最初にお試しで標的1を投稿した時には考えられなかった未来です、本当にありがとうございます!
「おっ、松崎!」
「……あ、ああ、おはよう」
「はよ」
今日は少し遅れて家を出たんだが…そうか、この時間帯は彼らの登校時間なのか。明日からは気を付けねば。
「山本君、できれば私のことは名前で呼んでくれないか? 諸事情あって名字で呼ばれるのには慣れていないのだ」
「ん、わかったのな!」
私はレイと呼ばれるのに慣れていて、松崎と呼ばれても無視しかけてしまうことが多い。なので気が付いた時に名前で呼んでくれるよう言っているのだ。
朗らかに笑った彼の隣を仕方なしに歩いていると、獄寺君の話が聞こえてきた。
「あいつが先代が傾けたファミリーの財政を立て直したのは、有名な話っス。マフィアキャバッローネファミリーつったら、今じゃ同盟の中でも第3勢力ですしね」
キャバッローネということは、跳ね馬ディーノが来たのか。彼は性格的には好ましいんだが…あの究極のボス体質がな…。
私の持つ知識の中で彼が披露したヘマやドジの数々を思い返していると、突然走ってきた高級車が急停止。そこから伸びた縄が沢田君を捕らえて車内に引っ張り込み、そのまま発進してしまった。
「10代目!!」
「ありゃ、ここら一帯を締めてるヤクザ“桃巨会”の車だな」
「リボーン君じゃないか」
「ヤクザと言えば、ジャパニーズマフィアだ。大人マフィアに中学生のお前達が敵うわけねぇ。ここは警察に任せろ」
「任せられません!!」
「警察は頼んだぜ、小僧!!」
そう言い残して車の消えた方角に走り去る二人。まるで鉄砲玉のようだ。
少しは冷静さというものを身に付けて欲しいが…その
「お前は行かねーのか?」
「警察に任せろと言っていたのは君だろう? それにどこに行くんだい?」
沢田君はそこにいるのに、と背後に停車した沢田君を攫った高級車を顎で指し示す。と、その中から縄でグルグル巻きになった沢田君と、金髪の王子様のような青年が出て来た。
彼こそが、先程年上は全員敵と言ってのけた獄寺君にも評価されたキャバッローネファミリー10代目ボス・跳ね馬ディーノだ。
…何なんだろうな、ディエゴさんとは似ていないはずなのに…やはり、何処か面影がある。それにジョット君と同じ金髪…ああダメだ、みんなのことを思い出すと
「
「松崎
「私は入った覚えはないのだが」
即座に否定した私に苦笑した彼は、部下の皆さんのお陰で解放された沢田君の肩を叩くと笑顔で言った。
「オレはキャバッローネ10代目ボスのディーノだ。ツナの兄弟子に当たるから、何かあれば相談してくれよ」
「…ディーノさ…君もリボーン君のごっこ遊びに付き合っているのか」
済まないね、私はあくまでマフィアごっこに付き合わされている一般人。それを貫くためにも、君の言葉にこれ以外の反応を返してはいけなかったんだ、許してくれ給え。
後、君付けの理由はさんではしっくりこなかったからだ。
「あ、ああ! その通りだ!」
「凄いな、大人なのに子供の遊びに付き合うとは。尊敬するよ」
「そうか?」
褒められて喜んでいるキャバッローネ10代目の隣には、ポカーンとするボンゴレ10代目候補の姿が。
「でも、マフィアって遊びでもおっかなくない…?」
「沢田君は少々勘違いしているようだな。元々マフィアというのは悪者ではないのだ」
「え、そーなの?」
「ああ」
きょとんとする沢田君に、私が知ることを語ることにした。
特に理由はない。
彼には、イタリアンマフィアの、ボンゴレの成り立ちを誤解しないで欲しかった。ただそれだけだ。
「リボーン君に誘われて少し興味が出たから調べてみたのだが、イタリアのマフィアというのは自警団が起源のものが多いらしい」
「自警団…」
「そう、簡単に言えば街を守る有志だな。当時は治安も悪く、更に警察組織や貴族の腐敗も進んでいて、一般の市民にとっては酷い状況だったのだ」
幼き日に見た街は、ゴロツキの巣窟と化していた。祖父は絶対に私を一人で外出させようとはしなかったし、顔も知らない私の両親も、街にのさばっていたゴロツキに殺されたのだと聞いたことがある。
そんな中で立ち上がったのが、
祖父を亡くして孤児になった私が一人でも生きていけたのは、ボンゴレのお陰で街が安全地帯になったからだ。
「彼らは権力に守られ、法では裁くことのできなかった者達をその力で断罪する、謂わば
リボーン君の言うボンゴレやキャバッローネも、そういう成り立ちなんじゃないかい?」
「そーだぞ。今でもボンゴレやその同盟は麻薬を扱わない白マフィアなんだ」
「そうなのか」
よかった。素直にそう思った。
ここが私のいた時代から派生したかはわからないが、この世界のボンゴレはまだ善性が強い。それを改めて感じると、私がかつてした門外顧問に関する提案も、無駄ではなかったように思える。細かな部分をあの二人にぶん投げたような形になってしまったのは心残りだが。
「それじゃあ、私はもう行くよ。沢田君も遅れないようにし給え」
「あ、うん! ありがと!!」
