参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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妹がレイを描いてくれました!!

【挿絵表示】

レイってこんなに可愛かったんですね()。いつもはこんなじゃないというか、若干呆れが入った無表情みたいなダウナーな顔してると思います。それか一分の隙もない作り笑い浮かべてる。
最近ちょっと執筆ペースが怪しいので尻を叩く為、これを挿絵として使う日が来るまでエタらないと宣言させて戴きます。


それでは黒曜編、開幕です。
初っ端から色々詰め込み過ぎで情報量やら伏線やらが多い話になってしまった…。


第二章  戦う理由を失った、彼女の抗い
標的20 霧の気配と襲撃


 夏休みが終わった。となると次に来るのは?

 ご存知うちの霧同様髪型が変な彼率いる隣町ボーイズによる襲撃事件である。

 

 そして今日は夏休みが終わって最初に迎える週明け。土日には風紀委員が歯を抜かれて発見される暴行事件が多数発生。…これ間違いなく来てるだろ、隣町ボーイズ。

 

 

 家を出る前に引き留めようとするおばあちゃんを宥めたために時間帯がズレ、京子ちゃんや花ちゃんと合流できずに通学路を歩いていると、二人の代わりに沢田君とリボーン君と合流。

 

 いや、このタイミングで君達とは会いたくなかったよ。君達と共に通学するイコール…

 

 

「やっぱ不良同士のケンカなのかな…」

「違うよ。全く身に覚えのないイタズラだよ…勿論、降りかかる火の粉は元から断つけどね」

 

 

 彼に会う、ということだからな。

 

 

 できるだけ彼の姿を視界に入れぬよう空に目をやると、チクチクと突き刺さる視線。

 全く…一体何が気に食わないんだ? 変に敵意を向けないでくれ、雲雀君。

 

 ───その視線の鋭さすら、君は彼に似ているのだから。

 

 

 静かに溜息を吐くと、鳴り響く並中の校歌。

 携帯で二言三言話した雲雀君は、私が知る通りに言った。笹川君が、襲われたと。

 

 風紀委員ではない知り合いが巻き込まれたことに驚き、即座に病院目掛けて走る沢田君。

 君は本当に仲間思いだな。それもまた、ジョット君に似ているよ。

 

 

 通話を続け、何処かへと向かう雲雀君には目を向けず、校門をくぐる。

 途中京子ちゃんとすれ違ったが、だいぶ慌てているようだったので声は掛けない。恐らく、笹川君が襲われたと連絡があったのだろう。

 

 

 黒曜での戦いはX世(デーチモ)とそのファミリーにとって、最初の関門だ。

 そして同時に、次の戦いへのステップでもある。

 

 何も手を加えぬ方が事が上手く運ぶ場合もある。この件はそれだ。

 戦いを終え、日常へと戻って来る彼らを京子ちゃん達と迎えるのが、今の私の最適解。

 

 

 でも、それでも。

 そうだとわかっていても、私はそちらを選べなかった。

 

 

 見咎められぬよう気配を断ちながら歩き、到着した扉の前で息を吐き、扉を一気に開けた。

 

 途端に匂ってくる酒の匂い。

 デスクに突っ伏し、白衣のままだらしなく眠る男の肩を掴んで揺さぶり、意識を無理やり覚醒させる。

 

 

「起きろ、Dr.(ドクター)。君は仮にも医者なんだろ? そんな君のせいで死人が出るかも知れんぞ」

「ん〜、死人だぁ…?」

 

 

 寝惚け(まなこ)ながらも事の重大性を感じたのかスケコマシな面を出さない並中の校医・Dr.(ドクター)シャマルに頷く。

 

 

「そうだ。サッサと桜クラ病の治療薬を寄越せ。私が届けに行く」

「つーことは、あの坊主か…。何があったかは知らんが、大丈夫なんじゃねーのか? 今の時期、桜なんて咲いてねーだろ…」

「造花や絵画を見せてくる可能性もあるだろう。何にせよ無いとは言えんのだから可能性は潰すべきだ」

 

 

 強い語調で叩きつけるように言うと、大欠伸をしながらDr.(ドクター)は処方箋とカプセルを専用の紙袋に入れた。

 緩慢な動きに焦れて袋を取ろうと手を伸ばすと、先程までが嘘のように素早く動き、手の届かぬ場所に移動する。

 

 

「おっと、渡す前に一つ訊きてーことがある」

「なんだ、手短かに済ませてくれ」

 

 

 こうしている間にも、雲雀君は六道骸と戦っているかも知れんのに。

 苛立って眉を寄せると、Dr.(ドクター)は彼らしからぬ真剣な表情で言ってきた。

 

 

「なんで坊主に薬を持ってく? 特にあいつと深く関わってる訳でもないだろ」

「…傷付く人間を放っておくのは、私の主義じゃない。それだけだ」

 

 

 そう。これはあくまで自警団(ボンゴレ)らしいお節介。それ以外の、私の個人的感情に端を発する最大の理由を胸の奥底にしまい込む。

 

 私の答えに興味が失せたのか、彼は「そうかよ」とだけ言ってまたデスクに突っ伏した。程なくして聞こえてきたイビキに一言礼を言って、保健室から出る。

 

