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さて、今話からが今作の本編となります。とは言っても今話はまだ導入ですので、スナック感覚でさらりと読んで戴ければ幸いです。
標的10 モノクロの世界、変わらぬ空
朝の静寂を破る、喧しい目覚まし時計の音。
片手を伸ばしてスイッチを押すと、部屋に静けさが戻った。
顔を洗ってから部屋に戻り、ハンガーに掛けられたようやく馴染んできた制服を着て、髪をブラッシング。後ろ髪を紫のリボンで緩く結えば、朝の身支度は整え終わる。
通学鞄片手に階段を降りると、ダイニングのテーブルには既に朝食が並んでいた。
「あらレイちゃん、おはよう」
今日も早いわねぇ、と穏やかに笑いながら言うその人に、私も朝の挨拶を返す。
「おはようございます、おばあちゃん」
鞄を一旦玄関に置いてから朝食を食べ、食器を同じ頃に食べ終えたおばあちゃんの物と一緒に洗い上げた。
その後新聞を読んで、最後のページに辿り着く頃には通学にちょうどいい時間になっている。
「いってきます」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
おばあちゃんに見送られ、通学路の道を歩く。
家を出て二つ目の角を曲がると、友人と合流だ。ハニーブラウンのショートヘアが可愛い女の子と、くせ毛の女の子がやってくる。
「おはようレイちゃん!」
「おはよ、レイ」
「おはよう、京子ちゃん、花ちゃん」
他愛ない会話をして、校門をくぐる。今日は風紀委員会の抜き打ち検査はないようなので、そそくさと靴を上履きに履き替え教室へ。
教室に入ると、友人の京子ちゃんは早速色々な人に声を掛けられている。
さすがは並中のマドンナと呼ばれるだけあるな。
対する私と花ちゃんには一声掛けられるだけ。
まあ私も彼女もあまり人付き合いをするタイプではないし…特に私は一目で日本人じゃないとわかる容姿をしているから、敬遠されているのだろう。
席に着き、教科書と一緒に鞄に突っ込んでおいた本を読み始める。今日のはおばあちゃんの書斎で見つけた、心理学の本。大学は心理学を専攻しようか、とふと考えかけて、止めた。
未来のことなど、誰にもわからないのだから。
自嘲気味に笑い、始業のチャイムが鳴る直前の今になって教室に走り込んできた一団に、思わず目を向けた。
向けてしまった。
後悔しても、後の祭り。
朗らかに笑ったり、突っかかったり、宥めたりする三人に、知らずのうちに顔を俯け、黒いベストの上から左胸のポケットを触っていた。
私達の、絆の証を。
そうしていないと…心が、壊れてしまいそうだから。
「おはよう、ツナ君」
「お、おはよう京子ちゃん!」
にこやかに手を振る京子ちゃんに、友人二人とたった今教室に入ってきた沢田君も挨拶を返した。その声が明らかに弾んでいるのは、彼が京子ちゃんに好意を持っている証拠だろう。
「後、黒川と───レイちゃんも」
追加で呼ばれた名に視線を上げ、すぐにはそうと悟られぬアルカイックスマイルを浮かべた上で「おはよう」と手短に返してすぐに本に戻す。すると不良のような文句が降ってきた。
「てめー、10代目になんつー失礼な態度を!」
「まあいーじゃねーか、獄寺。松崎もおはよ」
「ああ、山本君、獄寺君」
できるだけ目を合わせないように、彼らの肩越しに見える窓の外の空に意識をやりながら言う。
三人はそれで満足したのか、足早に自分の席に向かって行った。
止めていた息を吐く。
深呼吸してから、自分がベスト越しに胸ポケットを握り締めていたことに気付いて、ベストを整える。
何がきっかけで校則違反をしているとバレるかわからないのだ。慎重過ぎて悪いことはない。
野球部の応援できゃあきゃあ騒ぐようなこともしない。
怖いもの見たさで屋上に顔を出したこともない。
しつこい勧誘に負けてボクシング部に所属しているなんてこともない。
沢田君と持田先輩の勝負や山本君の飛び降り騒ぎは他の野次馬に混じって見ていたし、理科教師の根津が学歴詐称で辞めさせられた時はこっそり喜んだりもしたものだが、それだけだ。
今の私は松崎
この立場を貫かねば、彼らと深く関わることになる。
みんなと酷く似ている、彼らと。
そんなことになれば、私はきっと耐えられないだろう。
今でさえ、彼らの姿を見る度にみんなと重ね、動揺してしまうというのに。
幾ら手を伸ばそうとも届かぬ、遠い空の色ばかりが変わらないのが、酷く辛い。
それでも、見つめてしまうのは…あの時代と同じものがあると、安心したいからだろう。
こんな、
・並盛中1年A組のとある女子生徒
いっそころせ(一応基督教徒なので自害出来ない)(ボンゴレファミリー作戦参謀、そして