大神ミオはあなたのスキルに対して想像と違った答えを示す。
「初めまして、大神ミオです!」
目の前の彼女は笑顔でそう自己紹介をしてくれた。
《スキル【運命】が発動しました》
「それじゃ、行きましょうか」
俺はミオちゃんに連れられ神社に向かった。
境内に入るとハトの頭をしたやたら体格のいいモンスターが庭を箒で掃いていた。
「あ、ハトタウロス。
うちの神社の守り人してもらってるの」
なんかすごいな、頭を下げる。
ハトタウロスも丁寧に頭を下げてくれていた。
「こっち、こっち」
ミオちゃんは、本殿の中で手招きしている。
中に入ると少し薄暗かった。
「そこに座ってくれる?」
机の前に座布団が置かれていたので、そこに座った。
「さてと」
向かい合って机の反対側の座布団に座るミオちゃん。
「じゃ、何を聞きたいか教えてもらえるかなぁ?」
「あ、はい。
俺の持つ2つのスキルについて教えてもらいたいです」
「なるほど、分かった。
それじゃ、見せてもらうね」
ミオちゃんは机の下からカードを取り出す。
それを机に並べ始める。
しばらくカードを動かす。
「なるほど」
カードを片付けるミオちゃん。
「それじゃ、質問に答えるけど、少し長くなりそうだけど大丈夫?」
「あ、はい」
にこっと笑うミオちゃん。
「お茶良かったら飲んでくれていいからね」
いつの間にか机の上にお茶が置かれていた。
「あ、ありがとうございます」
「じゃ、まずキミが持つ2つのスキルのうちの1つ。
【運命】のスキルから」
やっとスキルの効果が分かる。
「簡単に言うと、このスキルは運営側が用意しているスキルではないわね」
「はい?」
運営が用意してるスキルではない?
「はは、ごめんね。
運営とか言っちゃって世界観ぶち壊しちゃってるね」
「い、いえ。
というかどういう意味ですか?」
「うん、この【運命】ってスキルはこの世界【ホロライブワールド】が自分自身で用意した言わばエクストラスキルなの」
「え?世界が用意する?」
「そう、この世界【ホロライブワールド】には世界の意思ってのがあるの。
人が電気信号を使って動いてるのは知ってる?」
「は、はぁ」
「この世界は言わば電子の海にあって、そこで様々な情報が流れて世界を作ってるの。
だから、この世界に意志があったとしても不思議じゃないでしょ?」
「ま、そうとも言えるって事ですかね」
「ふふ、その目に見える形が私達AIなんだけどね。
ま、ややこしい話は別にして、その世界が自分を守る為に作ったスキルがキミの持つスキルなの」
「自分を守る?」
「そう、1度前にね、この世界はある事件で消滅させられそうになったの。
たぶん、今回またその事件の首謀者が動き出したのかもしれない。
さて、ここからが本題。
今から話す事はリアルじゃなくてゲームのお話だから、キミが何かを背負う必要はないからね。
これを受け入れて進むか、途中で止めても誰もキミを責めないし。
たぶん、世界はまた新たな答えを出すと思う」
ミオちゃんが何を言おうとしているのか分からなかったが、俺を気遣って言ってくれてるのは分かった。
「教えてください」
ミオちゃんはにこっと笑い頷いた。
それはまさに聖母のような笑顔だった。
「キミはこの世界を消滅から救う為に選ばれた事になるの。
これはゲームの設定とかそう言うものではなく、現実にこの世界が何者かによって狙われている。
もし阻止を失敗したらこのゲームは消滅してなくなってしまう」
「え、いきなり、世界を救えって」
「そう、よくあるお話だよね。
異世界に来て世界を救う勇者になれって。
でもね、これはキミのリアルに関係する事ではないの。
リアルで何かあってこのゲームがどうしても出来ないとなったらそれは仕方ないと思う」
何も言えない。
確かに俺はたくさんのゲームをしてきた。
その中にはゲームの途中で止めたものもある。
「だから、キミはキミ自身で決めてゲームをしてくれればいいよ」
よく物語である異世界に飛ばされて命懸けで世界を救うというものではないとミオちゃんは言っているのだろう。
でも、俺がやらないと消滅してしまう可能性はある。
この世界に住むホロメン達も消えてしまうかもしれない。
ミオちゃんの言うとおり世界がまた新しい人を選ぶかもしれない。
でも、それは確実な事じゃない。
だったら。
「この世界に来て日が浅いですけど。
俺はこの世界でホロメンに会って、まだ推しとかよく分からなくて決められないけど。
