竜殺しっぽい誰かの話。   作:焼肉ソーダ

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───勝った。
締め切りとか、なんかそういうのに……!

けど割かし急いで書き上げたのでなんか間違いがないか今から戦々恐々としています。


60.Interlude/Ⅱ

 ───アルザーノ帝国魔術学院が、一つの騒乱に巻き込まれようとしている、その裏側。

 

「ふん、ふふ~ん、ふ~ん……♪」

 

 わざとらしく、調子の外れた鼻歌を奏でる少女。

 その足が進む先は、フェジテの裏側───裏路地よりもなお闇深い、どこかの暗がりだ。

 

 踏み入れた瞬間、漂う濃厚な血の匂い。

 暗闇にあってなお隠しきれない、死体の群れ。

 

 少女(イリア)は当然のように、躊躇なく屍の群れに踏み入った。

 その頬を掠めて飛んでいく雷条。【ライトニング・ピアス】と呼ばれる、まともに当たれば容易く人間を殺すそれは、しかし少女からはズレたところに放たれ、霧散した。

 

 狙いがズレていたのではない。ズレていたのは、少女の姿だ。

 切り裂かれた虚空に、ゆらりと影が揺らぐ。少女のカタチをした影は、雷とともに、まるで夢であったかのように消えた。

 

「あはっ。ジャティス=ロウファンが殺し回ったって聞いてましたけどー、まだまだ探せばいるもんですね!」

 

 予め、自身の姿()()()()()()()()()イリアが屈託なく嗤う。

 その笑みが向かう先は、死体の群れに紛れた幾人かの生者だ。

 

 視線を凝らせば見えてくる、淡い人影。

 振りかざした腕には蛇の刻印。

 

 ───天の智慧研究会。

 

 それが、イリアに向けて雷を放った者たちの正体であり。

 今まさに、命運尽き果てようとしている犠牲者の肩書きであった。

 

「お前()、いった、いったい、だ、ひ、ギィ───!?」

 

 新手か、という悲鳴を断末魔に差し替えて、イリアに指を向けていた一人が()()()()文字通り断ち切れた。

 泣き分かれた腰から上が、重力に従って血と臓物を撒き散らしながら地面にズリ落ちる。

 

 そう。

 

 この暗がりにいるのは、天の智慧研究会だけではない。

 

「ざんねんざんねん! せっかく残った戦力で、エルミアナ王女を殺しに来たのにねー? 無意味な奮起、ご苦労さまでした!」

 

 その言葉が向かう先に、もう一つの人影があった。

 

 この惨劇の只中にあってなお、微塵も揺らがぬ姿は不気味でさえある。

 

 ただ、そこに在るだけの生き物。熱のない、機械のような怜悧な空気を漂わせるただ一人。

 十と少しの死骸に囲まれながら、なんら感情を表すことのない殺戮機構。

 

 ……暗がりの中にあってなお煌めく赫色が、無造作に一閃される。

 たったそれだけ。ただそれだけの動作で、また一人、悲鳴も上げずに死んでいった。

 夜景に閃く赫色が長剣の刃だと気付いた者は、果たして数人いたかどうか。

 

 たった一人で十数人を殺し尽くしたというのに、まるで乱れない立ち姿。

 

 もはや名乗るべきものなどないと、名を捨てた剣士───

 

「セイバーさん、害虫駆除お疲れさまです! ゴキブリみたいに次から次から湧いてくるゴミクズの処分とか、もう飽きちゃった頃でしょうか!」

「───……」

 

 とてとてと、軽い足取りでイリアは剣士に近づいた。

 天の智慧研究会の生き残りも死骸も、当然のように通り過ぎて、当然のように剣士の隣に並び立つ。

 

 対して剣士は、ちらりと視線を寄越すのみ。否、真実向けたかどうかさえ、硬質な仮面に阻まれてわからない。

 その双眸に浮かんだ思惑でさえ、仮面に隠されて読み取れない。

 視線を寄越した、とイリアは雰囲気から判断したが、そんな微かな挙動にすら自信がなかった。

 

