竜殺しっぽい誰かの話。   作:焼肉ソーダ

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筋力A+(人間基準)


3.牙って骨に分類して良いんだろうか?

 人間、一つくらいは得意分野がある。

 

 例えば、グレン=レーダスは変化の停滞・停止という特異的かつ局所的ではあるが刺されば強い才能と固有魔術(オリジナル)を有しているし、拳闘の才能はそれなりのものだ。

 未だ未熟な天才に過ぎないシスティーナ=フィーベルは変数パラメータの多い風の魔術を得意としているし、異能ばかりが目立ってしまうルミア=ティンジェルも、白魔術に関してはプロ顔負けの腕前を誇る。

 

 そして。

 アシュリー=ヴィルセルトの得意分野は───肉体言語、要するに『近寄って殴ってブッ飛ばす』だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ズガァン! と、勢い良く何かが吹き飛んでいく音に、システィーナは顔を上げた。

 

「なに、今の……?」

 

 つぶやきに答える声はない。

 しんと静まり返った教室は、数秒間その状態を保っていたが……やがて、ひそひそと堰を切ったように囁きが埋め尽くした。

 

 今の音がなんなのか。理解できないまま、システィーナが「ねえ、ルミア」と親友に声をかけようとした───そのときであった。

 

「ちーっす! 今日も勉強がんばってるかーい?」

「なっ……」

 

 無造作に教室の扉が開かれ、廊下からずかずかと二人の男が踏み込んでくる。どう見ても学院の関係者ではない。

 軽薄そうな声を響かせたのは、やはり軽薄そうな風貌をしたチンピラ風の男だった。お気楽に生徒全員を眺め、ニタリといやらしい笑みを浮かべる。

 

「ああ、君たちのセンセーは今お取込み中! 騒がして悪いねー、まあ今からもっと騒がしくするけど許してね? オレらってばこれがお仕事なのよ」

 

 ケタケタ、ケタケタ。

 男はヘラヘラとした態度を崩さない。

 

「ちょっと……あなたたち、一体何者なんですか?」

 

 それに毅然とした態度で立ち向かったのはシスティーナだ。

 

「なんのつもりでここにいるんです。ここは部外者立ち入り禁止ですよ。守衛に言われなかったんですか?」

 

 戦う力を持つ者としての魔術師の自負か、それとも誇りか。

 教室内が沈黙に包まれる中、システィーナだけは席を立ち、真っ直ぐに男たちと対峙していた。

 

「守衛? ああ、あのクソ雑魚ちゃんね! 邪魔だからブッ殺しちゃった。で、オレたちは泣く子も黙るテロリストってヤツでーっす! 女王陛下にケンカ売る、悪ゥ~い大人ってワ・ケ。オーケー?」

「ふ……ふざけないで! 守衛は戦闘訓練を受けています、あなたたちのような人間にやられるワケない!」

「あの程度で戦闘訓練受けてまーす、とか言っちゃうの? へえ、天下の魔術学院も大したことないんだねー」

「ともかく、即刻出て行ってください! でなければ、実力をもって排除します!」

「えー、ヤダー、排除されちゃう! 怖ーい、助けてママー!」

 

 ケタケタ、ケタケタ。ケタケタ、ケタケタ。

 耳障りな騒音は止まない。どこまでいってもまともに答えない───嘗められているのだ。そう判断したシスティーナは、いつかグレンとの決闘でそうしたように指を掲げる。

 言葉による説得と警告は終わった。後は実力行使に出るだけだ。それで万事丸く収まる。

 

「……っ。警告は、しましたからね?」

 

 確かに魔術は強力だ。体格に依らない力をくれる。なるほど、彼らが本当にそこらのチンピラであったのならあるいは、システィーナたちによる制圧もできただろう。

 

 ───だが。

 その恩恵に与っているのは、システィーナたちだけではない。

 

「《雷精の───」

「《ズドン》」

 

