また、今話は捏造設定タグが再び火を吹きますのでご注意ください。
先日の抗争で『雪の守護者』の地位を与えられた私だが、何が変わったという訳でもない。ただ私を指す役職が増えた、それだけだ。
「しは、雨月君。これ何かわかりますか?」
故に古書堂を営むのもまた変わりなく。
今日は雨月君に手伝ってもらい、在庫整理である。
雨月君に見えるように広げて掲げた絵巻物は、描かれた絵から日本由来ではないかと見当はついたものの、肝心の文字は流れるように書かれていて私には読めない。やろうと思えば解読もできるが、身近に知ってそうな奴がいるんだから聞くのが道理だろう。
「どれどれ……」
覗き込んだ雨月君の表情が固まる。いつもニコニコしてる彼にしては珍しい。
「………ふ、古い時代に書かれた小説を絵巻物にしたものでござるな」
「へえ」
ひょいと私の手から絵巻物を取った雨月君が、くるくると丸めてカウンターの上に置いた。
私としても見覚えのない商品が発掘されたから訊いただけだし、雨月君が明らかに訊いて欲しくなさそうなのでこれ以上は突っ込まない。
「それにしても、何か急ぎの用でもあるのでござるか?」
明らかに話題を逸らすための言葉。別に聞きやしませんよ、と言いたいところだが、珍しくも焦っている雨月君が可哀想なので素直に乗ってやる。
「ええ、アラウディ君がいるうちに色々とやってしまいたいことが」
「アラウディがいるうちに?」
「はい。アラウディ君でなくては任せられないことがありまして」
「…レイも成長しているのでござるなぁ」
嬉しそうなのに少し悲しげな表情を器用に作った雨月君が、頭を撫でてくる。
大袈裟な気もするが、私も己の変化は自覚している。今回の案件だって、一年前の私なら一人で準備を進め、もっと時間が経ってからアラウディ君に引き継いだだろう。
人を頼ることに躊躇いが無くなった、という訳じゃない。あくまでファミリー限定だ。
「私も守護者ですけど、やっぱり他のみんなと比べると戦力的には役に立ちませんから。そこを補う時間を作るためにも、信頼できる人を頼るのは悪いことじゃないでしょう」
守護者になったことでみんなと同じ場所に立てた、と言えなくもないが、幼く成長途上の私では足手纏いになってしまう。
「という訳なので師範、今度稽古つけてください」
「四日後なら空いているでござる」
「四日後、ですね。わかりました」
そんなこんなで雨月君に剣術の稽古の約束を取り付けた私は、今現在同僚のアラウディ君に抱き枕にされている。
雨月君にも言った通り用があって探していたんだが、どうやら私達の雲は酷くお疲れのご様子。私の家に不法侵入している訳でもないし、少しは労ってあげよう。
腕を伸ばして、少しくせのある
しばらくして呻くように声を漏らしたアラウディ君は先程よりもすっきりとした顔で、伸びをすると立ち上がる。
「行くよ、本部」
「君という人は、全くもう…」
呆れながらも起き上がり、隣を歩く。
歩幅の違いで小走りになる私を見て歩調を緩めた彼は優しい、のだと思う。
「そうだ、君に渡す物があるんだ」
彼がそう言ったのは、土が踏み固められた道から人工的な石畳の道に出て、少し進んだ頃だった。
トレンチコートのポケットに手を突っ込んだアラウディ君は、何かを掴み出すと私に出させた手の上に置く。
アラウディ君の男らしく骨ばった手が引かれた後に手の上に残っていたのは、一つの指輪だった。
楕円形のホワイトオパールが
女性物にしては少し無骨な気もするが、私はこのくらいのシンプルさが好きだ。
「君だけリング持ってないでしょ。似合いそうなのを探すの、苦労したんだから」
その言葉に目を見開く。
確かに“雪”なんて属性がないことと、
だが、別にいいかと思っていた。
最初は継承の証だと思われていたリングも、立派な武器だったことが判明している。必要に迫られた訳でもないのに持つのはおかしくはないかと思っていたのだ。
目線に促されるまま、右中指にリングを嵌めた。
「…少し、緩いです」
「じゃあネックレスにしときなよ。落とすなんてことしたら許さない」
「はあ…」
異様に用意がいいアラウディ君に渡された細い鎖で、指輪を首から提げる。
だが、本当にいいのだろうか、こんな高価なものをもらってしまって。
疑問が顔に出ていたのか、アラウディ君が例の如く頭を撫でながら言った。