 視界には捉えているのだろうが、彼の意識が向く先は暗がりの中。

 より厳密には───暗がりに潜む、外道魔術師の生き残りに。

 

「……あれー? 聞こえてます? あなたのかわいいかわいい共犯者、イリア=イルージュちゃんですよ?」

「……ああ、貴殿か」

「ああ、ってなんですかああ、って! 私とあなたの運命の出逢いからけっこー経ちましたけど! まだ覚えてくれてないんですかぁ!?」

 

 一拍おいて、剣士は興味を失ったように少女から完全に視線を外した。

 ついで、一閃。今まさに魔術を練り上げていた魔術師の二の腕から先が消失する。かと思えば、悲鳴を上げる暇もなく、腕を失った魔術師は無惨な氷像と化した。

 

 魔術師にとっての最大の武器(左腕)を奪ってからの、間髪入れぬトドメ。……なるほど、容赦がない。

 これだけの実力があるのなら、あんな魔人に良いようにやられることもなかっただろうに───と、そうイリアが分析する最中、呼気さえ乱さずに剣士がひとりごちた。

 

「……ヒトの区別は、つかん」

「うわひっど」

 

 厳密には、剣士にとてその機能はある。

 単に、それを働かせる意義を見失っただけだ。

 

 数■前の事件からこっち、そういった『なにか』が擦り切れていく気がしているということにさえ、彼は気が付かない。気が付けない。

 時間感覚さえもどこか虚ろになり始めている。人体として生存するために必要な、基本的な欲求すら最近はあまり感じない。

 ───だが。だからこそ、中身が崩れ落ちてもまだなにかを果たしていられる。故に、その齟齬には目を向けない。

 

 向けないままで、作業のように目前の外道を斬り捨てた。

 色彩(イロ)の判別もつかない地べたに、血溜まりが咲き乱れる。

 

「──────」

 

 それを見届けることもなく、剣士が未だ生きている魔術師に目を向けた。

 

 フェジテの夜に巣食っていたモノのうち、姿を現した天の智慧研究会の残党で、この場に生き残っていたのは僅か三人。

 一人は氷像、一人はたった今斬殺された。

 残るは一人。ここに至るまで放置された最後の生き残りは、僅かな時間で魔術を練り上げ───

 

「……あらら?」

 

 ───ては、いなかった。

 むしろ真逆。呆然と、陶然と、あらぬ方向へ向けてブツブツとなにかを呟くのみ。

 

 つまりは棒立ち。

 戦場にあるまじき無防備な姿なぞ、剣士の前にはただの案山子ですらなく。

 イリアがぱちぱちと瞬きをして、処刑人の顔を窺った。

 

「……なにか、したんですかー?」

「さてな」

 

 風を斬る音。

 あまりの鋭さに一瞬突風が吹いたのではないかとすら錯覚した瞬間に、最後の一人の首が落ちていた。

 

「愉快な()でも、見ていたのだろう」

 

 事を済ませるのと同時、剣士の手にあった長剣がかき消えた。……殲滅は終了したということだろう。

 惨憺たる有り様にも関わらず、剣士の姿に乱れはない。ただ淡々と、為すべきことを為しただけ。

 

「ヒュー! こわーい! 容赦なーい!」

 

 イリアの軽口にも一切の関心がないと言うように、剣士は応じない。

 ……まるで機械だ。人を、あるいは人の世に仇為すモノを殺すだけの機械。人間味すらなく、手を汚し続ける存在を、果たして英雄と呼んで良いものか。

 人界を乱す悪鬼非道の類を滅ぼす。なるほど確かに義は通っているが───

 

(どっちかっていうと化け物ですよねぇ?)

