竜殺しっぽい誰かの話。 作:焼肉ソーダ
お詫びとして近々二連投する予定でございます……。いつも通り一時半に見に来てくださった読者さんがいらっしゃったらしいという事実に罪悪感がオーバーロード。申し訳ない。レポートが……終わらんかったんや……。
そして今回も戦闘とご都合主義のオンパレードだぞ。許せ。
書き上げたのが10分前だから見直しもないんだ……本当にすまない……。
───謎の少女に連れられて、闘技場から遠ざかる。
『この状態はそう長く保たないわ。死にたいのなら止めないけど?』
その言葉の通り、ある程度離れるとモノクロの世界は色を取り戻していた。
切り離されていた時間へと帰還する感覚に思わず軽く頭を振る。
ティンジェルによく似た姿をしたそれは『
気絶してしまったアルフォネア教授を背負うグレン先生が矢継ぎ早に疑問を投げかけるものの、そのなに一つにも答えない。ただ淡々と、滑るようにして移動していく。
かく言う俺は殿を務めるレイフォードのやや前方で、短剣をぶら下げたまま歩いている。
ティンジェルに
「……ったく、なんなんだよ一体……。セリカのバカは見付けたと思ったら後先考えずに突っ込んでいくし、おまぬけアッシュはよくわからんバケモンとやり合ってるしよ……」
『それはこっちのセリフ。ずいぶんと愉快な仲間を連れているのね、グレン』
「だぁから、お前はなんで俺のことを知ってるんだっつの……」
やはり答えないナムルス。面倒そうにため息をつき、グレン先生がアルフォネア教授を背負い直す。
『そこの
「はあ? ゴースト……なんて?」
『……こっちの話よ。どうせ、誰にも伝わらない言い回しだったわ』
ティンジェルを憎悪のこもった目で流し見てからアンニュイなため息をついて、ナムルスは再度前へと歩を進める。
なんか今、すごく聞き捨てならないというか意味のわからないことを言われた気がする。
というかこの声、薄っすら聞き覚えがあると思ったらあれだ。突然俺のことを迷子扱いしてきた幻聴だ。
『グレンといいあなたといい、人間ってどうしてそうすぐに現実から目を逸らすのかしら』
いや、姿が見えないのに声だけしたらそりゃ空耳だと思うよ。
しかも空耳が意味不明電波発言かましてきたらそりゃ幻聴だと思うよ。
というより、今の発言からしてどうやらナムルスは本当に人間ではないらしい。
そんなやつがどうして俺のところにあんな幻聴届けに来たんですかね。
『……別に。たまたま珍しい生き物が目に入ったから、ついでに見に来ただけ。深い意味なんてないわ』
「ここでもオマケ扱いかよ……ってか、俺は珍獣か」
苦笑交じりに肩をすくめる。
するとなにを思ったのか、ナムルスはこっちに滑るようにして歩いてきて───
「うおっ」
『……本当に中途半端な混ざり方をしてるのね。中身も弄ってるクセに技術は伴ってない。能力も小分けにして持ってきてるみたいだけど、全体的にちぐはぐだわ。こんな人間、あとにも先にもあなたくらいなものだと思うけど?』
「待て待て待て待て、まさぐるなまさぐるな!?」
あっちこっちベタベタ触られると(正確には実体がないらしくすり抜けているのだが)居心地が悪い。むしろすり抜けられるとなおのこと妙な気分になる……っ!
