後書き(補足説明等満載)はいつも通り活動報告にて行う予定ですので、ご覧戴ければ幸いです。
「スマンな、助かったぞ」
「ううん……大丈夫…?」
「ああ。少しふらつくが極限に大丈夫だ!!」
倒れた晴のリングが乗せられたポールに、呻くでもなく安らかに眠るルッスーリア。
そして互いの体を支え合うようにして歩む二つの人影とくれば、何が起こったか想像するのは容易いだろう。
人影の一つはクローム髑髏。
死の淵を彷徨っていたところを六道骸に救われた彼女は、レイの指示通りに笹川了平の解毒に成功したのだ。お人好しな彼の影響で
もう一つは笹川了平。
生来の気質で物事を難しく考えるのが苦手な彼は、これもレイの予測通り、元敵の仲間であるクロームをすんなりと受け入れた。爆炎飛び交う校舎を通り抜けて来た彼女にボクサーの資質を見出したのかもしれないし、妹と同い年の彼女に庇護欲を抱いたのかもしれないが、それらは全て些事に過ぎない。
“施し”により動き出した敵の嵐と雷を筆頭に、こちらの嵐、雲、そして雪もまたボスのため学校のため己の矜持のために動いている。並中内は既に混戦状態の無秩序なバトルフィールドと化した。
ならば味方と合流し、少しでも多くのリングを集めつつ情報を共有するのが最優先である。
「…急がなくちゃ…」
「うむ、沢田達のためにもな!」
◆
少し時を遡る。
“死ぬ気の零地点突破”の完成を目指しバジルとの修業を重ねた綱吉が、初代の使ったとされるそれの派生形・“死ぬ気の零地点突破・改”を習得した直後。
形勢逆転を成す
「サンキュ!! 助かったぜ」
「校内で死なれる訳にはいかないんだ。死ぬなら外に行ってくれる?」
「はは、そーするわ。でも今は死ぬ気ねーから校内にいるのな」
ヴァリアーのベルフェゴールに戦闘時の隙に乗じて逃げられたためか非常に不機嫌な
当たり前だがツンケンしっぱなしの雲雀に苦笑しながら立ち上がった山本の足元に、何かが投げられた。
「おい、これ…」
「僕は要らないから。君が持っておけば?」
何かとは勿論、今所有権を争っているボンゴレファミリーの継承の証・ボンゴレリング。その一つである雲が刻印されたリングを、事もあろうに受け継ぐはずの雲雀本人が投げ捨てたのだ。
「…ホントにいいのか?」
「ああ。
言い切られた言葉に、謎は多い。
けれどふいと顔を背けた雲雀に、これ以上の言葉を期待するのも無駄だ。
それがわかった山本は、それ以上雲雀と会話することもなく校舎出口を目指すのだった。
◆
校舎から駆け出した山本はその角で獄寺と鉢合わせた。二人の合流が叶ったのは混戦状態の今、割と奇跡である。
「見りゃわかるがアホ牛は無事だぜ」
「ってことは残ってるのは晴と霧か…」
笹川了平とクローム髑髏。うるさい学校の先輩と不気味な元敵の仲間。しかし、獄寺が揺らいだのは一瞬だった。
「…ここから近いのは体育館だ。体力のない女子を優先した方がいい」
「そーだな…あの
「本当にしてそうだから止めろ」
残念ながらそんなことは起こっていないのだが、本当に起こりそうである。
デスヒーターは象をも殺す猛毒だと言うチェルベッロの発言は、自力で解毒した某風紀委員長のお陰で全く説得力のないものと化しているので。
そんなことよりも重要なのは、レイが動いたが故に生まれたバタフライ・エフェクト。
レイがクローム髑髏を助けた結果、獄寺隼人が笹川了平を解毒してランボを預け、代わりに晴のリングを託されるという流れが丸ごと無くなったのである。
そして悪いことは重なるもので、状況の把握が出来ていない二人は既に解毒済みで了平と共に合流を目指しているクロームがいるはずのない体育館へ向かってしまった。
最悪、の一言に尽きる。
そして更に最悪なことに、体育館に残されているマーモンは術士、霧のアルコバレーノである。