 

 イリアからすればそうとしか映らない。

 あるいは、これが数百年───あるいは数千年前のフェジテであったのなら、その姿は理想的な英雄として日の当たる場所を往くのだろうが。

 

 二十人程度の魔術師を一人で殲滅した剣士は、用は済んだとばかり歩き始める。

 それに慌てて追従するイリアが、死体を踏みつけながら口を開いた。

 

「ちょちょちょ、待ってくださいって! なんで置いてこうとするんですか!」

「貴殿に用はない」

「一週間前に仲良くしましょうって言ったばっかじゃないですかーっ。結局ずっとこの街(フェジテ)に居座っちゃってますし! こっちのお手伝いとかもしてくださいよー!」

「理由がない」

「だから、色々と都合しますって! 誰のおかげでセイバーさんが隠れられてると思ってるんですか!」

 

 そこで、ようやく剣士の足が止まった。

 イリアは得意満面、とばかりニタリと嗤う。

 

「セイバーさんをわざわざ幻術で、誰の目にもつかないように隠してあげてるのはこの私! そう! つまりセイバーさんは、報酬を前払いでもらっていたので───待って待って待ってぇ! 置いてかないでくださいってばぁ!」

 

 なんだそんなことかと言わんばかりに、再度暗がりへ歩を進める剣士の後ろを早足で追いかけていく。

 傍から見れば愉快な一幕なのかもしれなかったが、当のイリアは大真面目だ。

 

 なにせ、イリアの最終目的は───

 

「ま、それはさておき」

 

 駆け足で隣に並び、わざとらしく咳払いをする。

 

「手伝う理由がないなんて、そんな寂しいこと言わないでくださいよっ。せっかくのイリアちゃんですよー?」

「断る。(当方)は、貴殿に協力するために此処に居るわけでは───」

「天の智慧研究会」

 

 再び、剣士が足を止めた。イリアが足早に通り過ぎ、彼の道を塞ぐように立ち止まった。

 初めて、剣士がイリアに顔を向ける。

 

蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)天使の塵(エンジェルダスト)と狂った《正義》。それからそれから、人ならざるモノに身を墜としたバケモノたち……」

「───……」

「……そういうのを慈悲なく情なく容赦なく殺すのが、あなたの『お仕事』でしょう?」

 

 今度こそ。

 イリアが笑う───嗤う。

 

「ね? だから、()()してあげます」

 

 少女が、囁く。

 くるりくるりと、心底から愉しそうに。

 

「ぜんぶぜんぶ殺すために、この私が協力してあげましょう。こんなしみったれた街なんかほっぽりだして、ぜんぶぜんぶ、ぜんぶぜんぶ壊しに行きましょう。

 ───だって、ほら。こんなところにいたって、なんの意味もないでしょう?」

 

 くすくすと、弧を描いた口元を隠しもせず。

 それは破滅への片道切符。英雄の成り損ないを更なる混沌へ導く、深淵からの呼び声。

 

「……この街(フェジテ)から、出る?」

 

 なぜか。ほんの一瞬だけ、剣士が息を止めた。

 

 本当に僅かだけ、なにかを探るように動きを止めて。

 なにか───此処に留まらなければならない理由が、あった気がして。

 

 そして。

 

「───ああ、それが道理だ。

 此処に居る必要など、何処にも在りはしないのだから」

 

 ビシリ、と。

 

 なにかが、罅割れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 本の頁をめくる音が、神殿に響く。

 

 神殿、というのは単なる比喩だ。『天空の双生児(タウム)』を象った石像は崩れかけ、神殿と呼ぶにはあまりにも見窄らしいが、かろうじて残っただけの石碑が未だに神秘を保っている。

 

 石像の根本に座り込んだ銀髪の少年が手に持っているのは、取るに足らない三流雑誌だ。

 魔術の浸透した世界にあってもなお原因不明とされる───あるいは神話の色を遺した現象の数々を、無粋な言葉で飾り立て、娯楽として消費するオカルト本。

 

 肝心の中身も眉唾ものばかりで、実在する天使、燃え続ける廃村、永久凍峰の邪竜など、普通の人間が読めば失笑を誘うであろう記事ばかりが並んでいる。

 