「……お手上げだ。言ってる意味はさっぱりわからんが、とりあえずよしてくれお嬢さん」
『そう』
さほど興味はないのか、ぱっと離れる。俺らあの魔人に追われてる最中だったよね? 一応足は止めてないけど、こんなことしてる場合じゃ───
「……ん……」
と、騒がしかったのかアルフォネア教授がかすかに身動ぎした。どうやら目を覚ましたらしい。
『……私は少し消えるわ。あとは教えた通りに進みなさい』
なぜか今度はナムルスがふっと消えてしまった。呼べば出る、とのことではあるが。
そのあと、目が覚めたアルフォネア教授に黒の魔刀とやらの能力……『斬った相手の魂を喰らって自身の力へと転化する』とかいうこれまたデタラメな能力を教えてもらった。それでわずかでも斬られた以上、魔術師としては再起不能な損傷を負ってしまったかもしれない、ということも。
ここにきての
無論、無理に戦わせるつもりなぞ毛頭ないが、アルフォネア教授の実力はここにいる誰よりも飛び抜けている。かつては邪神の眷属さえ殺したと言われる……いわば大英雄だ。
それを頼れないとなれば、こっちは自力であのバケモンを打倒しないといけない。
グレン先生とアルフォネア教授がなにやらイイハナシダナーしているのを横目に見ながら、俺は小さくため息をついた。
なぜか? ───背後に迫る気配に、こちらが追いつかれるのは必定だからだ。
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短剣を三本、振り向きざまに投げ放つ。
背後に迫るのは双刀を携えた魔人。頭蓋と胴体を狙った三撃はしかし、紅の魔刀で斬り払うことで呆気なく霧散する。
通路の石畳を擦りながら着地し、前回とは違って前へと
頭上からの一撃。今回は出し惜しみをしている余裕はない。
惜しみなく魔力を使い、頭上に到達した瞬間に急転直下。握り締めた右手を打ち下ろす。
今の俺は無手。当て所を誤れば一瞬で肉を裂かれ魂ごと魔刀の餌食にされて終わりだろう。
だがティンジェルの能力を乗せた状態でフィーベルにわざわざかけてもらった【ウェポン・エンチャント】のおかげで、魔術を無効化する紅の魔刀には太刀打ちできないものの、黒の魔刀であれば辛うじて素手でも対応できる。
一撃。漆黒に阻まれる。
体勢を立て直した魔人が紅の魔刀を斬り返す───もう一度魔力放出でその場から吹き飛ぶ。空いた左手でベルトの金具に括り付けていた触媒に手を伸ばす。
俺一人では紅の魔刀への対抗手段がない以上、俺はこの魔刀を体捌きだけで躱さなければならない。
だが決して不可能ではないことは実証済みだ。まだまだ本気ではないとはいえ、それでわずかでもこちらの勝率と───こちらへの注目度が上がるのであれば問題はない。
思い起こすのは、魔人と再び遭遇するその少し前。
逃げられぬのであれば戦うほかない、という結論が出たとき、ではどうするかとみんなで作戦会議を開いたときの言葉。
『俺が時間と注意を稼ぎます。その間にそちらは支度と不意打ちの機を窺ってください』
向こうが俺に集中すればするほど、グレン先生たちが動きやすくなる。
要するにオトリだ。この六日間、戦闘とくればほぼ毎回やっていたせいで骨身に染み付いているオトリ役だ。
もちろん本当はすごく嫌だ。俺はごく普通の一般人なのであって、なにがどう間違っても古代の反英雄と戦うような人間じゃない。そういうのは
ただコレを退けなければ帰れないというのであれば、こうなるのも致し方のないこと。グレン先生たちは反対してくれたけど、現状自分たちの中でこの魔人とまともにやり合ったのは俺一人だ。
それに、全員で一ヶ所に陣取ったとしてもその場合俺は役に立たない。グレン先生はレイフォードと一緒にあの魔人と近接戦闘でやり合うだろうし、そうなるとあの二人の連携の邪魔になる俺は入れない。魔術支援組に入ろうにも、そこまで魔術は得意じゃないし……最近使えるようになったとはいえ、まだまだ制御が大雑把でこれまた邪魔になりかねない。合流したらやるけど。
というわけで俺は現在、グレン先生たちのいるところに移動しつつ、できるだけ魔人を引きつけねばならなかった。
いやあー。これなんて無理ゲー?
『届かぬと、殺せぬと知りながらなお挑むか、愚者よ』
「完璧不死身なヤツなんてこの世にいてたまるかよ。星も世界も、いつかは消えるんだから───つまり、お前の不死身にも限度がある。そうだろう? 魔煌刃将アール=カーン」
『───ほう』
先の作戦会議のおり、フィーベルがあの魔人の正体ならわかるかもしれない、と言って取り出した『メルガリウスの魔法使い』。
そこに綴られていたのは、とある武人についての伝説だった。
左には魔術を打ち消す紅き魔刀を。右には魂を喰らう黒き魔刀を。
いくら殺しても決して滅びず、ついには魔王にさえその刃を向けたと言われる───古代の魔王の配下。
バカ言うな、と文句の一つも言いたいところだが、反応からして誠に残念なことに目の前の魔人はアール=カーンご本人で当たりらしい。
で、重要なのはここから。
伝承に曰く、アール=カーンは十三の試練を超えたことにより十三の命を授かっており、それによって彼は十三回殺さないと死なないのだという。なんかギリシャにそんな英雄いなかったっけ?
