竜殺しっぽい誰かの話。 作:焼肉ソーダ
「俺、復活ッ!」
「おめでとう」
ぱちぱちぱちぱち、とレイフォードのやる気なさげな拍手がビーチに響く。
レイフォードにキメラにエレノアさんに、と少なくない傷を負った俺は、一日ぐっすり休んで見事回復。
無事、今日という最後の自由時間に復活を遂げたのであった……!
「お前、あんだけボロクソだったくせに元気だな……」
「俺の辞書に怪我を理由に遊ばないという文字はないです」
「文字じゃねえだろそれ、もう文章だろ。つか療養しろよ、そこは」
呆れたようなグレン先生の言葉にはっはっはと笑顔で返し、ヒャッホーと浮き輪(フィーベル支給。もう素潜りすんなという意思表示らしい)を片手に海へと飛び出す。お、三人娘発見。
せっかく浮き輪で体面積が増大しているので、腰にしっかり装着してからざばーんと大波を立ててやった。一日中惰眠を貪っていたせいか、今の俺は体力が有り余っているのだった。
「ちょ……けほっ、アッシュ……」
「フゥーハハハハーーー!! 油断したな貴様ら! 恨むならこの浮き輪を支給した自分を恨……あっ待ってレイフォードさ、な、なんで浮き輪に下から手をかけてるんでせう? そのままだと、ワタクシ派手に横転いたしますことよ?」
「ん。楽しそうだから、わたしもやる」
「うぎゃあーーー!?」
因果応報、自業自得。
レイフォードの細い腕で浮き輪をひっくり返された俺は、見事に頭から海に突っ込んだ。
なんとか海上に顔を出すと、狙いすましたかのようなタイミングで波が起きた。自然なものではない。レイフォードに水をかけるティンジェルのものだ。
「あ、ごめんね?」
「いや、大丈夫だ」
ぶるぶると犬のように頭を振って海水を飛ばす。
ちょっと振りすぎて頭痛い。うぉえ。
なんてバカをやっているうちに今度はフィーベルが小型のボート浮き輪を持ってくる。旅籠から借りてきたらしい。マジかあの旅籠万能かよ……。
というわけで現在、我々はフィーベルとティンジェルをボートに乗っけて沖に漕ぎ出していた。
「うわあ……船とはまた違った感じだね……」
「ふふ、そうね。こういうのもゆったりしてて悪くないわ」
「お前、俺たちが必死こいて押してるのを見ての発言だろうなフィーベル……!」
お前の乗ってるそのボートの推進力は俺とレイフォードなんだぞ。現実を見ろ。
まあ、誰かが押さなきゃいけないのは事実だけどさ。
「はあ……レイフォードは乗らなくて良いのか? 疲れるだろ、それ」
「……楽しいから、いい。アッシュも押してるし」
「そりゃ、どーも……」
病み上がりだけに働かせられないとか、そういう配慮だろうか。フィーベルなんかはその辺全く考えてくれないが。
「病み上がりは浮き輪つけて海に突っ走らないわよ」
「ごもっともで」
ンンンンこれも自業自得。まさに正論。
放置されるのもつまらんからいいんだけども。
そしてあまり離れすぎないようにと海岸を確認すると大きく手を振っているカッシュの姿。その手にはビーチボールといつぞやにビーチバレーのメンバー決めに使ったクジが握られており、ビーチバレーの再戦をしようと呼びかけていた。
「だ、そうだが。どうする?」
「うーん……せっかくだし、やろうよ。ね、システィ、リィエル」
「ん……びーちばれー? それって、あのボールを叩くやつ? ……ん。やりたい」
「決まりね。じゃあアッシュ、砂浜までよろしく」
「お手軽にこき使うんじゃねえよ」
俺のことをタクシーかなにかと勘違いしてやいませんかねえ。
まあいいけどさあ。
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「……成程。これが、お前の守りたかった景色か」
アルベルトが、ビーチパラソルの下でくつろぐグレンにそう声を投げた。
それにグレンはフンと鼻を鳴らすだけでなにも言わない。その視線は、今もビーチで楽しそうにはしゃぐ二組の面々に向けられている。
数日前と同じように、リィエルに挑んでは吹っ飛ばされる男子生徒の群れ。やる気なさげにボールを叩きつけるリィエルの対面の相手チーム、別名『命知らずな野郎ども』にやる気満々でボールを拾おうとするギイブルの姿を認めてふっと頬が緩んだ。
「確かに、この光景は掛け値なしに尊いものだ。……今回ばかりは、お前に謝罪せねばなるまい。すまなかった、グレン」
