基本的に命令を聞くことはないので、依然として扱いには手をこまねいている状態だった。
炎蹄との修練を終えてへとへとになった琥珀はそのまま村に帰るだけの余力もなく、木陰で休息をとることにした。珊瑚は労いの意味を込めて近くの川で汲んできた水を琥珀に手渡し、隣に腰掛ける。
「ありがとう、姉上」
「おつかれさま。相変わらずやつには振り回されっぱなしだな」
「うん。やっぱり百江さまぐらい強くならないと、炎蹄も認めてくれないってことかな」
「あいつは色々と規格外だったから……最後の戦いの時なんか、私と法師さまを片手に担いで爆走してたし」
「おれも、一緒に旅をしていた頃は驚かされることばっかりだった。奈落に操られていた瞳子さまと『大乱闘すまっしゅぶらざーず』をしたり……懐かしいなぁ」
「すま…ぶら?なんだそれ」
覚えのない単語に疑問を抱く珊瑚を尻目に、琥珀は気になっていたことを問うべく「そういえば、」と前置いたうえで彼女の方へ向き直る。
「桔梗さまと犬夜叉さまは、まだ見つかってないの?」
「ああ。私も伝手を頼りに探してはいるんだが、どこにも……」
聞いた話によれば、二人は村に現れた妖怪と戦っている最中、突如として姿を眩ましたらしい。もちろん簡単にやられる二人でないことは承知のうえだが、痕跡すら残さず消失してしまったという事実には珊瑚も内心で動揺していた。
「まるで、神隠しにあったみたいだ」
そんな琥珀の呟きに、言い得て妙だと苦笑する。探すにしても待つにしても、手掛かりがあまりに少なすぎた。
風の流れに乗った一枚の木の葉が、空へと舞い上がる。
その異変にいち早く気付いたのは、退治屋の姉弟から少し離れた場所に佇む炎蹄だった。
何もないはずの空間が渦を巻くようにして歪んでいき、やがて上下に大きな亀裂が走る。
妖馬は待ちわびた主の帰還に声高く嘶きながら、歓喜の炎を吐き出す。
琥珀がそれに気づいて視線を上にあげると、見知った顔が勢揃いした状態で空から降ってきていた。
「姉上!……空から桔梗さまと百江さまと犬夜叉さまと神楽と神無が!!」
咄嗟に叫ぶ琥珀。そして──
「なんっ……なっ、なんだって!?」
あまりの情報量の多さに処理能力を超えた珊瑚は、琥珀が指差す先を思わず五度見するのだった。
この回を投稿しておいて何なのですが、以降の話が雀の涙ほどのプロットしかできていないため、次回更新までいましばらく時間がかかると思われます。
名探偵コナンの原作が完結するまでには投稿するので気長にお待ちください。