参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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標的4 幸せな誕生日

 ちらちらと粉雪が舞う中、私はボンゴレ本部への道を歩いていた。

 

 冬の寒さは厳しい。年越しパーティー(チェノーネ)新年会(ジョット君の誕生日パーティー)を立て続けにしたのが一ヶ月程前のことなので、まだまだこの寒さは続くだろう。

 寒いし手袋でも買いたいのだが、時間がない。私は結構多忙なのである。

 

 本部の玄関ホールに到着すると、何故か待っていたらしいアラウディ君が私の手を掴んだ。

 

 

「早く行くよ。みんな待ってる」

「え? 待ってる…?」

 

 

 何か全員で集合するような行事があっただろうか。

 

 

 不思議に思いながら手を引かれるままに歩くと、着いたのは食堂(リフェクトリー)の前。

 

 名前でわかる通り、ここはみんなでご飯を食べる時に使う部屋だ。因みに、チェノーネやジョット君の誕生日パーティーもここでやった。

 だがしかし、今はお昼時ではない。

 

 

 訝しげな視線をアラウディ君に向けると、彼は黙ってドアを開けた。

 と、上から舞い落ちてきた紙吹雪に視線が上に向く。

 

 紙吹雪を撒いていたのは、勢揃いしているジョット君達。

 

 

「ようやく来たか、レイ。さあ、パーティーを始めるぞ」

「へ?」

 

 

 ジョット君の発言が理解できず、思わず声を漏らすと、みんなの視線が私に集中した。

 

 

「…お前…まさか、今日が何の日かわかってないのか?」

 

 

 声を絞り出したジョット君に、コクリと頷く。するとジョット君はポカンと口を開けた。本当に何なんだ。イベントなんてあったか?

 その様子を見たG(ジー)君達は、一様に空を仰いだ。いや、この場合は天井だろうか。

 

 

「レイ…今日は何月何日だ?」

「…二月十四日……あ」

 

 

 今日、私の誕生日じゃないか。

 

 

「ようやく思い出したの?」

「ぅ…済みません、今までおじいちゃんにしか祝ってもらったことなかったので…」

「…オホン。レイ、誕生日おめでとう」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 思わずそう返すと、上ずった声が出た。仕方ないだろう、改めて言われると恥ずかしいんだ。

 

 

「はい、私達からの誕生日プレゼントよ」

「オレ様もやるんだものね」

「拙者はこれでごさる」

「オレとナックルはこれだ」

「オレからはこれ」

「はい、これ」

「わ、ちょ…」

 

 

 エレナさんが渡してきた箱を受け取ると、その上にどんどんプレゼントが積み上げられていく。

 積み上げられ過ぎて前が見えないが、上手くバランスが取れていて落ちることはない。予め渡す順番を決めていたのか、はたまた偶然か。後者の可能性が高いのが本当に我がファミリーだなぁと思う。

 

 

「え、わ、悪いですよ…! プレゼントなんて、今まで…」

「子供が遠慮するな、だものね!!」

「…それ、ランポウ君にだけは言われたくないですね」

 

 

 君は(むし)ろ遠慮なさ過ぎだ。

 ランポウ君に返した直後、フッと荷物が軽くなる。見ればエレナさんが上の3つを持ってくれていた。

 

 

「じゃあ、行ってくるわね」

「ああ、頼むぞエレナ」

「せっかくこいつのために選んだんだからな」

「究極に似合うはずだ!」

 

 

 周りに流されるまま、エレナさんの後について別室に移動。

 机の上にプレゼントを置くと、エレナさんが開けるように促してきた。

 

 

「みんなも貴女にもらって欲しい物を選んだの。だから、ね?」

「…わかりました」

 

 

 手近にあった箱を開けると、中に入っていたのはワンピース。

 おじいちゃんが亡くなって以来着たことのないそれに硬直する私に、エレナさんが笑顔で声を掛けてきた。

 

 

「さあ、さっさと着替えるわよ」

「え?」

 

 

 ちょっと待て。今とんでもない言葉が聞こえた気がしたんだが? 尋ねたいが、あまりにも恐ろしくて訊くに訊けない。

 

 

 その約20分後、私は目が死んだ状態で鏡の中の己を見つめ返していた。

 

 

 あの、うん…女子だということをまるで意識しない格好ばかりしていた私も悪かった。そこは反省している。

 でもこれは無くないか? なんでみんながみんな可愛い服とか小物とかしか贈ってこないんだ? 後ジョット君は貝の飾りのループタイって主張強すぎでは? エレナさん苦笑してたぞ?

 

 唯一マトモなのがアラウディ君のプレゼントの黒いシンプルな革手袋。恐らく私が作戦参謀になった件の時、手が冷えていたのを覚えていてくれたんだろう。めちゃくちゃ有り難い。特にこんなのをもらったばかりだと。

 

 

 …つまり私は現在、長らく着ていなかった少女らしい服に身を包んでいるのだ。なんかもう表情が変化しない。表情筋が仕事しないとはこーゆーことか。

 

 

「どうかしら、レイ」

「…足がスースーします」

「スカートだもの、当たり前よ」

 

 

 何故かご機嫌なエレナさんに髪も結わなきゃね、と微笑まれ、あっという間に紫のリボンで二つのお下げにされる。さすがにこれ以上のオシャレが想像できないのが救いだ。

 

 

 その後食堂まで戻り、エレナさんの後ろから顔を覗かせる私の服装を見たジョット君は開口一番、こう言った。

 

 

「うむ、似合ってるじゃないか。レイにはこれを週に二回は着てきてもらおう」

「は?」

 

 

 あ、これ意識改革してくつもりだな? 徐々に慣れさせて着ないと落ち着かないようにさせてく気だな?

 

 ジトリとジョット君を見ると勝ち誇ったような笑みを浮かべている。G(ジー)君と一緒に街中追いかけ回したのに関しては本部から抜け出した君が悪いんだからな? 後仕返しが大人気ない。

 

 

「レイ、ボス命令だ。今日から週に二日はこういった服を着て本部に来るように」

「…Si,Boss」

 

 

 とんでもなくアホらしいボス命令だな。ランポウ君なんて笑い堪えてるぞ。てかこういうのを職権濫用と言うのでは?

 

 

「さて、ではケーキでも食べるか」

 

 

 みんなと美味しいケーキを食べて、憂鬱な気分が紛れた私は知らない。今後、私がもらうプレゼントが全て女の子らしい衣服になることを。




・一つ大人に近づいた

 男の子っぽい服装をし続けていたために少女らしい服装をさせられるハメになった。慣れるまで死んだ目の作戦参謀がボンゴレ本部にて目撃されたとか。
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