 

 これは、検証だ。

 

 私に、X世(デーチモ)にとって必須である成長の機会を奪うことは赦されるのか、という。

 

 

 何故私が、最愛の家族(ファミリー)と引き離されることになったのか。

 この検証の結果という情報さえあれば、この一年考え抜いた可能性の中から真実を見つけ出せる。

 

 そしてもしあれが、何者かが意図的に引き起こした現象だと言うのなら。

 

 私は、そいつを、絶対に、

 

 

 考えながら下駄箱で靴を履き替え、再び校門をくぐると。

 

 

「───は?」

 

 

 ───何故か目の前には古びたレジャー施設(もとい)黒曜ランドが。いや、どんな冗談だ。

 

 

「や、いやいや、嘘だろう…?」

 

 

 頬を抓ったら痛かったので、夢説は却下。特に違和感などは感じないので、六道骸の幻覚説も却下。

 つまりこれは現実ということなのだが、俄には信じがたい。

 

 そこまで考え、思考を打ち切った。この現象についてを探るよりも、優先順位が高いことがある。

 

 

 鉄柵を、助走をつけて軽々飛び越える。

 この程度、切り札(スネグーラチカ)を使用するまでもないのだ、ボンゴレナメるなよ。

 

 入ったはいいものの中は死屍累々。既に雲雀君がひと暴れした後なのだな、ご愁傷様。

 六道骸に操られているので完全なるとばっちりだが、これを機に更生してくれ。

 

 

 地面に転がっていた比較的細い鉄パイプと折りたたみ式ナイフを拝借し、ナイフを胸ポケットに忍ばせておく。懐中時計は今日体育の授業がなかったので、鎖で首に掛けてあるのだ。

 

 大丈夫、機会があれば返すから。機会があれば、だが。

 そう誰も訊いていない言い訳をしながら、鞄を肩に掛け直し、右手に鉄パイプを携える。これで何が起きても対応出来る。

 

 

 そしてその数分後、私は手持ち無沙汰に鉄パイプを振り回しながら進んでいた。

 

 敵地だからと警戒していたものの、襲い掛かられることもなく。はっきり言って黒曜生の死体…否、気絶体しかない。

 どんだけ暴れたんだ風紀委員長。まさかとは思うが雑魚を咬み殺すのに無駄に体力使って、それが敗北の原因とかじゃあるまいな。もしそうだったら帰らせてもらうぞ。

 

 決して本音ではない愚痴をつらつらと考えていると、明らかにおかしな音が聞こえた。何かが床に落ちたような音、続いて何かを蹴ったような音。

 

 

「…間に合わなかった、か」

 

 

 何が起きたのか察し、呟く。

 

 

 そもそもが検証でしかなかった。

 

 流れを変えられるなんて、思っちゃいない。

 

 予測が当たりそうなことを喜ぶべきだ。

 

 

 泡のように浮かんでは消える無数の言葉に、頭を一度振って思考をリセット。

 一気に集中し、上体を低く倒しながら疾走してシアタールームへ到着。

 

 雲雀君が割ったと(おぼ)しきガラスをその上に倒れている黒曜生ごと飛び越えると、視界に入るのは倒れた雲雀君と、我が幻術の師(D君)と同じレベルで個性的な髪型の六道骸、そして季節外れな“桜”。

 

 

「…おやおや、何処から入り込んで」

 

 

 言い切るのを待たずに六道骸に鉄パイプを持って襲い掛かり、後退させて雲雀君から距離を取らせる。

 君の手口はわかっている、会話で時間を稼ぎ、幻覚を構築するつもりだろう。その手は喰うか。

 

 勢い余ったフリで桜の幹を横薙ぎに払うも、手応えはなし。それに戸惑ったような表情をしつつ、荒事に慣れていない風に脈絡なく鉄パイプを振り回す。

 

 

「クフフ、随分と勇ましいアリスだ」

 

 

 成る程、いきなり乱入してきた私を不思議の国に迷い込んだアリスに喩えたのか。だが私はAlice(アリス)ではなくRay(レイ)だ。全然合ってないぞ、六道君。

 

 最後に鋭く突きを放ち、六道君が避け損ねてバランスを崩した隙を狙って雲雀君の腕を肩に回す。

 視線だけで人を殺せるなら殺していそうなくらいに恐ろしい目で六道君を睨み付ける彼を支えて、即座にできる限りのスピードで撤退したのだった。




・検証した

 とうとう動き始めた。
 骸に対してはあまりD(デイモン)を重ねない。髪型やファッションセンスの壊滅具合が似ていても、師の目指すものが骸のそれとは正反対だと察しているため。


・救出された

 レイの認識は現状誰か(アラウディ)の大切なもの、という感じ。
 緊急事態且つ信用も信頼もできて簡単には裏切らないとわかっていたから、その細い肩に体を預けた。

 背が伸びたなと、そう思う心の何処かを、今日も押し潰す。


・逃げられた

 レイの荒事に慣れていない演技には騙されている。が、雲雀の偽りには気付いている。この辺は彼の専売特許なところもあるので致し方ない。クフフ、面白い男ですね。
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