次は最後のクエスト、戌神神社へ。
さて、そこであなたを待ち受けるのは。
※本作品はホラーではございません。
町に着いた俺達は酒場で食事に来ていた。
今回の女郎蜘蛛討伐でなんとレベルが2も上がった。
パーティーを組んでいなかったおにぎりゃーの人達が、止めを俺達に譲ってくれたようで、星1つ持ちのモンスターの経験値がまるまる入ったらしい。
ちなみにドロップ品はなかった。
おにぎりゃーの人達めちゃ優しいな。
友人達は経験値は入ったがレベルアップまでには足らなかったらしい。
何はともあれチェーンクエストも後1つ、俺達は明日に備えて楽しく食事した。
「そういえば、チェーンクエストと連続クエストは違うのか?」
俺の言葉に友人は肉を食べる手を止め教えてくれる。
「連続クエストはクエストをクリアすると次のクエストが出るクエストだな。
チェーンクエストはもともと全てのクエストが出ていてどれからやってもいいが全てを終わらさないとクリアにならないクエストだ」
「なるほどな、クエもいろいろあるんだな」
「ああ、次の町に進めば種類も増えるからな」
「楽しみにしとく」
俺達は食事を済ませ、宿に向かう。
ログアウト無しの休息を取る。
次は戌神神社に出発だ。
『おはよう』
今回はほぼ同じくらいに宿屋の前に集合した。
「それじゃ、戌神神社に行きますか」
『おー』
俺達は戌神神社があると言われるススキの原に向かった。
場所的には猫又神社の反対側になる方向。
街道を外れて少し歩く。
さっきまで平原だったのが、いつの間にかススキが広がる場所に来ていた。
腰ぐらいあるススキの中を真っ直ぐに進む。
カサカサとススキの擦れる音がする。
何故か寂しい感じがするな。
「ここにもモンスターがポップするのか?」
「ああ、する。
しかし、あまり見かけないからたぶん最近、聖地巡礼があったんじゃないかな?」
「ああ、ファンの集まりか」
「まぁ、そう言えば簡単だがな。
あれもなかなか企画する方は大変だぞ。
みんな集めようとしたらなかなか難しいからな」
「そうなんだ」
「その点はリアルと同じだな」
友人が笑う。
「それは言えてますね。
私もどうしても参加出来ないことありましたし」
カーディアさん。
「リアルが大事だよ」
頭のフブキちゃんは優しく言ってくれる。
「でも、行けるなら行ってみたいよな、楽しそうだ」
「お、やっとおまえも推しの楽しさが分かってきたか」
「いや、別にそういう訳じゃ。
ん~
そういう事なのかな?」
俺の言葉に3人が笑う。
「おっとお出ましだぞ」
前の草むらが激しく揺れ、小鬼が4匹現れた。
「バフをかけます」
カーディアさんから速さと力のバフをもらう。
俺は一気に3匹を倒す。
「さすがオーガキラーだな」
友人も最後の1匹に止めをさして言った。
「まじで鬼に対してめちゃくちゃ強いな」
「確かにこうやっておまえと一緒に戦ってるとそう感じるよ」
俺よりだいぶ上のレベルである友人が何回か攻撃しないと倒せない小鬼を、バフがかかっているとはいえ、一撃で倒せるんだもんな。
「ま、この世界は鬼属性のモンスター多いから、パーティー組んでたらこっちも助かるよ」
「そういってもらえるとありがたい」
友人達にはクエスト手伝ってもらってるからな、俺も役に立てるのは嬉しいな。
「お、見えてきたな」
そこには鳥居が立ち、他の神社に比べれば少し小さい本堂があった。
「ススキの中にあるんだな」
俺は周りを見渡しながら言った。
他の場所のように神社の周りが開けておらず、ススキでいっぱいだったからだ。
「ああ、そうだな。
巡礼したとしても、これがこの場所のデフォルトかもしれない」
友人も周りを見ながら言った。
「それでフブキちゃん、ここのクエストクリアの条件は?」
俺はカーディアさんの頭の上にいるフブキちゃんに聞く。
「もちろん、この場所にポップするボスモンスターの討伐です」
フブキちゃんは本堂をじっと見ている。
「なら、行くしかないか」
俺は2人に言った。
2人とも頷く。
俺達は武器を構えたままゆっくりと鳥居をくぐった。
ゾクっと背中に何かが走る。
これは。
「ゆ~び切りげん~まん、嘘つ~いたら、針千本飲~ます、ゆ~び切った~」
なんだ?
