それと時代考証? 何ソレ美味しいの? 精神で書いておりますのでその辺りの描写はかるーく流して戴ければ幸いです。
カリカリカリカリと、羽根ペンの先が紙を引っ掻く音だけが部屋に響く。
書き上げた書類を紙の山の一番上に積み上げ、もう一つの山から未処理の書類を取り上げた私は、顔を横に向けてランポウ君の様子を伺った。
ランポウ君は眉間に皺を寄せ、必死で手を動かし続けている。
私がジョット君達の策によってボンゴレの作戦参謀に就任してから、早いもので四ヶ月。私の役職は一応作戦参謀ということになっているが、はっきり言うと平時にはやることがほぼない。情報収集はどうしても受動的になりがちだし、仕方がない部分はあるけど。
でも本部には顔を出した方がいいだろうし、と思った私が買って出たのが、書類の処理。
特にランポウ君が書類を溜めに溜めており、彼は
何かもう、悪い意味で息の合ったコンビネーションだ。
そんな状況を改善すべく、私はランポウ君の
勿論祖父から受け継いだ古書堂も経営しなければならないので、今のところ週に三日は本部に来れない。うちはそれなりに繁盛しているのである。結構希少な本やら小物の類も置いてるし。一体何処から仕入れたんだと思うようなものもあるが。
そんなことよりランポウ君だ。
私を除いたファミリーの中では最年少の彼は普段はあんななのだが、やればできる子なのである。やる気を滅多に出さないだけで。
それを証明するかのように、執務机に積み上げられた書類は、3分の2が既に処理済みになっている。
進みが順調なことを確認して羽根ペンに手を伸ばした私は、ノックの音に返事を返した。
「二人とも、そろそろ休憩にしたら? お茶も持ってきたわよ」
ティーポットとカップを乗せたトレイを持ったまま、器用にドアを開けたのは優しげな笑みを浮かべた女性。
ボンゴレで事務手伝いのようなことをやっているエレナさんだ。彼女は公爵家の令嬢で、
領地の街が半ばゴロツキに支配されているのに何もしなかったダメ貴族と同じ貴族なのか、と思う程に彼女はいい人である。だから私が深く関わっているボンゴレの面々の中で唯一“さん”なのだ。
「ランポウ君、一旦休んでください。私はジョット君にこれ届けてきますから」
言いながら、書類の中からジョット君に目を通してもらいたい物だけを選び抜く。
「でもレイも休んだ方がいいと思うわ」
「大丈夫です、戻ってきたらランポウ君を見張りながら優雅にティータイムと洒落込みますので」
エレナさん本当に優しい。
個性が暴発しているボンゴレの中でほぼ唯一の癒しに頬を緩めつつ、書類を持ち上げる。そのまま廊下に出て、ジョット君の執務室を目指した。
この時間帯なら、彼はそこにいるはずである。…抜け出していなければ、と注釈が付くが。
幸いなことに彼は抜け出したりしていなかったようで、ドアの前に立つと楽しげな話し声が聞こえた。
おっかない監視役がいるのに話しているということは、来客でもあったのだろうか。
だが、客は普通応接間に通される。声の感じも考慮すると、ジョット君と親しい人なのだろう。
ならまた次の機会にしよう、と回れ右をしたその時。
ドアが開いて、
「どうした、レイ」
「いえ、書類を届けに来たのですが…邪魔しては悪いかと、帰るところでした」
「そんなことねぇよ、ホラ」
目に飛び込んで来たのは、少し驚いた顔のジョット君と、おっとりした雰囲気を醸し出す、緋色の髪と瞳の青年の姿。
「コザァート、こいつが今話してた作戦参謀のレイだ」
嬉しそうな顔で言うジョット君。
コザァート。何処かで聞いたことがあるが、何処だっただろう。
記憶を漁りながら、それを表情には出さずに胸に手を当て、頭を下げる。
「レイチェル・オルテンシア・イヴです。レイ、とお呼びください」
頭を上げてみると、コザァートさんは優しく微笑んでいた。
「うん、ジョット達から聞いて知ってるよ。僕はシモン=コザァート。ジョット達の友人で、シモンファミリーのボスもやってる」
シモンファミリー。
確か、二ヶ月程前の抗争でも協力してもらった、同盟ファミリーの中心的な位置を占めるファミリー。少数精鋭で有名で、ボンゴレの兄弟ファミリーと言っても過言ではない程に関係が深い。
「二ヶ月前の抗争の作戦を立てたのは君だろ? こんなに小さいのに凄いよ。君の作戦に従ったお陰で、一人も死者が出なかった」