 先んじて放たれたシスティーナの【ショック・ボルト】の詠唱が完了するよりも速く、ふざけた一節詠唱で起動する魔術。

 システィーナのすぐ横を掠めて、閃光が飛んだ。

 

「……、え?」

「《ズドン》《ズドン》《ズドン》」

 

 黒魔【ライトニング・ピアス】。

 軍用の攻性呪文(アサルト・スペル)が更に三連続で放たれ、システィーナの華奢な身体を掠め───教室の壁を穿つ。

 かつて戦場から武器や鎧の存在意義を根こそぎ奪った本物の『人を殺すための術』。そんな魔術を、短く切り詰めた一節詠唱で起動し、あまつさえ連続起動(ラピッド・ファイア)までしてみせた男の隔絶した技巧を前に、システィーナを含めた生徒は戦意を喪失し、沈黙が教室を支配する。

 

 鎧さえも穿つ雷閃が己の肌を掠めたという事実に、システィーナの足が恐怖に竦む。

 

 確かに、彼らが本当にそこらのチンピラであったのならあるいは、システィーナたちによる制圧もできたかもしれない。

 

 だが、現実として彼らは一流のテロリストであり───この場にいる誰よりも格上の魔術師だった。

 

 一拍遅れて湧き上がる悲鳴と混乱。それを、

 

「うるせえ、騒いでんじゃねえよガキども」

 

 日の当たる世界で暮らしてきた子どもたちでは知りようのない『本物の殺意』で圧殺する。

 

「こっちはもうお前らのオトモダチも一人殺してんだよ。一人殺すのも皆殺しも変わんねぇってわからせてやろうか、アァ!?」

 

 その一言が決め手だった。

 オトモダチ───二組の生徒のことだろう。そしてシスティーナはたった一人、この場にいない生徒を知っていた。

 では、あの音は、そんなまさか───?

 

「アッシュ……くん……そんな……」

 

 隣でルミアが震えながらつぶやいた。それを励ますように手を握り、システィーナはチンピラ風の男をキッと見据える。

 

 再び静まり返った教室に満足そうに頷くと、チンピラ風の男……ジンは揚々と目的を語り始めた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「───ッづぁあ!」

 

 叫びと一緒に、降り積もったガレキを蹴り飛ばす。幸いそこまで大きな破片はなく、自分一人でも容易に動かすことができた。

 が、結果的に動かせようが重たいことに変わりはないのでチンピラ野郎へのヘイトは上がるばかりよ。追加で撃ち込まれなくて良かったけども。

 

「あんにゃろ、予告なしに撃ちやがって……」

 

 あのチンピラ野郎がいきなりぶちかましてくれた【ライトニング・ピアス】───寸分違わず心臓を狙って放たれた雷光は、幸か不幸かたまたま胸ポケットに収められていた金属片に防がれていたらしい。

 無論、貫通を免れようと衝撃はきっちり来るので、穿たれる一歩手前の感覚は今も胸を苛んでいる。

 

 呼吸器の密集する胸に受けた衝撃に咳き込みながら、制服についた埃を払い、盛大に顔をしかめる。二年近く愛用した制服は所々が派手に擦り切れていた。場合によっては買い換えなければならないかもしれない。

 俺は大絶賛一人暮らし中、天涯孤独の一学生。アルバイトで日々生き繋ぐ単なる苦学生に過ぎないというのに。ああ、できるなら三年間ずっと使い回したかった。

 

「あいつらが向かってったのはあっちか……教師、じゃないよな。確実に」

 

 この学院に通いはじめてから一年以上が経つが、あのようなガラの悪い男を見掛けたことはない。そもそも軍用魔術をぶっぱなしてくる教師なんぞいてたまるかと思いながら、命の恩人を片手でもてあそんだ。

 

