バカとテストと俺の召喚獣   作:マジェーレ

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結局、他作品のキャラを出すことに決めました。
第一弾はSAOのユウキです。

細かい設定とか展開はあまり考えていないので、大筋は変えないつもりです(多分)。
他にも他作品のキャラを出すかもしれませんが、ただ出すだけで元の物語からは大きく変わらないかもしれません。

ではそんなこんなで第3話です。


3話

「ひどい目に遭った……」

「そりゃ、あんな気色悪い声を聞かされたら、誰だって怒りたくもなるわな」

 先ほどのボコられていた様子を思い出しながら、俺は苦笑した。そんな俺を全身ズタボロの明久が恨みの篭った目で見つめる。

「この薄情者め」

「流石に悪かったなって思ってるよ。だからいい加減に機嫌直せよ」

 俺は痛みで動けない明久の身体に傷薬を塗る。染みたのか、明久は若干涙目になっていた。

「ただでさえ、こんな教室を充てられて、皆がピリピリしているって時にあんな舐め腐った事をされたら怒り狂うのも当たり前と言えるな」

 冷静にそう言ったのは、先ほど率先して明久をボコった、悪友の坂本雄二だった。

「おう雄二。やっぱりお前もFクラスだったか。そういや明久から聞いたけど、お前がこのクラスの代表なんだってな」

 挨拶もそこそこに、俺は雄二に聞いた。

「やっぱりは余計だ」

 すると雄二は、気を取り直して、Fクラス全体を見渡した。

「このクラスの最高成績者は俺だ。つまりこのクラスは俺の兵隊ってわけだ」

「その言いぶりだと『戦争』でも仕掛ける気みてえだな」

「追々そのつもりだ。お前もこき使ってやるから覚悟しとけよ」

 相変わらず悪い笑みがよく似合う事。

「その時はお手柔らかに頼んまぁ。はいこれでおしまいっと」

 湿布を叩き貼ると、明久の身体はぴょんっ、と飛び跳ねた。悲鳴を上げる明久を他所に俺は雄二の方に向き直った。

「何はともあれ、また一年よろしくな」

「こちらこそな」

 俺たちは頷き合うと、互いの拳を突き合わせた。

「ワシの事も忘れておらんか?」

 やべ、秀吉のこと忘れてた。俺はこの傷薬を提供してくれた秀吉の事を思い出した。

「もちろん……って痛たたたたたた、首がもげる!!!」

 この野郎! 姉貴譲りの関節技をここぞとばかりに使って来やがった。

「悪かったって。お前とも一緒のクラスになれて俺ァ嬉しいよ! ホントにホントさ!」

「本当か」

 急にしおらしくなったが、それよりも早くこの手を放せ!

