参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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標的23 その(覚悟)を、知っている

「焦っているんですよ、先生は。生徒の絶体絶命の危機に…支離滅裂になっている」

 

 

 安心し給え六道君、それこそ有り得ない。あの家庭教師(ヒットマン)が焦るなど余程の事態だ。未来の君も言っていたぞ、沢田君を導くのがリボーン君だと。

 

 

「ウソじゃねーぞ。お前の兄貴分ディーノも超えてきた道だぞ」

 

 

 その言葉に固まった沢田君だが、火柱が噴き上がる前兆を感じたのか直撃する前に飛び退()いた。

 超直感があっても、開花していなければこんなものか。これでは使いものにならないな。さっさとレオンが羽化すればいいんだが…。

 

 そう思いながら、沢田君目掛けて降ってきたダイナマイトの余波から雲雀君を庇う。

 

 

 そして沢田君に近付いていく六道君(に憑依された面々)。しかし沢田君との距離が残り数メートルというところで、柿本君がバランスを崩し転倒した。

 

 

「なあによくあることです。幾ら乗っ取って全身を支配したと言っても、肉体が壊れてしまっていては動きませんからねぇ」

「つまり、動けない体を無理に動かしているということか」

「それでヒバリには憑依しなかったんだな」

 

 

 因みにもし雲雀君に憑依して無理やり動かしたら、私が神経を麻痺させて力技で動かせなくするからな。さすがに重傷人にこれ以上の無茶はさせられん。

 

 

「無理やり起こしたら怪我が…!!」

「クフフフ、平気ですよ。僕は痛みを感じませんからね」

 

 

 仲間の体なんだろう、と叫んだ沢田君だが、六道君に否定される。曰く、憑依したら僕の体なんだそう。

 この頃の六道君、本当に悪役ムーヴ上手いな。見習いたいくらいだ。

 

 

「いいですか? 君の仲間をこれ以上傷付けたくなければ」

「逃げずに大人しく契約してください」

 

 

 胸から血を流す獄寺君、腹から出血しているビアンキさんを人質に取られ、オドオドしっぱなしの沢田君は、私とリボーン君に縋るような視線を寄越している。

 

 なんか、イラッとする。八つ当たりにも等しいというのはわかっているが、そんな顔をしないで欲しい。

 

 私に、頼らないで欲しい。

 

 

 ───それは、私のファミリー(彼ら)だけの特権だから。

 

 

 

 だが、彼は未だ子供で、ジョット君の子孫でもある訳だし…今回は特別に、サービスしてやるか。

 

 

「……沢田君、君はもう見つけているんだろう?」

 

 

 自分なりの、答えを。

 

 

「今の自分の気持ちをぶち撒けるんだ」

「それがボンゴレの答えでもある」

 

 

 そう。ボンゴレボスの言葉はそれ即ち、ボンゴレの総意だ。

 君の、ではないがボンゴレの名を背負う守護者の一角として…私も、でき得る限りサポートをするから。

 

 

「…ちたい…」

 

 

 小さな、小さな声。

 でも、それが私が望んでいた答えだというのはわかった。

 

 

「骸に……勝ちたい…」

 

 

 その覚悟を嘲笑う六道君に、沢田君はギリと奥歯を噛み締め、叫んだ。

 

 

「こんな酷い奴に…負けたくない…こいつにだけは勝ちたいんだ!!!」

 

 

 その叫びに、ジョット君を思い出す。

 

 

 ジョット君。私達の大空。我が王。…ボンゴレI世(プリーモ)

 

 負けず嫌い、我儘、傍若無人。

 天才肌だったのと超直感の存在から基本やれば何でもできて、だからこそ天候(私達)を振り回す、生粋の大空。

 

 性格的には、沢田君とは似ても似つかない。

 

 

 それでも………なんでだろう。

 

 何故、なのだろう。

 網膜に焼き付くが如くに鮮烈な、あの橙の炎が、思い出されて仕方がないんだ。

 

 

 その直後、沢田君の思いを受けレオンが羽化した。

 

 

 紆余曲折ありつつも、沢田君の手に渡った沢田君専用の武器(ミトン)

 そして沢田君が中に入った銃弾の存在に気付き、六道君の妨害を躱しリボーン君が奪取したその弾丸で沢田君を撃つ。

 

 

 小言弾は沢田君の周囲の人の思いがそのまま彼に伝わる。

 

 私の思いは、きっと届かない。

 

 

 でも、届かずとも思うだけなら。

 

 

 

