スーパーロボット大戦Blank   作:フォトンうさぎ

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第1話:はじまるまじわり ②:鵺(ヌエ)が鳴く

 海の中を髑髏(ドクロ)の顔をしたが機械が歩く。そのドクロの左右には鎌が備え付けられており、見方によっては悪魔のような印象を受ける。

 赤いボディにピンク色の四肢。左右の足を交互に動かし、ズシンズシンと振動を響かせながら海の底を歩く。

 

 さらにその後ろを、2体の白い足軽のような人型兵器が潜航している。長刀(なぎなた)のような槍を携え、ドクロの頭を持つ機械とは違って専用のスクリューを回転させながら進んでいた。

 

 三体のマシンが旧葦原(あしはら)亭へ、夜鳥達がいる場所へ近づいていく。

 やがて海の底と海面の差が縮まり、ドクロの顔をした機械の獣が、『ガラダK7』がその禍々しい頭部を現したのだった。

 

 

「はっ?」

 

 一方で夜鳥は、今この瞬間に起きたことに呆然としていた。足音じみた振動もそうだが、写真を撮っていただけなのにコックピットのハッチが閉じた。

 下手をすれば助けが来るまで出られなくなる由々しき事態であった。どうしたものかと迷う夜鳥であったが、その考えは近づいてくる足音に段々とかき消されていく。

 

 装甲の外から叫ぶメルティナも思い出していたが、夜鳥も嫌な出来事を思い出していた。

 響くマシンの足音、誰かが泣き叫ぶ声、流れる血、誰だったかわからないもの。そして目の前で『逃げろ』と促す祖父の声――。

 

「ロッ、ロボットか? ジオンのテロか? 日本に? ――機械、獣?」

 

 Dr.ヘルによる機械獣の侵攻。そんなのはもう10年も前のことだ。しかし夜鳥の勘が。というより経験が裏打ちする。この足音はモビルスーツによるものではなく、機械獣の独特の恐怖を与えることに特化した心のない歩行音だと。

 

「そうだとするとマズいぞ……メルティナ! 聞こえるか!? メルティナー! ……そうだっ、通話ならっ!」

 

 急いでフォンからメルティナに対して通話をかける。するとそれに気づいてくれたのか、すぐに彼女が通話に出てくれた。

 

『夜鳥様!? ご無事ですか!?』

 

 いつもとは違うメルティナの切羽詰まった声がコックピット内に響く。まず通じたことに一安心した夜鳥だったが、急いでメルティナに対してこの家から逃げることを促す。

 

「ボクのことはいいから、その場から二人とも逃げろ! ボクたちがこれを見つけた時に、何らかの罠が作動していたのかもしれない! そうだとしたら狙いはボク達じゃないのか!?」

 

『しかし……!』

 

「いいから! オオタキファクトリーの人たちを守れ! 君の身体能力なら、兵隊が相手だとしても勝てるだろ! 早く! できるだけ遠くへ!」

 

 そこまで言って、ぶつりと夜鳥は通話を切った。頼むから自分を優先するのではなく、オオタキファクトリーの人を連れて逃げてくれと願う。

 

「さて、どうする……? ボクがこのロボットを動かしてどうにかする? ……無理だ、操縦経験なんて無いし、動きそうにないんだ。キーやパスワードなんてボクは知らないし持ってないぞ……?」

 

 腕を組んでぶつぶつと考える夜鳥。どうしたものかと考えている内に、今までの音とは違う爆発音のような音と共に強力な振動が響いた。

 驚愕して一瞬頭が真っ白になった後、すぐにまた思考が張り巡らされる。

 

「撃ってきた!? 銃撃!?」

 

 屋敷の周辺に弾丸が直撃したのだと、夜鳥はすぐに理解した。何かが屋敷に対して威嚇の砲撃をしてきたと。

 

「昼間から本当にテロか!? どうする!? どうする、どうする――」

 

 続いてまた着弾の衝撃。カタカタと夜鳥の乗っている機体が揺れ、夜鳥も恐怖心でどんどんと怯えが強くなる。

 

「狙いはボクかこの機体? それが終わったら街に進軍する? 逃尾(にがしお)市ですぐに迎撃できるのか? いや無理だ、何十人も死人が出る。ボクが、ボクがこの機体を――」

 