「なにしてんのよ、アンタたち」

 このFクラスにも女生徒がいたのかと思ったが、残念、見知った顔の奴がいた。

「なんだ島田か」

 女生徒の正体は島田美波だった。

「なんだとはご挨拶ね。聞いたわよ、シン。あんた、試験中眠りこけてて全教科0点を取ったんだって?」

「うるへー。俺だってなぁ、好きでそうなったわけじゃないんだよ」

「そういえば吉井は?」

「そこで悶えているのがそうだよ」

 今、秀吉が介抱している。いまだに傷口が染みるのか、明久の苦悶の声は途絶えない。

「うわっ、いたそー」

 さっき雄二達に混ざってボコスカ殴ってた人のセリフじゃないと思う。

 見渡すと、島田以外は女生徒がいない様子だったが、代わりに面白い人物を見つける。

「よお、ムッツリーニ」

 俺はそいつに近づき、挨拶をする。

「……シンか」

 カメラの手入れに夢中でこちらを向かないが、一応は反応してくれる。

 相も変わらずって所か。趣味の邪魔をするのも悪いと思い、俺はその場を後にする。俺は他人の趣味に関しては尊重する、たとえそれが女生徒の隠し撮り写真であってもだ。

 俺が席に戻ったと重なるタイミングで、このクラスの担任がやってきた。そしてHRが始まり、クラスの自己紹介となった。

 俺や他の連中が一通り終えた辺りで明久の番となった。

「吉井明久です! 気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♪」

 懲りるという言葉を知らんのかこの男は。

『ダァーリィーン!!!!!』

 汚い男たちの大合唱。思わぬ流れ弾で、俺の精神は一瞬のうちに削り取られる。

「どういうつもりだよ」

「ごめん、まさか本当にやるとは思って見なかったから」

 お陰で吐き気が止まらねえんだが。最早他人の自己紹介など聞く気も起きなかった俺は、卓袱台に突っ伏して時間が過ぎるのを待つ。

「すみません! おくれました」

 先ほどの明久とは違った、鈴の様な声。俺は顔を上げて扉の方を見た。

 彼女の登場に明久、そしてその明久から事情を聞いていた俺を除く全クラスメイトが驚愕していた。

 姫路瑞希。入学以来、試験の時は必ず学年順位一桁台に名前を残している秀才がどうしてここにいるのか。それは、試験の際に体調を崩して途中で退席をしたからだ。振り分け試験では試験中の途中退席は0点扱いとなる。

 それを聞いたFクラス連中は。

『ああそうそう、俺も熱(の問題)が出たせいでこのクラスに…』

『ああ、化学だろ?あれは難しかったなぁ』

『妹が事故に遭ったって心配で……』

『黙れ一人っ子』

『前の晩に彼女が寝かせてくれなくて』

『今年一番の大嘘を有難う』

 こんなことを言いだした。

 自己紹介を済ませると、姫路は明久と雄二の間が空いていたのでそこに座った。

 明久がタイミングを見計らって姫路に話しかけようとしているが、雄二が割って入ってしまい、二人で話すという明久の目論見は崩れた。明久の恨みがましい視線が雄二に向かう。

「明久の奴、可愛い女子が近くにいるせいか浮かれておるのう」

「大方ロクでもない妄想でもしてたんだろうな」

幼馴染で常日頃から行動を共にしているあいつの事は、小学校の通信簿から振られた女の数まで知り尽くしているが、あいつの姫路に対する感情は未だによく分からない。

 何を話しているのか、ヒートアップしてきた3人を担任が教卓を叩きながら注意する。

 が、それがいけなかった。

 元々朽ちかけていた教卓は今の衝撃で崩れ落ち、見るも無残な姿となってしまった。

 暫しフリーズしていた担任は、急ぎ足で替えの教卓を取りに行ってしまい、俺たちはいっきに暇になった。

 すると明久が雄二を連れて廊下に向かった。恐らく、この間言っていたアレを提案する為だろう。

 最初に聞いた時、俺は思わず笑った。理由がなんともこいつらしいなと思ったのと、最底辺クラスが最上位クラスに下克上をかましてやるというだ。ワクワクするじゃねえか。

「この話乗った!」

 ひとしきり笑った後で、俺は明久にこう告げた。

 いきなり笑ったものだから不機嫌になった明久だったが、俺の答えを聞いて表情を明るくさせた。

 明久はクラス代表の雄二を焚き付ける事で『試召戦争』を起こさせるつもりだろうが、下手な小細工が通用するような相手ではない。それどころか勘の鋭いあいつのこと、恐らく明久の行動を訝しみ、その理由すら看破するだろう。

俺は心配していなかった。恐らく雄二は明久の話に乗る。友人の頼みだからとか、そういう浪花節を披露するような男ではないが、今朝の会話から、雄二の方も何かしらの思惑があって試召戦争を望んでいるようだった。