(君は、君の信ずる(ミチ)を進め。

 

大丈夫、どんな暗闇の中でも、君には(ファミリー)がいる。

 

 

 

だから───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───迷わず突き進め、我らが大空の意志を継ぐ者(ボンゴレX世)よ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 沢田君へと振り下ろされた三叉槍が、倒れていた彼によって掴まれる。

 

 ミトンは、Xのエンブレムがボンゴレの紋章を覆った黒のグローブへと変化する。

 

 

「骸…お前を倒さなければ………死んでも死に切れねえ」

 

 

 その言葉を契機に額に灯る、綺麗なオレンジの炎。

 

 

 

 見ているかい、ジョット君。

 

 …まだ幼くて、炎の純度も劣っていて、頼りないけれど…───

 

 

 

 

 ───…君の来孫は、君にそっくりだ。

 

 

 その覚悟の在り方も、炎の色も、武器すらも…X世(デーチモ)は、君にそっくりだよ。

 

 

 

 揺らめく橙が滲んでいるのは、きっと錯覚なんかじゃない。

 

 

 私は、嬉しいんだ。

 泣きたいくらいに、嬉しいんだ。

 

 

 こうして長い年月を超え、ジョット君や私達の志を継いでくれる者が現れたことが。

 

 その思いが不滅であり、今も生き続けているのだということが。

 

 

 堪らなく、嬉しいんだ。

 

 

 

 地獄道の幻覚を見破り、六道君を追い詰めていく沢田君。

 先程までとはまるで違う彼の様子に、獄寺君とビアンキさんに憑依した六道君は驚愕している。

 

 

「これこそ小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠る“ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)”が目覚めたんだ」

 

 

 “ボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)”…つまり、“見透かす力”超直感。

 ボンゴレ初代ボス・ボンゴレI世(プリーモ)の血統に受け継がれる、特有の能力。

 

 その覚醒を確信した私は、内心ガッツポーズを決めた。

 

 

 超直感はあまりにも術士と相性がいい。六道君のように棒術等で自力での戦闘が可能な者とも同様。

 (むし)ろ、超直感で物理的な攻撃にも対応できる分更にいいと言えるかもしれない。でなければ、D(デイモン)君がジョット君になす(すべ)なくやられるなんて喜劇(ファルス)のようなことは起こらないだろう。

 

 正直超直感には私もトラウマじみた思い出しかないが、そこはそれ。今は沢田君の成長を喜ぼう。

 ありがとうD(デイモン)君、君の尊い犠牲のお陰でサンプルケースができて、X世(デーチモ)の勝利が確定した。礼を言うよ。

 

 

 割と上機嫌で頭の中で想像した南国果実にそう告げていると、攻撃をいなしていた沢田君が獄寺君の首に手刀を落とした。

 

 リボーン君曰く、打撃で神経を麻痺させる戦い方を直感したらしい。

 『ふざけたことを』というまとも極まる六道君の言葉に同意したくもあるのだが、残念なことに私はジョット君のせいでそういうのに慣れてしまっている。

 

 

 超直感は過程をすっ飛ばして答えを導くことができる。無論私も同じ答えへと辿り着くことは可能だが、そこへ至るまでの過程はちゃんと存在する訳で。

 

 例えるならば計算式を見せられて“何となく”で正解を言い当てるのがジョット君で、途中式も込みで完答するのが私だ。ジョット君は途中式を問われても答えられない。

 ある意味それが超直感最大の弱点となる。幾ら正しい答えを導き出せても、根拠を示せなければ納得しないものも存在するのだから。

 

 まあ、その辺りをフォローするのが私の役目でもあった訳だが。

 

 

 彼の我儘のような要求を、しっかりと実現可能な形にまで落とし込む。

 そこに至る、道をつける。

 

 それが私の、雪の役割なのだから。




I世(プリーモ)の雪の守護者

 取り繕いはするが家族とそれ以外では対応に差がある。
 ツナのことは基本大空の後継者として見ており、内心でのX世(デーチモ)呼びはその証左。逆に頑ななまでにI世(プリーモ)のことを「ジョット君」呼びしているのは、一組織の長ではなく、ジョットという個人の意思を尊重したいという思いの表れ。この辺はもうエゴ全開。
 役割もあって大空からは大抵無茶振りが飛んでくる。ふざけるな実現性が低いにも程がある!! と罵りながらも考えると何故か諸々上手く嵌った。そんなことを繰り返すうち超直感がトラウマ化。なにあれこわい。
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