さて、この後どうするかが問題です。
他のアニメキャラを出すべきか否か、いまだに迷いながら見切り発車で第2話を投下します。
その後の振り分け試験はどうなったか、その結果は……あえて語るまい。
ただ、目が覚めたらすべてが終わっていたとだけ言っておこう——
桜の花びらが降る通学路を俺と明久は歩いていた。
気楽に進む明久に比べ、俺の足取りは重い。
「どうしたのさ、シン」
「今年から過ごす教室の事を考えたら、なんだか気が重くってなぁ」
俺たちが通う文月学園では、進級の際に所属するクラスを決定するための振り分け試験を行い、試験の成績が優秀な順からA~Fのクラスに決められる。つまり、成績優秀者はAクラス、逆に成績不振者はFクラス、といった具合だ。
そして、俺はその試験に見事失敗し、Fクラス行きが確定していた。
「僕はシンとはテストを受ける教室が違っていたからよく分からないけど、ずっと寝ていたんだって? 全く間抜けだなあ」
テストを鉛筆転がして乗り切ろうとした奴に言われたくないが、今の俺は言い返す気力も出てこない。
「そう言うお前はどうだったんだ? 随分と自信ありげだが」
「僕はシンとは違って真面目に受けたからね。DかCは固いかな」
絶対にそれは無いと思う。確信を持って俺はそう思った
取り合えず、明久のドヤ顔がムカついたのでデコピンして先へ進む。
俺たちを待ち構えていたのは西村教諭——別名、鉄人だった。
厳つい顔に合った低い声に呼び止められる。
「二人とも遅刻だ」
「すみません」
「おはようございます、鉄じ——ぐはっ! ……に、西村先生、遅刻してすみませんでした」
あっぶねえ……。今、明らかに鉄人と呼ぼうとしていたので、俺は肘打ちでそれを止めて、なんとか言い直させた。
『ここで迂闊に鉄人と言ってみろ、生活指導の鬼と恐れられる西村教諭に目を付けられる事になるんだぞ』
『そ、そうだね。ごめん、迂闊だった』
「今、俺の事を鉄人と言おうとしたか?」
鉄人がぎろりと俺たちを睨む。地獄耳め。
「そんなわけないじゃないですか。気のせいですよ、気のせい」
俺が必死に笑顔で取り繕うと、
「そうですよ! 僕らが『鉄人』の事を『鉄人』だなんて言うはずないじゃないですか。いくら『鉄人』が岩顔面みたいだからって——」
「お前もう良いから黙ってろ……」
最早、何も言う気力も無かった……。
「……まあ、いい。聞かなかった事にしてやる。お前らこれを受け取れ」
情けをかけたというより、単に呆れたのだろう。鉄人はそれ以上追及するのを止め、俺たちに封筒を手渡してきた。
「この中に、クラス分けの結果が……」
明久は若干緊張した様子で封筒を見つめた。結果が分かりきっている俺は気負う事無く封を開けて中身を取り出す。案の定、紙には『F』と書かれていた。
「悪いねシン。別クラスから応援しているよ」
「なあ、吉井」
鉄人が明久の方を見て、話し出す。
「俺はな、もしかしたら吉井はバカなんじゃないかってずっと疑ってたんだ」
そうです先生。この男は疑う余地の無い純然たるバカです。
「それは間違いですね。そんな誤解をしているようじゃ、今に節穴なんて言われますよ!」
何の根拠があってお前はそんなに自信たっぷりなんだ? あと、節穴はお前の方だと思う。
「ああ。だがな今回の試験の結果を見て、自分の間違いに気づいたよ」
俺は何となく、この後、鉄人が言うセリフが予想できた。
「喜べ吉井、お前は間違いなくバカだ」
明久の手には『F』と書かれた紙があった。
3階に辿り着くと、明久が足を止めてAクラスの教室を覗いていた。
俺も教室を覗き込む。
「大層な教室だねえ」
皮肉を込めた口調で俺は呟いた。
まず目についたのは、バカみたいに広い教室と、各人に用意された数々の設備。 およそ教室とは思えない部屋には、ノートパソコン、リクライニングシート、エアコン、しかもそれら全てが個人用に設置されていた。さながら高級ホテル並の設備である。
担任は知的女性の見本のような雰囲気の女性だった。
高橋洋子といったか。俺は記憶の底からその名前を掘り起こした。
凛とした態度と、隙のない佇まいは、そこはかとなく鉄人に通ずるものを感じる。あれも、あんなゴリラ顔で結構頭が良かったりするから不思議である。前に鉄人が難しい問題をスラスラ解いていた姿を思い出しながら、俺は高橋先生を見た。
簡単な挨拶と案内を済ませると、ある女生徒の名前を呼んだ。
日本人形みたいな長い髪、透き通る様な白い肌に、整った容姿をしたその少女は、クラス中の視線を物ともせず、堂々とした立ち居振る舞いで彼らの前に立った。
「霧島翔子です。よろしくお願いいたします」
さすが学年トップは伊達じゃない。俺は感心と共にそう呟いた。
「おい、明久行くぞ」
長居し過ぎた。俺は明久に声を掛けるが、何か考え込んでいるのか、霧島翔子の方をじっと見ている。
俺はもう一度声を掛けた。
「明久、行くぞ」
ようやく明久が我に返ってこっちを見た。
「もう行かねえと不味いんじゃないか」
「そうだね。行こう」
俺たちは自分のクラスがある、隣の旧校舎へ向かった。
「ここが?」
「そう、みてえだな」
明久が信じられないものを見た様な目をしている。かく言う俺も同じ心境だった。
何故なら、旧校舎自体、古い建物なのに、Fクラスの教室はそれに輪を掛けて酷く、廃屋かと見間違う有様だった。
椅子や机は無く、敷かれた畳の上に卓袱台と座布団があるだけ。窓ガラスは罅割れ、壁には無数の亀裂が走っており、隙間風が吹き荒ぶ。これのどこが教室といえようか。
「僕たち、これからこんな教室で一年を過ごすのか……」
「運命だと思って受け入れる他ないんじゃない」
教室に入ろうと扉に手を掛けたその時、明久が待ったと俺の手を止める。
「どうしたんだ」
「何考えてるのさシン。いきなり入って悪印象持たれたりしたらどうするのさ」
「悪印象も何も、遅刻している時点で気にしたって仕方ないだろう」
「馬鹿だなぁ。だからこそ、遅刻してしまったことを払拭する為の工夫が必要なんじゃないか」
こいつほど馬鹿と言われてムカつく奴もおるまい。俺は引っ叩きたくなる衝動を抑えて聞いた。
「工夫ってどんなのだよ」
「愛嬌たっぷりに『すみません、少し遅れちゃいました♪』って言いながら入るんだ」
俺は天を仰ぎ見た。そのまま数秒程して、再び明久の方を向いた。
「♪の部分は♡にした方がいいんじゃないか?」
俺の指摘には明久は、
「それはいい考えだね」
「あともっと猫撫で声で言うとバッチリだぞ」
「オーケー。それじゃあ、見ててよ僕の生き様を」
「しっかり見といてやる。頑張れよ」
サムズアップしながら明久は教室の扉を開くと、愛嬌たっぷりの吐き気も催すような汚い声でクラス中に聞こえる様に言い放った。
「すみません、少し遅れちゃいました♡」
「死ねやコラァあああああああ!!!!!!!」
だと思った。
2話まで投下できたけど、3話は果たしていつ頃になるか……
うろ覚えと他の作品を見ながらなんとかやってます。
電子書籍にバカテスがあるか見て見よう。