 その一つ一つに丹念に目を通し、出来の悪い幼子を見守るような眼差しで少年は頁をめくる。

 

 ぺらり、ぺらり。

 

 永劫に続くのではないかと思われた時間はしかし、唐突な乱入者によって終わりを迎えた。

 不意に生まれた気配に、少年はゆるゆると顔を上げた。翠緑の瞳が文字を追うのを止め、現実へと引き戻される。

 

「お呼びでしょうか、大導師様」

「───エレノア」

 

 大導師、と呼ばれた少年が、優しげな眼差しを誌面から真横へとスライドさせる。

 そこに居たのは、黒衣に身を包んだ女性だった。エレノア=シャーレット。かつてはアルザーノ帝国の女王を危機に陥れた、死を纏う屍人使い(ネクロマンサー)

 

 最上級の礼を取ったまま、エレノアは跪いている。

 少年は石像の根本に座ったまま、忠実なしもべに向き直った。

 

「急な話だったのに来てくれてありがとう、エレノア。実は、君に頼みたいことがあってね……」

「大導師様御自ら、命を下してくださるとは……このエレノア、光栄の極みにございますわ」

「ふふ。君ほどに優秀な死霊術師を、僕は知らないよ。君はいつだって僕の願いを叶えてくれる。間違いなく、君は僕の脚本に必要な人間だ」

 

 慈愛すら浮かべて、大導師は微笑む。

 エレノアに何度も言い渡してきた『願い(命令)』が、どれほど悍ましいものかを微塵も滲ませずに。

 

 だが。続いた言葉は、エレノアの虚を突いた。

 

「けど……エレノア。君は最近、なにかが気になってるみたいだね」

「!」

 

 柔らかな声を認識した瞬間、エレノアの身体がかすかに強張る。

 強張ったことすら認識しないまま、エレノアが言葉を紡いだ。即ち、忠義の在り処の再確認。自身のすべてを大導師に捧げるという、彼女の意志の表明を。

 

「……いいえ。大導師様以外に、私が心を砕くものなどありません」

「偽らなくていいんだ、エレノア。君は君の思うままに行動していいんだよ。───気になるんだろう? ()が」

 

 彼。

 その言葉に、ますます身体が強張ってしまう。

 

 そう───エレノアは、たった一人の少年のことを忘れられずにいた。

 

 身一つで竜の牙を砕いてみせたかと思えば、続く戦いではあっさりと地金を晒して死にかけた少年。

 間違いなく平凡なはずなのに、彼は常に強敵相手に生き残り、あまつさえ竜の化身すら殺してみせた。

 

 エレノアが忠誠と情愛を捧げるのは、彼女を救った大導師に対してのみ。

 だというのに、エレノアの思考の片隅には、いつもその姿がチラついている。

 

 冷え切った視線が忘れられない。

 なにもかもを信じていない、虚ろな瞳が焼き付いて離れない。

 

 アレはきっと、いつか敬愛する大導師の力になる。そう確信して動いてきた。直感めいた感覚を頼りに、何度も逢瀬を重ねてきた。

 だが。今のエレノアは、それとはなんら関係なく───

 

「……ああ、そんなに深く考えなくたって良いよ。実を言うとね……僕も、少し気になっているんだよ。君がそこまで興味を示す人間が、一体どんなモノなのか」

「それは……」

「それにね、エレノアだけじゃないんだ。最近はレイクも噂の()()()くんにご執心でね。これまで見たことがないくらいに張り切っているんだよ」

 

 あんまりにもイキイキしてるものだから、いくつか相談に乗ってしまってね、と楽しそうに少年が語る。

 

「僕の大切な部下に、そんなに気にかけられている幸せ者が一体どんな人間なのか、気になるのは当然だろう?」

「……申し訳ありません。ご気分を害されたのなら───」

「エレノア」

 

 柔らかく、言葉だけで制止する。

 エレノアが顔を上げる。

 

