参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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UA45000突破…だと…!?


そして第一章最終話、なのですが。
先手を打って一応の予防線を引いておきます。

タグが主人公のみにかかるとは一言も言っておりません!!(開き直り)(こうでもしないとハピエンにはならない)


後書きはプロローグ同様、活動報告の方で行う予定です。そちらで補足説明はする予定ですが、諸々に関する質問なんかも感想やメッセージで戴けると嬉しいです。


標的19 もう届かない、伸ばせない

 夏休みも後僅か。

 

 前日に焼いておいたシフォンケーキを持参して向かうのは京子ちゃんのお宅。ハルちゃんが私と京子ちゃん、花ちゃんにインタビューがしたいらしい。

 

 

「あっ、レイ!」

「花ちゃんか。…手に持っているのはもしかして…」

「あーうん、ナミモリーヌのケーキ。あんたがケーキ作ってくるんなら、買わない方がよかったかな…?」

 

 

 あんたの作るお菓子全般美味しいし、と言う花ちゃんの隣を歩きつつ、苦笑とほぼ確実な未来予測を返す。

 

 

「きっとみんなで食べればケーキの一つや二つ、すぐになくなるさ。京子ちゃんもハルちゃんも、甘いものには目がないからな」

「それはあんたもでしょ。いや、私もか…」

 

 

 ブーメランな発言に頭を抱えた花ちゃんに、笑みが零れる。

 彼女らといると沢田君達ほど気を張らずに済むし、本当に楽だ。

 

 

 気を付けねばならん点は、服装などか。

 私の体には、かつての戦いで負った傷がそれなりに刻まれているから。

 

 勿論かなり薄いからまじまじと見なければわからないけれど、さすがに今花ちゃんが着ているようなノースリーブの服は着れないな。

 私自身は露出が少なく、この時代ではクラシカルだとか、そういう風に言われるものを好む。だってそういう服の方が慣れてるんだ。

 

 

 私と一緒に花ちゃんが来てすぐに子供扱いされてしまったハルちゃんが、大人っぽい話とは何か、と花ちゃんに訊いているが…それは君にとって地雷だぞ。

 

 

「ん? そうねえ…今、旬なのは牛柄のシャツの人の話かな」

「ふふ、それは花ちゃんにとっての旬だろう?」

「それもそうだね…」

 

 

 シフォンケーキを切り分けながらツッコむと、京子ちゃんがハルちゃんに提案する。

 

 

「何か話が盛り上がっちゃいそうだし、先にインタビューの内容済ませちゃおうか、ハルちゃん」

「じゃあ、三人の誕生日と血液型を…」

「私は4月20日牡羊座のA型よ!」

「私は3月4日魚座のO型です!」

「私は2月14日、水瓶座のAB型だ」

 

 

 本題という名の建前だったインタビューが終われば、始まるのは女子会だ。

 京子ちゃんとハルちゃんは互いに自分の髪をセットし合ったとのことなので、私と花ちゃんもそれをすることに。

 

 だがしかし、ここで問題が起こった。私は面倒くさくて髪を切っていなかったので、髪がスーパーロングヘアになっていたのだ。

 一年半前までは、伸びてきたかなと思う前にエレナさんが整えてくれていた。だから自分から散髪に行く、という意識が育たなかったのかもしれない。

 

 

「…これじゃロクなアレンジできないわね…」

「そうか? 別に切ってもらっても構わないのだが」

「いや、美容院に行きなさいよ!」

 

 

 オシャレのための労力を惜しむな、という趣旨のお説教をしつつ花ちゃんがしたのはギブソンタック。お返しに私も花ちゃんの髪を編み込みに。

 全員がいつもと違うイメージになったところで、ハルちゃんが話題を振ってきた。

 

 

「レイちゃんは、大人っぽい話ってなんだと思いますか?」

「うーむ…紅茶の種類についてとか、花やその花言葉について、とかか…?」

「はひ、紅茶についてはよくわかりませんが、花なら大丈夫です! という訳でレイちゃん、お好きな花は?」

 

 

 好きな花、か…。以前はエレナさんと一緒にボンゴレ本部の庭で色々な花を育てていたな。家の庭にもそれなりに植えてあった。中でも、私が一番好きだったのは…。

 

 

「スノードロップだな」

「スノードロップ、ですか?」

「ああ、その名の通り雪のように白い、雫のような花だ。日本では待雪草と呼ばれているな」

 

 

 誕生日の日の朝、残り雪の間から見えた美しい、清らかで可憐な花。

 

 私が好きだと知っていたエレナさんから、スノードロップが刺繍されたハンカチをもらったこともある。

 大切にし過ぎて箪笥の中にしまい込みがちだったから、もう私の手元にはないけれど。

 

 

 ハンカチの他にも、雪であることを示すリングに、みんなから贈られた少女趣味な服。色々なものがあって正直在庫の把握が困難だった古書堂だって、居心地がよくて大切な場所だった。