その礼は、マフィアに関して教えたことについてか。
それで君がボンゴレの未来を少しでも考えてくれるようなら、安いものだよ。
◆
その日の夜。弟分とそのファミリーの顔を拝む、という目的を達成してイタリアへと舞い戻ったディーノは、テレビ電話でかつての師と話していた。
「あの子…レイっつったか。何があったんだ?」
〈お前も気付いたか〉
「ありゃ気付かねーとおかしいぜ」
容姿から推察するに異国の血を引いているらしい彼女は口調こそ冷たいものの、弟分である沢田綱吉を気遣う優しさ、そしてリボーンも認める優れた洞察力を持つ。
経歴にも不審な点は無く、鋭いだけの一般人ではあるが、リボーンはその力を買い、綱吉のファミリーに入れるべきだと思っているらしい。
だが、その何かを憂うように伏せがちになった怜悧な
果てなど無き、
海のように澄み、深さを感じさせるその色は、同時にただ広がる、虚無。
「あの年の
〈まだ調査中だが、これといったことは見つかんねー。精々物心着く前に両親を亡くして施設に預けられたことと、並盛に来る前に事故に遭ったことくらいだな〉
応えたリボーンの方も、ほぼ手詰まりと言ってよかった。
最初は読心術を弾く彼女を警戒して、彼女自身に綱吉を害する意思がないと判断できてからはファミリーの一員とするために。
ボンゴレとリボーンの人脈を使い行われた調査だが、特筆すべきことと言えばその二つしか見つからず、仮に学校や施設で何か遭ったのだとしても、施設が閉鎖された今となっては詳細を調べるのは困難を極める。
今のところ唯一の手がかりは、彼女の日常風景にある。
常に無表情の仮面を貼り付け、偽りの笑顔を浮かべている彼女が僅かな動揺を見せ、そしてその瞳を絶望に翳らせる瞬間があるのを、リボーンは見逃さなかったのだ。
その瞬間とは、教え子であるツナや獄寺、山本に話しかけられた時や、その姿を視認した時。
そこで、彼女がどんな人物に反応するのか確かめるべく、理由を付けてランボとも引き合わせてみた。
結果わかったのは、彼女がそのような反応をするのがツナ、獄寺、山本、大人ランボだということだけだ。ディーノに対しても、何か思うところでもあるのか似たような色をその瞳に滲ませた。
もしかしたら、関わりがないだけで他の人間にも同じような反応をするかもしれない。
だが、今のところ共通点が見つからない。法則がわからなければ、手掛かりになりそうな他の人間を見つけることもできないのだ。その方向から手掛かりを得るのは難しいだろう。
「あの子が反応すんのは“マフィアだから”じゃねーのか?」
〈ならオレにも何らかの反応を見せるべきだろ。あいつはビアンキやガキのランボにはあんな目はしなかったしな。それに、もしマフィアを憎んでいるんだとしたら、マフィアの成り立ちを話したりはしねーだろ〉
「それもそうか…」
ディーノは思い出す。
イタリアンマフィアが元は自警団だと話している時。
彼女は、何処か嬉しそうだった。
無邪気に、自警団として立ち上がった
「…少し危うい気もするが、大丈夫なんじゃねーか?」
〈楽天的だな。そんなだからいつまで経ってもヘナチョコなんだぞ〉
お決まりの遣り取りを終えた二人は、テレビ電話を切った。
───彼らがレイの“秘密”を知るのは、まだまだ先のことである。
・ハイライトは仕事放棄中
故国の現在の情勢なども調べてはチラつくマフィアの影にうんざりしている。いつか墓参りに行きたいんだが、難しいかな…。
ボスの来孫に語ったマフィアの成り立ちは、一般に知られている情報の中から彼女の知る事実に則しているもののみを抜き出したもの。つまりただの実話。
面影があるとは言え自分の知るキャバッローネボスとはそれ程似ていないディーノに反応してしまった理由を考察し、『くせのある金髪』『大空属性』『少年期にボスになった青年』『兄貴分』と自分のボスとの共通点を山のように見つけてしまい吐きそうになった。けど授業はちゃんと受けた。
・ボンゴレ10代目候補
クラスメイトの女子がわかり易く、脚色もなしでマフィアの成り立ちを話してくれたので家庭教師が言うところの「いいもんのマフィア」の意味を理解する。それが彼女の実体験に基づいているとは知らない。
・家庭教師
レイの危うさに一番に気付いた。自身も大空であるルーチェを亡くしているのである意味似た者同士。しかしレイの反応がかなり鈍い(気取られないように全力で隠している)ために地雷を踏んでいるとは気付いていない。
ダメダメな生徒を支える人材の一人として目を着けている少女が
彼女をただ鋭いだけの一般人だと思っているからこそこの対応なので、隠している戦闘能力を知ればまた異なる対応になる可能性が高く、レイにもそれを警戒されている。
・跳ね馬
尊敬できる枠になりそうだったが一瞬で格下げされた。尚同じ枠にはジョット、雨月、アラウディがいる。
師が弟分のファミリーにしようとしている少女が自分の先祖と顔見知りだとも、自分のことを弟分同様親戚の子供を見るような目で見ているとも知らない。