感想もありがとうございます、一件一件嚙み締めるように読んでおります!
本編はちょっと、いやかなり時間が飛びます、申し訳ない。
でも彼との絡みが書けたので作者的には満足です。
季節は移り変わり、もう10月。通学の途中、遠目に眺めた並盛を囲む山々は、青空に映える赤や黄色に染まっていた。
私は女子なので、体育祭の苛烈極まる棒倒しには参加せずに済んだ。原作に絡んだと言ったら決起集会の際、色々と勝手なことを言いまくるお兄さんをハラハラした目で見ていた京子ちゃんの隣で、脅す獄寺君と命令する京子ちゃんのお兄さん…もう笹川君でいいか、笹川君を冷ややかな目で見ていたくらいだ。
笹川君は(本人も忘れているが)この時点で二年生。本来主導するはずの三年何処行ったんだ、と言ってはいけないのだろう。
私にとって地雷にも等しいリボーン君はと言えば、あれ以来勧誘して来ない。何処かの大空とは大違いだ。
読心術が効かない私を警戒し、リボーン君もファミリー勧誘を諦めたのか、とも思ったが、希望的観測だろう。
ああダメだ、考えたら憂鬱になってきた。
気分を変えるため廊下の方に視線をやると、そこには見覚えのある小さな姿。いや、私が一方的に知っているだけで、彼は私のことなど知らないと思うが。
抱いた共感も、酷く一方的だ。
それにしても、どうするべきか。
クラスメイト達も廊下を股を抑えながら歩く仔牛
だが、ここでランボ君に関われば何やかんやでリボーン君にファミリー入りさせられるという未来が見える。今まで沈黙を保ってきたのは私の身辺を調べるためだろうし。
いや、本当に見えてる訳じゃないが。例の未来予知はこの時代に来て以来一回も
だが私の未来予測は予知にも等しい、とジョット君から評されている。曖昧なことも多いとは言え、短期的な未来予知と言っても過言ではない勘のよさを持つ彼に言われても褒められた気はしないが。
居候の予想外の登場に驚いたらしい沢田君に名前を呼ばれたランボ君は、泣きながらこう訴えた。
「ツナ、チャック壊れてしっこできない」
指名されたために無視することもできず、沢田君は笑いに包まれた教室の机の間を走り抜け、顔を赤らめながらランボ君に駆け寄った。
しかしランボ君は窓の外にリボーン君を発見したらしく、ガハハと笑っている。もれそうなのを一瞬で忘れたらしい。随分と都合のいい脳みそだが、5歳児なんてそんなものだろう。
「もれそうじゃなかったのかよ!」
沢田君の一言で自分の状況を思い出したのか、牛柄のつなぎの白い部分が黄色く染まった。
そういやこんなシーン原作にあったな、と今更ながら思い出した私は、せめて後始末くらいは手伝ってやるかと雑巾を取りに行ったのだった。
◇
その日の放課後、私は呼び出されて校庭に向かっていた。脚が重い。呼び出したのがリボーン君だからだ。チクショウ予測した通りだよ、私の頭脳は今日も今日とて鈍ってはいないらしい。もう何の慰めにもならないが。
というか、これ完璧に原作じゃないか。確かランボ君の保育係を決めるやつだ。
原作通り保育係が右腕になるんなら、私が沢田君の右腕になってしまう。獄寺君はランボ君と相性最悪だし、山本君も泣かせていたから。
……いや、これ私が挑戦するタイミングで三浦ハルが乱入してくるな。なら獄寺君と山本君が先に挑戦するよう仕向ければ問題はない。10年バズーカやら何やらの騒動で話が流れる。
止まっていた歩みを再開すると、見えてくるのは沢田君と獄寺君、山本君とリボーン君、そしてランボ君。
「…私を呼び出したのは君か?」
「やっと来たか、レイ」
ニッと笑うリボーン君の背後では沢田君達が驚いており、ランボ君は獄寺君に蹴られたのか、泣き喚き中だ。
「レイも来たし、ランボの保育係の適性テストをするぞ」
「なっ、何言ってんだよっ、獄寺君の適性のなさ見てただろ。それにレイちゃんまで巻き込むなよ!!」
さすがに看過できなかったのか、沢田君がリボーン君に言い募る。リボーン君は女には猫を被るレベルで甘いから、ここで私が追撃しても大丈夫だろう。
「沢田君に全面的に同意です。そもそも何故私はここに呼ばれたんでしょう」
「ランボの保育係をツナのファミリーの中から選ぼうと思ってな」
いや、ファミリーの話は断らなかったか? 何故彼の中で私がファミリーに数えられているんだ?