ルミアを救う。そのために、この光景からリィエルを奪おうと決断したこと。
結果的にそれはグレンの活躍でなかったことになったが、一歩間違えればこの日この場所に広がるものは、もっと悲劇的な光景に様変わりしていたことだろう。
「やめろよな……お前が素直に謝るとか気持ち悪くてしょうがねえっての。鳥肌立ったわ」
「惰弱な」
「そういう問題じゃねえだろ。……で?」
グレンは腕をさすりながら、横目でアルベルトを流し見た。
アルベルトがわざわざ雑談のみを目的にしてグレンに接触するはずもない。必ず、そこにはなにがしかの理由があるはずだ。……例えば、先の事件の顛末であるとか。
「その通りだ。……リィエルの兄を名乗っていた魔術師……ライネルからは、めぼしい情報は得られなかった。所詮第一団《門》……
「だろうな。お前があんだけあっさり始末を決めたんだ、バークスも同じことだろ」
「ああ」
事前情報により、天の智慧研究会とバークスが繋がっていることをアルベルトは知っていた。そして、アルベルトにはたとえどれだけ気に食わない外道であっても、それが帝国の益になるのならば自分の感情を押し殺して任務を遂行するだけの強固な意志がある。
そのアルベルトがバークスを捕獲せず始末した、ということは、バークスからは大した情報は得られないであろうことがわかりきっていたということでもある。
「……気になるのは、エレノア=シャーレットだ」
「魔術競技祭の一件の黒幕で、今回はお前を足止めしたっていうヤツか」
「そうだ。ルミア=ティンジェルを狙う奴が、何故誘拐した王女をそのまま放置したのか……殺すにせよ連れ去るにせよ、他にもやりようは有った筈」
「目的がわかんねーことほど気持ち悪いこたぁねえよな、確かに」
それに今回、件の施設内で重傷を負って倒れていたアシュリーを叩きのめしたのも彼女だと本人から聞いている。
やたらと執着していたアシュリーを捕獲するには絶好のチャンスであったにも関わらず離脱した。だがルミア=ティンジェルには手を出さず、その行方は未だにわかっていない。
考えられるのは、そうせざるを得ない状況に追い詰められていたということだが……エレノアの不気味さから言って、目的は別にあったと見るべきだろう。
───アレにとって、たぶん俺はオマケでした。道の途中で見つけたボーナス、みたいなものでしょう。優先度は低かったはずです。
───俺ごときが狙われる理由に心当たりはありませんし、エレノア=シャーレットとの邂逅も今回の件も、すべてが成り行きでしたし、ね。
一度、事情聴取のためにアシュリーの部屋を訪れた際の言葉。
虚言は許さない、と眉間に突き付けられた指先にも動じず、真っ直ぐにアルベルトを見返しての発言だった。
本来の目的を達するために、目先のものを放棄した、ということであれば、今回のエレノアの目的は『Project:Revive Life』の達成、あるいはそれに関連するなにかだということになるが……やはり、肝心なことはなに一つとしてわからない。
それに、アルベルトがアシュリーを警戒していた理由……エレノアが執着していた理由も依然不明のままだ。
純粋に戦力増強としてか、なにか特異な才能を見出してのことか。あるいは───
(アシュリー=ヴィルセルト……十年前に、任務に向かったはずの翁が連れて来たという少年。調べてみるか)
命懸けで天の智慧研究会と戦ってみせたアシュリーを疑う気持ちはない。だが、それはそれとして疑わしき部分、調べられる部分は徹底的に洗うべきだ。
そんなアルベルトの方針を知ってか知らずか、当のアシュリーはリィエルとほぼ一対一でビーチバレーに興じている。
少し前に殺されかけたばかりだというのに、呑気なことだ。
「ではな、グレン。もう会うことがないよう祈っている」
「へーへー。俺もその辛気臭えツラ拝まないで済むならせいせいするぜ」
まあ、ルミアが狙われる限りそんなことは起こり得ないのであろうが。
少しだけ憂鬱な気分になって、グレンはアルベルトを見送ることもせずに砂浜に転がるのだった。
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フェジテよ、俺は帰ってきた……!
