参謀殿は子供扱いがお嫌い。   作:鏡鈴抄

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UAが1000、お気に入りが30を突破!! ありがとうございます。

………I世(プリーモ)ファミリーを主軸に据えた作品は少ないのでかなり不安だったんですが、これは一定の需要があると考えていいのかな…?(連載を始めて尚悩むダメ作者)(感想などお待ちしております)


標的5 戦いと、7番目の天候

 ───それは、私がボンゴレ作戦参謀に就任して半年が経とうとする、ある日のことだった。

 

 

 その日、本部には主な幹部は私とランポウ君、ナックル君しかいなかった。

 戦いが長引いている場所があり、それをジョット君達五人で攻めて一気にケリをつけようということになったのだ。

 

 私は最初反対した。長期間の戦いで敵も疲弊しているだろうから、五人も行くのは過剰な気がすると言ったのだ。

 主力の大半が本部を離れれば、攻められる可能性が高い。それ故の反対だった。

 

 

 だが、結局は早期に抗争を終わらせるべきだというD(デイモン)君の意見に押し切られてしまった。

 それで納得してそのまま何の手も打たなかったということは、私も少し日和っていたのかもしれない。

 

 作戦参謀という立場上、作戦立案と指揮のみで戦場に立つことが少なかったのが、気の緩みに繋がったのだと思う。

 

 

 確かにその時まで、私の気は緩んでいた。

 

 例によってランポウ君の監視(子守)をしつつ書類を仕上げていた、その時までは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ〜、もう嫌だものね〜、やりたくなーい」

「そんなこと言ってないでさっさとペンを動かしてください、ランポウ君」

 

 

 集中力が切れたのか唸り始めたランポウ君を窘めながら、こちらはペンを動かす。

 

 今日はボス命令で決められた女の子っぽい服を着ている日なのだが、それが原因で憂鬱かというとそうでもない。もう慣れたのだ。人間は慣れる生き物、確かにそうだ。喜べジョット君、意識改革は成功だぞ。

 

 

「ほら、ボンゴレの雷の守護者は碌に留守番もできないとか言われたくはないでしょう? そのくらいできるってとこを見せてやりましょう」

「む〜」

 

 

 ランポウ君が不満げに唇を尖らせながらもペンに手を伸ばしたことを確認し、視線を外した時、不意に目の奥がチリリと痛み、鮮烈なイメージが瞳の中に翻った。

 

 

 

 ───隊列を組み、歩を進める大軍。

 

 ───その進む先にあるのは、見慣れた街並み。

 

 

 

 …何だ、今のは。

 少なくとも見たことのない映像だ。だが、あの街は、この街にそっくりだった。

 

 

「…ランポウ君、少し出てきます。サボらないでくださいね」

「え、レイ何処行く…って、ええええ!?」

 

 

 絶叫するランポウ君。

 まあそのリアクションも当たり前だろう。いきなり人の背に翼が生えたら、私も叫ぶ自信がある。

 

 そう考えながら窓を開けて、身を躍らせた。

 

 

 宙に投げ出された私の体は引力に引かれるまま落下を始めたが、地に叩きつけられる前に力強く羽ばたいた翼によって上へと昇っていく。

 

 またランポウ君の絶叫が聞こえた気がするが、無視だ、無視。

 

 

 遥かな未来、最早別物と言っていい程に様変わりしたとは言えボンゴレを壊滅に追い込んでくれるミルフィオーレファミリーボスを真似た翼で本部の上を飛ぶとは、とんだ皮肉だ。

 そう思いながら空を飛ぶ私は、街を見下ろす程の高度に至ったところで上昇を止めた。

 

 

 氷柱を望遠鏡代わりに遠くを見る。

 

 視界に捉えたのは、こちらへまっすぐ向かって来る大軍。

 先程の映像と視点から何まで、全て重なる。

 

 まさか…ユニやその母・アリア、そして祖母のルーチェができたという未来予知か? いやいや、有り得ない…とは言えないな、雪や氷を操る(スネグーラチカ)なんてヤバイ能力持ってるんだし。

 

 

 取り敢えずさっきの映像については置いておいて、敵襲を報せに一旦本部へ戻ろう。

 

 