首を傾げていると獄寺君はランボ君が大嫌いなので遠慮すると言った。うん、それが一番いいと思うぞ。双方ストレスが溜まるだけだからな。
獄寺君の判断に内心感心していると、山本君が空気を読まずに天然発言をぶちかました。
「今日は何の遊びだ?」
初めて見るが、これが山本節というやつか。似たような対応をする音楽好きの顔が頭に浮かぶぞ。
天然な山本君に沢田君が、その姿に感じるデジャビュに私が、それぞれ口角を引きつらせたところで、リボーン君が爆弾を投下した。
「因みに保育係になった奴がボスの右腕だからな」
右腕。それは獄寺君が求めて止まぬポジションであり、彼を動かす魔法の言葉。
獄寺君は目を逸らしながらもランボ君大好き宣言をした。
リボーン君はよく彼らの性格をわかっているらしい。彼らがわかり易いだけかもしれないが。
見事に掌の上で踊らされる彼らと私が受ける適性テストは、ランボ君を笑わせた方が勝ち。
「オレ、先攻でいくぜ」
そう言って、獄寺君はランボ君に一歩近付いた。
しかし、自分に近付いてくる獄寺君を見たランボ君は先程を上回る大声で泣き始める。恐らく獄寺君から受けた仕打ちがトラウマになっているのだろう、可哀想に。
思い通りにならないことに青筋を立てた獄寺君だが、怒りを鎮めてしゃがみ、ランボ君と目線を合わせた。
「さっきは悪かったな。仲直りしよーぜ」
言いながら獄寺君はランボ君に手を差し出したが、友好を示すはずの手に乗せられたのは暗殺にもテロにも使える万能兵器、手榴弾。
ピンがないことを見た獄寺君が慌てて放り投げたそれは、校庭にて爆発した。
その後獄寺君に首を絞められかけたランボ君を、今度は山本君が笑わせることになったのだが…野球の動きに入ると加減ができないという彼の弱点が晒される形で終了した。
「お次はレイだぞ」
リボーン君にそう言われた直後、腰に手を当て可愛らしく怒っている少女が現れた。
予測通りに現れてくれた、黒髪ポニーテールが似合う彼女は三浦ハル。沢田君に片想いする元気な他校生だ。
「なんでお前がうちのガッコにいるんだよ」
「転入か?」
「違います! 新体操部の交流試合に来たんです。やっとツナさんを見つけたと思ったらランボちゃんを泣かせてるなんて」
泣いているランボ君を抱き上げた彼女は、手持ち無沙汰に佇んでいた私を見てパチクリと瞬きをした。
「はひ、どなたですかこのクールビューティな方は。…まさか、ツナさんの恋人!?」
「なっ、ちが…」
「酷いですツナさん、ハルというものがありながら!!」
元々押しの弱い沢田君は、彼女の勢いに押されている。ここで彼女を放置すると、そのうち私と沢田君が付き合っているという噂が広がりそうだな。誤解は払拭しておこう。
「違うよ、私は沢田君のクラスメイト。それ以上でもそれ以下でもない」
「そ、そうなんですか、済みません…」
今私が浮かべるのは、完全に外向けのお手本のような作り笑いである。貪欲な狸共と渡り合うのに重宝したお陰ですっかり板についているのだ。
何せボンゴレには交渉を脅しと勘違いしているような輩しかいなかったからな。最年少の私が渉外担当だった。
みんなには苦笑されたが、使えるものは使わなくては勿体ないじゃないか。そんな風に言うなら自分達の認識を改め給え、と何度言ったか。
内心溜息を吐いていると、モジモジしながらハルが話し掛けてきた。
「あの、ハルは三浦ハルと言います、貴女のお名前は?」
「レイ、松崎
よろしく、と手を差し出すと、獄寺君のように手榴弾を乗せられることなく握り返された。よかった。
と思ったらハルちゃんが抱えるランボ君から立ち昇るピンク色の煙。ランボ君が10年バズーカを使ったのか。
それにしてもよくそのアフロの中にそんな大きな物が入っているよな。未来から来た青い狸のポケットじゃあるまいし。
ハルちゃんが支えきれずに膝を突いた影響で地面に腰を強打した大人ランボ君。髪型と言い服装と言い…この時代よりも、ランポウ君に似ている。
「やれやれ、何故いつも10年前に来ると痛いのだろう」
「はひー誰ですかーー!!?」
そう言えば彼は原作では何かと不憫だったな。ハルちゃんの勘違いは訂正しておいてやるか。
「お久しぶりです、親愛なる若きハルさん、レイさん」
「エロ、ヘンタイ!! 胸のボタン留めないと猥褻罪でつーほーしますよ!!」
「落ち着いてくれ、ハルちゃん。彼はランボ君だ」
「……言われてみれば、確かに似てますけど…」
苦手意識が無くなった訳ではないようだが、一方的に罵るのは止めてくれた。精神的にダメージを喰らいまくっていたランボ君は態度を軟化させてくれた礼を言ってきた。
私も君や沢田君達に一人で傷ついているから、他人事とは思えなかっただけだ、と言ったらどんな反応が返ってくるだろうか。
「…どうした?」
「いえ、あの人はいないかな、と…」
キョロキョロと辺りを見回す大人ランボ君。どうやら誰かを探しているらしい。この辺りには私達以外に人の気配はないのだが。
「ストーカーですか?」
「安心し給え、ストーカーにやられるほど私は弱くない」
「それはわかってますが…」
絶対違うだろう、と思いつつもリボーン君を欺くためハルちゃんの言葉に乗らせてもらうと、予想外の反応。
そこは否定してくれよ。一体君は何を根拠に私が強いと言っているんだ? ほら、リボーン君がボルサリーノで目元を隠してニヒルに笑っているじゃないか。
その後大人ランボ君は獄寺君に喧嘩を売られ、更に山本君が投げた角が額に刺さり、ドタッと倒れた。…済まない、これは回避不可能だった。どうやら彼は不憫な扱いを受ける
・保育係にはならなかった
大人ランボは出会ったばかりの頃のランポウと同世代、同じような背格好と服装、オマケに
実は子供のランボの扱いは普通に上手い。我儘を宥めることにランポウで慣れているのもあるが、一日も早くジョット達に追いつきたかった自分を重ねて、自分がジョット達にされて嬉しかった・同列に扱われていると感じた対応を心掛けるため。
『他のファミリーと一回り年が離れている』という立場的な問題からランボと同じ視点に立てる稀有な存在。ランボとの共通点は幼さと将来性。