長い馬車での旅を終え、一週間ぶりに戻ってきたここ四年間ですっかり慣れてしまったフェジテの街並みを前に、俺は喜びに打ち震えていた。
いや、みんなでお出かけ旅行……というシチュエーションは、前にも言ったが嫌いじゃない。むしろ好きな部類に入る。俺は遠足でテンション上がって寝られないタイプの人間なのだ。……寝つきは良い方だからすぐに寝られるけど、まあたとえ話ってことで。
だが、やっぱり住み慣れた我が家の安心感には敵わない。非日常というのは日常があってこそ楽しいのである。特に今回は色々あったから尚更だ。あー、今すぐ家のベッドに潜り込みたい。
グレン先生の号令で三々五々に散っていく生徒たち。きっちりと制服を着込んだ奴が多い中、唯一俺がシャツにズボンというごくシンプルな格好なのは、まあ言わずもがな制服がボロッボロになってしまったためである。おのれ。
「ま、一週間もありゃ新しく作ってもらえる……かなあ」
お金、あったっけ……? などと思いながら、家に戻ったらまず金庫を確認しよう……と、若干悲痛な覚悟を決め、この一週間でなんか仲良くなったフィーベルたち三人娘に別れを告げて愛しの我が家への帰路に着く。
「はあ……さすがにもうしばらく、厄介ごとは起こらないはずだよな……? ……ん?」
十字路を通り過ぎて、道を幾つか曲がって、学生の一人暮らしにしては若干贅沢な一軒家(ボロ家だが)を目指して歩いていたそのときだ。
最近ちょっと建付けが悪くなってきたよなあ、そろそろ修理しなきゃかなあ───なんて思っていた扉の前に、誰かがいた。
フィーベルのような銀髪とは違うグレーの髪。
遠くからでもわかるくらいそのシルエットは逞しく、筋骨隆々としていた。
その人物が着ていた服は、いつぞやのアルベルトさんやレイフォードと同じものであった。が、そんなことは関係なかった。
「ヒィ───!?」
悲鳴を押し殺して回れ右。
あの外的情報に当てはまる人物を、残念ながら俺は一人しか知らない。
持てる能力のすべてを使ってここからの離脱を決意する。あかん。見つかったら死ぬ、ぜってえ殺される、ここは逃げねばいいからとりあえず逃げるんだよォ───!!
と、一歩を踏み出したその瞬間、目の前にずーんと立ちはだかる壁。
それはさっきまで、家の前にいた男の姿をしていて───
「甘いのう」
「げぇーーーッ!? 先回りッ!? なんでいるんですか!?」
「そりゃ、近付いてきてるのがわかってたんじゃからこう……屋根を伝ってヒョイヒョイっとな?」
「軽業師かよ! いやそうじゃなくて、すみません人違いですそれでは───ぐえっ」
「まあ待て待て、せっかくの再会なんじゃしそう慌てるな」
もう一度Uターンして逃げ出そうとした俺の首根っこをひっつかみ、猫の子のよーにぶら下げる男。
楽しそうに笑っちゃいるが、俺は冷や汗が止まらない。なんでいんの。あんたよくわかんないし現役かどうか知らなかったけどその服着てるってことは現役軍人でしょ。
「なあに、ちっとこの辺に用事ができての。せっかくじゃし、愛弟子一号の顔でも見に、な? どうじゃ、嬉しかろ?」
「はいはいわかった弟子思いの師匠で俺は大変幸せ者でごぜぇますよ! だからっとっととその丸太みてえな腕離してくれませんかねえ!?」
襟で首締まって気持ち悪いんだよ!? こちとら数日前に首絞められたばっかなんだぞ!