「言っただろう? 君は君の思うままに生きて良いんだ。それに───」

 

 言葉を区切り、本を閉じた。ついさっきまで読んでいたはずの紙の束がほどけ、ひとりでに炎に捲かれ、やがて風に灰を晒す。

 己とは異なる渦から流れ着いたであろう同類の姿を思い描き、大導師は薄く微笑んだ。

 

「駒は、多ければ多いほど良いからね」

 

 それはまったくの本心。

 脚本にない、居るはずのなかった存在でさえも、少年は掌で転がしてみせる、と宣言した。

 

「そういうわけだから、君には好きに動いてほしいんだけど……そうもいかないのが困りものでね。

 頼み事の話をしよう。スノリアの伝承は知ってるかな?」

「───《白銀竜将》ル=シルバ様でいらっしゃいますね?」

「さすがエレノア、話が早い。そう、いよいよあの《門》を開く時が来たんだ。そのためには、まず《門番》たる彼女を目覚めさせなければならない───古の時代、悪竜として、悪竜のまま封じられてしまった彼女をね」

 

 事を察したエレノアが頷く。

 要するに、生贄だ。封印されてしまった竜を蘇らせるために、大導師はエレノアに多くの生命をかき集めて費やすように告げている───

 

「運の良いことに、ル=シルバを盲信する組織……銀竜教団(Silver Dragons Klan)のトップから、既にル=シルバ復活についての打診を受けていてね。

 せっかくだから、彼らを使って彼らの願いを叶えてあげてくれないかな?」

「まあ。我らが大導師様のなんと慈悲深いこと……私、感服いたしました」

「ははは。利害の一致ってやつだよ、あくまで。でも、できるだけみんなの願いは叶えてあげないと、ね?」

 

 その生命を貪り尽くす腹積もりであることはおくびにも出さず、大導師が微笑(わら)う。

 ───誰が見ても、狂っていると評しただろう。大導師と呼ばれた少年は本当にそれを『善いこと』として語っているし、それに首肯するエレノアもまた、彼の言を疑わない。

 

 閉じられた世界観。行くところまで突き抜けて、もはや変われなくなった人間の成れの果て。

 人はそれを、悪魔か、あるいは魔王と呼ぶのだろう。

 

「さて……ここからが本題なんだ」

 

 不意に笑みを消して、しかし楽しそうな雰囲気は残したままで少年が足を組み直す。

 膝に置かれたままの本の表紙を撫でて、世間話でもするように幾人もの命運を歪めていく。

 

「今回、《門番》を打倒する役者が誰になるのか……そこが気掛かりでね。もちろん、誰が彼女を解放しても問題はない。大切なのは結果だからね、誰がやったか、なんて些末なことさ」

「はあ……仮にも古代の魔王の傘下たる《白銀竜将》様を、そこらの雑兵ごときが傷つけられるとも思いませんし。眠りから解き放たれたル=シルバ様が世界を飛び回り、その末に誰かが殺してしまうということもございましょう」

「うん。こればかりは僕にも読めない。僕にできるのは、舞台がどう転んでも良いように、無数に脚本を用意することだけだからね。だけど、この竜退治は僕の脚本の重要な第一幕。……そこで、だ」

 

 ふと、少年がエレノアから視線を逸らした。

 

 気付けば。

 いつの間にか───本当にいつの間にか、神殿の柱に凭れかかるようにして誰かが立っている。

 

 ダークコートを羽織ったその男は、一体いつからそこに居たのか、ただ静かに佇んでいた。

 大導師の視線が自分に向けられていることに気付いたのだろう。男は柱から離れると、コートを翻してエレノアの前に立った。

 

 冷淡な面立ちの中、瞳だけが爛々と輝いている。

 エレノアはその男に見覚えがあった。最初の一歩、運命の歯車を回す役を担った───その男は。

 

「ちょっとした取引をしてね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 期限は一ヶ月。肉体と霊魂と精神が、拒絶反応を起こしてバラバラに散ってしまうまで。