つまり、こんなこともできるのだ。
「お前達の持つリングを渡してもらおうか。さもなくばこの女は皮を剥がされ
氷の檻に閉じ込められたはずのマーモンがちんまりと立ち、ベルフェゴールがナイフを弄んでいる。
そして、いるはずがないクロームが拘束されている。
自由の身になり、雲雀からも逃げ切ったベルフェゴールが体育館のマーモンを檻から出し、悪辣な罠を仕掛けたのだ。
マーモンとベルフェゴールは本物。しかし人質のクロームは偽物。
それを見破れない時点で二人は既に敗北していると言ってもいい。
唯一の幸いは戦闘になることを懸念した獄寺がランボを外に隠してきたことだろう。だがリングは持ってきたため、
本物のクロームは今自分達を探しているとも知らずに、獄寺と山本は眉間に皺を寄せて人質の解放を叫ぶ。
そんな二人にベルフェゴールが立場を理解させるような言動を取っているが、側から見ればベルフェゴールとマーモンの方がよっぽど立場を弁えるべきである。
何と言っても人質もいなければリングも無いのに交渉に持ち込もうとしているのだ。彼らの面の皮はどれだけ厚いのだろうか。
「オレと獄寺でお前達が持ってる霧と、晴と雪以外のリングを持ってんだ」
観念したのか、獄寺の制止も聞かずそう告げた山本が雨と雲のリングを指の間に挟み、ヴァリアーの二人に見せる。
「まずその
残念なことにマーモンは慈悲で解毒こそされているもののリングは奪われているのだが、それでもその取引は二人にとってメリットの方が多い。
番外として集めずともいい雪は別として、ここで二人を騙し通せば晴と霧以外のリングが手に入る。言ってしまえば旨みしかない取引だ。
…とは言っても相手はあの最強のヒットマンにして晴のアルコバレーノ・リボーンをして『生まれながらの殺し屋』と言わしめるだけの才の持ち主。そう簡単に事が運ぶはずもない。
___時雨蒼燕流 攻式三の型 遣らずの雨
リングを転がすフリで床に落とされた、竹刀袋に納まった時雨金時が見事ベルフェゴールの肩にクリーンヒットする。
時雨金時を拾うタイムラグすら感じさせずに、山本はマーモンに刃を突き付けた。
が、形勢逆転かと思われたのも束の間。
刃を突き付けられているマーモンが増殖、そして蹲って呻いていたベルフェゴールが全く違う場所にクロームにナイフを突き付けた状態で現れる。
敵は暗殺部隊。姑息さならば彼らの方が上なのだ。尚、人質を取ったように見せかけているので元々彼らの方が上手である。
縄で拘束されているクロームが幻の触手に全身を締め付けられ、声にならない悲鳴を漏らした。
再三言うことになるがこのクロームも本物ではない。本物は現在了平の極限節に付き合いつつ味方を探している真っ最中である。
「てめぇ!!」
「止めろ!!」
「まだわかっていないようだね。幻覚を見ている君達に何の権限もないんだ」
マーモンの言葉に呼応するように獄寺の体にも触手が絡みつき、嵐と雷のリングが手から零れ落ちた。
更に山本も触手に絡め取られる。
しかし、それすら予測してこその参謀。彼女によって、セーフティーネットは張り巡らされている。
故に大番狂わせを起こすことのできる存在もまた、すぐ近くまで迫っていた。
◆
駆け付けたランチア共々ヴァリアー隊を相手取っていると、落雷のような轟音が耳に届いた。
方向はちょうど、体育館がある方だ。
「何の音だ…?」
「気にせずともいいよ、私の思う通りに事が進んでいるだけだから」
疑問の声に素っ気なく返しながら、ヴァリアー隊員の顎に
崩れ落ちた男の隊服の襟首を掴んで放り投げ、敵の動きを阻害。
一年程度のブランクでは、身に染み付いた動きは鈍らない。
やはりベルフェゴール君の逃亡とマーモン君との協力は防げなかったか。
まあ、これであの二人も幻術士の怖さは身に沁みただろう。