「おおっと、こりゃーすまん。気付かんかったわい」
「噓つけ! ……ったく、なんでいるんですか師匠。あんた、軍人なんじゃなかったんですか」
「おろ? ほほう、ついにバレてしもうたか」
「最近知り合った人が同じ制服着てたもんで」
問題はこれが『特務分室』とやらの制服なのか、帝国軍の制服なのかがわからないことなんだけど。
まあ、仮にこの人がやべーやつ軍団と噂の特務分室のメンバーだったとしてもなんら違和感はない。この人がバケモノなのはよ~~~ッく知ってる。それはもう。嫌になるくらい。
忘れないよ、俺。昔『ヒャッハァー! 汚物は消毒じゃァーーー!!』っつって俺引きずったまんま帝都近くの森に害獣駆除に行ったとき、それはもう楽しそうに魔獣を片っ端から叩き潰してらっしゃったこと、俺忘れてないよ。時々師匠の攻撃が掠ったり、魔獣の攻撃が掠ったり、毒で死ぬかと思ったことも。うん。
「あの頃はわしも若かったのう……ところでお前さん、最近はやたら別嬪さんとのご縁があるそうじゃないか、ん? わしに紹介してくれてもいいんじゃぞ? なんじゃったら学院の生徒でも───」
「うるせえ、黙ってろこの万年発情期」
ぶすっとした顔で俺。ハーレイ先生あたりだったらブチギレてそうな物言いにも、師匠───バーナード=ジェスターは気分を害した風でもない。
驚くようなことでもない。この人は昔からそういう人だった。豪快、大雑把、そのクセ無駄に器用な真似しやがる狸ジジイ。
懐が広い、というより、戦闘に興味が向きすぎてそれ以外のことに関しては雑っていうか、大雑把さに磨きがかかるっていうか。
ともあれ、それが我が師匠。十年前に身寄りをなくした俺を拾って、申し訳程度に世話を焼いて、ついでにとんでもねえ環境にブチ込み続けてくれやがった、一応『恩人』と呼ぶべき人間だ。
その強さを尊敬はしている。強さは。『使えるもんはなんでも使え』という教えは今もしっかりと、数多くの臨死体験とともに胸に刻まれている。
『笑うと愛嬌がある』、なんて評判も聞くが、俺の知ってる師匠の笑顔の大半は戦場でテンションがアゲアゲになっているときのものだ。ぶっちゃけ超怖い。そっちの印象が先にくるもんだから、俺は一生師匠の笑顔には愛嬌は感じられないだろう。
「……で、マジでなんの用ですか師匠。俺ももう一人立ちしたんで、あんたが世話焼くようなことはもうないですよ」
「おう、そうらしいの。アル坊から聞いとるぞ、アシュ坊。アルバイトしとるんじゃって? 感心、感心」
……アル坊?
内心で首を捻った俺の疑問に答える気はないらしい。師匠はがっはっはといつも通りの豪快さで笑って、
「───んで、ちゃあんと訓練はしとったんじゃろうなあ?」
ドスの利いた声で、がっしりと俺の肩を掴んだ。
ああ、すみませんグレン先生、フィーベル、ティンジェル、レイフォード。そしてクラスのみんな。
俺、ちょっと明日から失踪するかもしれません……。
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「あらアッシュ、おはよう……って、どうしたの」
「……オハヨ」
翌日。
こっちを案じてくれるらしいフィーベルの言葉に素っ気ない返事を返して、俺は朝の通学路を歩いていた。
「……アッシュ、元気ない?」
「平気……ではないかな……」
まさかあの後深夜までフェジテ郊外の森で大量のシャドウ・ウルフ(狼の魔獣。『恐怖察知』とかいうあまりにもそのまんまなネーミングの特殊能力を持っている……らしい)と延々戦わされるとは思わなかったよね。
武器も、使っていいと言われたのは最初に作った二振りの短剣だけ。なんで俺は死闘を繰り広げたその数日後に、身内の手で再び死地に叩き落とされてるんだろうね?