「遅刻してすみません!」

 今日は遅刻者が多いなぁ。

 俺は扉を見て、そしてすぐに目を逸らした。

 なんとなく気まずい相手がいたからだ。

「こ、紺野さん?」

 姫路とはまたベクトルが異なる可愛らしい容姿をした少女の登場にクラス中が再びざわついた。

 姫路が小動物系なら、紺野は明るくて快活な印象の可愛らしさだと思う。

 Fクラスの一人が驚きの声を上げる。

「あれって、紺野木綿季さんだよな。あの子もFクラス?」

 姫路に続き、紺野までやって来たことにクラス内が再びざわつき始める。

 そんな中、俺は身を低くしてなるべく目立たない様にするが、

「シンー! というわけでボクもFクラスだから、一年間よろしくね!」

 だがそんな行為も虚しく、紺野は俺を見つけてしまう。快活な笑顔で俺に向かって手を振る。俺も観念して手を振る。

「骨は拾ってやるぞい」

 秀吉の呟きを背に、俺は覚悟して嫌な気配がする方向に向き直る。

 いつの間にか、目を血走らせたFクラスの男子生徒全員に、俺は取り囲まれていた。

 こうなると分かってたから嫌だったんだ。

「誤解だ。話し合えば分かる筈だ」

『誤解もクソもねえ! 今ここでてめえの息の根を止めてやらぁああああああ!!!!!』

 俺は必死に弁明しようとしたが、聞く耳すら持ってもらえなかった。

 窓ガラスを突き破るほどの怒号が教室中に響き渡った。

 飛び交うコンパスや筆記用具を卓袱台バリヤーで防ぎながら、俺は再度彼らに訴える。

「だからお前らが思うような関係じゃないっての!」

「可愛い女の子から名前呼びされてる時点で重罪じゃああああああ」

「そんなんだからもてねーんだぞお前らは!」

「言ってはならぬ事を貴様ああああああああ!!!!!!!」

 投げる物が尽きたのか、今度は実力行使に出るFクラス男子。

 対して俺は拳と卓袱台ハンマーで応戦する。

「それじゃあ紺野さんも体調を崩されたんですか?」

「うん。ボクの場合は登校中に体調が悪くなっちゃって、それで最初から試験が受けられなかったんだ」

「災難だったのう。今はもう大丈夫かの?」

「今はもう大丈夫だよ。それに試験を受けてたとしても、今の僕の学力じゃあ良いクラスに行けてたかも分からないからね」

「そんな事ないわよ。紺野さん、休みがちだけど頭良いから、調子が良かったらきっと上位クラスにいけたわよ」

「ありがとう。それはそうと、あれ大丈夫なの?」

「何かすごく揉めているみたいですけど……」

「大丈夫よ。多分もうすぐ終わるんじゃないかしら」

 突進し勢いそのままに、顔面のど真ん中に拳を突き入れる。教室の端まで吹き飛ばされた須川は、そのまま音を立てて畳に沈んだ。

 死屍累々となった教室内で、俺はニヒルな笑みを浮かべてポツリと呟いた。

「争いって奴はいつも虚しい……」

「あ、終わった?」

 終わりを見計らって島田が声を掛けてきた。

 俺はボロボロになった卓袱台を、須川のと取り換えてから答えた。

「ようやくな」

「やっほー、シン。お疲れー」

「紺野。てめえのお陰でなあ」

 文句の一つでも言ってやろうと思ったが、微笑む紺野を見て俺は違うセリフを吐いた。

「まあ、とりあえず元気そうでよかったよ」

 俺は振り分け試験の日に、体調を崩してしまった紺野を思い出した。

 今にも倒れそうだった彼女を、おぶって保健室に連れて行ったのは俺だった。幸い大事には至らなかったが、代わりに俺はテストを受けられず0点扱いとなった。

「ごめんなさい」

 保健室のベッドで目覚めた紺野が俺に言った言葉である。俺がFクラス行きになってしまったことを彼女は気に病んでいた。

 俺は気にするなと言い、どうせまともに受けていたったFクラスになっていたと付け加えた。少しは気が楽になったのか、小さく笑ってくれた。

これをきっかけに俺は紺野と話す様になった。

「心配してくれたんだ?」

 俺は少しそっぽ向きつつ答えた。

「ん? まあ、一応……」

「えへへへへ」

 なんで嬉しそうなんだか。

 見れば、女性陣たちはなにか微笑ましいものを見る様な目をしていた。秀吉も何とも言えない顔をしていた。

「どうなってんの? これ」

 丁度戻ってきた明久が倒れ伏しているクラスメイト達を見てうめいた。

「あれ? 紺野、お前もFクラスになったのか」

 紺野を見つけた雄二が言った。

「そゆこと。よろしくね!」

 明るく振舞う紺野だが、姫路と同じく病弱の身なので俺は心配してしまう。

「はしゃぎ過ぎてまた倒れても知らねえぞ」

 そんな俺の呟きを、偶々近くにいた雄二が聞いていた。

 意味深な笑みを浮かべて俺を見ている。

「なんだよ?」

「いや。お前らって似た者同士なんだなって思っただけさ」

 どういう意味なのかさっぱり分からず、俺は首を傾げるしかなかった。

 




この世界線のユウキは病弱ではありますが難病を患っていないという設定で行こうと思います。
なので、悲劇的な展開とかは起きないと思います。

※作者が悲劇とかシリアス系が苦手なので。

ではまた。




読み返してみたら、担任の名前が福原慎で名前が被っていましたが、もういちいち替えるのも面倒なんで今後福原教諭の名前は一切出さず、このまま進めたいと思います。

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