「ランポウ君、敵がこの街に迫っています。ナックル君とエレナさんに知らせて、住民の避難誘導を行うよう言ってください」

「え!? わ、わかったんだものね!」

 

 

 幾度も最前線に出したのが功を奏したのか、それ程怯えた様子を見せずにランポウ君は武器である(シールド)を手に取った。

 余計なことかも知れないが、中華鍋にしか見えない。ランボが使っていた(シールド)の方がカッコいいと思うのは私だけだろうか。

 

 

「それが終わったら戦闘員を率いて街の外、北東方面に来てください。私が先行して食い止めるつもりですが、それにも限度がありますから」

 

 

 そう言い残して、再び飛び立つ。

 目指すは着々と街に近づいている大軍だ。

 

 氷で創った翼が溶けぬよう、纏わせている冷気の影響で通り道に雪が降ったようだが、街のためなので勘弁して戴きたい。

 

 

 最初こそ慣れない氷の操作に手間取ったが、体当たりで色々と試してみるとどうにかそこそこのスピードで進めるようになった。

 

 

 市街地の上を飛ぶと、街に迫る軍が持つ旗が目に留まった。

 

 あの紋章は、サルトーリファミリーのもの。

 今ジョット君達が戦っているのだろうマケーダファミリーとは親交があるとも聞くし、このタイミング…手を結んでいたのだろう。

 

 

 そう推察しながら町と軍勢の間に降り立つ。

 

 どうするかは既に決めている。

 まずは撤退するよう勧告し、それで退かぬようなら徹底的に凍らせて戦闘不能に追い込む。

 

 

「済みませんが、この先には我らの街があります。それ以上進まれると容赦はしませんので、ご注意を」

 

 

 自分でも芝居がかっていると思う動作で、彼らにそう告げた。

 

 唐突に空から舞い降りた、氷の翼を広げた私に彼らも混乱しているようだが、指揮官──恐らくボスのドン・サルトーリ──は冷静に部下達に指示を出している。

 チッ、混乱して退いてくれればよかったのに。

 

 

 悪いが、勧告を無視した以上敵と見なさざるを得ない。先程言ったように、容赦はできないのだ。

 私にだって、守らねばならぬものがある。

 

 

「敵は一人だ、さっさとやっちまえ!」

 

 

 サルトーリが言った直後に雨のように降り注ぐ矢を斬り払うのは、対になった片刃剣(サーベル)

 雪の結晶を象る盾で防御しつつ、射手を他と纏めて凍りつかせるのも忘れない。

 

 

 私は基本、剣を使う。

 

 身近で戦い方が参考になり、更に師事できる相手となるとファミリーしかいない。

 だがしかしほぼ全員くせのある武器を使っているか、肉体的に私では真似できないという状況。D(デイモン)君の大鎌やアラウディ君の手錠は前者で、ナックル君やジョット君が後者。ランポウ君は敢えて評するならば前者と後者の複合形か。

 

 そんな訳で師匠探しの段階で手詰まりになりかけたのだが、そこに救いの手を差し伸べてくれたファミリーがいた。雨の守護者・雨月君だ。

 彼に剣術の基礎を教わった私は、彼と同じように多刀流使いになった。さすがに変則四刀は使えないが。

 

 戦場に於いての私の武器は、小ささ故に小回りが利く体と瞬発力。逆に短所は体重の少なさが原因で重みの乗った攻撃が繰り出せないという点。

 一回の攻撃が有効打たり得ないのなら、複数回打ち込めばいい。重みがないのなら、スピードを活かせばいい。

 

 そういった判断からの双剣。これが、私が一番戦える武器だ。

 

 至近距離まで接近するとようやく矢が降り止む。これ以上は味方を巻き込み兼ねないからだろう。中々いい判断だ。

 

 襲い来る武器を躱し、いなす。

 冷気を纏った剣で斬りつけ、体を凍結させて戦闘不能に追い込んでいく。

 

 それにしても敵はかなりの大軍だったようだ。恐らく五百は優に超えるだろう。行軍速度も加味した上で、ボンゴレに打撃を与え得る最精鋭の一団を連れてきた、というところか。最初にだいぶ凍らせたはずなのに、いつの間にやら周囲を囲まれている。

