参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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UA56000越え、ありがとうございます!!

クリスマスイヴなのでプレゼント代わりの隠し弾です。
日常編の頃の、D(デイモン)の話となります。


隠し弾 亡霊の空回り

 ボンゴレ本部、資料室。

 ボンゴレX世(デーチモ)最終候補者・沢田綱吉とその周囲に関する情報が棚を埋めるその一角で、一人の亡霊が大混乱に陥っていた。

 

 

(何故いるのです????????)

 

 

 混乱の元凶は一枚の資料。

 沢田綱吉の側近候補である一人の少女のプロフィールが纏められたそれには、当然のことながらその少女の顔写真も貼られている。

 

 

 特徴的な髪型の、艶やかな焦げ茶色(ショコラブラウン)の髪。

 等身大のビスクドールと言っても信じられるだろう整った目鼻立ち。

 常に理知的な光を絶やさない、深海色(ブルーダイヤモンド)の瞳。

 

 それは、百五十年も前に行方知れずになった少女の容貌とそっくり一致した。

 

 そしてトドメに、彼女の名前。

 その発音は、かつて幾度となく呼んだ愛称そのままだ。

 

 

 信じられない、信じたくないが、もう認めざるを得ない。

 

 松崎レイは、レイチェル・オルテンシア・イヴだ。

 

 

 ボンゴレファミリー作戦参謀にして、雪の守護者。

 こと知略に於いては他の追随を許さず、必要とあらば敵も味方もその掌の上で転がす幼き少女。

 

 現代にまで伝えられるそれが何の誇張もない、ただの事実でしかないことを、亡霊は知っている。

 

 彼は、彼女のファミリーだったのだから。

 

 

 師として幻術を教え、兄として甘やかし、戦友として背を預け、同胞として同じものを見た。

 

 そんな、ファミリーとしか呼べぬ関係を持っていた。

 

 

 出会ったばかりの頃は人間味がなく、いっそ機械のようですらあった。

 感情を表に出さない、と言うよりそもそも持たないのか、いつもぼんやりと焦点の合わない瞳で遠くを見ていて。この娘を育てた養い親は、一体どんな扱いをしてきたのかと思ったものだ。

 

 その分、それから一年の変化は目覚ましいものだった訳だが。

 無いと思っていた感情はただ抑圧されていただけだったらしく、度々子供らしい面を見せるようになって。同時に浮き彫りになっていくその異常性に薄ら寒いものも抱くようになった。

 

 けれどそんな一面は、家族として接する時間が長くなるにつれ抑えられていき。

 己の異常性を理解したのか、人間らしくするよう心掛けながら生活し、けれど取り繕い切れずに若干ボロを出して。周囲に教えを請い、師に食らいついていくその貪欲さは好ましかった。

 

 

 人の姿をしていても、人でないことは明白で。

 

 それでも可愛い、大切な末妹だった。

 

 

 思い出しながら資料をめくっていると、一枚の写真を見つけた。

 

 明らかに隠し撮りとわかる写真だ。

 そこには同世代の少女二人と話しながら歩く、末妹が写っていて。

 

 

 ()()()()()

 

 話が合わないから、と同じ年頃の子供とは距離を取っていた彼女が、友人らしき少女相手に笑顔を見せている。

 

 

 一つ、息を吐く。

 

 争いを好まず、平穏を望む子供だった。

 犠牲を厭い、死者を悼み、慈悲深いと謳われる少女だった。

 

 

 資料を元の位置に戻す。また追加で送られてくるものだ、破棄しても意味はない。

 

 代わりに、彼女が幹部には相応しくない旨を記しておく。

 今の器は現在のボンゴレに於いてそれなりの地位にある。現ボスである9代目も、意見を加味せざるを得ないだろう。

 

 これで彼女は、これ以上マフィアと関わらずに済む。

 

 

 これでいい。

 望んでいた平穏の中、誰も傷付けず、また誰にも傷付けられず。

 ただ笑って生きてくれれば、それでいい。

 

 その笑顔を、今度こそ守ってみせよう。

 

 

 抜き出した写真の中の、自分の知らない彼女の頭を指先で撫でて。

 

 

『みんな、一緒がいいです』

 

 

 そう言って笑う、幼い彼女から目を背けた。




・亡霊

 レイがいなくなった時期が時期だったこともあり、利用しようとは思わない。利用しようとしたら即捕捉されそうなのもあるが、一番はエゴ。どうか、エレナの分まで幸せになってください。
 自分が彼女の幼い夢(幸福)を破り捨てた、その事実から目を背け続けている。


・末妹

 実はプロローグ開始までの変化が凄まじかった。その辺は追々明らかになっていく予定。
 戦いを嫌ったのは、平穏を望んだのは、家族が傷付かないから。今が楽しくないと言ったら嘘になる。だけど、幸福だと言っても嘘になる。彼女の幸福には、家族の存在が不可欠だから。
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