「それ、一応君の作戦参謀就任祝いと雪の守護者就任祝い、後もらったサンドイッチのお礼も兼ねてるから」
「サンドイッチは強奪された気がしますが」
よし、そういうことなら遠慮なくもらおう。
改めて本部への道を辿り始めた私に、アラウディ君が問いを投げる。
「本部に何か用があるの」
「いえ、そういう訳ではなく…ジョット君と君に、話しておきたいことが」
外れることを願いたい、予測。“もしかしたら”の可能性。
だが、それを無視することなどできない。
私は、ボンゴレの作戦参謀であり、雪の守護者なのだから。
故に、最悪を防ぐための最善の一手を打たねばならないのだ。
例えそれが、私にとって見たくもない未来だとしても。
「詳しい話は、後で」
尋ねたそうなアラウディ君をそう言って押し留め、本部への道を急ぐ。
執務室で書類を捌いていたジョット君を
書類仕事の類はランポウ君の
備え付けのソファに三人で座り、早速本題を切り出した。
「この間の
「確かにそうかもしれない…だが、いざとなったらオレ達もいる。大事にはならないだろう」
「その後は?」
不思議そうな顔のジョット君に、現実を叩きつける。
「私達もいつか引退せざるを得なくなる時が来ます。その跡を継ぐ後継者達が、強大な力に酔わずにいられるかというと、不安が残るのです」
いつも引っかかっていた、リング争奪戦・大空戦時の
彼によると、ボンゴレ
対決を恐れて、というのは恐らく後世の創作だろうが、
「『守るため強くなる』…至極結構。ですが、ただ力を追い求めるのは違います。行き過ぎた力は諍いしか呼ばないのですから。
その“もしも”の時のために、ボンゴレでありながらボンゴレでない者をストッパーとして存在させたいのです」
“ボンゴレでありながらボンゴレでない者”…つまり、門外顧問。
そう。“浮雲”である、アラウディ君しか。
「遥か遠い
そのために巨大な諜報組織を創り、ボンゴレ内の不穏分子を把握、必要ならば排除する。同時に、ボス一人に権力が集中することを防ぐ。
長期的に機能する組織である以上、何処かで綻びが生まれるだろう。
それでも、その時をずっと先にすることくらいは、今の私達の努力次第でできるはずだから。
「…わかった。僕は別に構わないよ」
「アラウディ…」
これは驚きだ。ジョット君よりアラウディ君の説得の方が手間取ると考えていたのだが…予測が外れましたね。私の予測が外れるとか普通にレアなことですよ
「レイ、その計画は…他には言ってはならないんだな?」
「ええ、当分の間は私達三人だけです。組織自体は五年以内には設立出来れば、と思いますが」
私の言葉を聞いたジョット君は計画を了承し…
・雪
少しずつではあるが、精神的に成長している。戦力的には確かに守護者の中でも弱い部類だが、年齢的な部分が占める要因が多い。10年も経てば比肩するようになる、と言われている。
ボンゴレの未来に関して、今できることはこのくらいしかない。…正確に言えばもっとやれることもある。けれど、これ以上の対策を打つことを心が拒んだ。大切なものと大切なものを天秤にかけて、どちらかを切り捨てられなかった。
リングはネックレス状態で肌身離さず身に着けるようになる。
・雨
弟子が素直じゃなくて素のスペックの高さもあってあまり他人を頼らないタチなのは察してたので、その成長が嬉しい。お赤飯炊きたかった。
尚彼が内容を知らせなかったのは某最古の同人誌。あれを数えで8つのレイに教えるのは…とさすがの天然も躊躇った。
・雲
彼女の予測の精度を知っているからこその即断。あの
・大空
雲の即断即決に驚いた。でも雪がこう言うってことはつまりそうなる可能性があるってことだよな…と納得もしている。何か隠していることがあるのも察しているが、言いたくないなら言わなくてもいいぞ、というスタンス。
・門外顧問とDEDEFについて
この世界ではレイの影響もありボンゴレを監視する側面も持つことに。尚それがツナ達の生きる現代まで続くかはわからない模様。身内から選出しちゃってる辺り無理そうではある、哀しいなぁ。
…後ですね、誰も言ってないけど家光さんがボスになれないのって門外顧問やっちゃってるからじゃないでしょうか? CEDEFメンバーの総入れ替えは人員の多さからほぼ不可能。オレガノとかにも慕われてるし、ボスになったら色々と融通きかせて権力分散させた意味がなくなっちゃいそうだからストップかけられてるのでは?