 ポケットにしまっていた銀色の金属片───輪に装飾がついたような形のソレ。

 刀剣のグラディウスから刀身を省き、グリップの代わりに輪を取り付けたもの、と言えばわかりやすいだろうか。

 

 焦げ付いたソレは、本来ならばとある魔術触媒として働くものだったのだが、魔力を込めたせいか耐久性もそこそこのものになっている。少なくとも鉄の鎧よりは硬いということが今回の【ライトニング・ピアス】ぶっぱ事件でよくわかった。

 しかし、数個胸ポケットに入っていたそれは全滅していた。ふぁっきゅー。残ってるのはズボンの方のポケットに入れてあるやつだけだよ。

 

「マジ許さん、俺の金と労力を返せあの野郎」

 

 割合的には二:八。魔術触媒だけあってちょこっとだけ元となる素材は購入しているが、本当にちょっとしたものなのでさしたる負担にはなっていない。

 しかし作るのが少し面倒くさいので、未使用のまま一気にお釈迦にしてくれた憎いあんにゃろうには制裁を食らわせねばなるまい。拳で。是非に。

 

 しかし、とりあえずは連れていかれたらしいフィーベルとティンジェルを追っかけていかなくては制裁もヘッタクレもない。ガレキの隙間から見えた限りでは別の人間が連れていったようだが、真面目な仕事人っぽいダークコートが連れてたルミアが本命と見るべきだろう。

 フィーベルの方は……わからん。しばらくしてから無理やり引きずられてったところを見るに、本命ではなくあのライトニングトリガーハッピー野郎の独断(アソビ)なのではなかろーか。

 

 がしかし、俺一人で突撃していったところで今度こそ死ぬのは目に見えている。おじゃんになった触媒たちの復讐をしてやると息巻いていた俺は、ものの数秒で『不可能』という残酷な現実に打ちのめされてしまうのであった。

 

「……グレン先生、来ないかなぁ」

 

 戦力になるかは甚だ疑問であるが、あれでも教職。ある程度の荒事の心得はある……と言いきれたらどれほど良かったことか。

 

 こと魔術戦において、グレン=レーダスという男は言い方を選ばなければ三流の役立たずだ。

 ルール無用の実戦ではどうなのかがわからない以上、微かな希望は残っているが……。体は鍛えていそうだし、白兵戦闘ならそれなりにこなせそうな印象があるけど、どうなんだろう。

 

「……考えても仕方ない、か」

 

 ここでうだうだと考えていても、あの二人の危機は解決しない。

 そう結論付け、俺は気合いを入れ直すためにピシャリと頬を叩き、野郎どもが去っていった方向へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 グレン=レーダスはしがない非常勤講師である。

 その過去が何であれ、それは揺るがない事実だ。だからこそグレンは今学院を襲うテロリストたちと戦うことができているし、教え子たちを守ることもできる。

 例えば、己の悦楽のために二流魔術師止まりであることを選んだとある外道魔術師から、まだまだ未熟な白猫を救うことだって、非常勤講師であったからこそできたことだ───今のように。

 

 まあ、だからなんだという話でもあるのだが。それでも、グレンのおかげで一人の少女が守られたことは紛れもない事実なのだ。

 

 が───

 

「聞いてない、コレ聞いてないッ!!」

 

 イヤー! と悲鳴をあげながらシスティーナを連れて逃げ惑う。その背後からは、無数の骨の群れが迫っていた。

 

 グレンが切り札───固有魔術(オリジナル)【愚者の世界】を起動し、チンピラ風の男改めジンをボコり、戦力的にも社会的にも再起不能にしたまでは良かったのだ。

 しかし、ジンが敗れて少し経った頃。システィーナがグレンの隠された一面を垣間見たそのとき、どこからともなく夥しい数の骸の兵士───竜の牙から作り出されたボーン・ゴーレムなどという厄介極まりないシロモノが現れたのである。

 