そして笹川君、マジで体育館を吹き飛ばすとは。拳を振るった時の風圧でガラスを壊す奴が家族にいる私が言えたことかとも思うが。
私もナックル君が本気で拳を振るっているところを見たのは
考えながらも、体の動きは止まらない。
背後からの奇襲を、
その途中、宙に放った
(師範、使わせてもらいます)
剣術の師が使っていた、型の一つ。いつ絶えるかもわからぬ、『滅びの剣』の一。
本当に見様見真似、戦場で見たままの再現しかできない私は、継承者ではないけれど。
修業も終わった夕焼けの頃、疲れ果ててうつらうつらする私にとって子守唄代わりだった、優しい笛の音。
それが耳の奥で響いた、気がした。
「───時雨蒼燕流 攻式三の型」
ランチアもこちらに意識を向けていない。今言って、聞いている人間なんて私以外に誰もいない。
継承者じゃなくっても、君の弟子だという事実は変わらないから。
誰も知らない、知る者などいなくなったその事実を、この
「遣らずの、雨」
狙い
こういう時、スネグーラチカは便利なんだ。
薄く笑って、抜剣の勢いのままに斬り掛かる。
また一人を伸して辺りを見渡せば、ヴァリアー隊の中で継戦が可能と思われる人員の数は五人まで減っていた。その五人も、大なり小なり傷を負い、疲弊している。
「後は君に任せる」
一方的にそう言ったが、ランチアは一つ頷くと私とヴァリアー隊員達の間へと移動した。私への追撃を防いでくれるつもりなのだろう、有り難い。
ランチアがいるから安心して背を向け、走り去る。
人目のないところで夜の炎を使いたくもあるが、監視カメラがあるので軽率には使えない。最悪バミューダ君達が敵に回ってしまう。
〈それではヴァリアー側を失格とし、観覧席の赤外線を解除します〉
耳のイヤホンから響くチェルベッロの声。
しかし赤外線は解除されない。マーモン君に細工を施されていたからだ。
ヴァリアー隊は既に壊滅状態、ここで増援を呼んでも特に意味はない。が、いずれ出られるようにしなくてはならないのだ、少しばかり世話を焼かせてもらおう。
「私を忘れてやしないか?」
言うと同時、抜剣。
一瞬ののちには、赤外線で観覧席を区切っていた装置が何の役にも立たぬスクラップと化した。同時に私が仕掛けた盗聴器もオシャカだ。証拠隠滅は大事だからな。
「まあ、遅くなったことは詫びよう」
不敵に笑えば、グラウンドにいる獄寺君達の声がスピーカー越しに届く。
思いの外元気そうな声に頬を緩めながら校舎を迂回、彼らと合流する。
私が駆け付けると同時に、ランチアがヴァリアー隊最後の三人を戦闘不能に追い込んだ。
「私が、君らの行動を読めないとでも思っていたのか?」
心外だよ、全く。
不満げに言いつつ、余裕のある足取りで倒れ伏す沢田君へと歩み寄る。
対照的に今の状況に焦りしか抱けないベルフェゴール君が投擲したナイフは山本君に阻まれ、マーモン君もクロームちゃんの幻覚の火柱に囚われる。
無言で雲雀君がトンファーを、笹川君も拳を構え、獄寺君は沢田君の側に駆け付けた。
最後のダメ押しで、私も
尚も周囲を呪う
「もう一度、“血より濃い水”を味わってみ給え。きっと、以前よりはマシに感じるだろう」
最後にチェルベッロが
「ボンゴレの次期後継者となるのは、沢田綱吉氏とその守護者7名です」
───リング争奪戦は、こうして幕を閉じた。
断章・欠落、若しくは決戦の裏
いつものように見下ろし、眉を顰める。
いつかのように剣を持たない彼女の右手が、心なしか寂しそうに見えた。
バカな
自分に合わせた戦い方を、あっさり変えるんだから。
それに、ずっと偽り続けてる。
全部一から始めて、また新しく得ていけばいいのに。
なのに、なんでそんな風に取り繕うんだか。
努力の方向音痴にも程があるよ。
本当に、バカな
(僕も、同じくらいバカなんだっけ)