「あ、ありがとうございます」
純粋な褒め言葉に気後れしつつそう返す。
あの抗争は主戦場が本部から離れていたため、私は現地には行かず、大まかな作戦を立案するだけだった。そういえばその時に、シモンファミリーの構成などと共にボスの名も聞いた気がする。
そのコザァートさんはとてもいい人のようだ。
私が作戦参謀に就任してから、同盟ファミリーのボスや幹部と会う機会もそれなりにあった。だが、大抵がまだ幼く、しかも女の私を見下していた。悪かったな、
でもコザァートさんは下心もなく、私のことを純粋に褒めてくれた。こんな風に言ってくれたのはキャバッローネボスのディエゴさん以外では初である。
…因みに、ディエゴさんがボスを務めるキャバッローネは恐らくあのキャバッローネだ。1世紀以上も先、究極のボス体質の
ディエゴさんはそんなにディーノには似てなかったけど。まあ似てたら怖いが。
「オレがボンゴレを創るきっかけをくれたのも、コザァートなんだぞ」
マジか。凄い重要ポジションにいるファミリーじゃないか。
ならなんで原作に出てこなかったんだ? ロンシャンのトマゾとかよりシモン出した方がよくないか?未来でも特に安否とか言ってなかったし、まさか過激派の
悶々と考えながらジョット君の執務室を退室する。引き止められたが、戻らないとランポウ君がサボる可能性があると言ったら、
……シモンに関しては考えるのは止めよう。
もしかしたら私の知らない原作でどうにかなってるかもしれないし、出てこなかったのに事情があるかもしれない。
何にせよ、私にできることはないのだ。
そう結論付けて、私はランポウ君の
◆
「…ジョット。本当に、あんな幼い子が?」
「ああ。レイはオレ達が束になってもそれを遙かに凌ぐ優秀な頭脳を持ってる」
全く末恐ろしいよ、などと言いながらも、ジョットの口は緩んでいる。
「ジョットの様子からは末恐ろしくは見えないけど」
「だって可愛いじゃないか。この間アラウディがレイに歩幅を合わせて歩いてるの見た時は吹き出しかけた」
「あのアラウディが? 何それ見たい。………あの子は、本当に大丈夫なんだね?」
不安げな色を緋色の瞳に滲ませるコザァートに、ジョットは頷いた。
「あいつ、性格的には人を使うことを忌避してるんだ。やらなきゃいけないこと、やればいい方向に事態が転がることだからやってるだけで。だから自覚したら逆にストッパーになると思う」
「背負い込むタチだから変な罪悪感で潰れる可能性もある訳だが…その辺のケアはちゃんとやれよお前」
「わかってるって、そもそもそのためにファミリーにしたんだからな!?」
戯れるジョットと
ただ未来を見て、そこに至るための過程として今を消費することもできるだろうに。
あの少女は
それは己の異常性に無自覚だから、なんて理由ではない。
それならば、きっと大丈夫だ。
自覚しようがすまいが、彼女は彼女のままあり続けるだろう。
そう思って、コザァートはまた一人笑った。
・作戦参謀
外見から侮られることが多い。立案した作戦が大成功すると大抵掌を返されるが、記憶力も相応以上にいいのでそういう目で見てきた奴のことはずっと覚えてる。だからこそコザァートとディエゴの存在は貴重。個人的に信頼出来る人は誰かと問われたらファミリーに続いて名前を上げるくらいには信頼している。
この度ボンゴレファミリー誕生秘話を知る。同時にシモンの未来に不安を覚えるが、今は見て見ぬふりをすることにした。
紅茶党ストレート派所属。脳を酷使した時のみミルクティー砂糖無制限派に鞍替えする。
・婚約者
主な仕事は社交界の人脈を使った情報の収集(
男所帯に一人混じる作戦参謀が男の子みたいにならないか心配で、暇を見つけては刺繍やダンスなんかを教えている。妹ができたみたいで嬉しい。
・ボス
引き入れた参謀が優秀で自慢したいお年頃。
最近街に出ると“雪の守護者”という単語をよく聞く。え、そんな守護者いたっけ? ああレイのことか。確かにあいつ一人だけ守護者じゃないって仲間外れにしてるみたいだよなー、あっヤバ
・ボスの親友
親友がずっと気に掛けてた子と会えた。話を聞いて大丈夫かな、と心配していたがその必要もなさそうでニッコリ。うちのファミリーの子供にも年が近い子がいるから、いつか連れてこよっかな。