参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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『いつか、何処かの世界線』のその後です。執筆に至る経緯は活動報告の方にあります。Q&Aで設定の補足もしていますので、興味のある方はそちらもご覧ください。

まあ簡潔に纏めてしまうと、バドエンで終わったように見えても当人達にとってはハピエンだよ、(むし)ろ死んだあとこそエンジョイしてやがるよと、そういう話。前話と合わせると多分メリバの定義に入るんじゃないかな。


隠し弾 お伽話は、もうおしまい

(ああ、あの人が)

 

 

 その姿を目にした時、綱吉の胸を過ぎったのは、そんな他人事のような感想だった。

 

 

 白金色(プラチナ・ブロンド)の髪に、アイスブルーの瞳。

 黒いスーツを身に纏い、凍てついた視線でこちらを睥睨する彼の顔立ちは、綱吉の雲の守護者にそっくりで。

 

 勿論、そこにいるのは雲雀恭弥ではない。

 

 

 門外顧問機関(CEDEF)の初代トップ。

 『なにものにも囚われず我が道をいく浮雲』と、そう謳われる男。

 

 初代雲の守護者・アラウディ。

 

 

 彼が守護者でなくなった後、その役割を果たすために整えた機関。その本部に亡霊が出るのだと囁かれるようになってから、実はそう日は経っていない。

 

 綱吉の、中学時代の同級生。中二の半ば、突然失踪した少女。彼女が幹部11名を殺害、また自身も服毒自殺を遂げた頃から、そんな噂が流れるようになったのだ。

 

 

 因果関係は不明。けれどタイミングから、全くの無関係とも思えなかった。

 

 

 クラスメイトと、愛する人の友人と、彼がどんな関係なのかはわからない。けれど、ここで視線を逸らすのは不誠実な気がして、まっすぐに見つめ返す。

 綱吉の態度に目を見張った青年が、挑発するような、嘲るような笑みを浮かべて。

 

 

『何してるんですか、全く』

 

 

 呆れの色を含む声が、余裕の溢れるその表情を崩した。

 

 

「っ」

 

 

 咄嗟に振り返った綱吉の脇を、華奢な人影がすり抜ける。

 

 

 特徴的な髪型の髪を靡かせて。

 古風で少女らしい服に身を包んで。

 

 ただ目の前の青年だけを見る彼女は、綱吉が知るよりもずっと背が低くて。

 

 

 玲、レイ、れい───綴りは、『Ray』。

 

 思い至る。

 何故気付かなかったのかと、そう自分を責めたくなる程に単純で、残酷な現実に。

 

 

 せがむように腕を伸ばした幼い少女を、青年は慣れたように抱き上げる。

 少女もまた当然のように青年の肩に手を置いて、体を安定させた。

 

 

『相も変わらずバカで何よりです、ええ。まさかこんなところを彷徨(うろつ)いてるだなんて。わかっているとは思いますが、彼らに当たるのは八つ当たりでしかありませんよ』

 

 

 呆れたような声色で紡がれるその言葉が図星を突いたのだろう、青年がそっぽを向く。

 

 拗ねないでください、と不満げに零した少女だが、何故そこまで青年が頑なになるのかも察しているのだろう、その声に必要以上の険しさはない。

 

 

 代わりに彼女は、青年の肩に置いていた手を、その側頭部、両の耳の上に添えた。

 

 そして額を合わせ、吐息が混ざる距離で、冬空の色の瞳を覗き込む。

 

 

 吸い込まれそうに、落ちてしまいそうに深いと、そう幼い綱吉が思った青の瞳を細め、彼女は告げた。

 

 

 

『ありがとう、アラウディ君』

 

 

 

 何ということはない感謝の言葉は、まるで愛の告白のようで。

 

 

 その響きを咀嚼した青年が、素っ気なく言葉を返す。

 

 

『僕が望んで、やってただけだよ』

『そうでしょうね、君はそういう奴です。私が言いたいから言った、それだけのことです』

 

 

 強気に微笑む少女の頭を撫でる青年の唇が綻んでいたことに、彼女は気付いていない。

 

 

『納得しましたね、ならさっさと帰りましょう、早くしないとジョット君が暴れ出しますよ』

『…君、何かやりたいこととかないのかい』

 

 

 青年のその言葉に、いないもののように扱われているのをいいことにただ黙って事を見ていた綱吉は息を詰めた。

 やりたいこと。つまりは未練。

 

 僅かに期待した綱吉の思いを裏切り、あっさりと少女は告げた。

 

 

 そんなもの、ある訳がないじゃないですか、と。

 

 

『君がいれば、みんなさえいれば、私はそこが地獄だって満ち足りて幸福なんだから』

『あいつはいいの?』

『どうにかしようにも私ももう死んでますし。───お伽話の登場人物(死者)はただ謳われるだけでいい。この世のことは、今を生きる者が決めることです』

 

 

 つい先日、ようやく名実ともに死者となった少女が、そう言って嫣然と笑った。

 

 その笑みに一度瞑目し、掛けられた声に開ける。

 

 

「沢田殿? どうしたのでござるか?」

「あ、いや、何でもないよ、バジル君」

 

 

 背を向けて、そして振り返らない。

 

 

 交わらないはずの道だったのだ。

 

 それが何の間違いか交差して、綱吉は彼女と出会った。

 

 

 だけど、もう時間切れ。

 

 

 お伽話の登場人物は、もういない。

 

 お伽話は、もう終わっているのだから。




・お伽話の中の雪花

 自己満足だとしても、ありがとうと言いたかった。
 姿が幼少期で固定されているのは、その時期が彼女の人生で一番幸福だったから。言ってしまえば全盛期。
 彼女にとって死後はもうボーナスステージでしかない。幸せゲージがマイナスからプラスに振り切れた結果家族以外への興味関心の無さが増した。なんでそうなる。
 しかし情がない訳でもないので白蘭がボンゴレを壊滅させたらスラング吐いてサムズダウンくらいはやる。そして怒られる。生まれたての子鹿R(リターンズ)


・お伽話の中の浮雲

 望んで門外顧問やってたんだ。───望んで、それを支えにしてたんだ。
 八つ当たり()してたが当の雪が迎えに来たので大人しく帰った。直後に大空にケンカを売られたので即買いした。


・お伽話を読む大空

 クラスメイトだった少女の正体に気付いた。が、誰にも言わない。一人で抱えて、墓場まで持っていく。



作者的にこの話で一番可哀想なのはD(デイモン)一択。妹看取る羽目になるしぼっちにもなるしボンゴレも(一時的ではあるものの)滅ぶので。踏んだり蹴ったりとは(まさ)にこのこと。
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