まあちゃんと全部仕留めてきたけど。おかげで筋肉痛と寝不足ですクソッタレ。
『じゃってお前、バイトにかまけてロクに鍛えてないって聞いたから……』
鍛えとるわ。家帰ってからも運動してるし最近はグレン先生と組み手もしてるわ。
というかその情報ソースは一体どこの誰なんだ。
「あのジジイ……ぜってえ泣かす、マジ泣かす……いや無理かな。無理だな。くそぅ」
拳闘一つとってみても、自分はまだまだまだまだあの爺さんには及ばない。
そしてその爺さんは、俺が森に潜んでいた狼を片っ端から虐殺している間に忽然と姿を消していた。書き置きを残して。
ちなみにその書き置きの内容というのが、
『ごっめーん! わし任務の途中じゃった! いざ往かん、きゃわい~い女の子を求めてッ!!
P.S. 適当にのしたら帰ってよし。ただし手を抜いたら……わかっとるな?』
これだ。あの野郎いつか殺す。
「……はあー……まあ、俺はいいや。慣れてるし……というか、フィーベルの方こそちょっと顔色悪いんじゃねえか?」
「え、私? 私は……ええと、そうね。ちょっとね」
「ふふ。システィったら、ここ最近は魔術論文にかかりきりなんだよ?」
「ちょっと、ルミア!」
意識を切り替えて、フィーベルの話を聞く態勢に移行する。ティンジェルはなにがおかしいのかくすくすと笑っている。
グレン先生は……興味がないのだろう、明後日の方向を向きながらのん気にあくびなどしている。
「いいじゃない、減るものでもないんだから。アッシュ君、フォーゼル先生って知ってる?」
「ん? ああ……あの偏屈そうなオッサンか」
知ってる知ってる。遺跡探索だかなんだかばっかしてて、滅多に地上に現れないツチノコ講師だよね。
「そのフォーゼル先生がね、新しく見つかった古代遺跡の調査隊のメンバーを学院関係者から募集することにしたんだって。ほら、システィの専門は魔導考古学でしょ? だから、調査隊のメンバーに参加しようって応募して、今は必死に選定条件の論文を書いてるの」
「へえ。頑張ってるんだな、フィーベル」
「う……ほ、褒めてもなにも出ないわよ」
「システィーナ。顔が赤い」
「そそそそんなことないわよ!?」
ちらちらとグレン先生の方を見ながらフィーベル。なるほどー、グレン先生にバレたらまたなんかからかわれるんじゃないかって心配してるな、これは。
でもグレン先生ってそういう、夢に向かって邁進する人間は真摯に応援してくれるような気がしている。ロクでなしではあるけど、真性のクズではないし。
それにしても遺跡調査か……。遺跡ってやたら幽霊みたいなの湧くし、あいつらなんでか俺に寄ってくるから苦手なんだよなあ……。
「でも、システィ。頑張りたくなるのはわかるけど、ちゃんとお食事と睡眠は取らないと。最近は体力がついてきたみたいだけど、システィのお昼ごはんっていつもスコーン二つだけだし……ちょっと心配だよ」
「う。……ごめんなさい、ルミア。もうちょっと気を付けるわ」
「ん……システィーナ、食事をとらないの? それはよくない。食べないと、いざというときに動けない。今度、わたしの苺タルトあげる」
「……苺タルトを思い出すだけでよだれを垂らしそうになるような子からは、さすがにもらえないわよ……」
わいわいと楽しそうな女子。
見ているだけでちょっと気分が華やぐそれからそっと視線を離して、俺は本日何度目かもわからないため息をついた。
……ああ、空が青いなぁ。
フィーベルが難癖つけられて選考から落とされたという話を聞いたのは、それから約二週間後のことであった。
高評価をちょこちょこ頂いたあとに一日のシメのように低評価がつく、という事態に何度か直面しなぜか笑えてくる今日この頃。あ、低評価で悦ぶMというわけではないです。はい。
皆様いつもありがとうございます。