 竜の牙製ともなれば、ほとんどの攻撃が通用しない。物理攻撃はもちろんのこと、基本三属の攻性呪文(アサルト・スペル)も通用しない。

 これらに有効なのは【ウェポン・エンチャント】などのもっと直接的な魔力干渉だ。

 

 システィーナから【ウェポン・エンチャント】を受け取り、迫り来る兵士を砕き続ける。グレンの固有魔術(オリジナル)───【愚者の世界】はあくまでも魔術の起動を封殺する術。

 起動済みの魔術には一切の効果を持たず、それ故にボーン・ゴーレム(既に起動し、活動している魔術)はそれ以外の手段で凌がねばならなかった。

 

 一見してなんとかなっているように思える状況だが、実際にはグレンの疲労とシスティーナというハンデがあるせいでじり貧というべき戦況だった。

 

「くそ、せめてもう一人いれば……!」

 

 もう一人というフレーズに、ここに来る途中で見掛けたガレキの山と、連れ去られたルミアを除いて教室にただ一人いなかった生徒のことを思い出す。

 さして思い出があるわけでもない。話したことも数回しかない。ここにいたところで戦力になるとも思えない。だがそれでも、

 

(俺が……もっと早く来ていたら……)

 

 もしかしたら、救えたのではないか───そんな思いがよぎる。

 確かにグレンが初めから教室で生徒と一緒にいたならば、被害は最小限で済んだ可能性はある。だが、そもそも敵はそうならないように策を講じてきたのだ。

 故にグレンのそれは意味のない仮定でしかなかった。

 

 だがそれでも、と思わずにはいられない。

 とうの昔に夢破れた身だが、それでも心のどこかでは諦めきれていないのだということを自覚せぬまま、グレンは名も知らぬ生徒の犠牲を悔いる。

 

 そしてその心の間隙が、グレンに牙を剥く。

 

「先生、危ない……っ!」

「───ッ!?」

 

 システィーナの声に振り向いたときには、もうボーン・ゴーレムは剣を振りかぶっていた。回避は不可能な距離だ。物思いにふける暇などないというのに───己の失態を悟りながら、咄嗟に身を固くする。

 こうなっては一撃をもらうのは免れ得ないが、せめて致命傷だけは避けようと───

 

 

「お、ら、ぁぁぁ───!!」

 

 

 ───そう覚悟した瞬間、グレンの頬を掠めて、ゴーレムの()()が飛んでいく。

 

「……は?」

 

 ほんのわずか遅れて、頭部を粉々に粉砕されたゴーレムの胴体が他のゴーレムを巻き込んで派手に転がっていく。いや、転がるというよりも吹き飛ぶ、と言った方が正しいか。

 

「せ、先生!?」

「違う、俺じゃねぇ!!」

 

 撒き上がる骨粉と埃に紛れたその犯人は、ゆらりと煙を纏いながら立ち上がり───

 

「先生、無事ですかー?」

 

 実に軽い調子でグレンの安否を確認した。

 

「……って、お前……」

「アッシュ!?」

「おお、フィーベルもいたか。無事でなにより」

 

 破片がついた手を一振り。

 無惨に砕け散った竜の牙を振り払うと、死んだはずの少年───アシュリー=ヴィルセルトは、やはり軽い調子で笑うのであった。

 

「お前……なんで」

「打ち所が良かったもので。……で、このカルシウムは?」

「あ、ああ、たぶんあと二人いるうちの一人の仕業だろうが……」

 

 と言いつつも、グレンの視線はアシュリーの得物に注がれていた。

 

 

 素手だ。

 

 

 ガチの素手だ。

 

 

 あろうことか、魔術による強化を一切受けないまま、この男は竜の牙を素手で砕いている……!