歌?
「まじかぁ、ここに出るのか」
友人は武器を構えたまま言った。
「噂では聞いた事ありましたが、確かにここが一番ポップする確率高いですよね」
カーディアさんも苦笑いしている。
しかし、杖はいつでも魔法を撃てるように構えを解いていない。
俺もオーガキラーを握る手に力を入れた。
「知ってるのか?」
「ああ、フレンド内で噂を聞いた事があってな。
この【ゲーマーズ】のどこかに出るあるモンスターの話さ。
曰く嘘をついたらボップする。
曰く口を大きく開けたら、その口の中に針を突っ込まれる。
曰く手を開くと指を全部切り落とされる」
「まじか」
「なんで一応、口は大きく開けるなよ。
しかし、正確な場所は分からなかった。
それがこことはな」
歌は本殿の上から聞こえる。
あれか。
屋根の上にいる。
見た目は老婆だ。
白いボサボサの髪に薄汚れた服、特に目を引くのはその両手、右手は大きな出刃包丁、左手は針山でたくさんの針が刺さっていた。
「嘘つくやついないか?
指切りしたいやついないか?」
「来るぞ、妖怪ゆびきり」
友人の言葉と同時に、下に飛び降りてくる妖怪ゆびきり。
カーディアさんが氷の魔法を放つ。
だが、ゆびきりはその包丁で氷を真っ二つ。
しかし、それは囮だった。
氷の影から友人は、伸びきったゆびきりの右手を狙う。
「嘘ついたら針千本だぁ」
左手の針山から針が飛び出す。
たまらず下がる友人。
俺はその間にゆびきりの背後に回っている。
隙あり、俺はゆびきりの背中にオーガキラーを突き差す。
が、避けられた?
「指切るかぁ!」
包丁が俺の顔面に迫る。
くそ、しゃがんで避ける。
「雷よ」
カーディアさんの魔法がゆびきりを襲う。
ゆびきりは大きく飛び下がる。
「大丈夫か?」
「ああ。
しかし、強いな」
「私達だけだと無理かも知れないね」
「星持ちか?」
俺は友人に聞く。
「いや、個体差だな。
あいつは激レアモンスターだからな」
「星無しであの強さか」
「どうします?」
「一旦退却出来ればいいが」
「無理そうだな」
ゆびきりはこちらをじっと見ている。
背中はもちろん、下がればさっきの跳躍力で一気に間を詰められる。
万事休すか。
「ゆび!ゆび!」
「ゆび!ゆび!」
「ゆび!ゆび!」
な、なんだ?
「まじか、ここで来るか。
早く地べたに伏せろ。
伏せたら口を閉じて、息も最小限の音でしろ」
友人が俺に向かって叫ぶ。
カーディアさん達を見るともう地べたに伏せていた。
俺も慌てて伏せる。
なんだ?
次はなんなんだ?
「ゆび!ゆび!ゆび!ゆび!ゆび!ゆび!」
ゆびの連呼はまだ続いている。
地べたから周りを見ると両人差し指を天に向け、笑顔の人?が歩いている。
俺達と神社を取り囲むように。
いや、俺達とゆびきりを囲むように。
まだ、増えるのか?
人?の足音、声がどんどん増えている。
そして、それは来た。
背中に先程とは比べられないような何かが走る。
これは悪寒?
いや、恐怖か?
俺達とゆびきりの間の空間が歪む。
ズブブと何もない空間から右手が現れる。
その右手が空間を掴む。
次は左手。
そう、何かが空間から現れようとしている。
ズバァ。
顔が出た。
犬娘?
想像と違う可愛らしい顔が現れた。
次に体、足。
腰、最後にしっぽ。
全身が現れた。
《スキル【運命】が発動しました》
現れた少女は可愛らしい感じの犬娘なんだが、どうして恐怖が消えない?
【運命】が発動したって事はホロメンなのか?
少女はゆっくりと周りを見渡す。
ヤバイ、こっちを見る。
咄嗟に地面に視線を落とす。
心の中で誰かが叫んだ気がした。
目を合わすなと。
ゆっくりと犬少女が背後のゆびきりに目線を移していく。
「この場所で悪さをしてるのは誰~」
犬少女が呟く。
そして、少女の目が妖怪ゆびきりを捉えた。
目を見開く犬少女。
「あんたか~!」
犬少女の言葉にさっきまで笑顔で歩いていた人?達の目が見開かれる。
真っ赤なその瞳が怪しく輝く。
そして、全員が天を指差した人差し指を、妖怪ゆびきりに向けた。
俺は咄嗟に目を瞑る。
正直怖かったんだ。
「おい、大丈夫だぞ」
「え?」
俺は目を開いて立ち上がる。
「え?