 物に限らないのなら、最愛の家族も。

 

 全部全部、もう手の届かないところに行ってしまった、私の宝物。

 

 あんまりにも多すぎるなぁ、と人知れず自嘲した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他愛もない話で盛り上がり、帰る途中。普段ならば絶対に行かない公園に行ったのは、一人になりたかったから。

 

 だがその思惑通りには行かなかった。

 

 

「あら、レイじゃない」

「あ、こんにちは、ビアンキさん」

 

 

 艶やかな声で挨拶を返した彼女の横には食品が詰まったスーパーのレジ袋。

 遊具で遊んでいるランボ君やイーピンちゃんが見えるので、恐らく買い物の帰りにチビ達を遊ばせているのだろう。

 

 声を掛けられていながら他のベンチに座るのも気が引けたので、レジ袋の隣にちょこんと座る。

 

 

 何とはなしに、元気いっぱいに駆け回るランボ君達の姿を目で追っていた時。

 

 ボフン、と音がしてピンクの煙に包まれる。

 

 

 

 …有り得ない。

 

 有り得ていいはずがない。

 

 

 未来での戦いが始まるのはひと月以上先のことだ。まだ沢田君は黒曜で戦ってなどいないし、ボンゴレリングも手にしていないんだぞ。

 ミルフィオーレ、というか白蘭、血迷ったか。

 

 

 ひとまず状況把握のために煙を手で払っていると、薄くなった煙の向こうで人影が動いた。

 

 

「よかった…成功みたいですよ」

「そのようだね…。これで安心できる」

 

 

 声からして、男が二人。

 

 …間違えるはずがない。今よりもっと大人びて、もっとよく似ているが…この、私の家族(ファミリー)に酷似した声の持ち主は、間違いなく…。

 

 

「沢田君、雲雀君…」

 

 

 私の、震える声が響いた。

 

 

 なんで。

 

 中学の間は仕方がないとしても、高校はうんと遠くの学校に行って、彼らとの繋がりを断とうと思っていたのに。

 何故、10年後の未来でも私は彼らと共にいるんだ。

 

 思い当たる原因は一つしかなくて、けれどそれを直視するのは恐ろしい。

 

 

「……やっぱり…オレ達のこと、怖い?」

 

 

 混乱する中、小さく呟かれた言葉は、部屋が静かなせいかよく響いた。

 

 

「そんな、訳ないだろう…ただ、私は、私は…」

 

 

 彼らは彼らだと思い切れない、何なら重ねてしまう弱い私が、嫌いなだけで。

 

 

『レイチェル』

 

 

 思い出す。

 体感でも8年以上聞いていない、あの声を。

 

 思い出す。

 もう二度と見ることはないと思っていた、あの目を。

 

 アレは、私ではない誰かへの想いを乗せた声だった。

 アレは、私と誰かを重ねた目だった。

 

 私を5歳まで育てたひとは、私の祖父を名乗るひとは、私を通して誰かを見ていた。

 

 

 あのひとと同じように、ああいう目で彼らを見ている。

 

 その事実が、吐き気がする程嫌なんだ。

 

 

 俯き、唇を震わせていると優しく叩かれた肩。

 見れば私は、いつの間にか公園のベンチに戻っていた。

 

 

「……ある人から、これを貴女にって」

 

 

 ビアンキさんから渡されたのは、白いチューリップ。

 

 

「そう、か。…ビアンキさん、もしまたその人に会ったら、こう伝えてくれ。『礼は言おう。だが、余計なお世話だ』と」

 

 

 公園から足早に去り、家への道を辿る間も、チューリップの花から目を離せなかった。

 

 白いチューリップの花言葉は、

 

 

 『失われた愛』

 

 『新しい愛』。

 

 

 

「わざわざ時空を越えて諭しに来る程、私は子供ではないと言うのにッ…!!」

 

 

 

 強く握り過ぎたチューリップは、家に着く頃には萎れていた。




断章・エピローグ、若しくはプロローグたるモノ



 いつものように、眼下を見下ろす。
 当然のように広がる、見慣れた景色。今日も今日とて、異常はない。

 ある種の満足感を得て、視線を滑らせる。


 そこにある、小さな姿。
 目にした瞬間、心臓が大きく脈を打った。





 知らない(愛しい)



 知らない(愛しい)



 髪の色も、瞳の色も、その姿も、知らない(愛おしい)



 知らないのに。
 声も、顔も、何もかも、知らないのに。



 ()()()()()()()声が聞きたい。



 ()()()()()()()笑顔が見たい。



 ()()()()()()()名前を、呼んで欲しい。



 まるで、正反対のことを思う。

 自分が二人いるみたいにぐちゃぐちゃで、混じり合って。


 世界が滲んで、頬を伝う雫が涙だと知った。




 それが、きっと二度目の始まり。







(ずっと、君を探してたんだ)
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