 動かすしかない。そう決意し、夜鳥は操縦桿を握り込む。

 動かし方も、起動の仕方さえもわからない。だがやるしかないのだ。そうしないと大勢の人や大事な人に危害が及ぶ。

 

「動かす……動かす……ああくそっ! 開けゴマ! マジンゴー! オープンゲット! 発進! くそっ! くそぉっ!」

 

 動かない操縦桿を必死に動かそうとし、心の中でいろんな言葉を念じたりそれを口に出したりする。だが機体はうんともすんとも言わない。ただ格納庫に鎮座するだけである。

 

「燃料や電気が無いとかか!? 一年戦争だから……十数年も眠っている……。くそおおおおおお!! 動けよこのゲテモノ機体!! アクセスさせろよッ……! アクセスッ……モードくらい選ばせろバカァああああああ!!」

 

『承認、アクセスモード。NEW・E(ニュー・エピソード)モードから起動』

 

「は?」

 

 コックピット内に明かりが灯っていく。スイッチ、コンソール、レーダー、モニター画面。全てに明かりが点き、機体が行動可能になったことを知らせた。

 操縦桿が急にスムーズ動くようになったため、それを引くように動かそうとしていた夜鳥は機体ごとそのまま後ろに倒れ込む。装甲と金属製の分厚い壁がぶつかってこすれ合う嫌な音がし、夜鳥はつい操縦桿を手放した。

 

「う、うご・く? なんで?」

 

 なぜなのかはわからない。だがしかし、『いける』と夜鳥は思った。戦えなくとも、動くのであれば少しは囮になることくらいできるはずだと。シートベルトで体を固定し、もう一度操縦桿を掴む。

 

「よ、よし……! ここは格納庫だから、出口があるはず……。あれ、動かし方、なんでわかるんだ……?」

 

 でも今は理由を考えている場合ではない。疑問を頭の片隅にどけつつ、夜鳥はセンサー類を頼りに格納庫のゲートを開けるレバーなどが無いか探し始める。

 そしてそれを見つけ、クロー状の右手でレバーを下す。

 

「できるわけじゃないが、やってみせる……!」

 

 夜鳥の予想通り、格納庫のゲートがゆっくりと開いていく。開け放たれて見えてくる赤い色。ちょうど目の前に格納庫をのぞき込むドクロ――。

 

「うわぁ!?」

 

 とっさにそれを跳ね除けるように、ブーストを活かして夜鳥は機体を前に突進させた。真正面からの突撃を受け跳ね飛ばされるガラダK7。そのまま夜鳥を乗せた機体は海の上を突っ切る。強力なGと衝撃が夜鳥の体を襲って、また思考を真っ白にさせる。

 

 それは、まさしく歪んだ機体だった。全てが左右非対称の体。

 右腕は小手が点いた鋭角的なクロー状の手。左腕は四角いフォルムのモビルスーツ的なきちんとした腕。右足と左足もそれぞれでデザインが異なり、先程まできっちりと自立していたのが嘘みたいな見た目だ。

 

「馬鹿野郎! 逃げる方向だと駄目だ!」

 

 思考を取り戻す夜鳥。そして黒く塗られた機体は大きく弧を描いてターンし、たった今跳ね飛ばしたガラダK7に向かってまた突っ込む。

 だがガラダK7もただでやられるわけにはいかず、頭についた鎌を取り外して手に持ち、迎え撃とうとしていた。

 

「くっ……!? 近接武器とかないの!? ――左腕ビームバズソー!? 乱暴だな!?」

 

 画面に表示されたそれを咄嗟(とっさ)に起動。左腕の小手からビーム発信機の部分がせり出し、その表面に粒子ビームをノコギリのごとく回転させる。

 

「『ナイハン時代』の機体だといってぇ!!」

 

 ビームの刃と、金属製の刃がぶつかり、激しくつばぜり合う。いや、夜鳥の乗る黒い機体の方が力はやや上。

 ガラダK7の鎌を真正面から、根元から両断し、首元から脇腹の部分にかけてまでを袈裟斬りにした。

 機体に走る深い亀裂。トドメとはいかなかったものの、ガラダK7はよろよろと大きく後退した。浅い海に着地し、ビームの刃を向ける黒い機体。

 

「こいつ強いのか? それとも機械獣が劣化している? ――ぐうっ!?」

 