 それをしくじれば、無限を失った男はそのまま朽ち果てることになる。

 

 だが。

 そんな未来など喰い破ってくれると言わんばかりに、男は笑った。

 

 今まで、一度も浮かべたことがないような───凄絶な笑みを。

 今まで、一度たりとも感じたことがないような、確かな高揚と共に。

 

 目の前に立った男を見て、エレノアは無意識に感じ取った。

 この男は、きっと。

 

「……レイク=フォーエンハイムだ。

 此度の竜、竜骸漁りのフォーエンハイムが貰い受ける」

 

 ───この男はきっと。

 自分とは、致命的なまでにそりが合わない、と。




【悲報】12巻、地獄が確定する(なお英雄が参戦するとは言っていない模様)。

最近レイクさんがジャティスばりにイキイキしていてたいへん困る。

追記
ステータスを載せようと思って忘れてました。
ここを逃したらもうしばらく載せられるタイミングがないので、遅ればせながら書いておきます。

【Material】
▼ステータス
筋力A+ 耐久B+ 敏捷C+ 魔力C 幸運E 宝具?
身長/体重:172cm・64kg
出典:なし/北欧
地域:日本、アルザーノ帝国辺境
属性:混沌・悪/混沌・善/秩序・善
属性は精神レイヤーによって変化する。

▼保有スキル
◯境界再演:侵蝕同調 EX
 ゴーストホルダー・オーバーライト。
 『この世界』においては固有魔術と称される、アシュリー=ヴィルセルトのほぼ唯一の武器。
 アシュリーが『観た』もの、観測した情報を自身を媒介に再現する魔術。アシュリーの使うとある英雄の能力はすべてこの魔術によるものであり、それ故にグレンの《愚者の世界》、アール=カーンの《魔術殺し》が有効。
 世界のルールの下で世界のテクスチャを張り替える無法。描写されないだけで、作中屈指のインチキ魔術である。
 原理としては違法召喚したサーヴァントとの一方的なデミ・サーヴァント化、と言うのが近い。
 通常であれば『特別な眼』を持たないアシュリーでは視覚のチャンネルが合わないため、新たな情報の記録は行われない。
 自身の霊子構造を書き換える、最悪の自己改造。

◯竜種改造 B→A+
 切り札のひとつ。魔力放出量は変わらないが、使用可能総魔力量が段違いになる竜の炉心。
 本来であれば常時稼働するものだが、再現度の問題で火入れ(オン・オフ)の必要性と断線が起きているため、基本的には使用されなかった。
 現在は再現が進んだため多少スペックは劣るもののほとんど完全再現されている。

◯原初のルーン B−
 キャスターとしても召喚可能な、とあるサーヴァントの有する魔術刻印。蜜月の証。
 大半のルーンを扱えるが、ルーン魔術に関してだけはうまく記録の再現ができないのか、多少精度は落ちている。具体的には、死のルーンなどが使用不可となる。

◯騎乗 ─
「え、なにそれ知らない」

▼宝具
『破滅の黎明』
ランク:A 種別:対人宝具 
レンジ:1 最大捕捉:1人
 グラム。借り物の宝具。旧き魔剣にして新生魔剣、大神オーディンによって授けられた稀代の武器。竜の死。
 スペックはシグルドとほぼ変わらず。現在は通常武装として選択されている。

『壊劫の天輪』
ランク:A+ 種別:対城宝具
レンジ:1~50 最大捕捉:1~900人
 ベルヴェルク・グラム。
 対人宝具であるグラムの全力解放。
 現在の持ち主の性質上、再現されたこの宝具は僅かながら巨人特攻を有する。

『■■■■■■■■、■■■』
ランク:EX 種別:対■宝具
レンジ:1~99 最大捕捉:?
 ───原初の罪。最初の過ちを示すモノ。
 使えば確実に身を滅ぼす、本人さえ存在を忘却している最悪の切り札。
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