 

「……マジかよ」

 

 生存を確認できた喜びが一気に吹っ飛ぶほど、それは衝撃的な光景だった。

 

 ちょっと引くわー、と内心でグレン。

 気分がノってきたのか加速するアシュリー。

 そしてやっぱりドン引きしているシスティーナ。

 

 そんなちょっとコミカルな攻防は、システィーナが暴風でゴーレムをぶっ飛ばすまで続いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 走る、走る、走る。

 

 いくつもの階段を登り、廊下を駆け抜け、時折背後から迫るボーン・ゴーレムを退ける。

 命懸けの単純作業、しかし体力と逃げ場は着実に減っている。このままでは遠からず最上階まで追い詰められてしまうだろう。

 

 特に身体を鍛えてこなかったであろうフィーベルの疲労具合はひどく、一緒に走るだけで精一杯だ。

 

 幸い、ボーン・ゴーレム───今回の件に限った場合だが、いわゆる竜牙兵は、名前の通り竜の牙でできている。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 あとこいつら単純な行動しかしないから俺でも対処ができるというのが大きい。手近なやつを殴るしかしてこないのである。

 

「で、なんだって我々は最上階に向かっているんです?」

 

 ばきーん。

 近寄ってきた一匹を粉砕しつつ、横でなにやらすげぇ顔をしているグレン先生に一声かけると、

 

「織り込み済み、だ! 白猫! お前は先に行って十八番の【ゲイル・ブロウ】を広範囲、長時間維持できるように改変しろ!」

「うぇぇ!? か、改変ですか!?」

「大丈夫だ。お前はかわいくなくて、生意気で、面倒くさくて、生意気で、とんでもなく生意気だが……」

「生意気をそんな強調しないでください!? 励ましたいのか貶したいのかどっちなんですか!?」

「生意気な上に才能の差が妬ましくて素直に褒められねぇんだよ。言わせんな、恥ずかしい」

「生意気に関しては先生に言われたくない気がするんですけど!」

 

 散々からかい倒した後で、『とにかく』、と一つ咳払い。グレン先生は油断なく拳を構え、顔を前に向けたまま、

 

「───だが、ここまでの俺の授業を理解してるならできるはずだ。むしろできなかったら単位落としてやる、覚悟しとけ」

「横暴だ!! もう、本当に一言余計なんですから……!」

 

 ───いや、イチャつくのは良いんですけどもう少し俺のことも考えてくれません?

 

 べしーん。憂さ晴らしのよーに新しくやってきた的を裏拳で粉砕する。なんというか当て馬かなにかのようで落ち着かないというか。

 

「で、えーとお前は……」

「アシュリー。アシュリー=ヴィルセルトです」

「んじゃアシュリー……言いにくいな、アッシュでいいか」

 

 アッハイ。

 

「……戦力としてカウントしても良いんだよな?」

「ぶん殴るだけで戦力になるなら」

「ならこき使ってやるから安心しろ。お前は俺と一緒にあのカルシウムどもの足止めだ」

「了解!」

 

 要するに今までと同じで良いということだ。非常にありがたい。

 

 が、フィーベルに頼んでいたものは威力を度外視したもの───つまり、足止めの意味合いが強いものだ。

 となると、グレン先生にはなにか策があると見るのが自然……いや、もしかして足止めしてる最中に片っ端から砕いていく脳筋戦法でどうにかするつもり

 

「うわあっぶねぇ!!」

 

 考え事してたら剣がかすったでござる!!

 殴ればぶっ壊せるからって調子乗ってすみませんでした!! 猛省しております!!