犬娘は?
あの人達は?
妖怪ゆびきりは?」
「そう立て続けに聞くなよ」
友人はその場に座る。
カーディアさんも座った。
俺もつられて座る。
「まずは、妖怪ゆびきりだがもうここにはいない。
彼女の噂の簡易大召喚でどこか分からない場所に連れていかれた。
もう、あの妖怪はここには戻ってこないだろうな。
次にあの犬娘は戌神ころねちゃん。
ここの主だよ」
「え?
でも、主はここにはいないって」
そう聞いたけど。
「その場所を管理しているホロメンは遠くにいても何かおかしな事があったら分かるんです」
フブキちゃんが教えてくれる。
「なんで、たぶん俺達が妖怪ゆびきりと相対したから、別の場所からこっちに簡易大召喚で来てくれたんだろう。
で、あの笑ってた人達だけどあれはころねちゃんのファンのころねすきーの皆さんだ」
「ファンの人達か、かなり怖さがあったが」
「まぁ、あれはあれで楽しくやってるみたいですよ」
カーディアさんが笑いながら言う。
「それにかなり優しい人達だからな」
「そ、そうなのか?」
「はい、あの簡易大召喚ですが、範囲がたった1体なんですよ」とフブキちゃん。
「その代わり他のホロメンにはない絶対な力をもっててころさんに指名されたら最後、絶対にこの世界に戻れない所に連れていかれます」
「だからか、ころねちゃんが出てくる前にころねすきーのみなさんが、今からころねちゃんが来ますよ~という合図に、ああやって先にゆび!ゆび!言いながら出てきてくれるんだ」
「そういう感じだったのかあれ」
「ああ。
ま、対象を逃がさないって意味合いあるだろうけどなぁ」
「ははははは。
ま、何はともあれクエストクリアかな?」
俺の言葉にフブキちゃんは頷いた。
「やった~」
「よっしゃぁ」
「よかったですね」
3人とも喜ぶ。
「それじゃ、クエスト報告に行こうか」
俺達は町へと報告に向かった。
後はギルドに行って報告。
フブキちゃんとの約束通り俺達のレベルは10上がった。
俺は目標の40越え。
友人はレベルカンスト。
カーディアさんも90台に入ったそうだ。
最後はいつもの酒場でクエストクリア祝い。
みんなでワイワイ騒いだ。
そして、お別れの時。
酒場の前でカーディアさんはフブキちゃんを抱っこして離さない。
「カーディア…」
友人に止められる。
ゆっくりと首を左右に振っていた。
俺は黙って彼女を見守る。
「楽しかったですよ」
「私もです、この冒険は私の一生の宝にします」
「ありがとうございます。
また、機会があれば一緒に冒険しましょう」
そうフブキちゃんは言って笑った。
「はい」
カーディアさんは泣きながら最後にぎゅっとフブキちゃんを抱きしめてから離れた。
いつの間にか普段の姿に戻っているフブキちゃん。
「お二人との旅も楽しかったです」
「こちらこそいい体験できました」
友人も笑っていた。
「俺もすごく楽しかったし、助かりました。
ありがとうございます」
俺はフブキちゃんに頭を下げた。
フブキちゃんは笑っていた。
とても優しいその笑顔に癒される。
「では、また。
おつこんでした」
最後はそう言ってフブキちゃんは宙返り。
前と同じように消えてしまった。
カーディアさんが振り向く。
「お二人ともありがとうございました。
お二人のお陰で推しと旅できたんです。
本当にこのゲームしててよかった」
涙はまだ目にたまっていたがその笑顔はフブキちゃんに負けず劣らず良い笑顔だった。
「こちらこそ助かりました。
また、一緒に冒険してください」
「はい」
カーディアさんとフレンド登録する。
こうして、俺の初めてのチェーンクエストは幕を閉じた。
次は新たな町へ出発だ。
今度はどんな出会いが待っているのか楽しみで仕方がないな。
次の更新は未定です。
時間を調整して早めに掲載していこうと思ってます。
それでは、また次回のお話で