参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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お気に入りが1050突破、UAも31000越えという状況に一番驚いてるのは作者です、間違いなく。

今回は若干季節外れな話になります。
いや、もう一ヶ月もすれば年末だしそれ程でもないか…?


標的15 正月の変な伝統

「レイちゃん、どうかした?」

「いや、何でも」

 

 

 顔を覗き込んできた京子ちゃんにそう返答すると、彼女は「そっか」と可愛らしい笑みを浮かべた。

 その服装はこの数日限定で多く見られるようになる、日本特有の衣服…即ち、着物である。つまり、もう年明けなのだ。

 

 除夜の鐘を聞きながら眠りについた数日後の今日、私は着物を着て初詣に行っていた。そこで同じようにおめかしして初詣をしていたこの兄妹に出会い、この後行こうとしている場所が合致するのもあって同行させてもらっている。

 

 何もおかしくないが、“兄妹”なのだ。まあ要するに、彼もいるのだ。どっかのドッピーカンにそっくりな、極限の晴が。

 

 

「今年のオレの抱負は“極限”だ!!」

 

 

 ああ、暑苦しい。私は寒いのは得意だが暑いのは苦手なんだ、勘弁してくれ。

 そして敢えて誰とは言わんが似ている。恐ろしい程に似ている。アルコバレーノじゃないが呪いでも受けてるんじゃないのかと考えてしまう程に似ている。

 

 

 その後、招待を受けた沢田君の知り合いが続々集まって来る。その中にはハルちゃんもいた。

 女子三人が集まれば始まるのは、互いの艶姿の褒め合いっこだ。

 

 

「レイちゃんの着物、可愛いです!」

「本当! 似合ってるよ!!」

「ありがとう、二人とも。二人のも似合っている」

 

 

 空色の地に、あしらわれるのは美しい藤の花。それに瞳と同色の深青の帯を締めている。

 着物に合わせて、髪もお団子にして藤の花の簪を差してもらった。

 

 ミルフィオーレ第8部隊隊長の影響で、(グリチネ)の花はそれ程好きではなかったのだが…可愛いからいいだろう、と割り切っている。

 微妙な気分にならないでもないが、まあ好意的に見られているが故のものだろうし。

 

 

「…それで、何故私達は正月早々に招かれたんだ?」

「ボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦のためだぞ」

 

 

 塀の上の殿様の扮装中なリボーン君に尋ねると、そう答えが返ってきた。

 

 …君はボンゴレという単語を付ければ幾ら一般人を巻き込んでも、何をしても許される、とか思ったりしてないよな。もし思ってたら怒るぞ。私は怒ると怖いんだぞ。エレナさんやジョット君程ではないけど。

 

 

 ディーノ君がファミリーを引き連れやってきたが、それは置いておいて。

 

 

 ボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦とは、同盟ファミリー同士が戦いその年のファミリーの意気込みを表明するボンゴレの年始行事らしい。

 何も意気込みの表明のためだけにそんなことをせずとも、と考えているのは私だけではなさそうだ。

 

 各ファミリーの代表が正月に因んだ種目で競い合い、その総得点で勝敗が決まる。そして勝ったファミリーには豪華賞品が贈られ、負けたファミリーは罰金の一億円を払わなければならないのだという。

 何処の誰が考えたんだ、そんな掟。名前を言ってみろ、私が直々に出向いて凍らせてやる。

 

 

「…それも、伝統的な掟なのか」

「当たり前だ」

 

 

 いや、そんなこと私達はやってないぞ。ファミリー対抗の勝負事と言ったら、私が降雪機扱いを受けたボンゴレVS.(バーサス)シモンの雪合戦くらいなものだ。せっかく日取りを決めたのに雪が積もらなかったからって、人を降雪機扱いでこき使うとは…恨むぞ、ジョット君。

 

 

「待ってくださいリボーンさん、なんでファミリー対抗戦にファミリーじゃない奴が混じってるんスか」

 

 

 そう言ったのは三が日など関係なく血気盛んな獄寺君。指差す先にいるのは笹川君だ。まさかと思うが、君は京子ちゃんやハルちゃんもファミリーとしてカウントしているのか。そうだとしたらさすがに看過できんぞ。

 それに対しリボーン君は、キャバッローネに比べボンゴレは人数が少ないため、特別に沢田君の知り合いもファミリーに数えることにした、と尤もな理由を述べた。

 

 

「つまり今日一日オレはモンゴルファミリーだ!」

 

 

 いや、ボンゴレだ。二文字しか合ってないぞ笹川君。…これは、二文字合っていたことを喜ぶべきなのだろうか。

 

 どうリアクションをすべきか迷っていると、みんなに流され移動してしまった。場所は近くの河川敷だ。前方ではリボーン君を間に挟み、爽やかに笑うディーノ君と嘆き弾に当たったのかと思う程にローテンションな沢田君が対峙している。

 まあ沢田君については仕方がないな。負ければ罰金一億円。正月に因んだ勝負と言えど、大人に勝てるはずがないと思っているのだろう。

 

 

 そんなこんなでリボーン君を審判に始まった勝負の最初、おみくじは、笹川君が大量に大凶や凶を引き、一気に引き離されてしまった。ボンゴレボードという最早バカにしているとしか思えないボードに貼られた点数は、1 対 −17。

 あまりの結果にショックを受ける笹川君を放ってもおけず、励ますことに。

 

 

「笹川君、いい方に考えるのだ。君は今どん底まで落ちている。ならば次は上がるのみだ」

「そうか! オレはこれからよくなるのだな!!」

「その通りだ。大吉なんて下がるばかりだからな」

 

 

 なんか違くない!? とか叫んでるX世(デーチモ)がいるが無視だ、無視。だが何というか、チョロいな。ナックル君も正月に雨月君が作ったおみくじもどきで大凶を引いていたが、その時もこうして慰めた記憶がある。…あれ、私達もそれっぽいことやってたのか?