 体力には自信があるが、それより先に気力が底を尽きそうだ。

 

 

 勢いよく突き出された槍を、ギリギリのところで躱す。

 見れば、柄を握るのは獰猛な笑みを浮かべた男、サルトーリ。

 

 こういうのを猛攻と言うのだろう。躱すばかりで全く反撃ができない。避け切れずに浅い傷ができ、服の切れ端や髪が宙に舞う。

 

 

「ガキはお(うち)でミルクでも飲んでな!!」

 

 

 その声と共に降って来る槍を、剣で受け止める。

 こっちはそのお(うち)を守るために戦っていてね、簡単に()ける訳にはいかないのだよ。

 

 

 槍を弾き、斬る。

 

 この手応えからして槍は雷の炎を纏っている。

 複数回正確に同じ箇所を突いたところで、破壊はできまい。チッ、考えていた戦法が一つ潰された。

 

 

 いつの間にか周囲は遠巻きに眺めていて、私とサルトーリの一騎討ちになっていた。

 

 人を斬る、ということに忌避感はない。マフィアなんて物騒な世界に片足突っ込んでるんだ、今更その程度なんだと言うのか。

 

 

 一瞬視界から消えた私を見つけたサルトーリは、鋭い突きを繰り出した。

 防御する間もなくまともに突きを喰らった私は、次の瞬間()()()()

 

 目を見開いたサルトーリに、私はほくそ笑んだ。

 

 

 そう、それは囮。

 私は滅多に使わないが霧の波動も持っており、D(デイモン)君に師事しているため幻術もそれなりに使える。それと氷を操る能力(スネグーラチカ)を組み合わせたのだ。

 さっきのは氷で私そっくりに創った人形に、私に見えるように幻覚をかけたもの。方法自体は考えていたものの、ぶっつけ本番だったのだが…囮としての性能は想像以上だ。

 

 

 愕然とする彼の懐に飛び込み、突く。臓器は避けて、治療が遅れても死ぬことなんてないように。

 

 腹に刺した剣はそのままに、どうと倒れたサルトーリの額にもう片方を突きつけた。

 

 

 妙なことをされぬよう周囲を殺気で牽制しつつ、どうしようかと考えていると、私の名を呼ぶ声が聞こえた。

 

 額に橙の炎を灯し、黒のマントを翻して駆け寄って来るのはジョット君。

 弓矢(アーチェリー)を持ったG(ジー)君も彼を追うようにこちらへやって来る。

 

 その背後に、武器の手錠を携えたアラウディ君と、大小様々な手錠で拘束された一団を見つけた。

 どうやら彼が、街に向かった別働隊を一掃してくれたらしい。

 

 

「レイ、済まない。大丈夫だったか?」

 

 

 私の顔を覗き込んだジョット君が、不安げな面持ちで言う。

 きっとその『済まない』にはたくさんの意味があるのだろう。

 

 

「いいえ、私の方も油断がありましたから」

 

 

 事実、あの謎の映像がなければここまで迅速に対応することができなかったはずだ。

 

 そのことを思い出して苦笑しながらそう返して、歩いて来たアラウディ君に視線を移す。

 敵勢を街の手前で食い止めてくれた礼を言おうと口を開いたところで、いつかのように唐突に抱き上げられた。

 

 

「ちょ、アラウディ君!?」

「何処も怪我してない?」

 

 

 ジタバタと暴れる私を抱えたまま、彼はペタペタと色んなところを触る。頼むから止めてくれ、子供みたいで恥ずかしい。

 

 心の中の思いが届いたのか、アラウディ君は今度は頬っぺたを抓ってきた。おい、これはこれで嫌だぞ。

 

 

「…肝が冷えた」

 

 

 もしかして、囮のことか? 確かに、私にしか見えない囮が攻撃されて、しかも砕けたら肝が冷えるか。

 ジョット君も止めないし、彼らも同じ思いなのだろう。

 

 

「済みません、心配を掛けて」

 

 

 謝ったのに抱き上げられたままなんだが。そして私を放置したままでサルトーリと話し始めるんじゃない、ジョット君にG(ジー)君。

 

 

「マケーダのボスはお前の身の安全を条件に降伏した。そこでどうだろうか、我らの下に従くというのは」

 

 