しかし魔王、正義の魔法使いそれぞれとの戦いで既に合計七回、そのストックは使い果たされている。よーするに、現代を生きるこの化石の命はあと六つ。
うち二つは俺が、もう一つをグレン先生がもってったので残るは三つ。
三つであれば───なんとかギリギリ、俺たちでもなんとかなる。
『……我が主すら知らぬ秘中の秘、汝が如何にして知り得たかは与り知らぬ。が……よかろう。足搔くがよい愚者の子よ。我が命、削りきって見せるが良い───!』
「上等だ、タコ殴りにしてやらあ───!!」
今回の再戦において、問題は三つ。
一つ。グレン先生たちをギリギリまで隠したところで、魔人に通用するのかどうかということ。
二つ。合流前に魔術を揮われたら、俺では対処ができないこと。
三つ。……単純に魔力が尽きそう。
まあそんなの気にしてる場合じゃないし。
というかここ最近魔力カツカツになること多すぎない?
「し、ずめッ!!」
下がりながら二本、着地のタイミングで一本。狙いは俺から見て右寄り、つまり紅を振るえば対処できる左胸部。
もう一本を左手に握り、殴り飛ばしたそれを追うようにして加速。
魔人の方もこちらへと迫っていたために接敵は早い。左の魔刀を振るい先の二本を、体捌きで残る一本を避けると魔人は黒の魔刀を振り下ろす。
残念だが、それをもらってやるわけにはいかないのだ。
短剣で受け止めつつ、身体を捻って蹴りを叩き込む。紅がこっちにきたら終わりだ。紅の魔刀で弾かざるを得ない状況にまで持っていきながら、黒の魔刀を捌いて隙を見付けてぶっ殺す。そういう方針。
殺せなかったとしても、少しでもこちらに注意が向けばそれでいい。
思いっきり蹴飛ばしてやったからだろう。魔人の身体がわずかながら吹き飛んでいく。だがここからでは剣での追撃はできない。魔力消費の関係で、今の俺は短剣しか使えない。───剣は。
勘に従って空いた手で
さすがに二回目はひっかからない。黒の魔刀が大きく唸り、鋭く尖った凶器の先端を両断する。紅ではなく黒であるが故に氷柱は消え去らない。運が良かった。出現した氷柱の上に手をつき、跳び箱を跳ぶような感覚で前に身体を持っていく。
紅の魔刀は武器や魔術で凌ぐことはできないが、代わりに
ガラ空きになった脇腹に短剣を突き込み、トドメとばかりに思いっきり殴って体内にねじ込む。代償に肩口が切り裂かれたが、問題はない。まだ動く。痛みなら無視すれば良い。───これで一つ。
『厄介な───《■■■■───』
「……やべっ」
不意に巻き起こった熱風に冷や汗一つ。追い詰められると敵は魔術を揮うようになるから気を付けろ───今さらな忠告が脳内に響く。
ついうっかり抉っちゃったけどそうじゃん。やべーじゃん。
グレン先生の場所へは届かない。入り口は見えているが果たして間に合うか。
回避だけでは無理だ。迎撃するにも相殺できるほど高威力のものはない。なら───両方。
「《大いなる風よ》───ッ!!」
この戦闘中一度も使わなかった汎用魔術を口ずさみ、後ろへ強引に方向転換。まだ辛うじて残っていた氷柱を蹴り、なけなしの魔力も注ぎ込んでさらに後ろへ。
どーせ魔術展開中だからって剣が使えないなんてことはないだろう。あーやだやだ。チートじゃんこんなの───口は使っているので音にはせずに悪態をつく。
魔術が完成する。こうなってしまえばもうグレン先生の【愚者の世界】は意味を成さない。うん、覚悟を決めよう。運が良ければ生き残れるさ。
『■■■》───その身、灰塵と帰すが良い───!』
「嫌だね! 二度も三度もそうコンガリ焼かれてたまるかい───ッ!!」
対抗手段を検索───状況に合致するものを自動的に選び取る。
完全にいなすのは無理なので腹をくくろう、という結論がチラついたけど知ったこっちゃねぇ! ガッツだ、ガッツがあればどうにでもなる!