 

 第2試合の羽根つきは一回勝負で、得点は20点。ここで勝てば挽回できる、のだが…本気になり過ぎた山本君によって、羽根が場外まで飛んでしまい、負け。

 

 第3試合は百人一首。これなら私でもできる、というか自信がある。みんなが乱闘している時に、エレナさんと雨月君とやったんだ。

 …やはり、私達がファミリー内でしていた遊びが元になっている気がする。何故ファミリー対抗になったのかは知らんが。多分II世(セコーンド)辺りが何かしたんだろう。

 

 

「それは私がやろう」

「レイちゃん、頑張って!」

「ファイトです!!」

 

 

 声援に片手を振って応え、いつ敷いたのかわからない畳の上で正座をする。相手も正座をしているが、変に力が入っているな。緊張しているのか。何にせよ、得点を渡す気はないが。

 顔を上げ、全ての札が視界に入るようにする。後頭部で簪の飾りがシャラリと揺れたが、気にしない。戦場と同じだ。余計なことは無視する。眼前にのみ、意識を集中させる。

 

 リボーン君が歌を読み始める。この句だ、と確信が持てたところ──と言っても三文字目だが──で、取り札を払う。

 何処へ行ったのかと思えば、冷や汗をかいた沢田君の足元に突き刺さっていた。

 

 

「済まないな、沢田君。久々だったからやり過ぎてしまった」

「あ、うん、大丈夫…」

 

 

 その後私は感覚を取り戻していき、キャバッローネの部下の人は一枚も札を取れずに終わった。一枚くらいは取らせてやってもよかっただろうか。だが、変に手を抜くのもなぁ…。

 

 うだうだと私が悩んでいる間に試合は進み、ボンゴレは負け続け…せっかく私が縮めた点差も開く一方。

 

 

「あーーどーしよー! このままじゃ一億円借金だ〜〜!! 一生借金地獄だ〜〜〜!!」

「考えてみたらちょっとシビアすぎるな」

 

 

 いや、ちょっとじゃない。凄くシビアだ。ディーノ君、君は少々感覚が狂ってないか? それとも天然なのか?

 

 ディーノ君の提案に、リボーン君は少し考えた後で同意し…今までのはチャラと言い放った。審判の権限を使った暴挙に両ボスも驚いている。私も初めからこうなると知らなければ叫んでいただろうな。

 

 

「かったるいから次で勝った方が優勝な。その代わり負けたら10億払えよ」

 

 

 増えている。罰金が10倍になっている。

 

 沢田君は口角を引きつらせていた。しかしディーノ君はしゃーねーよ、と諦めの滲んだ顔で笑っている。

 何となく彼がリボーン君にどんな扱いを受けていたのか想像ができてしまった。一言声を掛けるとするなら…頑張ったな、が最適か。

 

 

「最後の勝負はファミリー全員参加の餅つきにすんぞ。オレに美味い餡ころ餅を食わせた方が勝ちだ」

 

 

 とうとう基準が完全にリボーン君になってしまった。

 

 人によって好みは違うからな…相当な無理難題だが、この場合はボンゴレが有利。

 何故ならキャバッローネは何をどうすればいいのかわからず、臼と杵の前で悩んでいるからだ。

 

 ぺたんぺたんと獄寺君が餅をつき、京子ちゃん達は餡を作っている。

 この後ビアンキさんの乱入で台無しになるが、作っておいて損はあるまい。

 

 

 最初に食べてもらうらしいキャバッローネの、見た目の時点で味が想像できる餅を食べたリボーン君は一言。

 

 

「パサパサしてまずいな」

 

 

 リボーン君の辛口判定を聞いて、沢田君は嬉々とした表情を浮かべている。

 

 君はボスになるんだから、もう少し周りに注意を払った方がいいぞ。特に君の周囲には摩訶不思議な人達が集まっているのだから。

 

 紫の煙を放つ餡ころ餅を前に叫んでいる沢田君に、私は内心そうアドバイスした。

 

 

「私も途中から参加させてもらったわ」

 

 

 ビアンキさんも紫の着物に黒の羽織が似合っている。だがそんな姉の姿を見て獄寺君は倒れてしまった。トラウマの克服にはどれ程の時間が掛かるのだろう。

 

 …それにしても、紫か。

 

 

 感傷に浸りかけてしまった頭を振って今の考えを片隅に追いやり、凶悪な武器と化した餡ころ餅を持つビアンキさんに追い掛けられる両ボスを目で追った。

 

 あの二人は果たして明日生きているのか。それは誰にもわからない。




・自分も摩訶不思議な人

 自分の異常性も理解しているけど、他のメンバーの方が異常度は高いと考えている。ボンゴレの初代守護者でヘンテコな能力持ちというだけで十二分に摩訶不思議だ。

 一月一日に日付が変わってまず一番に、「お誕生日おめでとうございます、ジョット君」と懐中時計の中の大空に向けて言っている。
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