でも、ホロメンの人達がすごく優しくて楽しくて一緒にもっと遊びたいと思うです」
俺はじっとミオちゃんを見る。
「だから、俺がこの世界を救う事が出来るならやってみたい」
「わかったわ。
なら、【運命】のスキルの効果を教えるね。
スキル【運命】は言わば主人公補正がかかるスキル。
どういう道をたどるかは分からないけど、最後にはキミはこの世界を狙う首謀者と相対する事になるわ。
その時、キミの周りにはキミに力を貸してくれるたくさんの人がいると思う。
だから、臆する事なく進んでほしい」
「分かりました」
「うん、後もう1つのスキルなんだけど」
「あ、これは後で増えてたスキルなんです」
「そっか、そのスキルは運営もこの世界でもないところから付け加えられたスキルみたい」
「え?」
「そのスキルを手に入れてから何かあった?」
「このスキルのせいかどうか分からないですけど、経験値が普段より多くもらえます」
「【運命】にはそう言うスキル能力はないからやっぱりもう1つのスキルの効果みたいだね。
なら、下手に封印しない方がいいかな。
そのうちそのスキルをこの世界に持ち込んだ相手にも会うと思うからその時に聞いてみて」
「はい」
「長くなってごめんね」
「い、いえ」
「じゃ、当面の目的だけ伝えとくね。
キミはまずうち達ホロメンと会っていってほしいの。
具体的に言うとステータス画面にある、うち達のアイコンを全部点灯させてほしい」
俺はステータスの推し画面を開く。
いくつかは点灯しているが、まだ薄暗いところはたくさんある。
この薄い点灯はなんだろう?
ミオちゃんに聞いてみる。
「それは遠くから見たとかそんな感じだね。
相手には認識されてない状態」
確かにこのぺこみこコンビは遠くから見ただけだ。
「それより、やっぱりキミは会ってるんだね」
「え?」
「その懐にあるアイテムから予想はしてたけど」
俺は懐を探る。
懐から虹色のダーツを取り出した。
「これ?」
「そう、それはあるホロメンに出会った時に貰える可能性があるアイテムで、その中でも虹色は激レアだよ。
そのアイテムは特別でデスペナでも消えないから」
「まじで?」
「そのアイテムの効果はうち達ホロメン関係のイベントやクエストと遭遇する確率がすごく上がる」
「それかぁ」
「心当たりあるみたいだね。
そっか、それを持ってるならいけるかな」
ミオちゃんが何か考えている。
「いけるね。
じゃ、まずはキミにはこの【ゲーマーズ】にある次の町に行ってもらってあるホロメンに会ってほしい。
誰に会うかはそこに行けば分かると思うから」
そう言って大と書かれた玉を渡してくれる。
これって?
俺はアイテムボックスから狐と書かれた玉を出す。
「あ、それってフブキのだね。
そっか、フブキもよんでたって事か」
「これって?」
「それは使う時になったら光って報せるからその時に…って言って投げて」
こそっと教えてくれるミオちゃん。
「それ言わないと使えないの?」
「使えないよ」
イタズラっぽく笑う。
「分かりました」
「じゃ、まずは今のレベルを40ぐらいに上げてもらってパーティー組んで次の町に行ってみて。
その先は運命の赴くままにって感じかな」
ミオちゃんが笑う。
「分かりました、ありがとう」
「後ね、この町のギルドに行ったらこの階段を上がった事報告してみて。
それじゃ、近いうちに会うかもだけど、それまでまたね」
俺はミオちゃんにお礼を言って社を出た。
外ではハトタウルスが掃除をしている。
ハトタウルスに頭を下げると同じように頭を下げてくれた。
鳥居の横に光の輪が出ていた。
これがワープポータルかな?
俺はワープポータルには入らず階段をゆっくりと降りる事にする。
ミオちゃんから聞いた話。
スケールが大きすぎた。
世界を救うか。
まさか、そんな役回りになるなんてな。
でも、このゲームを終わらせたくないという気持ちはある。
まだまだ始めたばかりだしな。
俺はミオちゃんに言われたようにまずはレベル40を目標に町への階段を降りていった。
さて、救わなくてもリアルの自分には関係のない使命を受けたあなた。
他の作品のように命をかける必要もなく。
元の世界に帰る為に救う必要もない。
ただ、救わなければこのゲームが消滅してしまうだけの話。
実際にあなたが遭遇したら、あなたはどうするのか?
さて、次回は新しい町へ
お楽しみに