まあ問題は魔力がギリギリ足らないことなんだけど。ふぁっく。
例によって手段はあるけどね!
「やるしかないか……!」
───足りないなら
───なに、身体を弄るのは慣れたものだろう?
思考回路の冷静な部分がそう告げる。
うん、まったくもってその通りだ。
───ところで、話は変わるのだが。
人智を越えた能力を持つ英霊の中には、己の肉体を改造することでまったく別の機能を付属させるスキルを持つものがいる。
グニタヘイズの貪欲なる輝きの
そう。
竜種としての魔力炉心を形成し、無限にも思える魔力を生成するという───スキル『竜種改造』。
魔力によって駆動するサーヴァントですらほぼ完璧な独立行動を可能とする、竜殺しの大英雄に相応しき能力だが……その一部を借り受けているだけの彼のそれは常に励起状態にあるわけではない。いくら適性があったとて、まったくの別人の身体に
完全な回路の再現に至らぬ少年の身には負担が大きい。所々がぽっかり抜け落ちたせいで暴発する電子回路といえばわかりやすいか。
例えば、どこかの『誰か一人の味方』が、激痛にのたうち回りながらも英霊の腕を得たように。
だがそれでも───
「《炉心起動───」
機能の発現自体には、支障はない。
「───竜の息吹・果てることなし》───!!」
負担───有り体に言えば『めっちゃ痛い』。そうでなくとも、自身の身体の内側を弄るというのは気持ちの良い感覚ではない。
その代価に、一息ごとに魔力を生み出す竜種の炉心が起動する。
なに、痛みなど無視すれば良い。
死ぬほど痛かろうが、死にはしないなら問題はありはしないとも。
カウント。
一つ───太陽が魔人の手を離れる。
二つ───指で無意識に
三つ───着弾。
爆音が響き渡り、傷付かぬはずの遺跡の通路を炎が舐める。
防御姿勢を取った少年を炎が炙り、爆風が打ち据えて───
そして───
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通路の奥から、太陽が一つ爆発したような熱風が吹き荒ぶ。
空中庭園のようなそこに存在固定の術がかけられていなければ、石畳はめくれ優美なテラスは砕け、水の枯れた噴水は更地と化していただろう。
柱の影に隠れていたグレンたちを、熱風は無差別に撫でていくが───遠くで巻き起こったものであったのか、それとも威力を減衰させるなにかがあったのか、吹き飛ばし焼き焦がすまでは至らない。
『絶対に無理をするな』『敵が魔術を起動する素振りを見せたら脇目も振らずにここに逃げ込め』───そう告げられ、微塵も恐怖を感じさせないいつも通りの笑顔で答えた少年の姿を幻視する。
あれだけ高威力のもの、とてもではないがあの自称平凡な人間に防げるはずもない。なんせセリカ=アルフォネアの魔術さえ超える得体の知れない術式だ。
念入りに忠告したが、まさか引き際を誤ったのでは───冷や汗が背筋を伝う。
と、爆風の中からなにかが転げ出てきた。
そのなにかは階段をバウンドしながらも勢いを衰えさせず、庭園に設置された噴水にぶつかってようやく止まった。
見覚えがある。それは一人、あの魔人を引きつけるために残った少年だ。あちらこちらに酷い火傷を負ってはいるが、一応ギリギリ無事らしい。げほりと盛大に血を吐きながらも立ち上がり───どこから取り出したのか、愛用している短剣を一振り握りしめる。
『まさか、愚者の子が我が炎を凌ぐとはな……』
ゆったりとした足取りで歩み寄るそれは───魔人。
双刀を携え、眼光は見えず。未だ健在のその姿に、恐怖が身体を締め付ける。
『だが二度はあるまい。その身体では立ち上がるのが限界だろう。……貴様の揮う技の真なる主に敬意を表し、せめてその苦しみを終わらせよう───』
もう一度、魔人が頭上に太陽を生み出し始める。どうやらバカスカ撃てるらしい、と理解してついその場にいる全員が現実の理不尽さに呆れ果てた。セリカの霊魂を喰らった影響なのか、それともそもそもの魔人が保有する魔力が規格外なのか───
「……はは」
フラつきながらも立ち上がった少年が、笑った。
もう一度防ぐことなど不可能だ。絶体絶命の状況についに狂ったか。そう訝しんだ魔人の前で、銀の瞳で階段の下から現れる死を笑って睨みつける。
「バカ、言ってんじゃねえよ」
『なに……?』
「いやあ、本当。凡人なりに、有り得ないくらい頑張ったけど───」
魔人が魔力を練り上げる。完成は秒読みだ。
だというのに、なぜ───この愚者は笑っているのか───?