 背後に強い衝撃を受け、黒い機体が海に倒れ込む。実弾による銃撃をまともに受け、三度夜鳥の思考が飛ぶ。それでも今この場で手放しきったら死ぬと無意識が警鐘を鳴らし、意識を無理やりに戻ってこさせる。

 

「囲まれていた――!? ボクが突っ込んだからか――! 離脱しないと!」

 

 パニック状態だったが、芯の部分はギリギリで冷静だった。倒れ込んだままブースターを点火し、まだ体勢を整いきれていないガラダK7に向かってまた突進。

 そのまま機体の上半身を跳ね上げて相手と両手を組み合って押し合いの状態へ。

 

「右足の――!」

 

『右脚バンカーニードル』。そのような武装を確認していた夜鳥はそれを即座に起動する。右足を少し上げると、膝から(かかと)まで骨のように内蔵されていたニードルが弾丸のように飛び出す。

 それは見事にガラダK7の胸部を串刺しにし、その機能を停止させるに至った。

 

「無人だから味方ごと撃つんだろ!?」

 

 組み合っていた相手が事切れたため、夜鳥は串刺しにしたその機体を盾にするようにぐるりと黒い機体を回転させる。

 予想通り、後方にいた2体は両手で携えた実弾の銃を連射し始めた。

 

 ガラダK7のボディが盾となり、黒い機体へのダメージは最小限となる。劣化していると見られたボディだが、モビルスーツと互角に戦えていたその強靭さが弾丸を防いでくれた。

 

 衝撃に耐えつつレーダーをちらりと見ると、砲撃をしている足軽らしき二体はじりじりと後退していく。撃たれる衝撃が収まれば、その二体はどうやら海に潜ったようで勢いよく離脱していく様が分かった。

 

「逃げ、た? 見逃してくれた? 追う必要って、ないよな……」

 

 ガラダK7のボディに刺さっていたニードルを引き抜き、右足に収納する。重たいボディを海に投げ捨てると、真上からの日光が爛爛(らんらん)と黒い機体を照らした。

 まだ夜鳥はその全身をはっきりと見たわけではないが、各パーツの状態を示すモニターがその歪さを知らせてくれる。

 

「背中が軽く破損って……硬いのか? いや、手加減されてたの、かな……」

 

 戦闘が終わったことが認識できて、どっと力が抜けた。操縦桿から手を放し、夜鳥はシートに体を預ける。

 しばらく考えたくないくらいだと考えることを投げ捨て、しばし夜鳥はぼうっとモニターに映る海を眺めるのだった。

 

 どれくらいそうしていたのだろうか。夜鳥はハッと無意識じみた状態から戻ってきて、屋敷から逃げたはずのメルティナやオオタキファクトリーの面々のことを思い出した。

 すぐにポケットからフォンを取り出し、自分の残された唯一の理解者であるメルティナに電話をかける。

 

「頼む頼む頼む……無事でいてくれよ……」

 

 願いが通じたのか、メルティナ側が通話に出てくれた。通話ができたとわかった瞬間に、夜鳥は歓喜の声を上げる。

 

「メルティナ!? メルティナか!? 無事だったんだな!」

 

『お気持ちはわかりますが、いきなり大きな声を出さないでください……耳が潰れてしまいます、夜鳥様』

 

「よかっっっ、たぁ……」

 

 また夜鳥は脱力した。シートが無かったらその場にぶっ倒れてしまうくらいに。

 

「今どこにいるんだい? オオタキファクトリーの人たちは?」

 

『有川様も加藤様も無事です。今はまだ屋敷が見える海沿いの道に。夜鳥様の機体も見えます』

 

「そうか、そうか……屋敷は無事だけど、今あそこにいたら何が来るかわからない。無人の販売店が近くにあるだろ? そこで落ち合おう」

 

『承知いたしました。そのロボットはどうされますか?』

 

 当たり前の質問なのだが、夜鳥は悩みに悩んだ。先ほどの連中がこの機体を狙ってきたのであれば、無人の状態にするのは良くない。この機体が何の秘密を持っているのかもわからない。

 しかし、街に近づかせるとその場合はこちらがテロリスト扱いされるかもしれない。わざと近づいて投降するのも手だが、自由の身でいられるか――。

 

「いや、関わった時点で自由の身じゃないな。まったく……。機体は持っていくよ。軍隊にきちんと説明しよう。……メルティナには嫌な思いをさせることになりそうだけど、こっちの方が安全だと思う。ごめんよ」