 ジョット君の突飛な提案には驚かない。この程度で一々驚くようじゃボンゴレで働けないのだ。元々G(ジー)君以外の守護者は彼がスカウトしたから所属しているんだからな、私も含めて。

 

 対するサルトーリは戸惑っているようだ。まあ、こんな小娘に敗北を喫した後だ、自信も失くすか。

 

 

「私を包囲して、その上で別働隊を街へ向かわせる…あの場での咄嗟のことにしてはいい判断だ。君はいい司令官だと私は思うぞ」

 

 

 アラウディ君に抱き上げられるというイマイチ格好がつかない状態で、サルトーリに向かってそう言う。これで少しでも自信を取り戻してくれればいいんだが。

 

 

「…わかった。あんたらの下に()かせてもらう」

 

 

 最後に私の方を見て「ありがとな」と言ったサルトーリは、治療のため街に運ばれて行った。

 

 

「ところで、街の方は?」

「ああ、被害はほぼ無い。ランポウと外に出た者が別働隊とぶつかって怪我人が出たが、命に関わる程ではないそうだ」

 

 

 何でも、ランポウ君達とサルトーリの別働隊が衝突を始めたところにマケーダと交渉を済ませたジョット君達が帰還し、直後にアラウディ君が大暴れし始めたんだとか。何だ、マケーダのところで暴れられなくて鬱憤が溜まっていたのか。

 

 

「ところで、レイ」

「何ですか、ジョット君」

 

 

 未だにアラウディ君の腕の中なので、いつもより楽にジョット君と視線が合う。彼の綺麗なオレンジ色の瞳には、困惑したような不思議な色が滲んでいた。

 

 

「お前、ドン・サルトーリには畏まった話し方じゃないだろう。その…オレ達も家族(ファミリー)な訳だし、気を使ってもらわなくてもいいというか…」

 

 

 簡潔に言うと、敬語を止めろと。

 生憎だが、それは無理な相談だ。私も気を使っている訳でもないし。それにこの話し方にも慣れてしまった。

 

 

「…もうこの話し方もくせになってるので、気を付けられる時だけでいいですか?」

 

 

 そう言うと、パァァとジョット君の顔が光り輝いた、ような気がした。それ程までに輝かしい笑顔だったのだ。うわ眩しい。

 

 

「それにしてもレイ、大活躍じゃねーか」

「ああ。“氷の天使”という二つ名まで付けられているしな。『雪の守護者』という名も定着しているようだし…もう本当に役職を作ってしまうか」

 

 

 …何だろうか、酷く恐ろしい言葉が聞こえた気がしたんだが。

 ボンゴレには『雪の守護者』なんていないだろう? というかボンゴレに所属してからは能力(スネグーラチカ)のことも隠すことはなかったが…何故そんな異名がつけられているんだ?

 

 

「な、何故そんな名が? 戦闘を見ていた訳でもないでしょう?」

「何故ってお前、氷で創った翼で空飛んでんのがバッチリ目撃されてるぞ」

「後は盛大に雪を降らせてるのとか、氷の彫刻を創ってるのとか」

「…軽率に使い過ぎました…」

 

 

 これで後世(原作)に多少の影響を与えることが確定してしまった…。いや、雪なんて炎があるとは聞いたことがないし、一代限りの守護者としていない者扱いされるだろうしいいのか? …やっぱりダメだ、既に死んでいても何やかんやと騒がれるところを想像するだけで恥ずかしい。

 

 色々と想像してアラウディ君の肩に顔を埋めて呻いていると、子供をあやすように頭を撫でられた。いい加減に子供扱いは止めて欲しいんだが…言っても無駄か。

 

 

 

 ───その日、ボンゴレの同士に新たに二つのファミリーが加わり、そして私には第七の天候を冠する幹部の地位が───

 

 

 ───『ボンゴレ雪の守護者』の座が与えられた。




・大空を彩る、第七の天候

 とうとう守護者になってしまって頭を抱えている。
 武器に関しては今まで気にしてなかったが「これX世(デーチモ)の代にも雪の守護者がいたら双剣がボンゴレ(ボックス)になるのでは…!?」と戦々恐々とすることになった。大丈夫か、双剣って割と扱い辛いぞ!?
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