「───あとは、英雄の出番だよ」
完成寸前の炎が燃え上がる。
聞くに値しない。死に瀕した愚者の戯言だ。
もう一度、今度は完膚なきまでに灰にするべく魔人は呪文の最後を括って。
『───なん、だと』
膨大な熱量を持った炎が、硝子の砕けるような音とともに消えた。
魔術の起動に失敗した? そんなバカな。
そんな能力が、目の前の燃え滓にあるはずが───
「いいぃぃぃいいやああぁあぁあああああああああッ!!!!」
『むぅ───!?』
物陰から、小柄な人影が飛び出してくる。
薄青色の髪を揺らしながら、戦車のごとき勢いで現れたそれは見覚えがある。
手には真銀の剣と剛毅な大剣。それぞれ片手に握った刃を、魔術を封じられ呆気に取られる魔人に振りかざす───!
『貴様、まさかこのためにここに───』
「かかったなヴァカめ!! 勝てば官軍なんだよ! いやめっちゃ痛えけど!!」
『仲間の能力を活かすため、一人で死地に乗り込んだと……!?』
「オトリにできるのはそれぐらいだろーが!! 俺は、英雄じゃねえんだっつーの!!」
首をかっきる仕草を見届けるより早く、リィエルが振りかぶった大剣が魔人を殺そうと迫る。
それを辛うじて紅の魔刀で防ぐが───途端、土くれとなった大剣に視界を塞がれる。驚愕の声をこぼすより速く、疾く、本命───真銀の剣が逆袈裟に魔人を斬り裂いた。
誰が見たって致命傷だ。
これで残る命は一つ。
素早く魔人から離れたリィエルと入れ替わるようにして、物陰からさらに一人、小さな棒のようなものを構えた人間が駆けてくる───響く銃声。銃口が火を噴き、六発中四発が魔人へと迫る。
『小賢し!』
それを打ち払い、魔人はすぐ近くまで迫ったグレンの銃を紅の魔刀で弾いた。
魔人が推測したこの武器の性質は、『爆裂の魔術で鉛玉を飛ばす』というもの。
故に、触れた魔術を無効化する魔刀───紅き刃、『夜天の乙女』より授かりし
───その判断が、誤りだった。
「い───けぇぇえぇえええええええぇぇええええ!!」
もう一度、銃口が火を噴き、二発の銃弾を吐き出す。
銃という武器は魔術によるものではなく、科学的な機構によって成り立つものだ。いかに魔術を無効化する魔刀が触れたとて、自然に存在するものを打ち消すことはできない。
だが───魔人もさるもの。
想定外の出来事が続いたせいで、思考よりも本能が敏感になっていたのか。殺到する銃弾さえも弾き、弾を撃ち尽くした
「───閃槍以て・刺し穿て》───ッ!!」
その腕を、テラスに隠れていたシスティーナの魔術が穿つ。命を奪うまでは至らずとも、その動きは確実に一瞬止まる。
そこで魔人は視界内に存在する敵を認識する。黒髪。剣士。魔術師。それに寄り添う、どこか見覚えのある金髪。
そこで気付いた。愚かしくも、自身に一人で立ち向かった愚者がいないことに。
あの身体でどこへ?
その答えは───
「ら、ぁ、ああああ───ッ!!」
身体が訴える痛みを無視し、尋常ならざる速度で回復した魔力を片端から使い潰し、碧色の燐光を散らしながら。少年は魔人の頭上へと跳び上がっていた。
ばちり、と魔力による稲妻が奔り、無手であったはずの拳にトゲのついた
それはまるで炎のように。
捨て身の三連撃をその身に受けた魔人は、ゆっくりと膝をついて───
『つまりこいつはなにをしてんの?』と言われると、本文中で言ってるのと同じでHFの士郎とかプリヤの士郎(美遊兄)みたいなことをしてます。
失った左腕の代わりに英霊の腕を繋いだ士郎ですが、アッシュは
ちなみに今回