 

『気にしないでください。最悪の場合でも、私は夜鳥様に仕えていた思い出があれば十分です』

 

「縁起の悪いこと言わない! じゃあ、また後で――」

 

 通話を切り、夜鳥はまた操縦桿握って黒い機体を動かす。向かう先は少しだけ進んだ先にある無人の販売店。海を眺める休憩所だ。

 

 しかし、モニターの地形を示す部分に、謎のポイントが表示されているのがふと視界に入った。『NEW・E(ニュー・エピソード)システム起動中』『110:07:10:14:00』。それだけが描かれており、こことは違う別の場所の座標を地図が示している。

 

 謎と来れば気になってしまうのが人の性というもの。だがメルティナと落ち合うことが優先である。なので、夜鳥はフォンでその画面をぱしゃりと撮影した。

 

「どこだっけこの場所? 後ででいっか……」

 

 人の足では結構な時間がかかるが、ロボットの足であればすぐである。夜鳥は機体を海に面した休憩所ギリギリまでよせ、コックピットのハッチを開ける。

 シートベルトを外してさてどうやって降りようかと一瞬悩んだものの、すぐに自分を降ろしてくれるウインチを見つけることができた。

 

 地面に足をつけると、随分と長いこと地面に立っていなかったかのような感触が返ってきた。

 メルティナが駆け寄り、夜鳥にぎゅっと抱き着く。

 

「夜鳥様、ご無事で」

 

「なんとかだねぇ……。三人とも怪我はないかい?」

 

「おかげさまで」

 

「マジでびっくりしたぜ、機械獣が窓から見えたもんでさ……」

 

 ユンと(はべる)がそれぞれ自分の無事を告げる。(はべる)は隠し部屋の外にいたが、メルティナとユンが外に出るまでスクーターの近くで待っててくれたらしい。そのまま三人で無理やりスクーターに乗って、この販売所まで逃げて来たというわけだ。

 

「よかった、守れたよ……。さて、どうしようかこの機体?」

 

 夜鳥はメルティナを抱きしめたまま機体を見上げる。左右非対称の怪しい機体。モビルスーツというより新たな機械獣だと言われた方がしっくりするデザインだ。

 

「どこかに隠したりできたりすれば最高なんだけど――。いやいやいや――!?」

 

 だったら隠れてやろう。そう宣言したかのように、謎の黒い機体は一気に小さくなり、まるでおもちゃのような大きさになって夜鳥のそばに落ちた。機体の頑丈さが反映されているのか、高い所から落ちても傷一つついていないようだった。

 

「いやいやいや!? 君は何でもありなのかい!?」

 

 ばっとメルティナから離れ、おもちゃのようになった機体に駆け寄る夜鳥。ひょいと拾えた。物理法則もあったもんじゃないらしい。

 

「三人とも、改めて聞きたい……」

 

 ギ・ギ・ギと壊れかけの機械のように振り返る夜鳥。本当にどうしたものかと嫌な脂汗が額に(にじ)んでいた。

 

「どうしよう?」

 

 三人とも、いや、夜鳥を含めて四人とも今起きた現象を理解できず、呆然と立ち尽くすしかないのであった。




 ◆第1話:はじまるまじわり
 ・勝利条件:ガラダK7の撃墜。
 ・敗北条件:謎の機体(主人公機)の撃墜。
 ・SRポイント獲得条件:2ターン以内に勝利条件を満たす。

 自軍:謎の機体(主人公機)
 敵軍:ガラダK7、アルマ×2


 ◆攻略ポイント
 第1話ということで勝利条件もSRポイント獲得条件も簡単。ガラダK7のHPは高めだが、近づいて『左腕ビームバズソー』で3回斬れば落ちる。
 ただしガラダK7とアルマはマップの仕様で海の中にいるので、『右腕ビームガン』による攻撃をしないように注意。
 また、アルマは初期配置から動かないが、攻撃範囲内に飛び込んでしまうと容赦なく攻撃してくるので注意。
 歴代主人公と比べて夜鳥のパイロット能力は低めなので、アルマの攻撃で『不屈』をはがされた後にガラダK7の『鎌』による攻撃を受けるとあっさり落ちかねないので決して変なプレイをしないこと。
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