 

「……本当に頼りにしていいんだよな!?」

「次はないです!!」

「信じるぞ!?」

 

 男に二言はねぇ! とかここで言いきれたらマジでカッコよかったかもしれないが、あいにくと俺にそんな自信はない。またやらかさないとも限らない以上、ここは謙虚に沈黙で返したいところ。

 慢心せずしてなにが王か! というセリフがどこかから聞こえてきた気がしたが、別に自分は王でもないし幻聴だろう。

 

「二人ともっ!」

 

 と、ひたすら拳を振るっていると後ろからそんな声。

 即興での術式改変をグレン先生に言いつけられていたフィーベルのものだ。

 

 グレン先生の合図でフィーベルの後ろに退避し、体勢を整える。フィーベルが放った改変魔術───【ゲイル・ブロウ】ではなく、相対するすべてを拒む嵐の壁。瞬発力と威力を犠牲に、元となった術よりも広範囲にわたって進軍を阻む暴風が吹き荒れる。この一瞬で組み換えるとは、大したものだ。さすがフィーベルと言うべきか。

 と、グレン先生だけはフィーベルの横───魔術の効果範囲に入らないギリギリでなにやら構えていた。ブツブツと漏れ聞こえるのはルーン語による呪文だろうか。

 

 ゆっくりと紡がれる呪文は三節を超えても止まることなく、たいていの術式を起動できるであろう五節を超えてなお続く。そして七節にも及ぶ呪文がようやく完成したとき、閃光が走った。

 

 【ショック・ボルト】や【ライトニング・ピアス】のような雷光ではなく、【ブレイズ・バースト】のような爆炎でもない。煌めく極光が、ぞろぞろとひっきりなしに現れる骨の群れを飲み込みながらもその勢いを弱めることなく、廊下の壁をも巻き込んで綺麗に消し飛ばしていく。

 

 そうして光が消えた後には、先ほどまで追い立ててきていたゴーレムたちも、たぶん結構歴史のある校舎の壁も天井に至るまで───射線上にあったすべてのものが、跡形もなく消滅していた。

 

「えっぐい」

「黒魔改【イクスティンクション・レイ】……神殺しの術! そんな高等呪文が使えるなんて……!」

「待ってこれそんなすごい術なの!?」

 

 神殺しって聞こえたぞ今!?

 

「ちとオーバーキルだがな……俺には、これくらいしか……」

「……グレン先生っ!?」

 

 呆然と破壊の跡を見ていた俺がフィーベルの切羽詰まった声に振り向くと、そこには唯一まともに残っていた床に膝をついて荒い息をしているグレン先生の姿が。以前に授業で習ったマナ欠乏症という症状だと気付くのに、そう時間はかからなかった。

 考えてみれば当たり前の話だった。あれだけ規格外の大魔術だ、使うには相応の魔力が必要になるはず。あれをポンポン撃てるのなんか、それこそ大陸最高峰と名高いセリカ=アルフォネア教授くらいなものだろう。

 

 そうでなくとも、ボーン・ゴーレムとの戦いで負った傷もある。フィーベルが慌てて治癒魔術を使って介抱していたが、グレン先生はそれどころではないとふらつく足で立ち上がった。

 足こそ震えていたが、顔を苦々しく前に向け、油断なく見据えている。

 

 そこでようやく気が付いた。

 そうだ。なぜ気付かなかったのだろう───そもそもあの兵士たちは、敵の誰かが呼び出したものだとグレン先生も言っていたではないか!

 

「───【イクスティンクション・レイ】まで使えるとはな。少々見くびっていたようだ」

 

 かつん、と。

 硬質な足音が、俺たちの目の前で止まる。

 

「だが次はない。貴様の快進撃もここまでだ、グレン=レーダス」

 

 現れたのは、背に五本の剣を従え、油断なくこちらを睥睨するダークコートの男。

 

 

 敵、学院に乗り込んだ一流の魔術師。

 味方、絶不調の魔術講師が一人と、戦慣れしていない生徒と、少し戦闘をかじっただけの生徒が一人ずつ。

 

 

 ───第2ラウンド、開始。




シグルドさんは宝具にしか乗らないけどジークさんはスキルで乗るし、竜特攻ってパッシブ効果だと思う。……いやどうなんだろう。武器に乗るという話もあったような?
わからなくなってきたのでここではパッシブということにしておいてください(詫び爆散)
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